ガンダムSUZAKU・第5章:コンビネーション
第5章
コンビネーション


      ガガガガガガガッ!!!

「くっ、うわぁ!」
 アンノーンの攻撃はいつ止むともなくタケルとスザクに襲いかかる。しかし、昨日の戦闘で武器管制システムのいかれてしまったスザクに、反撃の手は無い。
 唯一使えるソーラープラズマメガライフルでさえ、制御システムが不調で満足に使えない状態だ。
「くそッ、武器さえ使えればハングドマンぐらいメじゃないのに…!」
 いまスザクに出来ることといえば、アンノーンの銃弾をシールドで防ぐことだけだ。しかしそれももう、いつまで持つだろうか。
「どうすれば、どうすればいい……?」
 ソーラープラズマライフルを使えば、全機を一気に消滅させることも可能だ。だが、制御システムが不調な今、チャージには通常より時間がかかりそうだ。その間、スザクは全くの無防備。下手をすれば、いかなスザクであろうと落とされる可能性が高い。
「せめて、地上のハングドマンだけでもいなけりゃ……」
 その時だ。

      ズバァァァァァン!!

 突如地面が爆発を起こす。スザクのリニアシートのスクリーン越しに砂煙の中の影が見える。
「…!!?」
 と、次の瞬間その影が消えた。それとほぼ同時に、地上から攻撃をしていたハングドマンが1機、爆発を起こす。
「な、何が起きたんだ!?」
 突然の出来事に、驚きを隠せないタケル。

      ドムォ…!

 まただ。また影がハングドマンを粉砕する。十数秒の内に、残り4機の陸戦型ハングドマンは一掃されてしまった。
「すごい……。なんなんだ、アレは…?」
 いつしか、スザクを攻撃していたアンノーンも、その影に戦慄していた。
 やがて、砂煙がおさまり、影がその姿を表した。
「あ、あれは……!」
 白いボディ。頭部にある二本のアンテナ。格闘家を彷彿とさせる独特なフォルム。
 あのシルエットにはタケルも覚えがあった。それもそのはず、タケルの観た啓示ヴィジョンに浮かんだあの4機のMSのうちの1機だったからだ。
「ガン……ダム?」
 と、通信機が鳴る。どうやら白いガンダムタイプからのようだ。
 タケルは回線を開いた。
『そこの羽はえたMS、応答してッ!』
 スピーカを通して、聞き覚えのある声がする。スクリーンに映し出された顔は……
「パティ…?パティなの!?」
 コックピットに座っているのは、間違いなくパティだ。
『タケル?なんでタケルがガンダムに乗ってるの!??』
「それはこっちのセリフだよ。その白いガンダムは一体…!」
 タケルが言い終わらないうちに、アンノーンが攻撃を再開する。被弾するスザク。
『話は後!とりあえず、やつらを叩きましょ!』
「……う、うん…」
 タケルのその声に、パティが怪訝そうな顔をする。
『どしたの?なんか様子変だよ』
「それが、スザクの武器管制システムがやられてて、武器が使えないんだ」
『ええっ!!?』
「ひとつだけ、ソーラープラズマメガライフルが使えないこともないけど……」
『だめなの?』
「こっちも制御システムがイカレてて、チャージに時間がかかる上に一発しか撃てないんだ」
『そっかぁ…こっちは元々が陸戦仕様だから、空中じゃ相手にならないしな……』
 パティがコックピット内で腕をくんで考え込む。
『…ねぇ。その“そーらーなんとか”ってヤツ、撃てないって事もないんでしょ?』
「時間稼ぎが出来ればね……」
 タケルのその言葉に、パティが声を弾ませて言った。
『解った!時間稼ぎぐらいなら、この子でも出来る。何すればいい?』
「それじゃ、これから僕の言うことをよく聞いてて……」


