出動四回目  『オッサン捕まる』




 
前編

 
「ゾイドバトルだっ!」
 カーネルのジェノザウラーの砲塔を切り落としたエミー少佐は叫んだ。
 「ご、合意はしてないぞ!」
 オッサン焦る。だが問答無用でライガーは機銃を放つ。
 「貴様が言える台詞かぁ!!」
 今度は二連装ショックカノンが火を吹く。
 「うひゃああ!!」
 カーネルの叫びと同時に機用に片足立ちで半身をそらすジェノザウラー。
 「ちっ!器用なヤツだ!!」
 エミー舌打ちをする。
  ─ジャコン・・・。
 エミーのライガーの脇腹部分のハッチが下がり、そこには鋭利な刃物が光っていた・・・。
 「じゃあ・・・これで・・・・。」
  ─キュイイィィィィィィィィ・・・。
 ライガーのブレード部分が光を帯びていく・・・。
 「その憎らしい身体を真っ二つに・・・してあげるわ!!!!!」
 カーネルの脳裏に・・・「キャー」と叫びながら横一文字に解れるジェノザウラーの姿が浮かぶ・・・。
 ─ガタン・・・・。
 そう考えている間にジェノザウラーの右腕が音を立てて落ちる。
 あらあら、シンキングタイム長すぎオッサンの御茶目さん♪
 カーネルが考えている間に急加速をかけたライガーが右腕を切り落としたのだ。
 「次は、その憎らしいコクピットを貴様の頭ごと横一文字に切り裂いてやる!!」
 「ノー!コクピットダメ!!反則death!!」
 「貴様にだけなら許されるっ!!」
 
─ザンッ!!
 2度目の一閃・・・ジェノザウラーには見た目に問題は無さそうだが・・・。
 ここから先が御約束。
 ─ドォォォォォォン・・・。
 見事、ジェノザウラーの腹部コクピットを中心に綺麗に真っ二つ・・・見事、上半身と下半身が分かれた。
 「やったか?」
 エミー少佐が、カーネルの生死を確認する為、立ったままのジェノザウラーの下半身コクピットを確認しに行く。
 「!!」
 コクピットを確認したエミーは驚きを隠せな無かった・・・。
 コクピットにあったもの・・・それは『ハズレ』と書かれた張り紙だった・・・。
 そして、エミー少佐はそれを見るや否や怒りの形相で・・・。
 「そっちかぁッ!!!」
 ─バシュ!バシュ!バシュ!!
 ライガーのブレードに装備されているショックガンを、一気に地面に転がったジェノザウラーの上半身を集中砲火する。
 「大当たりー!!」
 集中砲火を浴びるジェノザウラーから半泣きとも言えるような絶叫が・・・。
 「今度こそ・・・。」
 今度は上半身のコクピット部分を確認するエミー少佐・・・。
 しかし・・・。
 「何故だ!いないなんて!!」
 エミー少佐は、困惑の顔を隠せなかった・・・。
 カーネルの絶叫が聞こえた筈のコクピットには誰もいなかったのだ!
 あるのは・・・、カーネルの声が聞こえる通信機だけだった・・・。
 「フフフ・・・驚いているようだな・・・この俺が何処にいるか!!」
 カーネルの挑発にに少しあせりを感じるエミー少佐・・・。
 「これだけは教えておくぜ『探し物は以外と身近にあるもの』なんだぜ・・・。」
 「なにおう・・・!」
 エミー少佐が怒りに歯を食いしばる。
 それに合わせたようにライガーも歯を食いしばり始めた。
 その時であった・・・。
 「あっ・・・やめてやめてやめて止めて、オッサン死んじゃう!」
 「ん?・・・まさか・・・。」
 何かに気づいたエミー少佐は、試しにライガーに口を閉めるように指示を与え始めた。
 「ちょちょちょちょちょちょ!!!ちょっとまって!ちょっとまって!!」
 オッサンがいた場所・・・最も確実で見つからない場所・・・それは、ライガーの口の中だった・・・。
 カーネルがライガーの口の中にいることが解ったエミー少佐は・・・。
 「そりゃ、好都合だわ・・・。」
 ─ニタリ・・・。
 エミー少佐が口元を緩ませ、こう言う・・・。
 「このライガーにはね・・・コマンドウルフ同様の『エレクトロファング』を搭載しているのよねェ・・・。」
 ─クイッ・・・。
 そう言うと、エミー少佐はすかさずエレクトロファングのトリガーを引いた・・・。

