爆竜戦隊アバレンジャーDGE Evolution:03

      グォォォォォーーーーーン!

 いかずちと紛う程の声と、地割れでも起きるかのような足音を響かせながら、巨体が少しずつ近づいてくる。

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 剣を握りなおし、その巨体に立ち向かわんとアオイが走り出した。

「って、ちょっ、止めろって!」
「踏み潰されちゃうよぉっ!!」
 二人の制止も聞かず、アオイは巨体へと突っ込んでゆく。
 やがてアオイの目に、“それ”の姿がはっきりと浮かびあがる。

「…!」

 その正体を悟るや、アオイはゆっくりと剣を下ろした。


ブラキオ……。…無事だったのかぁぁぁぁぁっ!!!」




  アバアバアバアバアバレンジャー
  夢へと頑張れ ソルジャー
  アバアバアバアバアバレンジャー
  僕らの正義は ただひとつ   ――ダイノガッツ!!

 もしも僕たちが必要なときは どこへでも読んでくれ
 愛を守るそれだけのために 飛び出そう 元気出して

 すべての力 合わせたときに 見たことも無いエナジー
 この世界変える   ――GA! TAI! TA! TAI!

  アバアバアバアバアバレンジャー
  ひとつになって 明日へ
  アバアバアバアバアバレンジャー
  怖いものなしの向こう見ず   ――ダイノガッツ!!
  爆竜戦隊アバレンジャー 





 爆竜戦隊アバレンジャーDGE 〜Dino Guts Evolution

 Evolution:03『ブルー脱退!?』



 アナザーアース…地球の上空。紫色の雷雲に隠れ、巨大な要塞が浮遊していた。

 その要塞の中枢、操縦席に座っているのは、漆黒の鎧を身に纏った騎士。
 その身体を邪悪な波動が覆い、少しずつ傷ついた鎧を修復していく。

      ガチャ…

 禍々しい仮面を脱ぎ、騎士がその素顔を露にする。
 短髪に形の整った眉。鋭い瞳。そして…アオイと同じく、その頬には“爪”が光っていた。

「くっ…。この俺が、不覚を取るとは…ッ」

 苦虫を噛み潰したように呟く騎士。と、何かを察知し、騎士が視線を変えた。
「?」
 視線の先で空間が歪み、人影を映し出す。赤い装束を身に纏った女性…のようだ。

「……ジャンヌ
 騎士が彼女の名を呼んだ。

『…アナザーアース人のダイノガッツは、予想以上のものね』
 ジャンヌと呼ばれた女性が呟く。
「案ずるな! …この要塞さえ大地に根を下ろせば、あとはお前と…俺の力で!」
 何かに焦るように叫ぶ騎士。ジャンヌはどこか冷めたような視線で騎士を見つめる。
「……。“異端”である私たちにはその成功が全て。“闇黒の使徒”ガイルトンの魂の戦い……見守っているわ」

 そう言い残し、ジャンヌがきびすを返す。それと同時にジャンヌを投影していた映像もかき消え、中枢内は沈黙に包まれた。

     * * *

「そうか…こっちに吹き飛ばされたとき、みんな散り散りに…」

 自らの左腕に装備したブレスを介し、目の前の巨体と会話をするアオイ。
 いつの間にか夜が白み、朝の光がその正体を明らかにしていた。

 アオイのパートナーである、爆竜ブラキオサウルスだ。
『はっ。私のカプセルだけ偶然割れて、後はとにかく夢中で…』
「へぇ〜。意外とシブいんだねぇ〜」
 アオイのブレスから聞えるブラキオの声に、美幸がはしゃぐ。

 ほむらたちはブラキオを見上げ、その圧倒的なデカさに唖然となっている。
「しっかし驚いたな。まさか3匹を癒しに来たなんてよ…」
 昨夜アバレンジャーとなったほむらたちとともに戦った3匹の爆竜は、戦いで負った傷をブラキオの体内の“ハンガー”で癒していた。ブラキオの体は、爆竜たちを「格納」する、言わば一種の母艦なのだ。

「…さ、皆さん。お疲れでしょう。休めるところへ、ご案内いたしますよ」
 ぱんっと手を叩き、カクさんが促した。
「…休めるところ?」
 アオイの問いに、カクさんはにやりと柔らかく笑みを浮かべて言った。

「…そうですね。いまの君達にすれば、“秘密基地”みたいなものでしょうか?」

     * * *

「秘密基地って…ここが?」
 着いた先は、こぢんまりとした店の前だった。
 扉の脇に、おおきく「恐竜や」と書かれた垂れ幕が風になびいている。

「さぁ、どうぞ」
 カクさんに促されて、アオイたちは店の中へと入っていく。
 つん、とスパイシーな香りが鼻腔をくすぐる店内は、ステンドグラスや絵など、いたるところに“恐竜”がいる。

「うわっ、すげぇ! 恐竜の化石のテーブルだぜ!」
 ほむらの声に、一同がそのテーブルに視線を向ける。
「ハハハ…。それはイギリスのアーリーリーバー社が開発した“恐竜家具”ですよ。知り合いからは意外に思われているんですが、私は恐竜が子供の頃から大好きでしてね」
 そう言いながら背広を脱ぎ、オレンジ色の作務衣さむいを身にまとうカクさん。かっちりとした背広姿とは対照的だが、よく似合っている。

