出動7回目『ゲスト参戦!!いざ!ニカイドス島』
前半
「と・・・いうわけでさ・・・ウチのゾイドの主力が使えなくてさ〜、新しいのくれや♪」
湯船から肩まで浸かってカーネルは真正面の相手に言う。
「ほう・・・言いたい事はわかったが・・・ソレが上官に対しての頼み方とでも言うのかね?」
同じく湯船から肩まで浸かったプロイツェン元帥が眉をひくつかせて言う。
ここは、プロイツェン用のプライベートバスルーム。
豪勢な作りに大きな浴場・・・。
ソレとは不釣合いとも言える一人のみが浸かれる様に作られたバスタブ・・・。
だが、その装飾は豪勢で、きらびやかな金色が美しい。
しかし・・・一人用のバスタブに向かい合って入っている男二人・・・。
バブルバスでなければ、湯船の中での光景は見るも耐えないであろう。 そうでなければ、側近の准将が卒倒しないわけが無い。
バスルームの床面には、猿轡噛まされて簀巻きにされた警護の兵士数名と同じように拘束され、何か訴えるような目を向ける側近の准将の姿があった。
何故このような光景になったのかは、説明するまでも無いだろう。
「で・・・さあ、そろそろ新型が4機ほど欲しいんだがなァ・・・。」
そう言いつつ、オッサン腰と腹筋を動かし、「ほーら、ラビアンローズ♪」と湯船に浮かぶ薔薇の花びらを股間に集めていく。
「やめろ!当る!!」
コレ以上ありえないまでの不快な顔をするプロイツェン。
「いや、マジで頼むヨォ・・・中尉のゾイドもオーガノイドシステムの影響でパーツがかなり傷んでヨォ・・・」
そう言いつつ、今度は「ダブルソーダ〜♪」と湯船から逞しい御美脚を突き出しワキワキ♪
コレ以上、何を言っても無駄だと悟って黙り込むプロイツェン。
「ウオディック発進〜♪」と言いながら湯船の中の股間を上下に動かす。 その都度、プロイツェンは手で顔を守る。
「・・・試作機で・・・我慢しろ・・・・」
それは、プロイツェンが折れた証拠。 オッサンニッコリ♪
「ただし、条件がある!特別任務だ・・・ニカイドス島へ行け・・・」
「ニカイドス島?」
─ニカイドス島
現在、帝国と共和国の現在の戦況では最前線。
元々は旧ゼネバス帝国軍の要塞跡にあたる。
最近の調査で旧帝国軍の研究施設と一部の兵器が今だ稼動状態にある事が判明している。
その結果、帝国・共和国共に遺された技術習得の為に部隊を派遣、大規模な戦闘が起きている島である。
現状において、最重要拠点としてされている為、帝国・共和国共々最新の技術を駆使した新型ゾイドが大量に投入されていた。
他にも、帝国・共和国の両国に反抗する謎の戦力や未確認の白いライガータイプの情報もある。
オッサンからして見れば『今、イチバンHOTなスポット』である事には間違い無い。
「そこへ行けってか・・・。」
「海底要塞大隆起〜♪」と言いながらうつ伏せになって湯船から尻を突き出すオッサン。
「そうだ・・・そこで旧帝国軍の研究施設にあるデータを可能な限り入手してこい・・・年甲斐も無く、艶やかな尻だな・・・」
思いっきり皮肉のつもりだったが逆効果。 嬉しそうにこれ見よがしに尻を強調するオッサン。
「マジ!?穴があくほど見てくれ!! ──最前線なんだろ?それ相応のモノなんだろうなぁ?」
「少なくとも、お前のモノよりは立派なゾイドの筈だ・・・。」
オッサン嬉しそうに今度は股間を突き出す。 『コレより立派か!?』といわんばかりに見せつける。
「いや、ゾイドじゃなくてその島ににあるデータの事よ。 俺が出るほどの重要な御使い(任務)なんだろうなぁ?」
