CRW外伝『チェンミンの休日』

(前編)




 このところ激しかったゴルディバス軍団の攻撃も、ここ一週間ほど止まっている。
 敵軍自体がいなくなったわけではないので、平和になったと言う表現はおかしいかもしれないけれど、少なくともこの戦艦・オンディーヌの中は、平和であった。
「んっ・・・」
 私はデッキのオペレート・シートに座りながら、大きく伸びをする。
 敵が来ないのは良いが、そうなると私にはやることが限られてくる。
 空を見て、たまにレーダーを見て、艦長のオヤジギャグの相手をする。たまにちょっと休憩室とかのモニターに切り替えて、みんなの様子を見たりする。
 まあ平たく言うとヒマなのだ。退屈なのだ。
 パイロットの人達は、演習訓練とか、戦闘シミュレーションとか、やることもあるだろうし、近場に年の近いもの同士が一緒にいたりする。
 でもここは違う。数人のスタッフと艦長、たまに見に来るヴィレッタさんくらい。
 ヴィレッタさんはヴィレッタさんで、気軽の話し掛けられる雰囲気の人じゃないし・・・
 なんと言ってもオペレーターの変わりがいない。通常2人で行っているのだが、各自ポジションも違うので役割分担とは行かない。
「ヒマそうだな、チェンミン君」
「ひっ!?」
 ふと後ろから声がかかる。年配の男性の声。私は背伸びに振り上げた手を下すと、後ろを振り向く。
「艦長・・・こうもヒマですと・・・」
 艦長も事あるごとに私に絡んでくる。この人も暇らしい。
「ふむ、たるんどるな、いつ敵が来るかわからんのだ、不測の時代の時、君がいねば即座に対応ができんからなぁ・・・休ませてやりたいのもやまやまだが・・・」
 艦長は申し訳なさそうに言った。
 そういや、前の非番っといつだっただろう・・・こんな若さで肩はこるは、目は霞むは・・
「私が変わりますか?」
 自動ドアの開く音とともに、青い髪の女性が入ってきた。髪が青い上に、制服が水色なので、全身青い印象になる。
「ケイさん」
「訓練表と、身体測定の結果です。あっ、ナカト少尉のは入ってません」
 ケイさんは、手に持っていたバインダーを渡した。
「問題のある人間はいなかったかね?」
 艦長は身体測定の結果表を眺めながら言った。身体検査と健康診断もかねている。
「ええ、私以外には」
『えっ!?』
 ケイさんはさらりと言った。私と艦長は声をそろえて驚きの声を上げた。
「私、宇宙人ですから」
 ケイさんは笑いながら言った。
「りき君とまみちゃんはコロニー育ちなので、地球の人達とは少し違う結果が出ましたが、コロニーの人間のデータでは健康です。ああ、あと、女子の身体測定を覗きに来たリュウセイ少尉が、医務室に運ばれました」
「そうかね、ごくろう」
 ケイさんは優しく微笑む。
 この人を見てると、宇宙人も地球人も変わらないんだなぁと思う。いや、この年に似合わない落ちつきは、精神的にあちらの方が勝っているのかもしれない。
「ケイさん、オペレーター、やった事あるんですか?」
「ええ。私はカイと違って、ちゃんと訓練校からBITに入ったから、一通りはこなせるわ」
 BITとは、対地球外生命体に組織された、地球防衛隊の名称だ。ケイさんはそこに属しているようだ。なるほど、あの制服はBITのものか。
 でも・・・カイって誰?
「ほう、じゃあケイ君、チェンミン君と変わってやってくれんかね? このところロクに休暇もやれんでなあ」
 艦長がすまなさそうな表情で言う。戦闘時は厳しい艦長だが、普段は優しい。というか残してきた娘さんが私と同じくらいらしい。
 同じくらいの年の人はいっぱいいるが、みんなこぞって個性的なので、いまいち地味というか、普通の私に好感を持っていてくれるようだ。
「ええ、かまいませんよ。チェンミン、たまには買い物でも行って来なさい」
 ケイさんがウインクした。
「えっと・・・」
 私はちと戸惑って艦長の顔を見る。
「かまわんさ、今日と明日、特別休暇をとらせる」
「やった!」
 私はガッツポーズを作ると、今から何をするか心を振るわせながら、出口に向かう。
「あぶないから、一人では行動するなよ」
「はーい」
「あ、チェンミン・・・」
 舞いあがっている私に、ケイさんが呼んだ。
 ケイさんは苦笑すると、自分耳に指を持ってくる。
「通信機、置いていってね」
「あっ」
 