 ひととおりタケルの説明を聞き終えたパティは大きくうなづいた。
『…つまり、“そーらーなんとか”の射程内に誘導すればいいんだね』
「“ソーラープラズマメガライフル”。とりあえずはそう。今のスザクの向きで発射したら街を巻き込んじゃうから少し方向転換しなきゃだけど」
 目を曇らせる。少し自信が無い。
『うん、そこらへんはだいじょーぶ。いちおう座標はこっちに送られてるから、そっちに誘いこめば…』
「あとはスザクのメガライフルで一掃する。大丈夫とは思うけど、一応射程内から離れてね」
『了解っ』
 パティの元気な声。大丈夫!そんな感じがしてくる。
『行くよッ、ガンダムビャッコ!!!』
 ガンダムビャッコと呼ばれたそのガンダムタイプがスラスターを噴射し、敵方向へ突進していく。
「よしっ…ソーラープラズマメガライフル、スタンバイ」
 タケルはそれを確認して、発射すべき方向へメガライフルの銃口を向ける。
「…システムがオーバーロードしそうだ…。チャージ終了まで、あと3分 秒か。頼んだよ…パティ……!」


 パティは上空からの攻撃を避けつつ、メガライフルの射程内に敵機を誘導すべく、ビャッコを操作していた。
 しかし、かたや陸戦型かたや空戦型。有利不利は火を見るより明らかだ。

      ガガガガガガガッ!

「きゃうっ!」
 砲弾の雨が、容赦無くビャッコに降り注いでくる。
『パティ!?』
「だ…大丈夫! タケルはチャージに専念して!!」
『わ、解った…』
 かろうじて体勢を立て直し、ビャッコを走らせるパティ。だが……

      バシュウッ!

 紫色のアンノーンが放つビーム・ライフルが、ビャッコのスラスターを捉える。背後での爆発で、一瞬ビャッコの動きが止まる。
「パティ!!!」
『大丈夫だってば!』
「だけど……」
『心配御無用…。この程度でやられるあたしじゃないもん!』
 タケルには、この状況下でも笑顔でいられるパティが不思議でならなかった。  だが、その笑顔を見ていると、タケルは不思議と安心感を覚えた。それがなんなのかタケルにはわからなかったが、少なくとも今は彼女を信じよう。そう思っていた……。


 一方その頃。ようやく修理の終わったガンブレッドではクルー達が慌ただしく動いていた。
「タケル君とはまだ連絡がつかないのか?」
 ルシード艦長がマックスに問うが、マックスは首を横に振る。
「駄目ですね。うんともすんともいいませんよ」
「…まいったなぁ……」
 ルシードが頭を掻いていると、通信が入った。ダイゴだ。
『ルシード艦長!ガンブレッドを出そうぜ。このまま連絡待ってるだけじゃラチがあかねぇ。もしかしたら“アンノーン”に襲われてるかもしれねェしよ』
「そうだな……よし!ガンブレッド浮上!ガンダムスザクの捜索にかかる。とにかくニューヨークシティーへ向かうぞ!」
「了解! 進路固定、ニューヨークシティ」