プロイツェンは急に真面目な顔をして頷く『最重要国家機密だ』と・・・付け加えた。
「なるほどぉう?・・・で、そんなご大層なモノがあるんだな?」
「詳しくは後で資料を送る、この場では言えん。」
「ほほう、俺宛のラブレターって訳だ。」
頷くプロイツェン。 個人的にはカーネルは嫌いで仕方が無い・・・だが、この男ほどどんな困難な任務をこなせる人間は他にはいない・・・。
人間的には大嫌いだが、兵士としては大きく信頼できる。 そこが、プロイツェンがカーネルを自分の派閥に置いてある証拠である。
「あいよっ!良い湯だった!また一緒に入ろうや!!男同士の肌と肌のコミュニケーション!!」
「じゃっ!手配頼むぜ!」と・・・全裸でバスルームを後にするカーネル。 その足取りは軽い。
「閣下・・・」
「言うなっ!!」
プロイツェンの一喝。
「手配をしておけ、例の試作機を最寄の補給基地へ用意させておけ!!」
そう言って、恥辱が行われたバスルームを後にするプロイツェンだった。
「准将・・・何故閣下はあのような男を使われているのですか!?」
涙を流しながら、訴える兵士。 今までの帝国兵として動いてきた全てを否定されるような気持ちであったに違いない。
「准将!!何故ですかァ!!」
別の兵士も号泣しながら訴える。 規律と忠義を重んじる帝国にあってあのような軍人が存在する事が彼等にとっては何かの間違いであって欲しかった。
「言うな!!私とてあのような輩・・・・!!!」
そこで言葉が詰まる。 自分がどう言おうと、アノ男はプロイツェンの絶対の信頼を受けているのは間違ってはいない。 しかも、プロイツェンの今日までの業績の裏には6割方あの男が裏で関わっている功績がある。
人間としても軍人としても変人の烙印が刺青の様に彫り込まれているのは間違いは無いが、その変人度を目つぶらざる終えなくなるほどの力をもった男なのだ。
「准将・・・我々は一体・・・これからどうすればいいんですかぁ!!?」
「耐えろ・・・何時の日か私達の時代がやってくる!!何時か・・・!!」
・・・多分来ない
「ニカイドス島ですか?」
「うん、ニカイドス島! し・か・も♪特務!!行く!?」
カーネルは『最重要国家機密』と付け加える。 これが新型ゾイド補給の条件だった。
「この指示書の内容にある資料によるとだな・・・旧帝国軍のな、ちょっとしたデータがあるらしいんだわ。 んで、それがとんでもなく凄い物らしくてさ。」
「それで・・・我々に取りに行けと?」
「ソーユー事。 移動手段に関しては本国が手配済み♪ 摂政直属の輸送部隊が御出迎えだ!」
そして「すごいだろ!?」と言うカーネル。 オッサンの顔は100万ドルの笑顔。
部下にしてみれば「また、厄介な仕事を・・・。」と口に出さずとも顔が語っていた。
「でもさぁ・・・なんで辺境部隊の私達がこんな特殊部隊の真似事しなきゃいけないんですか?」
「コレも俺の人徳だな!!」
「人の話聞けよ。」
オッサン聞いてない。
「まぁ・・・命令とあれば行きますが・・・どうするんですか?まともに動けるのは私とオッサンしかいないんですよ?」
前回の戦いにより、疲弊していたのはゾイドだけではなかった。
リューン少尉・・・レッドホーンごと吹っ飛ばされて全治1ヶ月・・・。 愛機レッドホーン大破。
テリア中尉・・・オーガノイドシステム(?)の限界までの使用により、過労で倒れる・・・現在療養中。 愛機ジェノグラップラー小破・・・現在修理中。
・・・と言うわけで、現在実働部隊として動けるのは・・・。
