「とりあえず、今までは自分にとっては普通だったと思う日常・・・。」

 「害虫駆除の会社の長男で、あとは皆と同じ。」

 「もうすぐ高校二年生になったとしても今までどおりと思っていた。」

 「あの子に会うまでは・・・。」


 
第02話『変身、アインホッパー!最初の敵はやっぱりクモ!』

 俺の名は『神山空一』普段は高校生で家のアルバイトで駆除業者のメインスタッフをやっている。
 今まで、どんな困難も兄弟やレイセンさん達のようなスタッフのおかげで潜り抜けてきた。
 しかし、俺の目の前に起きている事は・・・その『どんな困難』の中でかなりやばい状況に陥っている。
 怪物駆除をやってて、突然地下に落ちて、洞窟の底でオオオニグモに追い掛け回され、そして今・・・。

  恐らく誰も来ないであろう地下施設で火器などで結構な装備を整えた俺と、ベッド型カプセルの上で裸の女の子が目の前で泣いている。

 もしも、この状況下で人が来ようものなら恐らく俺は性犯罪者とロリコンの烙印を同時に押されてしまう。
 恐らく焼鏝あたりでジュワーッと人目に付くような頬とかに。

 いや、それよりもこの子を沈めなければ。

 「なぁ・・・きみは・・・。」
 「うわあああん!!うあああ!!!」
 「あの・・・泣かないで・・・。」
 「うえええん!!」

 ・・・らちがあかない。
 こちらからのアプローチが全く通用しない。
 このまま、泣き止むのを待つか?

 ─ゴズンッ!!

 「!?」
 俺が入り込んだ鉄製の扉の向こうから鈍い衝撃音が聞こえた。
 
 ─ゴズンッ!!

 また同じ衝撃音が扉の向こうから聞こえてきた。
 恐らく、やつら(オオオニグモ)が覚醒し、俺の・・・いや俺達の居場所を嗅ぎ付けやがった。
 頑丈そうな扉だが、恐らくオオオニグモの数と力なら時間の問題だろう。
 しかし、その前に俺にはやることがある。
 目の前で泣きじゃくるこの子を落ち着かせないと・・・。
 「やってみるか・・・。」
 そうつぶやいて俺は実行した。
 女の子の肩を持ち、そのまま・・・。

 ─ぎゅっ・・・。

 レイセンさん直伝の『沈静化の抱擁』
 はじめて俺がこの技(?)をレイセンさんから受けたときは、使用には抵抗はあったし、第一『恥ずかしい』。
 ・・・がこの際はなりふり構っていられなかった。
 「あっ・・・。」
 効果はあった、女の子はぴたりと泣くのをやめてくれた。
 服越しでも解る、彼女の温もり。
 手袋越しでも解る、彼女の背中の肌の柔らかさ。
 チョッキ越しでも感じられる彼女の心臓の鼓動。
 そして、俺は一呼吸おいて彼女を解放すると語りかけてみた。
 「落ち着いた?」
 「・・・うん。」
 効果はあった、落ち着かせる点では自分自身にも効果はあったようで、さっきよりも冷静になれたような気がしていた。
 そして、裸のままでは(色々と)危険なので俺はチョッキと上着を脱ぐと、彼女に上着を羽織らせてその上からチョッキを着せる。
 かなりブカブカだが、何も着せないより良いし、何よりいつ扉を突き破って出てくるかも解らないオオオニグモからこの子を守らないといけないのは店(ウチ)としても人としても必要な事だ。
 ただし、自分を守るものは上半身はTシャツのみがだ・・・。
 お互いに目を合わせ、俺は質問をする。
 「よし・・・じゃあ聞いてくれ、怪我はないか?」
 「ない・・・。」
 「めまいや吐き気は?」
 「ない・・・。」
 「それなら良かった、名前は?」
 「名前は・・・『新子(にいこ)』」
 「よし!新子ちゃん、お兄さんの言う事を良く聞いてくれよ。今俺達は非常に危険な状況にある。あの扉の向こうで厄介なオオオニグモが多数いる。」
 そういうと、彼女は「うん」と頷く。
 「君は、この施設には詳しいか?」
 彼女は頷かず首を振る。
 「解らないのか?この施設にいたんじゃないのか?」
 彼女はその質問に口を開く。
 「何も・・・知らないの、ここ(カプセル)にずっと入ってた。」
 「ずっと?いつから?」
 その質問にも彼女は首を振る。
 「解らない、でもこの(カプセルの)中で何度も目が覚めたことがあるけど、そのときからずっと誰もいなかった・・・だから・・・。」
 その瞬間にも泣きそうな顔に、俺にはこの子が『ずっと孤独』だった事を認識した。
 酷い話だ、こんなに幼い子を・・・誰もいない上に、無機質でほとんど暗闇といって良いほどの空間に一人きりにさせているなんて。
 本来ならば学校に行き、友達と学び遊んで、将来の夢を思い描きながら一日を過ごしているはずだ。
 嫌になる、こんな事が平然と出来るこの施設を作り、彼女にこんな仕打ちをした人間が・・・。
 「泣くな!こんな所から俺が出してやる!」
 俺は思わず声を大にして言う。
 「え・・・?」
 新子は涙ぐみかけたが、俺の声に反応する。
 「いいか!俺が君をココから連れ出してやる!外の世界を見せてやる!だから、泣くな!」
 「・・・うん!」
 その声に新子は瞳を潤ませながらも笑顔で頷く。
 これで、彼女も落ち着けるだろうし、俺にとっても意識の切り替えにもなったと思う。
 まずは、ココから何か使えるものを探し出して脱出を図らないと・・・。

