第二十九話 「アヤとドリルと妹と」
「バルトミサイル発射承認。」
潜砂艦改め、潜水艦『ユグドラシル2世』のブリッジで、バルトミサイル・・・正式名称グングニルミサイル。対大型艦攻撃用ミサイル発射承認がおりた。
バルトは「まってました!」という顔を浮かべる。そして嬉しそうに目の前の透明アクリル板に守られた赤く点滅するスイッチに目線をうつす。
「バルトミサイルっ!発射プログラムドラァァァイブッ!!!」
バルトは右手を握り締め、渾身の力でアクリル板を叩き割り、発射ボタンを押した。
「くぅ〜!!一度やってみたかったんだよ!これぇ!」
そう、発射ボタンのアクリル板を叩き割ると言う動作に意味は無い。これはただのバルトの趣味である。
そして、ユグドラシルの甲板から、その対艦ミサイルが発射された・・・・・。目標はキスレブ首都近郊から出撃した超大型爆撃機だ。バルトはキスレブの新たな侵攻兵器と推測し攻撃したのだ。
だが・・・・・その推測は間違っていた。
「いけませんねえ・・・シグルド。若君の教育はもっと徹底させないと。」
墜落する爆撃機の中で、シタンは呟いていた。
「冷静になってる場合か!?脱出だよ!脱出ぅぅぅ〜〜!!」
慌てふためくリュウセイ。
キスレブの爆撃機に乗っていたのは、爆弾戦艦投下阻止の役目を終えたオンディーヌ隊とフェイやエリィ・それにジンやサンタナ達であった。
「落ちてるなこりゃ・・・・・」
サンタナがいやに他人事のように呟く。だがその脚は震えている。はやり怖いのだ。
オンディーヌ隊がキスレブの爆撃機に乗っているのには訳があった。
爆弾戦艦の投下を阻止したはいいものの、予想外の戦闘の激しさにより、帰りの燃料が乏しくなってしまったのだ。
勿論帰れない事も無いのだが、燃料を節約しながらの帰還ではアヴェまで何日もかかってしまうし、敵に遭遇した時のことを考えたら、とてもじゃないが帰還は難しい。
そこで、キスレブ首都が戦闘の混乱に陥っている隙を利用して、開発中の超大型爆撃機を奪取することにしたのだ。
爆弾を積み込む為のカーゴスペースはかなり大きく、オンディーヌ隊のロボットを乗せられるだけの余裕があった。
「もうソラリスには戻れない・・・」
この一言により、エリィはオンディーヌの傘下に加わる事になった。そしてリコも国外脱出を兼ね(ついでにハマーも)、さらに・・・・。
「俺も同行したい。いいか?あんた達と一緒にいたほうが奴の情報を得やすいかもしれない。」
と、ジンも加わる事になった。すると当然、相方のサンタナと整備員のメイシャも加わる事になった。
こうして新たな仲間を(大量に)加え、爆撃機を易々と奪取。アヴェへ向かって出発・・・・・と言う所で。
撃ち落されたのであった・・・・・
海上を、数機のロボットが走っていた。ライのR−2だ。R−2の脚部はホバークラフトになっており、水上での移動が出きるのだ。
さらにバーチャロイド、バルバスバウが二機・・・・水上を滑るように走っていた。
「フェイ君達は、まだ発見できないか・・・・」
修理を終えたホワイトローズのブリッジで、ヴィレッタが呟いた。
撃墜された爆撃機から奇跡的に、全員無傷だったのだ。大海原を漂っている所を、ユグドラシル2世と合流したホワイトローズにメンバー達は救助されたのだ。ただ、フェイとエリィ、ヴェルトールとヴェルエルジュだけが行方不明なのだ。
ヴィレッタは目線を甲板にうつした。甲板では修理を終えたゲッP−XがX−2となって、ツインザム2と一緒に海中に沈んだ爆撃機からロボット達を引き上げていた。
そして引き上げを終えたロボット達は損傷チェックと塩分除去に追われていた。