ドイン少尉ただ一人。 ただし、愛機サーベルタイガー・・・修復不可の為、昨日ジャンク屋に売却。 余談・・・カーネル号泣(けど高く売れた)※注:軍の装備を勝手に売るのは重罪です。
「本当・・・乗るもの無いですよ?この間、補給(味方から強奪)したアイアンコングつかってイイです?」
「駄目!アレ高いから!!」
「ちょっとまってください!んじゃ、何に乗れと!?鹵獲した共和国のゾイドにでも乗れと!?」
「だ・か・ら!新型を受領しにいくんだよ!!ホレ♪命令書っ♪」
「また・・・いつもの事(偽造書類)でしょ!!」
呆れ顔の少尉。 でも、丁度半年ぐらいになるのでオッサンのパターンが最近読めてきた。 『慣れ』というものは恐ろしい。
「失礼な!今度はモノホン!!」
「ソーユー事にしておきましょうか・・・。」
半ば、疑いの眼差しの少尉。 その後ブツブツと言いながらも出撃の準備をはじめる少尉だった。
帝国(ウエンディ)仕様のグスタフが荷台を連結させて荒野を進む。
その後ろを、赤いアイアンコングが続く・・・。
「使うなって言っただろ・・・。」
グスタフのシートでぼやくカーネル。 ドインは「嫌ですよ!」・・・と顔で語っている。
「しかもPK型持ってきやがって・・・幾らすると思ってんだ・・・。」
「オッサンぼやかないでよ。護衛機無しでグスタフでこんな所駆けるなんて自殺行為なんだし。」
仲裁に入るウエンディだが・・・。
オッサン無視して「アレ・・・ウチには2機しか無いのに・・・。」と、ぼやく。
確かに・・・ウエンディ用のグスタフには武装は施されているが、自衛用の意味合いが強い。 だから最前線に近いこの近辺で、少しでも強いゾイドをチラつかせていれば威嚇にもなる。
しかもPKタイプのアイアンコングなら、並の敵なら喧嘩は吹っかけては来ない筈である。
「出てきても使うな・・・
「使いますかね!遠慮無く!!」
カーネルが言い終わる前に反論するドイン。 こうなると、どっちが上官かわからない。
そして、嫌がらせのつもりなのかその辺にあった岩に機関砲を放つドイン少尉。
「大尉、コレは・・・『試射』ですよ『試射』♪」
明らかに嫌がらせ。 部下に負けたオッサンちょっと悔し泣き。
「あたしだって、死にたくないんだから。その辺は理解してよネ!!」
整備兵のウエンディにまでも文句を言われるオッサン・・・肩身が狭い・・・。
「いいか!!新型受領したら!!さっさと降りろよ!!」
「ハイハイ、二人ともそこまでね!コレから『例の地区』に入るんだから、警戒忘れないでヨ〜♪」
「オーライ、オーライ!了解しました!!」
ドインの乗ったアイアンコングがグスタフの牽引デッキの上で警戒態勢に入る。
─例の地区
惑星ZIには地球とは違い非常に磁場の乱れが生じやすい地区が数多く存在している。
コレは惑星ZIが鉱物を中心とした惑星である為だ。 また、旧大戦や古代文明の遺跡の影響もあるとされていた。
一つの例をあげるとなれば、後の『ゾイドイヴ』と呼ばれる古代遺跡が存在していた地区もその一種である。
この区域に至っては、電子機器の機能低下をはじめとした、様々な機械的または自然的な影響が強い。
今回はその地区を抜けなければ、目的の補給基地へは辿りつけないのだ。
ウエンディが護衛を必要としたのは、最前線に近いと言う事もあるが、このような地域に至っては野生や野良ゾイドの異常行動。 また、この地区の特性を利用した夜盗に対する為でもあった。
「天気はイイのに磁場が悪い・・・CDが聞けやしねェ・・・折角用意した『男一発ふんどし音頭』が聞けないぜ・・・。」
「もって来ないでよ、そんな物。」
「梅平健は嫌いか?『ウメケンサンバ』で有名な。」