 ─ゴゴゴッ!!

 轟音が聞こえた先には、強引に引き裂かれかけた鉄の扉と、その奥から見え隠れ怪しく光るオオオニグモの無数の瞳。
 状況から察するに数は多数・・・。
 今、出来る事は一つ!
 「いいかい!伏せていろ!」
 俺は、新子にそう言い聞かせると俺は立ち上がり、そのまま半開きになっている扉に向かい走った。
 そのまま、腰に下げている殺虫弾のピンを抜き半開きのドアの隙間に投げつける。

 ─シュバァァァァ!!

 白煙を上げ、ドアの隙間の向こうから殺虫剤の煙がモクモクと勢い良く吹き上がる。
 その瞬間にオオオニグモは、その場から退避したらしく足音が遠のいてゆく。
 「多少の時間稼ぎにはなるが・・・もう弾がないな、消火弾ではほとんど役に立たんし閃光弾は最後の手段。」
 しかし、ここでぼやいてもしょうがないので、さっさと部屋を探索して脱出への糸口を見つけないと・・・。
 「新子ちゃん、大丈夫か?」
 「うん。」
 「じゃあ、早速で申し訳ないが役に立ちそうなものを探したいんだ手伝ってくれ。」
 そういうと、彼女は「うん」と頷くと部屋の探索を手伝ってくれた。

 探索開始から、5分経過・・・。

 「・・・ない。」
 殺虫弾の噴霧効果が消える時間に近づいたが、何も無かった。
 この部屋には基本的に5つのカプセルしかなかった。
 その上、神山9号に使えそうな部品も見事な接合術で取り外しは現状の工具ではまず不可能だった。
 その場で肩を落とす俺だったが、その後ろで彼女が話しかけてきた。
 「ゴメン、コレしかなかった。」
 申し訳なさそうにそう言う新子から受け取ったもの・・・。
 「ペン・・・か?」
 確かに手に取ったものはペンだったが『明らかに女の子向け』のファンシー文具系のペンだった。
 「なんで、こんな部屋にファンシー文具が・・・所有者の趣味か?」
 だとしても、こんな所では役にはたた・・・。

 ─ガキャ!!

 その時だった、半開きの扉を思いっきり引き裂く音が背後から聞こえる。
 「!!」
 振り向きたくは無かったが、振り向きざるおえない。
 奴ら(オオオニグモ)がゆっくりと侵入しはじめていた。
 迂闊だった、オニグモと違いオオオニグモには殺虫弾は有効打にはならない・・・あくまでも牽制程度であったことを。
 俺は新子の手をとり、自分の背後へと誘導する。
 「オオオニグモが3匹・・・目測で2m弱・・・。」
 巨大なオオオニグモを見て俺は思った。
 「(絶望的だ・・・逃げられない!)」
 しかし・・・彼女を外へ出してやる約束をした手前、声に出しては言えなかった。
 オオオニグモは躊躇いも無く俺達に近づいてくる。
 考えている余裕は無かった。
 俺は腰に下げた閃光弾を手にかけると新子に言い聞かせる。
 「いいか!目を閉じて絶対に俺の手を離すな!俺が君の手を引っ張ったら思いっきり走るぞ!」
 そう言うと、俺はオオオニグモに閃光弾を投げつける。
 
 ─バシュッ!

