「いや・・・『アレ』は『反則』だ・・・。」
「乗ってる奴も『反則』だ・・・。」
「『株式会社スターズ』の誇る情報網に引っかからなかった『アレ』なんなんだ!?」
第05話『岡山最強のABA!!』
─水島工業地帯
岡山県水島市の瀬戸内海沿岸に作られた工業地域。
製鉄・製造等をはじめとした、中国地方重工業の要ともいえる。
その上、台風や地震・津波などの自然災害が極端に少ない岡山県である。
滅多な事で自然災害による業務影響を受けることが無い。
製造関係の企業にしてみれば、理想的な工業地域なのだ。
その水島工業地帯沿岸部にある『梓製鉄』の沿岸側大型駐車場に陸上自衛隊の野営地があった。
流石に大型怪獣接近警報が発令された為、従業員は一部関係者を残して避難。
数百台以上駐車可能な大型駐車場には、ここに残った関係者の車と業務用の車両を除けば、自衛隊と駆除業者の車両が停まっていた。
「・・・で、何でお前がいるんだ空一?」
自衛隊のテントの中で青筋立てたナルが空一に悪態をついていた。
「そりゃ、民間協力は『スターズ』だけじゃないと言う事だ。」
空一はいたってマイペースに答える。
怪獣・怪物災害では上位に値する『日本』に目をつけた海外の駆除専門企業の進出・・・この世界においては珍しい事ではない。
─『株式会社スターズ』
この会社も、そんな日本での活動を目的とした外資系企業である。
欧米を拠点とする女会長『ユニ・オークロン(52歳)』を筆頭株主とした大型産業グループ『オークロン』の子会社でもある。
主に、怪獣・怪物といった『常識が通用する範疇』の駆除を専門に受け持ち、光学系装備による即効性の高い駆除と信頼性の高いサポートシステムが県からも高い評価を受けている。
但し、駆除成功時の請求額も『ソレ相応にご立派』な事と、妖怪等の常識の通用しない『超常現象』に関しては専門外としている。
一応は受け持つ事もできるが、そのときは霊媒師などの斡旋による委託となる。
尚、主に岡山を中心に西日本に各支部を展開している。
最高責任者は社長『メルガ・スターズ(長男)』で、各支部は彼の親族達で構成されている親族経営である。
ちなみに、東海支部『ガルバ(次男)』九州支部『マグマ(三男)』沖縄支部『ギルガ(四男)』となっている。
そして、何かにつけて空一に因縁をつけてくるこの青年の名は『ナル・スターズ』
そう・・・株式会社スターズの社長メルガの御曹司である。
真ん中分けしたセミロングの黒髪から除かせた『ピンッ!』と鋭く立った犬耳と、スリムな体系で俳優向けのルックス。
しかし、それは『立っていれば』での話で・・・。
『性格が非常に悪い』のがソレを台無しにしている。
まあ、そのせいか弟のスーラに関しては彼の言動が反面教師となった為、とても良い子に育っている。
ナルが空一を目の敵のように因縁つけてくる理由は『特に無い』みたいなのだが・・・しいて言うならば『同業者』である事が気に入らないようだ。
空一からしてみればいい迷惑なもんである。
「ゴホンッ!」
そんなナルの空一に対する悪態言動が飛びまくるテントの中を大きな咳が全てを沈める。
咳の主は今回の作戦指揮を取る陸上自衛隊の中国地方大型怪獣対策室責任者『梶原斎(かじわらいつき)』2等陸佐(45歳)である。
「さて、私語はその程度にして頂こう。」
風格と重みのあるその一言はその空間を沈めるには十分すぎた。
自衛隊に協力する以上、民間企業といえどこの場合は軍属扱いとなる。
そのために、空一達にとっては梶原2等陸佐は上官である為、指示は絶対ともいえる。
「諸君らも知っての通り、現在瀬戸内海経由で水島方面へ向かっているメタルス檜山蟹の撃退が我々の今回の目的である。しかし、民間である君達には自衛隊の専門チームが到着するまでの間の『可能な限りの足止め』もしくは『可能であれば撃退』を依頼するものである。」
そして、テーブルに敷かれた岡山県瀬戸内海水島近辺の地図を指揮棒で指し示しながら説明を始める。
内容に関しては、その日に予め空一が説明を受けていた内容との相違は無かった。