「知るか!!」
そんな二人の乗るグスタフに音声が入る。 無線が使えないので昔ながらの電声管。
アイアンコングの頭からパイプが繋がっている姿は、なんかマヌケ。
「はい、御二人さんすみませんが・・・目測約500M先に共和国のスリーパー発見。あれは『ステルスバイパー』ですねぇ・・・妙な動きしてます。」
「妙な動き?」
「ええ、こちらではなく・・・10時の方向に進行中・・・何か、追いかけてますねェ・・・。」
「よーく目を凝らして見てくれよ、エロ本かもしれない。」
「ステルスバイパーがエロ本を探すかよ・・・。」
「わからねぇぞぉー!この間ロリ好きのライガーがいるって聞いた事があるぞぉ!!」
「わけわかんねェや・・・。」
そう言って、双眼鏡のズームを上げステルスバイパーの進行先を調べるドイン・・・。
「あ・・・発煙筒焚いてる・・・。人だ・・・人ですよ!!」
「あ?人か!?マジ!?こんな所で!?」
カーネルが疑うのは無理は無かった。 この地区は磁気嵐の影響もあり動植物が育ちにくい環境でもあるので人が住むには適さないのだ。
基本的には無人地帯である。
「帝国?それとも共和国の工作員?」
ウエンディの推測はあながち正しい。 このような地区で人が活動する事となると工作員もしくは遺跡等の調査の人間だ。
「もう、一つあるとすれば・・・」
それは、この土地の影響で遭難した旅行者等だ。 可能性はかなり低いが・・・。
何故なら、このような地区で遭難すれば生きていける可能性は限りなく低いからだ。
「とりあえず、助けに行って来い!!民間人だったら軍法会議モノだ!!」
カーネルほどの人間が軍法会議を恐れているとは思えないが、その程度の良識はあるようだ。
「了解!軍人らしく救助に向かいます!」
数秒も経たない間にアイアンコングが飛び出す。
「ひええぇ!!蛇!へび!ヘビ!鉄のヘビ!!『H・E・B・I』ヘビ!!」
「なんで追いかけてくるのよ!!あんた!あいつのしっぽでも踏んだんじゃないの!?」
「知るかよ!とにかく逃げろ!助け呼べ!!」
二人の男女と言うか、少年と少女が荒野を死に物狂いで駆ける。 後ろからは共和国軍の誇るヘビ型ゾイド『ステルスバイパー』が後ろから追撃中。
「うおぉぉぉ!俺達は民間人だぞ!!」
「ヘビにそんな言葉通じるわけ無いでしょ!!」
「だってさ!だってさ!『コクピットっぽいの』あるじゃん!!誰か乗ってるんだよ!!!」
少年の言う事は確かに正論。 しかし、彼は知らなかった・・・『スリーパー(無人機)』目標を補足すると無作為に襲いかかってくる素敵仕様♪
「ひええええええ!!発煙筒っコレが最後ォ!!」
背中のリュックサックから新しい発煙筒を取りだし焚こうとするが、状況が状況だけに『脚よりも行動・行動よりも脚』・・・と言う不釣合いな行動の責めぎあいにより、思考が腕に廻らない。
ソレ以前に発煙筒を焚いた所で、救助が来るかどうかもわからない。
─ッシャァァァァ!!!!
一気に廻りこんだステルスバイパーが正面から襲いかかってくる。
「あ・・・死ぬ・・・。」
少年が確信した。
「あ・・・おばあちゃんが・・・。」
少女の股間から生暖かいのが流れる。良く見れば少年もだった。
この状況で、失禁した事を笑う人間などいない・・・。
この状況を知る人間がいれば・・・での話だが・・・。
「嗚呼、数秒後にはヘビのお腹の中に二人揃って完全格納・・・。」
最も、ゾイドに臓器と言う物が存在すればでの話だが。
少女がそう思った時だった。
「必殺!子安パンチ!!」(※意味不明)
─ドォスゥン!!