 その瞬間、辺りは光に包まれたと同時に俺は新子の手を引き走り始めた。
 これで、奴らからの追撃から免れて、この部屋から抜けだして途中で見つけた扉で脱出の糸口を見つける算段だった・・・。

 ・・・が。

 ─ビタンッ!!

 その瞬間、俺は思いっきり壁に叩きつけられていた。
 俺が走り出しす瞬間を見計らっていたかのように、オオオニグモがカウンター気味に勢い良く糸を吐き出したのだ。
 「奴ら・・・糸を!!」
 俺の四肢が壁面に貼り付けられる。
 身動きが取れない!!
 「いやぁぁぁっ!!助けてっ!!」
 室内に新子の絶叫が響く。
 新子は部屋の隅で怯えていた。
 目の前にはオオオニグモが近づいてゆく。
 『オニグモは肉食』
 嫌なフレーズが脳内をよぎる。
 このままでは、あの子は奴らの餌食にされちまう!
 「(俺の力はこんなものだったのか!?装備がないと人一人助けられないのか!?)」
 俺は悔しかった『あの時』も自分の無力さにただただ泣くしかなかった。
 血まみれで身動き一つ取る事の無い祖父の亡骸を目の前にして・・・。
 「(あんな思いはもうたくさんだ!!まだ、あの子との約束を果たさないと!助け出さなければ!!)」

 『起動開始』

 その瞬間に俺の脳内に直接何かが流れ込んでくる。
 「(なんだ!?)」
 そう感じた次の瞬間に俺の感じている時間が制止し、俺の脳内にイメージが一気に流れ込んできた。
 「(あのレリーフのマークは秘密結社アクノス!?奴らは16年前に消えたはずなんじゃ!?)」
 俺の見た光景は妙だった。
 この同じ部屋で『存在しているはずの無い、悪の組織アクノス』に拘束され改造を施されてゆく自分だった。
 「(やめろ!おれは人間だ!改造なんかされてたまるか!!)」
 全身が改造されてゆき、白衣の男達が頭に取り掛かろうと瞬間。
 「(誰だっ!?)」
 白衣の男達が蹴散らされてゆく中、黒い影は俺の名前を呼ぶ。
 「(アインホッパー・・・それが『その世界』での俺の名前なのか!?)

 その時、俺の本来の時間が動き始めた。
 新子に襲い掛からんとするオオオニグモ。
 拘束された自分を改めて認識した。
 だが、この時の俺は確信していた。
 「この程度の怪物に俺はてこずってるのかよ・・・。」
 そんな事を思わず声に出し俺は全身に力を入れる。
 ─メリメリメリッ!!
 さっきまで手も足も出なかったクモ糸を自分が一気に音を立てて引き裂いているの実感する。
 「キキッ!?」
 その異音に気が付いたのか新子に襲い掛かる寸前のオオオニグモ達は一斉にコチラに注目する。
 ─ベリベリベリッ!!
 全身に巻きついた糸を俺は全て振りほどき自由となり身構える。
 「(何故だろう?奴らに勝てるのが目に見えている・・・が今は!)」
 そして、俺は脳内のイメージを伝えるままに腕を広げ、横身に構えると同時にこう叫んだ。
 「変身(チェンジ)!!アインホッパー!!」
 そう叫んだ瞬間腹部からベルトが現れると全身は光りに包まれ俺は姿を変えていた。
 鏡を見なくても脳内に流れ込んできたイメージで解る。
 巨大な瞳を持つバッタ型のヒーロー。
 『あの世界』でのアクノスは『風の悪魔の象徴』として俺を高度な技術で改造したのだが、謎の男が乱入したおかげで俺は脳改造の難を逃れ、ヒーローとして戦う事を決意したんだ。
 「俺の名は!アインホッパー!!」
 そう名乗ると俺は「とうっ!」と叫びながらジャンプ!
 怯える新子を抱え上げ、通路に向かい一気に走り出す。
 「あ・・・貴方は・・・。」
 「喋るな!舌をかむぞ!!」
 何か言いたげだったが、今の俺は彼女を脱出させる事が最優先だった。
 信じられないほどの脚力で走りぬけ、俺は一気に通路を駆け抜ける。
 脳内に流れ込んだイメージが正しければ・・・。
 「ココだっ!!」
 そう言って俺は、目の前の古びた鋼鉄の非常口を蹴飛ばす。
 
 ─ゴシャァッ!!