 はてさて、突然の休息に驚きつつも、とりあえず買い物に行こうと決めた私は、付き合ってくれる人を探しに行動を開始する。
 オペレーションパネルで見ているから、部屋割りは完璧だ。
 女の子とわいわい楽しくショッピング、荷持つもちに力持ちの男性? それともデート?
人が多いだけに選択肢も多彩だ。
 さてさて、まずは・・・


廊下
 廊下を歩いていると、前からユナさん、ユーリィ、リアさんとエルナーが歩いてくる。3人とも私服のようだ。
「あれ、チェンミンちゃんどうしたの?」
「珍しいね、どうかしたのかい?」
 ブリッジから出ることが少ないので、まあみんなの印象はこんなものだろう。
「ユナさん、誰ですかこの人?」
『おいおい』
 相変わらずの漫才トリオぶりである。光の救世主とかマトリクスとか、色々とよく分からない人達だが、同い年だし、付き合ってもらうのも良いかもしれない。
 ユーリィとは、直接の面識はない。そうそうブリッジにはこないし、来た時も20人くらいにいっぺんに来たので、自己紹介の暇もなかった。そう言う訳で地味な私は、彼女の記憶には残ってなかったようだ。ま、いいけどさ。
「艦長が急にお休みくれたので・・・」
「へえ、いいトコあるんだ、あの艦長」
 リアさんが意外そうにいった。まあリアさんたちが見ている艦長は、戦闘時の時だし、厳しい方のイメージなのだろうな。
「ユナさん達もお出かけですか?」
「うん! 今から劇場版『お嬢さま仮面ポリリーナVS秘密戦隊メタモルV・暁の大決戦!!』を見に行くんだよ〜! 大人気の2大スーパーヒロインが戦うんだよ!」
 ユナさんは目を輝かせる。
 いやそう言うのってVSとかついてても、実際は協力して戦うんだよ? とか言ってもいいのだろうか。
 『お嬢様仮面ポリリーナ』は私の国でもやっていた。視聴率42%の化け物番組である。
「う〜ん、私としてはポリリーナ様を応援したいけど・・・メタモルブルーも捨てがたいのよね〜」
 深刻な顔つきで腕を組んで考えるユナさん。こうなるとすでに私の声は届かないのだろう。
「あー・・・リアさんも見に行くんですか?」
「あはははは、私はほら、自分の演技をね」
 リアさんは汗タラで言った。実際の所はユナさんの護衛だろう。
 みんなポリリーナの正体に気がついてないのはユナさんだけだと思っているようだが、多分ユーリィも分かってないのだと思う。気にしていないだけなのかもしれないが。
「ねえねぇ、チェンミンちゃんも一緒に行かない?」
「あー・・・、私はちょっと。楽しんできてね」
 さすがにこの年になって子供に紛れて特撮ヒーロー映画を見るのはごめんしたい。リアさんも大変だろうが、映画館で子供たちに捕まったりしないだろうか?本人が来ているわけだから、混雑とかしそうである。
 私はユナさん達と分かれて、訓練室の方に向かった。