ヴィレッタはその塩分除去の作業の中に顔を腫らせたバルトの姿を見つけた。
「罰か・・・・」
ヴィレッタは静かに微笑んだ。
救助された、リコとジンはバルトが爆撃機を撃ち落した・・・・と聞くや否や、お互い顔を見合わせ頷いた。そして・・・
ばっこ〜〜〜んっ!!───
リコとジンの強烈なパンチが炸裂した。この行動に、ユグドラシルのクルー(特にシグルド)は、異を唱えなかった。
そしてシグルドは罰として、バルトにサルベージしたロボットの塩分除去を命じた。
「なんで俺が・・・・・」
R−1の翼の上でデッキブラシを動かしていたバルトは呟く。
「おら〜!手ぇ動かせ!あとがつかえてんだぞ!!」
隣のエクスカリバーの塩分除去をしていたゴンザレス軍曹が怒鳴る。
「そいつが終わったら、次はアレだからな!」
ゴンザレスが示した物を見てバルトは絶句した。R−ガーダーだったのだ。全高30mの巨体が塩分を取り除いてくれるのを待っている。
「あ・・・アレかよ・・・・。ったく、持ち主にやらせろよ、こんな事ぉ〜」
その持ち主は・・・・・・
将輝は、恥ずかしかった。顔を真っ赤に染め上げていた。心臓がドキドキと高鳴っている。まるで純情な少年が美女と1夜を共にするような心境であったに違いない。
「♪〜♪〜♪〜」
鼻歌が聞こえる。歌っているのは姉の香田奈だ。香田奈は鼻歌を歌いながら、将輝の背中を流していたのだ。つまり二人がいるのは部屋のバスルームの中だ。
「なんで・・・・一緒に風呂に入らなきゃならないんだ・・・」
聞こえないように呟いた。これは、香田奈が将輝を誘ったのだ。
「心配させた罰。」
と言い、無理矢理引きこまれた。確かに海水で身体はベトベトだったので、風呂には入りたかった。だが、この歳で姉と入浴と言うは・・・さすがに恥ずかしい。しかも将輝・香田奈共に、タオル一枚身につけていないのだ。将輝は異を唱えたくても後を向けない。
「ん。しょうちゃん前。」
香田奈が何気なく言った。将輝はためらう。そりゃ当然だ・・・・
「いいから、こっち向いて。」
首を振る将輝。「自分でやるっ!」と言い張ったが、香田奈は強攻策に出た。
「えい。」
香田奈は将輝が座っている浴室用の椅子を蹴った。だるま落しのようにすっこ抜け、しりもちをつく将輝。
キラッァァ!!──香田奈の目が光った。その隙にボディーシャンプーにまみれた将輝の体を回転させる。
「ふ〜ん・・・結構、成長してるんだ。」
泡立てたスポンジで将輝の胸を洗いながら呟いた。たしかに将輝の胸板は筋骨隆々とまではいかないが、引き締まってきていた。
「ね・・・ねえぢゃ〜ん・・・・やめでよ〜」
顔面を真っ赤にして訴える将輝。
「あら〜。しょうちゃん反応が女の子みたい、可愛い〜♪」
さらに姉の感情を昂揚させるだけであった。そして・・・香田奈の手と目線は、将輝の下腹部へ・・・・
「うう〜・・・」
幼少以来、殆ど見られる事の無い部分を凝視されている。恥ずかしさで、将輝は気を失いそうになる。
「ふん・・・・もうちょっとかな・・・ま、しょうちゃん使ってないもんね。」
そして、将輝の身体は洗い終わった。
「うう・・・なにがもうちょっとだよ!(それに一回は使ったぞ・・・無理矢理な・・・)」←小声
洗い終わった将輝は香田奈に向けて涙混じりに怒鳴る。当の香田奈は平然。
「ん?見たまんまだけど。」
すると将輝は怒った。
「あ〜!!そうかよ!なら姉ちゃんは、それだけ言えるなら、姉ちゃんのはさぞかし立派なんでしょうな!!」
(勝った・・・・。これはなんでも言い返せないだろう・・・)
と、将輝は、勝利を確信した。だが・・・
「見る?」