「・・・以上、基本的な内容についてはここまでだ。 さて、今回の配置についてだが・・・『神山防獣』の『空神号』は海戦仕様で海岸線沿いで待機。そして、『スターズ』の『スターダスト』は通常仕様で海上自衛隊の高速艇と連携しメタルス檜山蟹の配置を把握しつつ空神号を空中からの支援を行ってもらう。 現在、こちら自衛隊の『対甲殻類用特殊機動部隊』通称『甲殻機動隊』が急ピッチでこちらへ向かっているが、到着まであと30分前後は掛かる。10分後にコチラへ来ると思われるメタルス檜山が到着するまでの時間稼ぎを貴社達にゆだねる事となる。」
梶原2等陸佐の表情は表情は険しい、本来は守るべき民間人・・・。
しかも、企業委託からの参加者とはいえ、自分の子供と変わらない程の少年達。
これ以上の被害拡大を抑えなければいけないと言う使命感と、広島で檜山蟹を駆除できなかったと言う責任感のせめぎ合いに胸が締め付けられる気分であった。
「いいか、君たちは民間人だ。危険と判断したり、機体に異常が見つかれば即撤退してかまわん!これは命令だ!」
梶原2等陸佐の激が飛ぶとその場に居た人員は大きく『了解!』と返事をした。
檜山蟹、水島港接近10分前の事である。
その頃、神山防獣特殊地下研究所の実験用大型格納庫では・・・。
「えっと・・・お義父様?このコスチュームは一体?」
新子に手渡されていた物・・・『真空謹製・新子用ABAリンクスーツ』であった。
「ん?やこーもんでーでもあるか?(何か問題でもあるか?)」
何気に渡したコスチュームに困惑する新子を不思議そうに見る真空。
新子が困惑するのも無理は無い、その最新鋭のリンクスーツは結構薄く、着用すればまずボディラインがハッキリとわかってしまうような代物だった。
しかし、真空は気にせずに言う。
「ああ、恥ずかしがらんでえーよ(恥ずかしがらないで良いよ)、あくまでもアンダーウエアじゃけん。その上にコクピットに固定してある安全用のプロテクターが守ってくれるけん。コクピットにいる間は恥ずかしゅーねーよ(恥ずかしくないよ)」
「じゃあ、乗り込むまでの間は恥ずかしいんだ・・・。」
新子は内心『セクハラではないか?』と思いながらも更衣室で着替えを始めるのであった。
そんな新子を尻目に真空は大型スクリーンのコンソールを再度いじりながら『ドテキリ!ドテキリ!』・・・と、つぶやいていた。
「『空神号』起動完了、各部異常無し、海戦用防水装備及び気密状態に異常無し!水美通信に異常はないか?」
大型トレーラーこと『神山防獣号』のコンテナから立ち上がったのは神山防獣が誇る神山防獣第12装備中型ABA『空神号』
対怪獣用に開発されており、いかなる環境下でもオプションを装備させる事で適応させる事が可能な万能ロボである。
今回の装備
右腕『特殊甲殻類用大型槍』
左腕『海戦用中距離レールガン』
両肩『6連装誘導特殊炸薬砲(自衛隊からの貸出)』
腰『海戦用フロート』
背面『海中移動用大型水中モーター』
メタルス檜山蟹を相手にするにはいささか貧弱かもしれないが、あくまで足止めが目的。
相手を近づかせない、進ませない・・・と言った時間稼ぎには丁度良い。
まあ、元々水中戦を得意としない空一にゴテゴテとした海戦重装備を上手く使いこなせる技量が少ないと言う現実もあるのだ。
「(慣れない水上・水中戦か、もって15分が限界かもな・・・。)」
内心はそう思うも、メタルス檜山蟹の戦力は普通ではない事がわかっている。
恐らくは5分ともたないだろうが、空一は自分の意識を安定させるには、そう思い込んでおくしかなかった。
『K−1(空神号の通信時の略称)! こちらS−2(スターダストの通信時の略称)!E−3(檜山蟹の通信時の略称)を肉眼で発見!沙美の浜付近の海域を移動中! 沙美付近へ上陸する様子無し予想通り水島港高梁川河口方面へ移動している!』
ナルからの偵察通信が少し厄介そうにやってくる。
「こちらK−1了解した。 直ちに高梁川河口まで移動を開始する。 継続して偵察を願う。」
『S−2了解!E−3の射程ギリギリで偵察してんだ、早いとこ来て喧嘩を吹っかけてくれ。』
「(コイツ、戦闘は俺に全部任せるつもりだな・・・。)」
空一はそう内心そう思いながら返信する。