 アンノーンが標的にしていたのは、なにもガンダムビャッコだけではない。チャージ中で無防備状態のスザクもまた、アンノーンの格好のマトだったのだ。
 ビャッコを追うのに飽きたアンノーンはその攻撃の矛先をスザクに向け、襲いかかろうとする。それをパティが唯一の飛び道具である腕部ガトリング砲で攻撃し、スザクを狙いからそらす。
「無理はしないでね、パティ。少しくらいなら、食らっても平気だから」
『ありがと!でも大丈夫。あたしに任せて、タケルは自分のことだけ考えてて。どのみちこの子の装備じゃあいつらは倒せそうに無いし……』
 確かに一応飛び道具は装備しているにしろ、やはりビームライフルぐらいないとやや心もとない。パティにもそれがわかっているのだ。
『あと何分?』
「あ、あと…1分8秒!」
『解った!それまで持ちこたえてみせるからっ』
 通信が途切れ、ビャッコが挑発するかのようにカメラ・アイを光らせる。
「ほーらほら! あたしはこっちだよっ!」
 それにつられ、スザクを狙っていた残りのアンノーンもビャッコに狙いを定める。
「…残り40秒…! 急いでッ!」
 バーニアを吹かすビャッコ。だが、さっきのアンノーンの攻撃によって破損しているため、今ひとつスピードが乗らない。
「くぅっ…こんのぉぉぉぉっ!!!」
 むりやりバーニアを吹かせ、アンノーンをソーラープラズマメガライフルの射程に誘導する。
「……来たッ! 全機、射程内に入ったよ、パティ!」
『OK! あと何秒?』
「…あと20秒。早く退避して!」
『了解っ』
 だが、突然スピードが落ちる。
「パティ!?」
 モニタを見ると、ビャッコのバックパックから白い煙が上がっている。
『あっちゃぁ……。やっちゃった…』
 コックピットの中で焦るパティ。
「だ、大丈夫なの!?」
『…な、なんとか……』
 そう言いながらも、パティの顔から焦りは消えない。
「とにかく急いで!チャージ完了から10秒以内に撃たないとメガライフルごとスザクが爆発しちゃうんだ!」
 タケルも焦りながら叫ぶ。パネルのサブモニタからは、それを伝えるエマージェンシーが出ている。
『わかった。……なんとかやってみるっ!』
「最終カウントダウン…。あと15秒」
 ビャッコがもう片方のバーニアを全開まで吹かせ、退避を試みる。
「行っけぇぇぇぇぇぇっ!!!」
 ゆっくりではあるが、ビャッコの巨体がメガライフルの射程から逃れて行く。
「あと5秒。4、3、2…」
「せぇのぉ……っ」
「行くよッ、ソーラープラズマメガライフル、発射ァ!!!」

      ギュオォォォォォォ……!!

 高出力のエネルギーが放出され、一瞬にしてアンノーンは光の帯に消える。
 その脇で、ビャッコの白い機体が砂地に転がるのが見えた。どうやらうまく退避した様だ。
「や、やった……」
 コックピットで安堵の息を漏らすタケル。と、ビャッコ側から通信が入る。
『やったね、タケル!』
 モニタに、笑顔でサムズアップをするパティが映った。
「…うんっ」
 タケルも、そのモニタにサムズアップを返す。

      rrrrr…

 ふと電子音が響く。ガンブレッドからのコールだ。
「…こちらタケル」
 タケルが回線をつなぐと、スピーカからルシードの声が響いた。
『タケル君、無事かっ!?』
「ルシード艦長! はい、僕は無事です。でも、ちょっとスザクが…」
『スザクがどうしたッ!!!』
 こんどはダイゴだ。
「ちょっと、アンノーンとの戦闘で手酷くやられちゃって…。あ、でも収穫はありましたよ。2機目のガンダム、見つけましたっ!」
 タケルは顔をほころばせてマイクに向かう。スピーカの向こうでダイゴが興奮したように大声をあげている。
『ま、とにかく』
 ルシードは小さく咳払いすると、口を開いた。
『今ガンブレッドが全速力でそっちに向かってる。帰艦準備をしていてくれ。もちろん、そっちのガンダムのパイロットもな』
「「了解っ」」
 二人は声をあわせて言った。

 To Be Continued…


次回予告(Byパティ)

アンノーンを退け、つかの間の休息を楽しむタケルとパティ。
そこに、突如NY上空に現れる黒いMS。けた違いの戦闘能力に、タケルは最大の窮地を迎える…。
漆黒の翼と真紅の翼。2つの光が空中でぶつかり合う……!
次回、超機動伝説ガンダムSUZAKU。第6章「戦慄の堕天使」
哀しみの涙を爪で拭い去り、少年達は伝説となる……


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