甲板
 訓練室に向かう途中の廊下は、強化ガラスが張ってあり、甲板方を一望できる。
「ほあたあっ!」
「行くアルゥ!!」
 突如の叫び声が響くと、空中に人影がうつり、ぶつかり合う。
「・・・何?」
 私は何事かとガラスに寄る。
 目を凝らしてみると、ケイさん(ゲッPチーム)と麗美さんが戦っていた。私では目で追うのがやっとぐらいの超スピードで、空中でぶつかり合っては離れる。
「百・烈・拳! ああぁっったたたたたたたたたたたたたたた!!!!!!!」
「ファイブアニマルカンフー!!!」
 どどどどどどどどどどどどど。
 2人の高速拳の打ち合いの音が、ガラス越しにも聞こえてくる、強化ガラスが震える。あっひびが入った。
「五獣拳・・・麒麟、鳳凰、獅子、天馬・・・龍の拳! !!!!」
 麗美さんの背後に、伝説の中国の神々達の姿が映し出されると。ケイさんの拳を凌駕した。
「のわにぃ!!?」
「大連撃!!」
 麗美さんが百烈の拳を押しきると、そのまま懐に入り込み、雄叫びとともに、拳打のラッシュを滑りこませた。
「ぶあああぁぁぁぁぁ!!!」
 ケイさんのみぞおち、アゴ、顔面、肩、太股、二の腕、次々にめり込んで行く乙女の拳撃。
「ア・チョォーーーーー!!!!」
 麗美さんは気合の雄叫びとともにとどめの蹴りを放った。
 麗美さんの倍はあるケイさんの体が、弾き飛ばされ、凄い勢いで甲板にぶつかった。
 凄い勢いだったので、船が損傷するかと心配したが、大丈夫であった。
 よく見ると、佐々木みどりさん(氷のみどり)がファンネルでピンポイントのバリアを張っていたのだ。
 麗美さんが地面に下りると、むくりとケイさんが立ち上がった。
「ふっ、悪くない拳だが、少々軽いな」
 口元の血をぬぐいながら、ケイさんが言った。
 その横でフェイさんが黙って瞑想している。
 どうしてこうデタラメな人が集まるんだろう・・・私は頭が痛くなりそうになったので、先を急ぐことにした。


訓練室
 さて、とりあえず目的の訓練室についた。中にはスポーツジムのような設備から、道場のような練習場まである。
 まず目に入ったのが、筋肉を鍛えるマシン(腕をパカパカするあれ)をやっているゴンザレス隊の方々。
「隊長! どっちが先にへばるか勝負だ!」
 タンクトップ姿のリッキー一等兵がゴンザレス軍曹に向かって言った。
「望む所よ! トーマス! よぉく見とけよ! コイツがズルしねぇよぉになぁ!!」
 ゴンザレス軍層が叫ぶと同時に、二人はすごいスピードでマシンを動かし始めた。
 あああ壊れる・・・
「休暇か」
「ひやぁっ!?」
 ふいに私のすぐ後ろから声がかかる。
 振り向くと、ゴンザレス隊の通信士、ヘルマン上等兵が立っていた。
「あっ・・・はい、急に頂いて」
「そうか。有意義に使え。オペレーターの休息は大事だ」
 ヘルマン上等兵はそれだけ言って、もそもそと腕立て伏せの体制に入る。
 ああそうか、あの人もオペレーターだっけな。あんな無口でよく勤まるものだ。まあ私もおしゃべりな方ではないが。通信で幾度か言葉を交わしたことがある程度だが、同じ職務で好感を持っていてくれたのだろうか? 
「あっ、みんななら、休憩室にいますよ」
 同じくゴンザレス隊のアービン二等兵が声をかけてきた。一休みのようで、タオルで汗をふいている。
 この人、なんだかナカトに雰囲気が似てる。でもだいぶお兄さんか。
「そうですか、ありがとうございます」
 私はぺこりと頭を下げた。この人はまともだなぁ。でも忙しそうか・・・休憩室に言ってみよ。