「E−3が進路変更しそうだったら、そちらが喧嘩を吹っかけておいてくれ。」
『冗談言うな、こちらとら空戦用だ。おいそれと海にいけるかっての。』
「たまには、海水浴も悪くないぜ?ちょいとばっかし冷たいかも知れないがな。」
そんなやり取りをしつつ、フロートを展開した空神号は水島港から飛び出し瀬戸内海へと突っ込むのであった。
『草凪(くさなぎ)隊長、赤穂上空を通過します。』
大空を飛ぶ大型ヘリの中で、草凪と呼ばれた鍛えられた逞しい体格の女性隊員の通信機にパイロットからの連絡が入る。
「了解した、目的地到達地点に到着したら連絡をくれ。」
通信機を切ると草凪は、軽く息を吸い込んで同乗している隊員達に伝達をする。
「お前たち!あと20分もしない間に水島に到着する!最終チェックを怠るな!」
その言葉を聴いた隊員たちは統制の取れた動きでテキパキと自分の持ち場の最終チェックを始める。
その状況を見回る草凪にゴーグルをつけた大柄な男がやってくる。
「桃子(草凪の名前)、ハチコマのメンテナンスに問題は無いねぇぞ。」
「解った、だがな羽藤(はとう)・・・相手は新種の甲殻類だ油断をするな。」
「へっ、解ってるさ。 新たに調整した炸薬が役に立ちそうだぜ。」
長年タッグを組んでいる隊員の羽藤と会話をする草凪がふと目をやると、青ざめた顔で窓を見つめる隊員に気がついた。
「おい!何を見ている!準備は整ったのか!?」
草凪がそういうと、隊員は血の気が引いたような顔で彼女に言う。
「たっ・・・隊長!そ・・・外を!!」
そう言われた草凪は窓の外を見て、言葉を失った。
アブ型怪物『アブドーラ』
全長は1m前後の虫系怪獣である。
しかし、彼女たちが見たのは1匹や2匹ではない目視にて確認できるのは20匹・・・恐らく囲まれているとすればその数は40匹以上はいるだろう。
本来は温厚な怪物ではあるのだが、行動は明らかに攻撃的であり威嚇行動として腹を見せ6本の足を広げてこちらを見つめている。
そう、この大型輸送ヘリは明らかにアブドーラの標的と化していたのだ。
その瞬間、大型輸送ヘリ目掛けてアブドーラが群がり始めたのであった・・・。
「いやはや・・・こりゃデカイわ・・・。」
空一は呆気に取られていた、予めメタルス檜山蟹の大きさは知っていたとは言えメインカメラ越しでみるメタルス檜山蟹は大きかった。
高梁川河口を塞き止めてしまうのではないかといわんばかりの体躯を見た瞬間の感想だった。
7.8mの空神号の3倍以上と思える巨体は刑務所の壁を髣髴させる程であった。
「15分、いや5分に短縮だな・・・。」
空一の脳内で時間稼ぎタイムが一気に短縮された。
「あんだらぁぁぁぁぁぁ!!!!」
映像資料で見たことしかなかった檜山蟹の叫び声がスピーカー越し・・・いや、叫び声の振動が空神号の装甲越しにビリビリと感じれるほどの体感できる。
『おい!K-1早く喧嘩を吹っかけろ!』
ナルからの激が飛ぶ、あんまり嬉しくはないが一瞬だけ呆然としてしまった空一の目を覚まさせるには効果的であった。
そして、空一は操縦桿を改めて握りなおし空神号を檜山蟹の前に移動させる。
「了解、K−1これより攻撃に移る!6連装誘導特殊炸薬砲、右1番及び左2番発射準備!S−2!照準補佐を請う!」
その通信を終えると、空一はサブウエポンパネルのスイッチを入れると、操縦桿に取り付けられた大型火器用のセーフティカバーが解除される。
それと同時に『バシュン!』と言う音と共に両肩に装備された炸薬砲のパネルが開き、左右2門づつの弾頭が顔を出す。
本来ならば、1発づつ使用すべきなのだが今回は海戦と言うバランスが要求される環境である事と想定外の怪獣を相手にするのであれば念を押すつもりも含めてあった。
「こちら、S−2了解した!E−3本体上部に見える眼球と推測される部分をロックした!」
スターダストからの照準データが受信、空神号の照準用ガイドモニターに檜山蟹の眼球がロックオンされる。
「照準データ受信完了、6連装誘導特殊炸薬砲、右1番及び左2番発射!」
空一が、そう叫ぶと大型火器用のスイッチを押す。
─シュバッ!シュバッ!