の一言の後、香田奈は立ちあがり、将輝の前に裸体をさらす。
「しょうちゃんだけに、サービスだからね♪」
と、ウインク一つ。将輝は上から下まで姉の身体を観察した。
「・・・・・・・」
細いようで、引き締まった身体。その上に適度に脂肪が載り、つややかなラインと肌のハリを保っている。巨乳・・・と言うほどではないが形の良いバスト。くびれのあるウエスト。均整の取れたヒップ。すらりと伸びた脚線。そして・・・・
「う・・・・・・」
とても男性経験があるとは思えない程、美しい場所があった。
「負けた・・・・・俺の負けだぁぁぁ!!!」
将輝はがっくりと肩を落した。何か言い知れぬ悔しさがあった。
その後、将輝と香田奈は湯船に浸かっていた。向かい合って入る事を将輝が嫌がったので、香田奈が将輝を背中から抱くような感じで浸かっていた。
将輝は湯と姉の体温を同時に感じ取っていた。
「俺達、これからどうするんだろう・・・・」
「ええとね、フェイ君の捜索が済んだら、日本へ一度戻るみたいよ・・・・」
「そうか・・・。アイツ元気にしてるかな?」
将輝がアイツ・・・・と呼んだ人物に香田奈は心当たりがあった。
「そうね・・・・寂しがってるかもしれないわね。『薙ちゃん』・・・・・。」
その頃、日本。TDF極東基地。元は極東の防衛を一手に任されていた本部基地だったが、ソラリス・ゴルディバスの襲撃により半壊。次いで規模の大きい北京支部に本部機能を移してから、ここは通常の防衛基地になっていた。
だがそれでも日本近郊の防衛の要である事は変わりない。
半壊した施設も雨宮財閥やその他出資者達の協力で施設は70%ほど修復されていた。
その基地の主力兵器であるPT(パーソナルトルーパー)も、通常のゲシュペンストではなく、Rマシンの廉価量産機『アルブレード』に徐々に切り替わっていた。
そして基地のPTハンガーにごく少数だが、アルブレード以外のPTも確認できていた。
その機体は重装甲で太い足に三本の強固そうな指、そして大型の実弾キャノン。そして戦闘機のキャノピーような頭部・・・まさしく二本足の戦車じみた機体があった。
『スヴァンヒルド』・・・・TDFが開発した、時期主力候補PTの4種の内の一つだ。射撃戦を重視し、光学兵器に頼らない実弾兵器のみの、まさに戦車のようなPTだ。
そして、そのスヴァンヒルド達の中央に、同じような機体がもう一機。見かけはスヴァンヒルドに似ているが、肩に二門の砲塔と飛行機のような主翼がある。頭部にもセンサー類が増設されている。
スヴァンヒルドのバージョンアップ型『ラーズグリーズ』だ。この機体はスヴァンヒルド部隊の隊長機として配備されていた。
だがその無骨な機体とは正反対に、パイロットは紫色の長髪が美しい女性だった。
「そこの整備兵。アヤ大尉がどこに行かれたか知らないか?」
女性が近くにいた整備兵に声をかけた。整備兵は姿勢を正して敬礼し、返答する。
「はっ!申し訳ありません。自分は存じません、セレイン少尉!」
セレインと呼ばれた女性は、そうか・・・と答え、その場を去った。
セレイン少尉・・・・本名『セレイン=ネメス』。ヴィレッタやリュウセイがオンディーヌ隊に配属してからの後任士官で、スヴァンヒルド部隊の隊長をしていた。
「オオミヤ博士が呼んでいたんだがな・・・・」
セレインはそう言って、ハンガーの奥を見た。そこには一体のPTがあった。華奢で細身・・・どこか女性を思わせるデザインのPTがそこにはあったのだ。
同時刻・・・・・富士の裾野にある『巽テクノドーム』。言わずと知れた、キカイオーの基地だ。
そして研究所内の研究塔で、キカイオーの修理が進んでいた。