「さて…」
「?」

 ふと、カクさんがまじめな顔つきでアオイの方を向いた。
「アオイ君。改めて、詳しい話をしていただけませんか? あなたがなぜこの世界に来たのか、彼女たちにも知っていただかないといけませんしね」

     * * *

「…僕たちが住んでいた“ダイノアース”と、この世界“アナザーアース”は、もともとは同じ、地球というひとつの惑星でした」

 アオイが、ゆっくりと語り出した。

「しかし、今から6千500万年前、地球に巨大な隕石が衝突して次元に裂け目が生じ、まったく別の“時空とき”が発生したのです」

 おもいおもいの表情で、アオイの言葉に耳を傾ける面々。カクさんは、カウンター席の向こうがわの厨房でカレー作りにいそしんでいた。

「そして、この世界ではいなくなった恐竜は、僕たちの世界では死滅せず、人類とともに、発達した知能・感情。そしてより強靭な肉体を持つ、“爆竜”へと進化したんです。

 …ところがその陰で、世界を支配しようと企む奴らが現れた」

「それが夕べ、ティラノたちを操ってたあの黒いヤツだな」
 ほむらの言葉に、アオイは小さくうなづいた。

「…その名を、侵略者集団“エヴォリアン”」

「エヴォリアン……」
 今度は眼鏡の少女…アバレイエローに変身した…が呟くように言った。

「そして今、奴らはその侵略の矛先をこのアナザーアースに定めたんです…!」

 その言葉に、美幸がブルッと体を振るわせる。
「そんなスゴイのが〜? 大変だよぉー!!?」

「……爆竜たちの中でも最強の3匹を奪われた僕は、残された仲間や爆竜たちとともに決戦を挑もうとしました…。しかし、奴らは一歩早くこの世界に侵入してしまった」

「そして闇黒の力で爆竜くんたちを操り暴れさせ…。卑劣なやり方です!」
 カレー皿にご飯をよそりながら、カクさんが憮然と口を開く。

「僕は賭けました。…ダイノガッツを受け継ぐ人々の存在に」
「ダイノ…ガッツ?」
 ほむらが聞き返すと、アオイはゆっくりとうなづき、続けた。

「太古の恐竜のように、強く逞しく生きるための力。…爆竜たちのパートナーとなるためには、必要不可欠なもの。その力によって、はじめてアタック・バンデット・レジスタンススーツの装着が可能となるんです」

 「タック・ンデットスタンス……って、やっぱりアバレだねー。爆竜戦隊アバレンジャーで、大正解だよぉ〜♪」
 自分のネーミングセンスに間違いはなかったことを確証し、浮かれる美幸。ノリよくほむらも合いの手を入れた。
「おうっし、決まり! じゃ、カレー食おうぜ!」
 タイミングよく人数分のカレーがカクさんの手によってカウンター席に置かれた。いそいそとほむらたちが座り、スプーンに包まったナプキンを取り除いていく。

「んじゃ、いっただきま〜…」
「ちょっと待って!」

 不意に上がった声に、一同が硬直する。声のしたほうを見やると、髪を両脇で止めたツインテールの少女…アバレブルー…だった。

「あたし、まだ戦うって言ってない。…それに、バイトあるし。休めない…」

 異物を吐き出すかのように少女がアオイに問い掛けた。
「…それとも、キミが払ってくれるの?」

「って、聞き捨てならねぇな。正義をお金に換算するのかよ!」
 ほむらが声を荒げる。つっかかっていくのを眼鏡っ娘が押さえ、やんわりと諭そうとする。
「そーだよ、正義のヒーローになんだよぉ? お金で買えない物だって、あるはずだよ?」

「そう言う問題じゃない…。ねぇ、払える?あたしが休んだ分のバイト代!」
 再び少女がアオイに詰め寄った。
「それは…。…僕もまだ、この世界にきて日が浅いから…」
「……ないで」
「えっ?」

「その程度の覚悟で、人の時間を縛らないで!!!」

 少女の悲痛な叫びが店内に響いた。と、おもむろに自分の左手首に装着されたダイノブレスをはずす。
『え、あ、あああぁああの、ワタシを一人にしな…』
 トリケラトプスの言葉が終わる前にブレスは解かれ、通信は一方的に途絶えた。

「それじゃあ……」

「じゃあ何で来たんだよ」
 ふと、去ろうとする少女にほむらが声をかけた。
「そのバイトだって途中でおっぽりだして、ここまできたんだろ?」

 しばしの沈黙。…それを破り、少女が口を開く。

「…来ないといつまでも頭の中で呼んでたでしょ。…もう二度とあたしのこと呼ばないでって、あのコに言っておいて」

 そう言ったきり、彼女は店を出ていった。そのあとには、ガラステーブルの上に無造作に置かれたブルーのダイノブレスが、ぽつんと取り残されていた…………。





 To Be Continued…


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