 「いぅえfぷへもうchるいおgふおwtrhl;wf;vふq;えおふgq;ういお!!!!!」

 言葉にならないカーネルの絶叫がエミー少佐のコクピットの下から素で伝わってくる。
 「その声を何度待ちわびた事か・・・。」
 更に電圧を上げるエミー少佐。

 「えrhpwふおmpfhpwどh、3おる9twh:3りぃ@rhじょ!!!!!!」

 激しすぎる電圧に流石のオッサンも限界のようだ。
 (ちなみに、現在の電圧はゴドス完全に機能停止するぐらいの電圧)
 「貴様を、戦犯として『ぐぅ』の音も出ないほど裁ききってやる!!」
 「戦犯!?俺戦犯!?俺は何もしてねぇぞ!!」
 有無を言わさず、電圧を上げるエミー少佐。
 (ちなみに、現在の電圧はゴジュラスをショートさせるのに十分な電圧)
 「貴様に、発言は余地無い・・・安心しなさい・・・共和国で最高クラス(『つるんでいる』とも言う)の国選弁護人を付けてあげるわ♪」
 そして、電圧を上げるエミー少佐
 (只今、共和国の田舎の集落が1週間は安心して暮らせるほどの電圧)
 「本心ならここで噛み砕いて、ライガーの口紅にしてやりたいけど・・・上層部があんたに合いたがっているからねェ・・・その後は、合法的に完全抹殺(首吊り銃殺電気椅子の刑とも言う)してやるか♪」
 「条約イハーン!条約イハーン!」
 ライガーの口の隙間からオッサン絶叫。
 「国際法ムシー!国際法ムシー!共和国は悪魔ダー!」
 エミー少佐は答える変わりに、ライガーの口を狭めた・・・。
 「前言テッカーイ!共和国は素晴らしいユートピアデース!」
 
 ───ググッ

 ライガーの口が更に狭く・・・。


 
オッサン緊急逮捕♪


 「帰るよ・・・」
 それだけ言って、エミー少佐達はその場から立ち去っていった・・・。

 取り残された、カーネル中隊の一行・・・・。
 「ホラ、帰るよ・・・。」
 そっけない、ウエンディに言葉にドインとリュ−ンは・・・。
 「えー!?た・・・大尉は!?大尉はどうするんですか!?」
 慌てる二人を尻目に、ウエンディは言う・・・。
 「大丈夫、大丈夫、2〜3日もしない間に帰ってくるわ。」
 「あの・・・一応、家出したペットじゃないんですから、救助等の手配はしておいた方が・・・。」
 リュ−ンは言うが・・・。
 「確かに・・・そうしたいけど・・・大尉を助けられる人って・・・いると思う?」
 その一言に、しばしの沈黙が訪れた。

 「そりゃ・・・そうだな・・・。」
 リュ−ンが無理矢理自分を納得させた。
 「そ・・・そうだね・・・。」
 御互いそうやって納得させるしかなかった・・・。
 「むしろ、上層部が救助するなんてあり得ないわけだし・・・。」
 ウエンディのその一言で、みんなが納得した。
 そう納得した時、二人の脳裏には、数日後に戻ってくるであろうカーネルの帰還時の格好に嫌な予感を感じるのだった・・・。