ボロンに敗れた損傷もすっかり回復して、残るは微調整と機動テストを残すまで。
「ふう・・・巽博士。副動力炉の調整は終了しました、これなら副動力だけでキカイオーを起動させられます。」
キカイオーの右足あたりから少女の声が聞こえてきた。
「了解だ。セリカ王女。」
巽博士はマイクに向かって、そう答えた。
セリカ王女・・・・・以前、キカイオーやポリンの魔法などで次元が乱れ、異世界アガルティアからこちらの世界に引きこまれたリーボーフェンのクルーの一人だ。
アガルティア王国の第一王女でありながらメカの天才であり、リーボーフェンに搭載されている人型兵器『聖霊機』の設計・整備を担当しているのだ。
リーボーフェンは、言って見ればイレギュラーな存在であるが故、可能な限り、様々な勢力とは接触しないほうが、混乱が少ないと考え、TDF極東基地にて保護してもらっていたのだ。
セリカは、こちらの世界のロボットに興味を持ち、「宿賃代わり」と言い、整備を手伝う事を条件にキカイオーを見せてもらっていたのだ。そしてすっかりキカイオーに惚れこみ、修理を手伝っていたのだ。
そんな時であった。テクノドームの司令塔に、一人の若者が飛び込んできた。
「ああ・・・やっぱここにもいない・・・あっ!失礼しました!!」
若者は、巽博士が不思議そうな表情をしているのに気付き、慌てて敬礼した。
「どうしたのかね?アークライト少尉。」
アークライト少尉と呼ばれた若者・・・・本名『アークライト=ブルー』。セレインと同じく、リュウセイの後任だ。搭乗機は『アシュクリーフ』。『ソルデファー』と呼ばれる強襲用PTのバージョンアップ機だ。
彼は、キカイオー修理中の間、キカイオーとテクノドームを守る為、テクノドーム防衛の任を受けていた。ドームの外を見てみれば、三機のソルデファーがライフルを持って警戒に当たっている。
アークライトは、ソルデファー部隊の隊長でもあるのだ。
「巽博士。ゼンガー少佐がどこに行ったかご存知ですか?」
「ああ・・・。少佐なら先程、極東基地に向かわれたよ。何か用があるらしい。」
すると、アークは頭を掻いた。
「ったく!参式が見えないからどこに行ったかと思えば・・・任務ほっといて・・・僕・・いや、自分連れ戻してきます!」
そう言って、アークは部屋を出ようとしたとき、スピーカーから声がかけられた。
「あ・・待って、アーク少尉。私もそろそろリーボーフェンに戻るから、送ってって。」
セリカだ。モニターを見れば、キカイオーの右足から伸びているコードから端末を外していた。
「じゃあ曹長。後は任せる、少佐を連れ戻すまで留守を頼むぞ。」
アークはそう言ってアシュクリーフを飛行形態に変形させた。アシュクリーフはPTの中では珍しく、変形機能を備えているのだ。これは大気圏内巡航形態『アシュクリーフAF』だ。
そしてアシュクリーフの上に黄色で両肩に球体のような装備をつけたロボットが飛び乗った。セリカの愛機、試作聖霊機『セルフィン』だ。
「じゃあお願いね♪」
モニターに映るアークに向けてセリカはウインク。
「・・・・行きます。」
アークは照れ隠しに、モニターから目をそむけた。そしてセルフィンを乗せたアシュクリーフは飛び立った。
「キカイオーが日本にあるだと!?」
アレクシムは、報告を受けて驚いていた。ポリンによって戦闘不能の一歩手前まで叩きのめされたキカイオーが健在だと言うのだ。
「間違い無い。例のアガルティアの連中によって日本に運ばれている。」
そう言ったのはフロイライン=Dだ。
「ってことは、リーボーフェンも日本にいやがるんだな!!」