少年と少女が気が付いた瞬間には、鋼鉄の拳がヘビの頭を粉砕していた。
「も・・・もびるすーつ?」
「おーい、大丈夫かー!?」
拳の持ち主からの声が聞こえる。
「神だ!!神はいたんだ!!」
少年感激。 その少年をよそに冷静さを取り戻した少女がアイアンコングを見上げる。
彼女は気付いた。 自分達を助けた存在が自分達の良く知る人型の機体とは大きく違っていた事に。
「えっと・・・モビルす・・・ゴリラ?」
そう・・・人型ではなく・・・ゴリラ・・・人に近いけど・・・ゴリラ。
しかも、赤いゴリラが自分達を見下ろしていた。
後半
「で・・・パンチュは乾いたかね?お嬢ちゃん達・・・。」
流石、乾燥地帯・・・すぐに乾く。 アイアンコングの鼻先に少年と少女の下半身の着衣がロープに吊られてなびいていた。
「助けてくださった事には、御礼は言いますが・・・ゴリラの鼻息で乾かすのはちょっと・・・。」
下半身を大きめのタオルで巻いた少女が思いっきり嫌な顔をする。 見れば風でなびいていたのではなく、アイアンコングの鼻息でなびいていたのだ。
「わがままは言うな、アイアンコングPKは性能も良いし鼻息も荒い(?)GOODだ!」
「オッサン、何が『GOOD』なのかさっぱりわからないよ。」
少女とは違い、ピチピチのスポーツブリーフを履いた少年が嫌そうな顔をする。 ちなみにコレはオッサンのブリーフ(新品)である。 カーネルはセクシーさを追求するため、2サイズは小さいのを履くのだ。
その為、少年には丁度良い大きさなのだ。
「で・・・その・・・『宇宙植民地』って所から来たんだね?」
ドイン少尉が二人の話を聞いて反芻する。
「スペースコロニーだよ・・・地球のラグランジュポイントにある宇宙の人工島だよ。お兄さん、知らないの?」
少年が小馬鹿にした様に言う。
「悪いが・・・ココは地球じゃない。『惑星Zi』だ。地球から約八万光年以上離れた惑星だよ。ま・・・確かに地球人は住んでるけどね・・・(かなり混血化はしているけど・・・)」
『え?』
少年と少女の顔が呆気に取られている。 何が言われたのか理解できない。
「え?ず・・・ずぃー?ええ?惑星!?惑星移民って恒星間移民?そ・・・そこまでの宇宙開発は進んでたっけ!?」
どうやら、少年達の知る地球では、そこまで宇宙開発は進んではいないようだ。
「大体・・・『グロバリー3世』がZiを離れたのは何十年も前だぞ。知らないのか?」
ウエンディが呆れた様に話す。 彼女は数少ない純粋な地球人の血族だからだ。
──グローバリー3世
地球からやってきた恒星間移民船。 多くの地球人を乗せて不慮の事故により惑星Ziに不時着。
丁度、中央大陸戦争時の真っ只中に不時着し、2派に解れてそれぞれ『帝国』『共和国』に解れ、惑星Ziの住民達に地球製の高度なテクノロジーを与えた。
今日の両陣営の戦闘用ゾイドの技術はそこが基礎となっている。
ちなみに、中央大陸戦争中期。 一部の地球人と地球に移民を希望したゾイド人、幾つかのゾイドコア・・・そして当時の共和国軍大統領戦用ゴジュラスを手土産に地球へ帰還している。
「た・・・確か、一部のコロニーが外宇宙へ脱出したのは知ってるけど『戻ってきた』なんて聞いた事無いよ・・・。」
「な・・・なんだ、ちゃんと歴史に授業受けてるじゃん・・・。」
でも、顔は半ば放心状態の二人。
「はい、パンツ乾いたわよ〜♪」
器用にアイアンコングが二人のパンツをつまんで差し出す。
「ありがとう・・・ゴリラの鼻息じゃなかったら素直に感謝しているけど・・・。」
少年はちょっと不満気味・・・。
「んで・・・話を反らすようで悪いが、アテはあるのか?」
カーネルはそっけなく言うが、ドインはいたって真剣な顔で・・・。
「オッサン・・・あるわけねーだろ、この子供達の話が事実ならアテも何もあったもんじゃないでしょ!」
「おお!そうだよな!」
気付け。
ドイン少尉は心の底からそう思いました。
「オッサン、とりあえず。彼等は『難民』と言う扱いにして保護すべき対象です。地球人とはいえ立派な民間人です。我々には民間人を保護する義務があります。」
正論
「つまんね!」
異論
「オッサン!何を言ってるのかわかってんのか!!!」
正論
「だってさ、面白くなさそうじゃん!」
異論
「あのさぁ・・・コーユー状況でさァ、普通は『保護してそれなりの施設に移送して彼等が、元の場所へ戻れように手を尽くすのが軍人の仕事』でしょ!」
正論
「話聞けば、お嬢ちゃん達は『ソレっぽい』のに乗ってる仕事してるみたいじゃん。どーせ帰れるアテも無いんだしさ。手に職付けておこうぜ!!」
異論・・・というか無茶。
・・・と言うか独善的思想。
「普通・・・言うかよ・・・本人の目の前で!『帰れるアテが無い』なんて!!」
「だって、そうじゃん!グロバリーは帰っちゃってるんだし!」
確かに、Ziの技術では恒星間移民船の建造は不可能。 不時着したグローバリー3世ですら修復に数十年掛かっている。
それにカーネルは付け加える。
「もしだ・・・仮にグローバリーがあったとしよう、だがよ・・・『お嬢ちゃんたちのいた世界の地球』とは限らないんだぞ。」
「それは・・・どう言う事で?」
ドインが尋ね返す。
「簡単な事よ『グローバリー』がいねぇのに、なんで・・・お嬢ちゃん達みたいな純粋な人間がココにいるんだ?」
「あ・・・つまり・・・どう言う事?」
「よーするに、簡単に言えば『パラレルワールド』よ!パラレルゥ♪パラレルゥ♪魔法のヨォなパラレルなパゥワーでよ!!」
そう言って、オッサン・・・少女のスカートを腰に巻いて尻を振って踊る。
「いやぁ!!やめてよ!もう履けないじゃない!!」
少女大絶叫!