 時を同じくして轟音がレイセンたちが野営している洞窟の入り口付近に響く。
 「何だ!?」
 地平が山の下方を見渡す。
 すると、そこからモクモクを土煙が上がっていた。
 「地平君!いくぞ!!空一君に違いない!」
 「おう!」
 「あー、私もいきますぅ〜!!」
 洞窟の調査装備をしたままの三人が土煙の方へ駆け出す。
 
 
 「さぁ!出口だ!皆と合流するぞ!」
 そう言ってセンサーのような役割を果たす複眼や触覚を巧みに使い地形を把握すると野営地へと新子を抱えたまま駆け出す。
 

 「レイセンさん!索敵反応あり!猛スピードでこっちに向かってきます!」
 索敵していた水美が叫ぶ。
 その彼らの正面から土煙を上げ何かが迫る。
 「何じゃい!?」
 地平が警戒してスパークショットを身構える。
 そして彼らの目の前でそれは立ち止まった。
 「噂のシルバーナイト・・・ではない?改造人間か・・・。」
 生物学を専門とするレイセンにはそれが噂の存在ではない事が一目で理解できた。
 「レイセンさん、この子をお願いします!俺が奴らを駆除します!!」
 その改造人間がそういうと、抱きかかえていた女の子をレイセンに託す。
 「えっ!?なんで君がそんな姿に!?」
 女の子を託されたレイセンは、その改造人間の声に聞き覚えがあった。
 確認しようと声をかけようとしたが、既に土煙だけを残して姿を消していた。
 「あの・・・すみません、そろそろ降ろしてもらえますか?」
 改造人間からレイセンが抱きかかえていた女の子が話しかけてきた。
 「おっと、ゴメンね。怪我とかはなさそうだけど・・・。」
 レイセンが女の子を降ろすと、彼女の着ていたジャケットに書いていた名前に気がついた。
 「すみません、あの人のお知り合いの方ですか?」
 女の子が尋ねると、レイセンは笑顔で答えた。
 「ああ、知り合い・・・いや、彼ら(地平君達)にとっては大事な家族で私にとっては大切な仲間さ!」
 「家族・・・仲間・・・、あの人の名前は何と言うんですか?」
 女の子は頬を染めながらレイセンに尋ねる。
 「彼の名前は空一君、『神山空一』君だ。」
 「くういち・・・。」
 女の子はそう呟きながら、土煙の向こうを見つめていた。


 「ホッパァーッ!!パァーンチッ!!」
 その頃、空一こと『アインホッパー』は叫び声をあげながら、強靭な筋力に任せたパンチでオオオニグモを殴りつけていた。
 その一撃は、オオオニグモの強固な殻を突き破る。
 そして、間髪入れずに拳を引き抜くと黄色い体液を噴出しながらオオオニグモは絶命する。
 「(力がみなぎる!こいつら程度なら勝てる!)」
 アインホッパーはその力を実感しつつ、非常口から外界へあふれ出るオオオニグモを次々と仕留めてゆく。
 「さあ!かかって来やがれ!非常口(そこ)から出た奴から仕留めてやる!」
 横身に構え、非常口の奥から見える無数のオオオニグモの瞳に向い怒鳴りつける。
 オオオニグモはたいした知能は持ち合わせていない、本能でテリトリーに入り込んだ獲物(アインホッパー)を仕留めに襲いかかって行く。
 糸を吐き出し、アインホッパーの捕縛を試みるが素早いアインホッパーを捉える事は出来ない。
 しかし、ただやられに行くオオオニグモの群れは集団戦法へとシフト。
 捨て身の肉弾戦によるチームと糸による捕縛を行う後方支援チームでアインホッパーに挑んでゆく。
 「こいつら、こんな戦い方を?・・・物量でこの戦法はきついか!?」
 流石の改造人間のアインホッパーでも突っ込むだけの敵には有利だったが、統制が取れ始めた物量戦に毒気づく。
 しかし、ここで臆してしまったら外部へオオオニグモを流出させてしまう可能性がある。
 そして、恐れていた事態は起きた。
 「しまった!」
 4〜5匹のオオオニグモがアインホッパーにしがみつくと、糸で支援していたオオオニグモがしがみついた仲間ごと糸で捕縛しようと糸を吐き出そうとする。
 「こいつら!仲間ごと俺を固めるつもりか!」
 一匹や二匹分の糸なら容易く振りほどけるだろう。
 しかし、目の前のオオオニグモは7匹以上。
 「マズッた!俺としたことがこの力を過信してしまっていたか!」
 自分の油断にアインホッパーは後悔するが、既に時は遅しオオオニグモの糸は発射体勢にあった。
 だが、次に瞬間・・・。

 ─ズドムッ!