いきなり怒声が響いた。見ればそこにはアガルティアから来た『ゼ=オード』の一人、ライルがサングラスを輝かせて立っていた。
「貴公・・・・まだアガルティアに戻っていなかったのですか?」
フロイライン=Dが呆れたように言う。てっきりアガルティアに戻ったのかと思っていたらしい。
「レイオードの傷が思いの他深くてな。あとベルンストのガイオゾンも・・・」
ようは愛機が壊れて戻れなかっただけの事のようだ。核心に触れられたようで、ライルは思いっきり不機嫌になった。
「傷の恨みを晴らしてやりたいのが本心だ。だが、俺達の本命はリーボーフェンだ。この怒りを奴等にぶつけないと気がすまねぇ!」
八つ当たりじゃないか・・・・・。とアレクシムは言えなかった。自分にもそのような節があるからだ。
「で?どうするのです。日本へ行かれるのですか。言っておきますが、評議会の戦力は回せませんよ。ソラリスとDN社との戦力が減ってしまいます。」
フロイライン=Dは、先に言っておいた。確かにキカイオーを倒す絶好のチャンスだが、自分のテリトリーは宇宙だ。しかもソラリスやDN社とも戦わなければならない為に、よそ者のゼ=オードに戦力は貸せない。黙って、グラスを傾けた。
「なら宇宙悪魔帝国にでも・・・・」
と言い、椅子にかけていたジャークを見た。だがジャークは聞く耳持たず・・・と言った所だ。
「ヒッサーに掛け合っても無駄だぞ。アイツはこの間の戦闘で手持ちのコマを過半数失っている。貴様達に手を貸す余力は無い。」
ジャークはそれだけ言って、新型ビーストのスペック表を眺めながら、ティーカップに口をつける。
アレクシムは思った・・・・(毒盛ってやろうか・・・)と。
「ゴルディバス軍に、奇襲に回せる戦力は無いのか?」
ライルが尋ねる。
「その辺はシャドーレッドが管理している。あいつケチだからな〜、確実性の無い作戦に戦力回さないんだよ。」
と、アレクシムは憎たらしげに呟く。
その頃・・・・
「へっくしょん。」
と、くしゃみをするシャドーレッド。飲んでいた飲み物を思わず吹き出してしまった。
「風邪か・・・・。まあいい」
そう言ってポケットをまさぐり、新たに飲料のパックを取り出し、ストローを加える。
「よし・・・・いけるぞ、豪雷。」
シャドーレッドの目の前には、新品同様の輝きを取り戻した赤い武者ロボットが誇らしげに立っていた。
「こうなったら、ゴルディバス様に戦力を談判・・・・」
「大丈夫なのか?」
不安がるライル。
「相手がキカイオーなら、話は通じると思う。」
「多分、無理でしょうね。」
いきなりアレクシムとライルの間にバグ=ナクが割り込んだ。
「どう言う意味だ。無理だとは。」
不機嫌な顔をナクに向けるアレクシム。
「言葉通りですよ。確かに相手はキカイオーだ。だが、確実にキカイオーを奪取できると言う保証も無い。ソラリスやDN社との抗争が激しい昨今、下手な戦力の浪費は避けたい。」
確かに言う通りだ。だがここでキカイオーを倒せなければ劣勢は目に見えている。
「ようは、浪費しても問題無い戦力があればよろしいのでしょう?」
ナクはにやりと笑って言った。
「あるのか?そんな戦力が。」
ライルが尋ねる。
「あります。少しばかり懐が軽くなりますが、自軍の戦力を浪費するよりは安上がりの筈です。」
数時間後・・・・・とある宇宙コロニーに、三機の機動兵器が辿りついた。
アレクシムのガムダ。ライルのレイオード。そしてバグ=ナクのヒュッケバインEX、通称『レッドバイン』だ。
「ナク監査官、その機体はTDFのPTでは?」
アレクシムが尋ねた。