休憩室
 休憩室。俗に託児所と呼ばれている。理由は子供が多いから。
 中にはバンガイオーチーム、ツインザム兄弟、リュウセイ少尉、ジュンペイ君とポリンちゃん、将輝君がいた。端っこの方で詩織さん(おっとりの詩織)が寝ている。
 弓岡かえでさんとロックの姫さんが、楽譜のようなものを覗いている。
「まみちゃん、今、暇ある?」
 とりあえず一番無難な所を責めてみた。
 彼女、どこか変だが、それは兄やその他の濃い人達とからむとであって、普通にしてれば普通の子だ。年もそう遠くないし。
「あっ、すいません、私と空ちゃん達は待機組なんです」
 と丁寧に言った。
「そっか・・・お休み貰えたから買い物に付き合ってもらおとう思ったんだけど」
「すいません」
 まみちゃんはすまなさそうな表情で謝る。
 そうなると空ちゃんもアウトか。
「何なに? じゃあ俺と行こうよ」
 とリュウセイ少尉。どうやら無事復帰したようだ。
「お前はヴィレッタ隊長と念動力の訓練があるだろうが」
 いつ来たのか、ライ少尉が後ろから現れて言った。
「馬鹿、それが嫌だから逃げようと思ってんじゃねぇか」
「リュウセイ少尉・・・いい度胸ね」
 間髪いれずに、またまたいつ来たのかヴィレッタさんが現れた。SRXチームって凄いなぁ・・・
 リュウセイ少尉はヴィレッタさんにつれて行かれたのでアウト。
 ジュンペイ×ポリンカップルは乳繰り合ってるのでアウト・・・かえでさんも忙しそうだし・・・残るは・・・
 私がちらりと将輝君の方を見ると、不意に目が合った。
「あ、俺はねぇちゃんと約束が・・・」
 だと思いました。



格納庫
 仕方がないので、格納庫にエレカを借りに行く。
「デイクセン2号機の修理、出来ねぇかな?」
「当分は無理ですね・・・パーツが元々不足してるんですよ」
 ライードさんとエミリー(教養のエミリー)さんが何かを見ながら話し合っている。
 最近ライードさんがパイロットだって事忘れそうです。
 少し向こうにセリカさん(ハイスピードセリカ)がゲッP−の変形機能についてみおさんに何か聞いている。
 こうしてみるとエルラインチームって多いなあ。
「あらチェンミンさん?」
 声がかかり振り向くと、エリカさんとマミ・ミキ・アコ・マコ・ルイさんが立っていた。私服だ。
「あっ、お出かけですか?」
「そうよ、香坂財閥のパーティに出席しなければならないの」
「私達も親が香坂グループの系列なので、出席しなければならないんです」
 エリカさんとミキさんが言った。お金持ちのお嬢様も大変だなぁ。
「あれ、じゃあ、みどりさんとセリカさんは?」
「みどりは香坂と同列規模のグループで、セリカはこう言うの嫌いだから」
 エリカさんが苦笑して言った。
 さすがに一緒につれてってくれとは言えなかった。なんか社交界かそう言う世界のようなので。
 レイカさんも同じ用件でいないそうだ。


独房
 よくよく考えたら、一人忘れていた事に気がついたので、独房の方に向かう。
 中は涼しい。独房と言っても快適ではあるようだ。
「ナカト」
「・・・チェンミンか?」
 独房の中から、つかれたような声が聞こえる。しばらくして、牢からナカトが顔を見せる。
「ねぇ、ナカト、艦長からさ、今日だけ出てもいいって許可もらってきたから、買い物に付き合ってよ」
 私は出来るだけ勤めて明るいトーンで言う。
 ナカトは額に皺を寄せると、
「そんなの、別の人といけばいいじゃないか」
と言った。
「みんな忙しいんだって・・・ほら、こんなところにずっといたら、気持ちがダメになっちゃうよ?」
「・・・いいんだ、どうせボクは誰にも必要とされてないんだ。ディクセンがなけりゃ、なんにも出来ないんだ!」
 ナカトがはき捨てるように言った。独房内に声が反響する。
「・・・そんなことないよ、ほら、あの時だって、ナカトが敵を退けたじゃない」
「あれはディクセンの力だ・・・僕の力じゃない」
「どうして、なんでそんな事言うのよ?」
「サイモン少佐が言ったんだ! みんなが必要としているのはディクセンで、ボクじゃない!」
 サイモン少佐が本当にそんな事を言ったかはわからないが、ナカトにはだいぶ効いている様だ。
 独房で一人になるなんてのは、ナカトにとっては一番辛い罰かもしれない。考えすぎるのだ、この子は。
「ナカト・・・」
「もうほっといてくれ!」
「ナカト!」
 私はナカトの顔を両手で掴むと、私の目を見るように力を入れた。
 驚いた表情でナカトが私を見る。
「いいナカト、私は、自分した事を自惚れられないナカトなんて嫌いよ!」
「チェンミン・・・」
「デイクセンだけあったって、ナカトが操縦しないと、きっとダメなんだよ。だからさ、自信を持ちなさい」
 私はナカトの目をまっすぐに見て言った。
「・・・チェンミン・・・ありがとう」
 ナカトが私にお礼を言った。私は急に恥ずかしくなってナカトの顔から手をひく。
「ま、まったく子供なんだから!」
 私はそう言って、背を向ける。
「子供って・・・一つしか変わらないじゃないか、すぐ子供扱いしてさ」
 何かぶつぶつ言っているが、私は無視して独房を出た。