両肩から白煙を上げ、檜山蟹の甲羅を溶解する特殊な薬品が詰まった砲弾が飛び出す。
白煙をあげ、多少ブレながらも勢い良く檜山蟹の眼球めがけて飛んでゆく。
その気配を察知したのか、それとも野生のカンなのだろうか。
檜山蟹は、その強大なハサミを振り上げ、右腕で1発目を防ぐ。
・・・が、二発動時に発射したのが正解だったのか、2発目は左の眼球へ直撃した。
「あんダラァァァッ!!!」
檜山蟹が叫び声をあげる。
『こちらS−2、見えただろうがE−3の眼球と思われる場所に左2番の着弾を確認!』
スターダストからの通信が入る。
「K−1、こちらも着弾を確認した。」
空一はモニター越しに見える、檜山蟹の左目の一部と右目が薬品の化学反応により甲羅が溶解し白煙をあげているのが見える。
『こちら、S−2効いてるみたいだ、奴の視界を狭めることに成功したんじゃねぇか?』
様子見でスターダストが見えることが出来ないであろう、左側へ接近する。
『こちら、K−2(神山防獣号の略称)のレイセンです。油断しないでください特殊作薬砲の中身は横川マリンガードが使用しているのとほぼ同等です。S−2もE−3が前回の先頭では炸薬砲が通じなかったのはご存知のはずです。』
『S−2!了解って・・・無傷だ!冗談じゃねぇ!!』
スターダストの下部カメラから映し出されたのは、溶解液で泡立ってはいたが目としての機能を失った様子が見えない檜山蟹の姿であった。
「やべぇ・・・決定打が通用しないとなれば、マジでやべぇ!」
冷や汗が流れる、特殊炸薬砲は対甲殻類用装備では屈指の有効打となりえる代物が効かないとなれば現状での装備ではダメージを与えることは皆無。
しかし、作戦は時間稼ぎ。
ここで引いては、今後の県の被害を考えれば持ちこたえねばならないし、企業イメージのダウンにつながりかねない。
空神号は後退しつつ、レールガンを放ち檜山蟹の前進を少しでも遅れさせる為に奮闘する。
多少、距離を稼げば巨大なハサミや魚雷からの攻撃から免れることができる。
しかし、奮闘する空一達を絶望にさせる知らせが舞い込んできた。
『K−1!S−2!こちらK−2!作戦は中止しました!直ちに離脱をしてください!』
水美からの通信だった。
『S−2!どういうこった!?まだ始まって10分もたってねぇぞ!!』
ナルの通信が入ると、水美はあせりながらも答える。
『甲殻機動隊が行動不能に陥りました!だから時間稼ぎもできなくなりました!だから中止なんです!!』
「行動不能!?なんでだよ!?」
空一も通信を入れると、梶原2等陸佐が水美と通信を変わると悔しそうに答える。
『先ほど、甲殻機動隊から通信が入った水島へ向かう途中に赤穂付近でアブドーラの40匹以上の群れの襲撃を受け交戦中との事だ。それ故、作戦参加が不可能となってしまった。すまないが皆には即座に撤退をしてもらいたい!』
『マジかよ・・・。』
ナルの一気に士気が落ち込む・・・が、檜山蟹はそんな状況にはお構い無しと両腕のハサミを振りまわし威嚇し空神号やスターダストへの攻撃を止める事は無かった。
『しかたねぇ・・・空一逃げるぞ!!中止でも報酬は出るんだ!!付き合う必要は無くなった!!』
ナルの言うことは最もだった、自衛隊からの命令で『危険を感じた場合の撤退は許可されている』
それに、今回の作戦の要が参加できないと言う事は『安全の保証が失効』したも同然。
その時点で、その先には『危険』しかないのだ。
「まだだ・・・。」
空一がつぶやくと、空神号は後退するどころか前進を始めて檜山蟹に対する攻撃を続ける。