「ええ・・・最強の矛が完成するまでの繋ぎ・・・・データがありましたので、複製した機体です。いい性能です。」
「そんな事より、このコロニーにその戦力があるのか?」
ライルが怪訝そうに尋ねた。レッドバインの首が静かに頷いた。
「だいたい、このコロニーは、何なのだ?」
「コロニーサイド666。別名『ヘルランド』。ここは、連邦崩壊の大戦において、ドサクサにまぎれて建造された非合法コロニー。その為犯罪者やマフィアの溜まり場と化しているコロニーです。そして・・・我々ゴルディバス軍の下請けでもあります。」
「下請け!?」
アレクシムは驚いた。
「ええ、話してなかったですかね?」
アレクシムは聞いていない。と答えた。バグ=ナクが話すには、ゴルディバスが地球圏に飛来した時、自らを『暗黒大帝デスサタン』を名乗り、真っ先に戦いを挑んできた連中らしい。ゴルディバスの持つ戦力を手に入れるためだ。
だが、あっさり返り討ちにあってしまった事は言うまでも無い。それはそうであろう、たかだか1コロニーごときの戦力でゴルディバスが倒せる筈も無い。
だが、ゴルディバスは彼等を滅ぼそうとはしなかった。彼等の持つ技術力や組織の力を有効活用しようと考えたのだ。
だが、直接配下に加えるほどゴルディバスも甘くない。
彼等は言ってみれば、ゴルディバスと言う親会社にこき使われる子会社のようになってしまったのだ。
ちなみに交渉に当たったのはシャドーレッドで、会社で言えば、子会社を監査する役目を与えられたのだ。そしてその役目は、バグ=ナクに引き継がれた・・・という事である。
「さて・・・戦力の提供を通達しますかな。」
「ケイおねえちゃん、あたしピーマン嫌い〜。」
箸で皿の上のピーマンをつつくポリン。
「好き嫌いしちゃダメよ。ジュンペイ君おかわりは?」
ケイがジュンペイのほうへ向く。
「お前等、俺の家にいつくなっ!!」
ジュンペイ達が日本に帰ってきてから、ケイとポリンはずっとジュンペイの家に居候していたのだ。まあケイは家事全般に長け、今まで男二人で暮らしていたジュンペイの家は、結構綺麗になった。
「ったく・・・なんでウチに寝泊りするかね・・・」
ブツブツとぼやくジュンペイ。
「あら〜ポリンはジュンペイ君の護衛役なのよ〜。つかず離れず一緒にいなきゃ〜。」
ベタベタとジュンペイになれつくポリン。
「そして私は、貴方達のお目付け役ってとこ?」
ケイは笑顔で答えた。
「まあいいけどよ〜。この二人はそう言う事情なら・・・・けど!」
ジュンペイは別の方へ向いた。
「こいつ等なんなんだ。」
ジュンペイが向いた先には、リーボーフェンのクルーである、トウヤ・カスミ・アイがいたのだ。
「いや、あたし達、日本食に飢えてたから〜。硬い事言わない言わない。あ〜畳の部屋ってやっぱいいよね〜。」
屈託の無い笑顔で話すアイ。
「お前達もそうなのか?」
ジュンペイはトウヤの方へ向いた。トウヤは黙って味噌汁をすすっていた。ジュンペイは理解した。こいつも同じか・・・と。
「トウヤちゃん、おかわりは?」
エプロンをつけたカスミが言う。だがトウヤが答えるより早く茶碗を突き出した者がいた。
「カスミ君。おかわり。」
歳は三十歳ぐらいだろうか・・・・がっしりとした体格に強い意志を感じさせる顔。まさに武人というのに相応しい男だ。
「はい。ゼンガー少佐。」
カスミは茶碗を受け取り、山盛りご飯をゼンガーに返した。
「よく食うな・・・・このオッサン。四杯目だぜ。」
もくもくをご飯を掻き込むこの男。本名『ゼンガー=ゾンボルト』、TDF少佐で、ヴィレッタの後任のPT部隊隊長でもある。そして、その愛機は・・・・・