「ゴメン!マジゴメン!悪乗りしすぎたわ!!」
オッサン、この時は真剣に謝る。
「つまり・・・説明してあげるとね。」
カーネルの仮説をウエンディが解りやすく解きほぐし始めた。
─カーネルの仮説と言うと、彼等二人は『カーネル達が知る世界の地球』ではなく『違う世界の地球』からやってきたと推測される。
そうでなければ、純粋な地球人がこの場にいる事が不自然極まりない。 そこでカーネルはこの地区が『特殊な磁場』を持っている事から、恐らくこの地下には古代ゾイド人の技術があると推測した。
それにより、その磁場の影響で空間が歪み、彼等がこの世界に『引きこまれた』と推測したのだ。
古代ゾイド人は、理解不能なテクノロジーを有していた。 強力な磁場で空間を湾曲させたり、ワープトンネルを作ったとしても不思議ではない。
事実、惑星Ziの古代ゾイド人が何の痕跡も無く滅び去ったのは、滅びたのではなく、超技術により遺跡と化した施設の中に人口冬眠をしているという説や、湾曲空間を利用して別の天体へと旅だったと言う説がある。 簡単に言えば『ぶっちゃけありえな〜い事』が起きるのだ。
カーネルの仮説はココから持ってきたものだ。
「・・・と言う事をこの中年は言いたいワケ。おわかり?」
「オッサン、スゲェな随分と博識じゃないか!!」
ドインが珍しく感心。 恐らくドインにとっては、このオッサンがこのような知識がとは思わなかったようだ。 半分オカルトじみているが・・・まあ、テリア中尉よりはいいか・・・。
「お前・・・俺を馬鹿にしてただろ、これでもちゃんとプロイツェンナイツ(以下:PK)に配属される時は士官学校に行ってたんだぞ!」
「・・・忘れてました。オッサンは元PKでしたね。本当、忘れてました。」
直後殴られるドイン少尉。 オッサン・・・少なからず元PKと言う事にプライドはあったみたい。
「御話中・・・申し訳ないんですが・・・本当に私達の今後の身柄は・・・。」
「ちょっとまってろよ。」
カーネル思考中・・・。
「(うーん、どうしようか?)」
オッサン、ふと目を開ける。 じーっと真正面の少女を見つめる(主に下半身中心)
「(イイ脚してるなー、まあ俺ほどじゃないが・・・)」
もう一回目をつぶる・・・。
「(デコスケ(プロイツェン)に教えると・・・面白くなくなるだろうし・・・。)」
カーネルの頭の中にふと、帝国軍の士官の制服が頭に浮かぶ。
そして、オッサン「カッ!」と目を開き・・・。
「決めた。」
そして、「ポンっ」と少女の肩を叩き、真剣に見つめる。
「お嬢ちゃん!ミニスカート履かない!?」
「はぁ!?」
2時間後・・・。
少女と少年を保護した地区からさほど遠くない距離にある、帝国軍の某前線基地・・・。
じいっと目の前の少女を見つめるカーネル。
「ぃよーし!俺の見立てには狂いは無かった!」
「・・・。」
少女は何も言わず、自分の姿を見る。 そこには帝国の女性士官の姿があった。
「どう言う事です?コレ・・・。」
「現地徴用兵!」
言いきったカーネル・・・。 横ではドインが頭を抱える・・・。
「マジかよー!しかもソレって『士官』の制服じゃん!!」
「だってさ・・・ミニスカート履かせて見たくてさ・・・。」
「オッサン、ソレってセクハラよ。」
いつもの事だが、冷ややかな目で見るウエンディ。 ハッきり言ってコレ、オッサンの趣味。
オッサンが言うには、目には目を!古代ゾイド人には古代ゾイド人を!・・・と言う事らしい・・・。