『馬鹿っ!何やってるんだ!逃げるんだよ!聞こえなかったのか!徹底だ!撤退!!』
ナルの通信が入ってくるが空一は行動を変えることは無かった。
そして空一は言う。
「このまま、奴の進行を許せばこの先の被害は計り知れないんだ!倒すことは出来なくても奴の行動を止めるぐらいなら出来るかもしれないだろ!?俺は最後までやるぜ!!」
そう言うと、空一は空神号の操縦桿を握りなおすと利用できる装備を駆使して檜山蟹の足間接に狙いを定め戦い続ける。
「レイセンさん・・・空兄ぃが、また・・・。」
その通信を聞いた水美は気まずそうに隣にいるレイセンにつぶやく。
「まずいね・・・空一君が熱くなってしまってる。簡単に言うことを聞いてくれそうにないかもな。」
レイセンが苦虫を噛み潰したように表情を険しくしている。
「レイセンさん!俺はやるぜ!空兄を支援にいくぜ!!」
コンテナ内にある陸神騎の装備を完了させた地平がレイセンに言う。
「待ってください!地平君も落ち着いて!アレが普通の檜山蟹じゃないことはわかってるでしょ!?その装備では無理です!!」
レイセンは地平も冷静になるように説得をしている最中の時だった。
─グワキィッ!!
轟音と共に空神号が強靭な檜山蟹のハサミ捕縛されていた!
「うおっ!油断した!!」
檜山蟹の振り回したハサミが大波を起こし、それにより大きくバランスを崩した空神号の胴体をその巨大な右のハサミで掴んだのだ。
ミシミシと轟音を上げ空神号の特殊合金と強化FRPで構成されている装甲が次第にゆがみ、コクピット内には危険を知らせるレッドランプが激しく点灯し、警報音が通信をさえぎるほどに鳴り響く。
『ナル君!』
『言われなくてもわかってる!!』
レイセンの通信と共にスターダストが砲撃体制を取り、照準を定めるが半身が海に浸かっている上、振りまわすハサミには空神号の識別反応のせいで照準が定まらなくなる。
『なんて立派な対空防御しやがるんだ!このクソ蟹めぇ!!!』
空神号もハサミから逃れるために槍を突き立てるが効果が見えない。
その中にいる空一もモニターパネルを見渡しながら脱出のための活路を見出そうとしていた。
「40%の出力低下だと!?まだだ!まだ戦える!!俺は嫌なんだ!!もう無力な自分になるのが!!このまま負けるもんかぁ!!」
『負けさせないんだからぁ!!』
通信に割って入った女の声。
それと共に、轟音を立てて巨大な蟹が空から降ってきたのだった!
─ズブゥゥゥゥゥンンッ!!!
その巨大な蟹は荒波を立てながら着水し、檜山蟹に合い対峙するのであった。
『なっ・・・なんだよありゃ!!なんなんだよ!?』
ナルの驚きの通信が入る。
「あ・・・アレは・・・まさか・・・」
レイセンの顔から血の気が引く。
それと同時に、神山防獣号の通信室にあんまりよろしくない体臭を放つ真空がズカズカと入ってきた。
「おう!レイセン君、間違いねー」
そのまま真空は動きの止まったレイセンの通信機をブン取り笑顔でマイクに向かって言う。
「さあ、新子ちゃん!!あの蟹をひでー目(酷い目)にあわせい!!」
「スターズ製強行型移動ブースター解除完了!着水時に対する異常なし!戦闘用充電池開放開始!」
コクピット内の新子が、最終チェックを終えると大きく深呼吸をすると大きな声で叫ぶ。
『瀬戸内海に!横一文字に走る閃紅!!岡山最強カニバスター!怪獣駆除開始します!!』
続く!
次回予告!
水島港に暴虐の蟹に正義の蟹が立ち向かう!
その勝敗はいかに!
そして、ついに『悪の怪人』が動き出す!!
戦え!ダークナイト!
次回!第06話『瀬戸内海大激突!』
ついにシルバーナイトも登場だ!!