思い出のメロディ Act:1
想い出のメロディ/Act:1

 俺、明日真隼人。18才。現在生粋の大学一年生だ。
 勉強(?)に遊びに、とかく有意義に毎日を送っている。
 今日は久々にきらめき中央公園でデートだ。池のベンチで待ち合わせってことになってる。
 ―――うーん、まだみたいだな。しょーがない、暇つぶしに本でも読んでるかな。

 彼女と出逢ったのは、確か高2の文化祭の頃だった。たまたま聴きに行ったバンドコンテスト。そこで歌っていた、 サッカー部代表バンド。彼女はそのボーカルだった。
 結果は……よく憶えてなかったりして…(確か…『彩』ってとこが優勝したと思うケド…)。
 文化祭が終わり、皆が帰り出す頃、俺はフラリとグラウンドにやってきた。
「あれ……?」
 と、俺は屋外ステージに座り込んでいる少女を見つけた。あ、あのバッテンは…
 俺は、そのコに近付いた。
「くすん…くすん…」
 ―――泣いてる?
「秋穂さん…?」
「えっ?」
「…………」
「…!だっ、誰ですか、あなた!」
「えっ?あ」
「失礼ですよ!人が泣いてるとこ覗くなんて!!」
「あ。ご、ごめん…」
 …確かに失礼だよなァ、我ながら。
「……まァ、しょうがないか。こんなところで泣いてる私も悪いんだし」
 ―――へ?
「ごめんなさい?あなたにあたっても仕方ないのに……」
「いや、そんな。俺のほうこそ、ゴメン」
「ううん。いいんです」
「あ、そうだ。俺、2年A組の明日真隼人。ヨロシクな」
「あ、ゴメンナサイ。自己紹介遅れちゃいましたね。私、みのり。秋穂みのりって言います。よろしく」
 ―――これが彼女、秋穂みのりとの出逢いだった……。