  後半

 「なー降ろしてくれよー、腹減ったー。」
 かなり上等でかなり硬そうな鎖で全身を拘束されたカーネルが、コマンドウルフの口の中でしっかりとホールドされている。
 しかし、そんな状況とはお構いなしにカーネルは廻りの連中に愚痴をたれている。
 廻りにいるのは、警戒十分でバリバリに武装した兵士が10人。
 上からの命令なのか、カーネルの言葉には聞く耳持たないと言った感じであった。
 カーネルが今、拘束を受けている場所・・・それはヘリックシティ首都の中央軍事基地・・・総司令部の格納庫である。
 エミー少佐の提案でカーネルを独房に拘束するのは危険と判断し、いつでも電流が流せてカーネルの逃亡を防げるコマンドウルフの口の中で鎖で雁字搦めにして禁固する事となった。
 「飯ぐらい出せよー、捕虜なんだからさー。」
 しかし、誰もカーネルの言葉を聞こうとしない。
 「寂しいぜー、誰か小話ぐらいしろよー。」
 カーネルがそう言った時であった・・・。
 「あたしが話し相手にでもなりましょうかしら?」
 警戒していた兵士がその声の主に姿勢を正し敬礼した。
 その声の主・・・そう、カーネルを捕獲した張本人エミー少佐だった。
 「丁度良い時に来てくれた!昔のよしみで助けてくれ!こんな所よりも、ベッドのある監房に移してもらえると非常にありがたいんだが。」
 カーネルがそう言うと、エミー少佐は首を横に振った。
 エミー少佐自身、カーネルと言う生き物をよく知っているからだ。
 「少し・・・黙っててくれないかしら?」
 そう言って、エミー少佐は『スッ・・・』と右手を上げて、コマンドウルフに乗っているパイロットに合図を送った。
 「いづfpねる9おぱうぃdjpふぉくぇうrh4pgq!!!」
 コマンドウルフのエレクトロファングが勢い良く放電され、カーネルの声にならない声が響く・・・。
 「いい気味ね、私の受けた屈辱をそっくりそのまま(苦痛で)返してあげるんだから・・・。」
 カーネルの苦しむ様を微笑むエミー少佐に、廻りの兵士は少し動揺を隠せなかった模様だった。
 「しょ・・・少佐・・・いくら『規格外』の捕虜とは言え、やり過ぎでは・・・。」
 近くにいた兵士がエミーの行動に意義を唱えた。
 「貴方達は知らないのよ、カーネルと言う生き物は『人間として見ない事』よ!猛毒と最新兵器を兼ね備えたゾイドなのよ!『この生き物』の戦力はゾイド1個小隊に匹敵するほどの脅威なのよ!」
 怒りの形相で、兵士に檄を飛ばすエミー少佐。
 「し・・・しかし、相手は人間ですよ。廻りの兵も思っていますよ。『ここまで用意しなくても』と・・・。」
 しかし、そんな意見もエミーの一言で打ち消される事となった。
 「そう思う、貴方達の目は節穴ね・・・アイツを良く見てみなさい。」
 そう言って、エミーはカーネルを指差す。
 「グェッホグェッホ!こりゃ・・・当分葉巻はいらねぇな♪」
 オッサン余裕の表情。
 「いい事?奴にはこの程度の放電は蚊が刺した程度だと思いなさい。」
 「い・・・イエッサー!」
 カーネルのタフネスっぷりに警戒心を嫌でも高められた兵士はエミーに敬礼した。
 「拳銃弾じゃ役に立たないわよ、やるのであれば、対大型ゾイド用ライフルか・・・そうね・・・野生ゾイド捕獲用の特殊麻酔弾かトリモチ弾しか効かないと思うわ。」
 エミー少佐は顎に手を当てて考え直す。
 「まって、麻酔弾は・・・昼寝程度の効果か・・・となると、有効手段はトリモチか・・・動物性脂肪入りの筋弛緩剤の弾ね・・・。後は、貴方達が奴を蜂の巣に出来る状況にしておく事ね。」
 その言葉に、カーネルと言う男に対して兵士は冷や汗を流した。
 「おーい、エミー!俺に話があるんじゃねェのかー!?」
 自分と話すと言っておいて放って置かれているカーネルがエミー少佐に文句を飛ばす。
 カーネルの文句が癪に障ったのかエミー少佐が『スッ・・・』と右手を上げて、またも放電の合図を送る。
 「fhぱ9dh、fぷ9うぃおえrhpくぃおえrh@!!!!」
 またも電流を浴びるカーネル。
 「言った筈よ『黙って』と・・・。」
 冷ややかな目でエミー少佐はカーネルに言う。
 流石のカーネルも放電はこりごりと言った感じで、大人しくなった。
 「貴方を捕獲する際に、言ったわよね?『上層部』が貴方に会いたいと・・・。」
 カーネルもその言葉を思い出し話そうと思ったが、話すと放電される事は目に見えていたのでカーネルは黙って話を聞く事にした。
 「これから、この場で私の上司が貴方に質問しに来るわ。貴方は、質問に素直に答える事、もしも・・・余計な口出しをすれば・・・解っているわね?」
 「(多分・・・放電じゃ済まされないだろうな・・・)」
 カーネルはエミー少佐の言葉で全てを悟った・・・。
 「その様子だと解ったみたいね、じゃあ・・・これから尋問を開始します。」