 糸を吐き出そうとしたオオオニグモの一匹に大きな風穴が開き、すぐ隣にいたオオオニグモもぐったりと地に伏せた。
 発射音の先にいたのは自分の身の丈ほどある『神山防獣第3装備対怪物用電磁反発式狙撃用リニアライフル』を構えた水美だった。
 「命中♪オオオニグモ2匹駆除〜。」
 水美がそう言うと、彼の背後から陸神騎を装備したレイセンと地平が一気にオオオニグモの群れへと駆けて行く。
 「地平君!僕はこのまま空一君を支援する!後方支援を行っているオオオニグモを一気に仕留めてくれ!」
 「了解!このまま奴らをえれぇ目にあわせちゃるわ!」
 そう言って、地平は速射型リニアガンを打ち込みまくり、後方支援を行っているオオオニグモを次々と粉砕してゆく。
 「空一君!大丈夫かい!?」
 レイセンが陸神騎の懐に装備されている高周波ブレードでしがみついたオオオニグモを切り裂いてゆく。
 「レイセンさん!ありがとうございます!」
 切り裂かれたオオオニグモを振り払うアインホッパー。
 「しかし、その姿はどうしたんだい?」
 「解りません、あの子は?」
 「神山防獣号で保護しておいた、怪我も無かったから大丈夫だ。」
 「ありがとうございます。では・・・さっさとみんなで片付けますか!!」
 「空兄!こっちゃぁ、あらかた片付いてきたぜ!」
 水美の後方支援を受け、地平の方もオオオニグモの群れをあらかた片付けはじめていた。
 「よし!後はあの3匹だけだ!一気にカタをつけるぞ!みんな、下がっててくれ!」
 そう言って、アインホッパーは腰をかがめ、変身したときのように両腕を流れるような動きで横身に構える。
 「はあぁぁぁっ・・・・!」
 アインホッパーの両足が赤く光り始める。
 「とぉうぁっ!!」
 その瞬間、アインホッパーは大きく飛び上がる!
 「ホッパァァァ!メテオォキッーク!!」
 そう叫ぶと、赤い光に包まれたアインホッパーは降下型ドロップキックの姿勢のまま急降下!
 「てぇりゃぁぁぁっ!!」
 真上から隕石が落下するかごとく、劣勢に混乱し密集した3匹のオオオニグモを真上から蹴りつける。

 ─ゴアァァアァァッ!!

 アインホッパーが落下した周囲はクレーター状になり大きく地面がえぐれていた。
 勿論、直撃を受けたオオオニグモは破片一つ残っていない。
 その中央でアインホッパーは「駆・除・完・了!!」とキメポーズを決める。


 「空一・・・か。」
 新子は神山防獣号のシートで膝と抱えてながら呟いていた。
 「(あの人は私を助けてくれて外へ連れ出してくれたいい人・・・空一。)」
 はじめてみる外の世界・・・しかし、その喜びよりも新子の心境は空一の事でいっぱいだった。
 「(でも・・・大丈夫なのかな、あんなに沢山の怪物を相手に・・・。)」
 しかし、そんな新子の心配はスグに吹き飛んだ。
 ガラス越しに手を振りながらこちらに向かってくる。4人組が瞳に映る。
 「あっ!!」
 勿論、その4人組の中には変身を解いた空一もいた。
 その姿を確認すると、新子は神山防獣号から飛び降りると一直線に空一の方へ駆け出してゆく。
 そして、そのまま空一に飛びついた。
 「空一!空一!空一!よかった!よかったぁぁぁ!!」
 空一にしがみつき、そのままうれし泣きをする新子を空一は頭を撫でて答える。
 「もう、大丈夫だ・・・。」
 空一も一安心したようで笑顔で無事を喜んでいた。
 「(そうか・・・正義の味方もこんな気持ちなんだな・・・。)」

 ・・・が。

 「んで、この子は何処で拉致ってきたんだ?空兄?」
 地平の一言で空一の一安心ムードは崩壊した。
 「まぁ〜さぁ〜かぁ〜、空にぃ〜はぁ〜年下好みだったのぉ〜?見たところぉ〜大問題なぁ〜気がぁ〜。」
 それに便乗して水美も突拍子もないことを言い始めた。
 「確かに、いくら空一君の上着を着ているとはいえ裸の女子を・・・ねぇ・・・。」
 レイセンまでもが、誤解をし始めていた。
 「レイセンさんまで!(涙目)」


 続く

 現在の空一に対する周りからのロリコン疑惑度数「10パーセント」