 さて、結局誰もつかまらなかったので、一人で街に来ている。
 いや、本当はアムリッタさんと来たんだけど、あの人、来たそうそうはぐれちゃって・・・軍生活が長いと一般生活に問題が出るようだ。
 さて、あの後、色々と回ってみたのだが、サイモン少尉、バルドさんは、貞操の危機を感じるので除外、ミミーさんも待機任務。
 佳華さんはお茶のお稽古、アレフチーナさんはヴァイオリン、マリさんはお花とお稽古事に余念がない。枕詞は伊達じゃないようだ。
 後の人達は個人的に苦手なので却下させていただきました。
(あー・・・アムリッタさん通信機持ち歩いてたかな)
 通信機を開くと、電波ノイズが入った。どうやら携帯とかの影響を受けるようだ。
 普通戦場じゃあ、携帯電話は使わないからね。
 私はため息をついて頭を上げると、一人の男性と目が合った。
 皮のジャンパーを着こんだ、スキンヘッドのおじさん・・・なんだか見覚えがある気がする。どこであったのかな・・・
 どうやらあちらもこちらと同じよう状況なようで、じっとこっちをみている。
(あ〜誰だっけ・・・知ってるはずなんだけど・・・)
 すると街の上を宣伝用の巨大なバルーンが影を作る。発光していて、緑色なので、緑色の影が出来る。 
 ふいにその影が私を包み、目の前の男性の方に動いていく。
 その男性が緑色に照らされる。
「あー・・・アレクシム!」
 私は大声で叫んでしまった。
 次の瞬間、凄いスピードで動いたアレクシムに捕まえられ、掌で口元を押さえられ、ビルの影につれこまれた。
「ちょっと、何よあんたわ!」
 アレクシムは汗をかきながら叫ぶと、私を放す。
「あなた・・・ゴルディバス軍の人でしょ! 私はTDFの・・・」
「思い出したわよ、オンディーヌのオペレーターね。どっかで見たと思ったのよ」
 アレクシムは鬱陶しそうに言った。あれ、この人、印象が違う・・・なんかオカマ口調だし・・・
「あのね、私は今日は非番なの、休みくらい勘弁してよね!」
 そう言ってアレクシムは私に背を向ける。
「・・・普段は裸じゃないんですね・・・」
 ボソッと言ってみる。
「当たり前でしょ、アレは制服よ! 普段からあんな服着てたら変態じゃないの」
 ・・・・・・・・違ったんだ。
「あんた・・・なんか失礼な事思わなかった?」
 私はぶんぶんと首だけ振る。
「まったく・・・好きで悪役やってる訳じゃないわよ・・・」
 アレクシムはそう言って歩いていく。
 あれれ何もしないんだ。なんかされても困るけど。
 とりあえず私は、面白そうなので後をつけてみることにした。



 後編に続く。