 丁度その頃・・・。 
 「ふー、オッサンがいないと寂しいが・・・色々と気苦労が耐えないからなァ・・・。」
 「まあ、いない間は休暇扱いだからなぁ・・・落ち着けるってもんよ・・・。」
 ドインとリューンは基地の大浴場で肩まで湯船に浸かり、思いっきりリラックスしていた。
 リューンが言ったように、この基地の権限は全てカーネル大尉にある。
 カーネル大尉が捕まった今、通常では中尉であるレイン・テリア中尉が、その権限の代行を務めるべきなのだが・・・。
 本人にリーダーの自覚が無いと言うか、彼女はあくまでも参謀であり全ての権限を継げるほど実力を持っていないのだ。
 故に・・・。
 「ゴメンナサイね。カーネル大尉が捕まると、いつもこうですから・・・流石に私が出切る事は人員に対し準警戒態勢で休暇を取らせるだけですから・・・。」
 と・・・言って、少し困った表情で自分に課せられたデスクワークを華麗にこなすと言った状況だった。
 「そうだよなぁ・・・中尉は中尉でデスクワークが主流だからなぁ・・・。」
 ドインがそう呟くと、リューンも同じく『ウンウン!』と頷く。
 「まあ・・・しばらくは・・・オッサンに振り回される事は無いと言う事だな・・・。」
 湯煙の中、二人は精神的な疲れを癒していた・・・。


 「さて・・・カーネル大尉、私の名前はこの治安維持部隊隊長『シャープ大佐』だ。」
 リフトでカーネルの半径12メートルから放れてシャープ大佐。勿論左右を大型ライフルを構えた兵士が4人が待機していた。
 この半径12メートルと言うのも、カーネルに近づくと危険が及ぶ可能性があると言う事でカーネルの間合いに近づかせない為である。
 「カーネル大尉・・・君は帝国軍のプロイツェン系の派閥だと聞いている。そこで聞きたい事がある・・・首都侵攻作戦について何があったか聞きたい。」
 シャープ大佐が尋問を開始した。
 「プイッ!」
 カーネルが頬を膨らませ顔をそむける。
 本人は御茶目なつもりだろうが、命取りになる事は目に見えていた。すかさず、エミー少佐が右手を上げる。
 「それがどうした♪」
 オッサン電気慣れ。
 エミー少佐、サムズアップ!そのまま、手首を返して『KILL』へと変更。
 ─チャチャチャチャチャチャチャチャッ!!!
 軽快な銃を身構える音がカーネルに向い聞こえる。
 エミー少佐の目は本気だ。
 「素直に、大佐の質問に答えなさい!」
 「解った解った・・・答えてやるよ『政権交代』以上!」
 観念したカーネルが質問に答える。
 「真面目に答えろ!」
 ムッとした表情のエミー少佐がカーネルに激を飛ばす。
 「わーった!わーった!答えますよ!『皇帝が死んで、孫に代わった』んだよ!孫に!!孫の『戦う事は無い』と言う事で『みんなで帰りましょ』ってことだ!わかる!?」
 シャープ大佐ならびに、エミー少佐からの返答は無い・・・。
 代わりに聞こえたのは「構え!」の一言だった。
 「マジ話したじゃねぇか!!責任者呼べ!!責任者!!!良くわからねェが俺は無実だァ!!どいつもコイツも俺を戦犯扱いしやがってェ!!!この、国際法無視軍団がー!!!」
 返答・・・