「わかわかんねーよ・・・。」
つまり、カーネルが説明すると。 今更、先程の地点へと戻っても二人を転移させた遺跡や技術を見つけられる可能性は低い。
そこで、カーネルの目的地である『ニカイドス島』にも古代ゾイド人の技術がある!!・・・と言う事らしい・・・。
「オッサン・・・滅茶苦茶独善的ですよ。」
「そうか?」
そこで・・・ニカイドス島で技術を見つける為には戦力は必要・・・。 しかも、今のカーネルの部隊には戦力が無い・・・。
と言う事で、この二人を臨時に編入し、臨時隊員としたのだ。 書類関係に関してはカーネル御得意の『例のアレ(偽造書類)』である。
そして『増員』と言う名目で『余計にゾイドを頂こう』と言う魂胆なのだ。
オッサン、結構セコイ。
「・・・と言うわけで!お前達は本日付をもって俺の指揮下・・・『ガイロス帝国軍第13.5独立中隊』へ配属される事となった!以後、夜呂死苦!!」
とりあえず『寝床と食い扶持はGETだ!』・・・と付け加える。
「そーいや、名前聞いてなかったな・・・自己紹介を頼む。」
そう言って、オッサンは「まずは君だ!」と言った感じで指を指す。
「えーと、リース・ラインです。元の世界では階級は『特務曹長』待遇でしたけど・・・」
するとカーネル、ポケットゴソゴソ・・・。
「コレ付けて。」
そして、差し出した物を見て・・・。
「コレ・・・階級章ですよね?どれくらいの位なんですか?」
「自分の格好見て、解らないか?『少尉』だよ『少尉』」
それを聞いてドイン少尉・・・あんぐり・・・。
「んじゃ、次は坊主。」
指差された少年は、帝国軍でも陸軍の歩兵の制服を着ていた・・・。
「あ・・・アーム・アイル・・・階級は『軍曹』待遇だったけどよ・・・。」
カーネル、真面目な顔をして階級章を差し出す。
「位は?」
「アーム・アイルを一等兵として任官する!『一等兵』だ『一等兵』!」
「あ・・・アーム・アイル一等兵として着任しますって・・・オッサン!!なんで『リースが少尉』で『俺が一等兵』なんだよ!!」
激怒するアームにオッサン逆ギレ。
「うっさい!お前はソレで十分だ!『身分も心情も実力も知らねぇ輩』はソレで十分だ!」
ドイン少尉、頭を抱える。
「リースも『身分も心情も実力も知らねぇ輩』じゃねぇか!!」
アーム反論。
「じゃかぁしい!!美少女は帝国の宝だからOKなんだよ!!」
オッサンの偏見・・・というか趣味。
「男は!?」
「消耗品だ!!」
オッサンが言うも、ココはドインが冷静に言う。
「それを言ったらオッサンもでしょ?」
・・・・
少しの間、沈黙が流れる・・・。
「俺はいいんだよ!!ココの隊長だから何を言ってもいいんだよ!!」
オッサン、慌てて取り繕う。
そして、アームとドインは顔を見合わせ頷き合う。
「やっちゃおうか?アーム一等兵」
「やっちゃいましょう、ドイン少尉」
そして・・・一分後・・・。
「ホンットすいませんでした!」
その場でボコボコにされたドインとアームが半泣きでカーネルに許しを乞う。
「よっしゃ、わかったんなら良し!」
かく言うオッサンも結構ボコボコ。
とりあえず「ウィナー」と言った感じでウエンディがカーネルの腕を掲げる。
カーネルの部隊に臨時で仲間が加わった!!
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