「で、イキナリこんなこと聞いて失礼かもしれないケド、何で泣いてたの?」
「…………」
「あ、別に、言いたくなかったらいいんだ。でもさ、こう言うことって、友達より、他人に話したほうが、すっきりすると 思うよ」
「…………」
 ううっ、気まずい……
「…虹野先輩って知ってます?」 ポツリと、みのりちゃんが話し始めた。
「虹野先輩、私が所属してるサッカー部のマネージャーで、ホント女性の鑑みたいな人なんです。で、その虹野先 輩に好きな人がいて…」
「なるほど、みのりちゃんもその虹野さんと同じ人を好きになっちまったってわけか」
 少しの沈黙のあと、みのりちゃんは小さくうなずいた。
「それで?」
「私、一応は諦めたんです。『彩』の先輩に力を貸してもらって、虹野先輩とその『16番の先輩』の応援する曲を 歌って…」 「そうか、あの曲……」
「それで、もう私、あの先輩のことふっきれたって思ってたんです。…ううん、違う。ふっきれたって、思いこんでた だけなんです。」
「…………」
「文化祭が終わって、そのことに気付いて……やっぱり私、どうしようもないくらい、あの先輩のこと好きなんだな って……」
「……みのりちゃん」
 話しているうちに、またみのりちゃんの目から、大粒の涙が溢れ出してきた。
「ねぇ、明日真先輩。私、どうしたらいいですか?」
「そうだな…って俺ェ!!?」
「当たり前ですよ。ここまで聞いたんだから、何かアドバイス下さいよ」
 いつの間にか、みのりちゃんの目から涙は消え、意地悪な笑みを浮かべていた。
「…しょーがないな。…うーん、そーだな……。……みのりちゃんは、虹野先輩のコト好き?」
「ハイ!大好きですっ」
「…じゃあ、『16番の先輩』のコトは?」
「…………ハイ。好きです…」
「だったら、見守っててあげたらどうかな?」
「え?」
「虹野さんは、その『16番の先輩』が好き。その先輩も、虹野さんのことが好き…そうだよね?」
「……はい」
「そして、みのりちゃんはその二人のことが好き。…だったらさ、その二人に、幸せになってもらったらどうかな?」
「幸せに……?」
「ウン。自分の大好きな人には、幸せになって欲しいだろ?…いや、大好きだからこそ、幸せになって欲しいはず だよ。ね?」
「………」
「もし俺がみのりちゃんの立場だったら、きっとそうしてると思うな」
「…………」
「あっ、ゴメン。勝手な事言って。…なんだかんだ言って、結局はキミの気持ち次第だからね」
「私の…」
「でもねみのりちゃん。これだけは言っておくぜ。諦めるのも、想いを伝えるのも、キミ次第だ。だけど、その選択 から逃げちゃダメだ。常に自分に正直に生きる。それって、スッゴクいい事だと思わない?」
「……先輩」
「……ま、俺から言えるのはこれだけだ。そこからどう行動するかはみのりちゃん次第だからな」
「…………」
「……」
「……先輩ッ!」
 ―――おわっ、ビックリした!
「…な、何?」
「私決めました!…私、二人の事、応援して行きます!」
「へっ?」
「だって私、虹野先輩も、『16番の先輩』も大大大大だーい好きだから。だから、私が好きな二人だから、幸せに なって欲しいから……」
「……みのりちゃん…」
「だから…だから…ね…」
 次第にみのりちゃんの目からまた大粒の涙が…。俺は、ハンカチを取り出して彼女に渡した。
「泣くなよ。…女の子の基本は、笑顔だぜ、え・が・お♪」
「うん……。…ふふっ」
「何?」
「さっきのセリフ、くさかったですね」
「ほっとけ。まわりくどい慰めは、苦手なンだよ」
「うふふ……」
「へへ、やっと笑った。よーし、みのりちゃんの新たな青春に向かって、景気づけだ!」
 俺は、ポケットからハーモニカを取り出した。
「ハーモニカ?」
「結構得意なんだぜ。聞かせてやるよ、励ましとエールを込めてな」
 そう言って俺は、ハーモニカを口に近付けて、深呼吸して、演奏を始めた。
 秋空の下、ハーモニカの音が響き渡り、その旋律が、俺とみのりちゃんを包んでいった………。
 演奏が終わると、みのりちゃんが小さく拍手していた。
「よ、よしてくれよ…こっ恥ずかしいなァ」
「ううん、そんなことないです!スッゴクよかった!!」
「…そっか、そんだけ喜んでもらえると、吹いたかいがあるってもんだな、ハハッ」
「……………」
「ん?どうしたの?」
「ありがとうございます、先輩。私、今までの自分より、少し素直になれたような気がします」
「そんな…俺はただ、みのりちゃんに元気出して欲しかったから…さ」
「ハイ!おかげさまで、元気になれました!!」
「へっへへ、良かったな…」
「………ああっ!」 突然思い出したように、みのりちゃんが叫んだ。
「何?」
「いっけなーい。もうこんな時間!!!」
「あ、ホントだ」
「それじゃ、先輩。私、これで帰りますね」
「あァ……。あ、そうだ」
「何ですか?」
「一つだけ、お願いしてもらえるかな?」
「?」
「俺と話すとき、タメ口きいて欲しいんだ。…なんつーかさ、俺、敬語で話されるの、むずがゆっくてさ」
「ハイ。分かりました!…じゃなかった。うん、分かった!!」
「よし、OK!」
「…ふふ」
「何が可笑しいの?」
「それ、私のほうからお願いしようと思ったの。…だって明日真先輩、“先輩”って言うより、“同学年の友達”みた いだから」
「……それって何か?俺がガキっぽいとでも言いたいのか!?」
「へへへ…。ううん、違う。何て言うか…」
「何て言うか?」
「……うーん、やっぱり、子供っぽいかな?」
「…なんじゃそりゃ………」
「ふふふ。じゃあね、先輩!」
「ああ、またな!」