 「撃て」

 オッサン・・・その瞬間・・・現実回避モード、目に見えぬ幻想を追いかけてます。
 だが、その時であった・・・。

 「ちょっとまったぁ!!」
 格納庫一帯に男性の声が響く・・・。
 「エミー少佐!コレは明かな越権行為だ!!すぐにあの帝国兵士を解放し、国際法に乗っ取った処遇に移していただこう!!」
 その声の主、共和国陸軍『ロブ・ハーマン』大尉。
 大尉と言う階級ではあるものの、共和国軍内部において絶大な影響力を持っている人物である。
 「しかし!ハーマン大尉!奴は帝国軍人です!戦犯です!人の皮を被ったアイアンコングです!!」
 言いたいだけ言うようにエミー少佐はハーマン大尉に反論する。
 「戦犯?それは少佐!貴方の私情でしかない!!むしろ、貴方が戦争犯罪者だ!!」
 びびるエミー少佐。流石に強きで鳴らすエミー少佐もハーマン大尉相手には分が悪かったようだ。
 「なんですって!?私が戦犯だと言うのですか!?」
 ハーマン大尉はエミー少佐に指を刺して言う。
 「当たり前だ!敵国の兵士と言えど、不当に逮捕監禁、あまつさえ拷問じみた尋問!これが犯罪と言わずして何という!!これは明かな国際法違反だ!!」
 「(おのれ!一介の大尉の分際で!私にたてつこうなど!!!)」
 決して口に出しては言えないエミー少佐の心の叫び。
 
 「何事ですか?」

 エミー少佐とハーマン大尉の言い争いの間に女性の声が割って入った。
 その声を聞いた瞬間に、拘束を受けているカーネルと、言い争うエミー少佐とハーマン大尉以外の兵士は全て姿勢を正し敬礼した。
 「るっ!!ルイーズ大統領!!!」
 目の前にいる人物に驚きを隠せないエミー少佐の声が響く。
 エミー少佐達の目の前にいる人物こそ、共和国の大統領『ルイーズ・エレナ・キャムフォード』である。
 「ハーマン大尉、何があったのか説明してください。」
 ルイーズ大統領に尋ねられ、姿勢を正し敬礼したハーマン大尉が事情を説明した。

 「なるほど・・・そう言う事でしたか。」
 ハーマン大尉の説明で事情を理解したルイーズ大統領が頷く。
 「ここにいる、兵士は全て武装を解除し本来の作業に戻りなさい!そして、シャープ大佐とエミー少佐は、今すぐあの帝国軍人を解放し、国際法に乗っ取った処遇に移しなさい!!貴方達には軍事裁判を受けてい貰います!!通達があるまで、禁固刑を受けてもらいます!いいですね!?」
 ルイーズ大統領のその一言で、エミー少佐はぶつけ様の無い怒りを押さえながらカーネルを解放するように部下に指示をした。
 コマンドウルフの口から解放され鎖で繋がれたままのカーネルの元へ、ルイーズ大統領とハーマン大尉は近寄った。
 「大統領!奴に近づくのはダメです!離れてください!!」
 カーネルの脅威を共和国で一番良く知るエミー少佐がルイーズ大統領に警告した。
 「エミー少佐!貴方は黙っていてください!」
 キッ!とした厳しい目つきでエミー少佐に注意するルイーズ大統領。
 「大丈夫ですか?」
 そう言って、ルイーズ大統領がカーネルに話しかけた。
 「ハハハ・・・感謝致します。こんなに素敵な女性に助けられるとは・・・。」
 流石のカーネルも限界だったのであろう、疲労困憊と言った感じだったが女性を口説く台詞は言えたようだった。
 「まあ、御上手ですのね?」
 カーネルの言葉に笑みを浮かべるルイーズ大統領。
 しかし、カーネルはハーマン大尉の顔をチラリを見た後、ルイーズ大統領に言う。
 「もしも、貴方が未婚の女性だったら・・・付き合いたかったですな。良い御子さんを御持ちの様だ。」
 「あらあら、ばれてしまいましたか。」
 笑顔で答えるルイーズ大統領。
 「カーネル大尉、そろそろ貴方を移送させていただきます。」
 警備兵がそう言うと、カーネルは独房へと連行されるのであった。
 カーネルを見届けたルイーズ大統領はハーマン大尉に言う。
 「あのカーネル大尉は、貴方に気を使ったみたいですね。」
 「は?」
 ルイーズ大統領の言葉にハーマン大尉は訳が解らなかった。
 そして、ルイーズ大統領は笑みを浮かべて言う
 「流石に、私の子供の前で口説くのは彼のルールに反するんでしょうね。」





続く