リツコの絵 新しい仕事 身体と自由の解放区
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Ritsukoの絵


林 紀一郎:美術評論家、池田20世紀美術館長(2005年退館)


Ritsukoは 純白の画布(カンバス)空間に素っ裸で跳びこむ。
絵画の空中遊泳だ。 泳ぎながらRitsukoは泣く。 笑う。 
怒る。 悔しがる。 悲しむ。 欲望する。 叫ぶ。
空間は限りなく広大だ。 ゴールが見えない。
いや、 ないのだ。それでもRitsukoは 必死に泳ぐ。 
ゴールがなくてべそをかく。  それでも夢を見るのだ。

絵って何だろう? 判んない。 考えてるひまに描こう。 描くし かないよ。
描くって何だろう? 生きるってことじゃないのか。 
泣いたり、  笑ったり、 怒ったり、 欲望したり、 愛したり、 憎んだり....
つまり、 生きるってことじゃないのか。
ということは、 絵ってRitsuko 私ってこと。
そうだ。 Ritsukoが 絵なんだ。

RitsukoのRitsu(律)は RULE(ルール)ということ。
そう、 この私がRULE(法則)なんだ。
だから絵は私のやり方で描く。律流―Ritsuko・style で描く。
遠近法だの明暗だの黄金比だのコンポジションだの知った ことか。

男がいて、 女がいて、 貴方がいて、 私がいて、 人間がい て、 愛がある。 
愛に寄り添う喜びと悲しみ。 愛につきまとう 不安と憂鬱。 
その愛のさいはての死・・・・。 死はいつも私の周りにあった。  
人間たちのたくさんの死に支えられて私が生きて描く。 幸せな私!

それにしても どうして下手くそに、子どもの絵みたいに描くの?  
子どもみたいな絵を描いて悪い? 下手くそに描くのはむずかし いのよ。 
ピカソだって子どものように描けるまで80年もかかっ たって、言うじゃない。

こうしてRitsukoは 純白の画布(カンバス)空間に素っ裸で 跳びこみ、 
Ritsuko.Style で泳ぎ、男と女を 人間 を、子どもの絵に負けるものかと、 がむしゃらに描きつづける。 
原始回路の無垢な精神を支えとしな がら・・・