 それから、あっという間に一年が過ぎた。みのりちゃんは相変わらずだけど(相変わらずって何がだよ…)、俺は
受験生ってのも手伝ってか、そろそろマトモに勉強しよっかな〜…なんて考えてた。
 そんなある日…
「よう、隼人!」
 俺の親友(悪友?)の早乙女好雄が話しかけてきた。
「好雄か、なんか用か?」
「あんだよ、その言いぐさは、まるで用がなかったら話しかけちゃいけねェってのか?」
「誰もそこまで言っとらんって…」
 と、そこまでお約束の漫才みたいなトークを一通りやったところで急に好雄が真顔になった。
「……ところでよ隼人。お前、2年の秋穂みのりちゃんと付き合ってるってウワサ、本当か?」
「ぶっ!…好雄、ンな情報、どっから入った!」
「ん?それがさ、優美のヤツが『最近みのりが虹野先輩じゃなくって、明日真先輩の話ばっかりするんだ』……っ
て」
「……(そーだ。優美ちゃんとみのりちゃん、友達なんだっけ…)」
「んで隼人、実際のところどーなんだよ。俺だけにこっそり教えろよ…」
「…却下。だって、お前に話した時点で学校中に伝わるの目に見えてるし…」
「……つれないヤツだなァ…」
「悪いな。……ま、実際のトコ、マジでみのりちゃんとは何もないけどな」
「へ?そうなのか?」
「あァ。デートみたいな事もしたことないし…」
「あにー!!?」
「…オイオイ、そんなビックリすることか?」
「ビックリもするッつの!女のコと仲良くしてて、デートの一つもしとらんだと!! 一体どーゆー神経しとるんじゃ、おま えわっっ!」
 好雄はムキになってがなりたてる。…俺としては思いっきりいらん世話なんだが…
「……ったく、お前がオクテなのは前々から知っとったが、ここまで来ると、もはや神の領域だぞ!」
 ………そこまで言うかねコイツは……
「…オクテはともかく、ンなこと言われたって、俺は彼女の事、そんなに知ってるわけじゃないしさ…」
「…!ふふふ、そう言うことか、それなら俺に任せろ!」
「ふぇ?」 「えーっと、秋穂、秋穂…っと」
「…あの…好雄?」
「おお!あったあった。耳かっぽじってよおっく聞けよ!!」
「あ、ああ…」
「秋穂みのりちゃん。2年A組。4月16日生まれの牡羊座で、血液型はO型。3サイズは上から78・56・80。
趣味はウィンドウショッピングと編物。サッカー部のマネージャーで…って、そりゃもう知ってるか。電話番号は、××△−△○×△っと。……とまァ、こんなトコだな」
「……話しにゃ聞いてたが、すごい情報量だな」
「まあな♪ 女のコのことなら、俺に任してくれよ!!」
「……ところで好雄。一体そーゆー情報どっから仕入れるんだ?(とくに3サイズとか…)」
「フフフ、そいつぁ企業秘密ってヤツだ!」
「…………」
「おおっと!もうこんな時間だ!俺そろそろ帰るわ」
 ざーとらしくそう言って好雄はクルリと回れ右して歩き出した。
「隼人」 と、好雄が後ろを向いたまま俺に声をかけた。
「おまえがみのりちゃんの事どう想ってるか、そこらへんはよくわかんねーが、一回ぐらいデートしても良いんじゃ ねェの?」
「あ、ああ……」
「んじゃな♪」
 ―――うーん。言いたいことだけ言って帰っちまった…
「デート、かぁ…」
 そーだな…一度くらい、みのりちゃんとデートってのも悪くないな…
 俺は家に帰ると、電話をとって、好雄に教えてもらった番号に電話をかけた。
 ………………
「ハイ、秋穂です」
「あ、あの…明日真って言いますけど……」
「あ、明日真先輩?私、みのりです!…なにか用ですか?」
「あのサ…。こんどの日曜日、開いてるかな?」
「日曜ですか?えーっと…あぁ、開いてますけど?」
「じゃあさ、俺とショッピング街でも行かない?」
「え?先輩と…?」
「ダメ…かな?」
「……いいですよ。ちょうど私もどこか行きたいな〜なんて思ってましたから」
「そう?良かった…」
「でも、どうしたんですか突然?今までこんな風に誘う事無かったのに?」
「ん?ま、まぁ…一度くらいみのりちゃんと遊びに行こうかなって…さ」
 ―――なんかかなり無理のあるよーな…
「ふふふ。ま、いっか。それじゃ先輩、デート、楽しみにしてますね♪」
「う、うん。じゃあ、また」
カチャ
「…ん?」
 ―――デートって言ったよな、みのりちゃん…
「ま、まさかな…深くは考えてないよな……。…多分」
 ―――ま、とにかく、次の日曜が楽しみだな、そう思った。

<想い出のメロディ Act:1・終わり Act:2に続く>


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