リーンリーン───ジュンペイの家の電話機が鳴った。ジュンペイが立ち上がるより早くケイがぱたぱたとスリッパを鳴らして電話機へ向かった。その様子はどこから見ても主婦そのものの動きだ。
「はい。轟ですが・・・・はい・・・はい・・・ああそうですか、解りました・・・はい、ごめくださいませ。」
チンッ。電話機を置いたケイがゼンガーに呼びかけた。
「あの、ゼンガー少佐。お食事中申し訳ないんですけど。」
「なにかね?」
「お隣の山中さんの駐車場に止めてある・・・・『グルンガスト参式』をどうにかしてほしいんですって。洗濯物が乾かないそうなんです。」
「なにぃぃぃぃっ!!!!」
その言葉を聞いたジュンペイは慌てて、隣の山中さんの駐車場が見える窓を開いた。するとそこには・・・・・
「・・・・参・・・・式・・・・」
ジュンペイは見た。山中さんの経営する駐車場に身長50mはあろうかという巨大なロボットが、仁王立ちしていたのだ。これぞ、ゼンガーの愛機にして、SRXを除けばTDF最強のPT『グルンガスト参式』であった。
「ごめんなさい。ごめんなさい・・・・」
本来ゼンガーが謝るべき事を、同席していたTDFの女性士官が謝っていた。
「いや・・・アヤさんに謝られても・・・」
とジュンペイ。
この女性士官は、本名『アヤ=コバヤシ』。階級は大尉で、リュウセイやライ達SRXチームのリーダーで、SRXの指揮権を有されている女性だ。
R−1、R−2、R−GUNに続き、ようやくアヤの愛機でもあるR−3も調整が終了したのだ。R−3は、他のR−マシンに比べて複雑なT−LINKシステムが搭載されている為に、調整に手間取ってしまっていたのだ。
「オッサン!あのグルンガストどうにかしろ〜!近所迷惑じゃねえか〜!!」
だがゼンガー慌てず騒がず、食事を終えたのか箸を茶碗の上におき一言。
「ご馳走様でした。」
と、ケイとカスミに向けて一礼。
「お粗末さまでした。」
「そうか・・・近所迷惑か。よし、昼飯も食ったし基地に帰るか。」
そしてゼンガーは、アヤを連れて『お邪魔しました』の一言を残して、参式で帰っていった。
「何しに来たんだ・・・あのオッサン。」
ジュンペイの疑問を答えたのはトウヤ。
「昼飯食いに来たんじゃないか?」
そして数時間後、基地に戻ったアヤは、PT開発スタッフの『ロバート=オオミヤ』と打ち合わせをしていた。
アヤはR−3のコクピットでT−LINKシステムの微調整を行なっていたのだ。
「どうだ?アヤ。ハード面は問題無いと思うが。」
ロバートがR−3の足元のコンソールで、機器をチェックしながら呼びかける。
「ええそうね。機体には問題無いわ・・・。ただ、システムにちょっとノイズが入るわね。」
「そうか・・・。プラスパーツ無しの分、ソフト面に負担が大きいからな。もう少し突き詰めてみよう。」
そんな時だった。格納庫がやたら騒がしかった。
「なんだ?女子高の社会科見学か?」
ロバートが調整の手を休め、喧騒の方へ向く。アヤも小休止のつもりでコクピットから出てきた。
すると、格納庫の中に十人近くの女子高生が、スヴァンヒルドやアルブレードの足元で騒いでいた。
そして、タキシードを着た若い男を引き連れた一人の女子高生が、セレインとアークに向けて怒鳴っていた。
「だからって、直接持って来られても、困りますよ!!」
アークは女子高生の対応に困っていた。
「我が伊集院財閥が総力をあげて開発したロボットだぞ!営業の連中では頼りないから、こうしてメイ自身が持ってきてやったのだ!!」
メイと名乗った女子高生は、自分たちの背後にある巨大なトレーラーを示した。幌が被せてあるが、シルエットからそれが人型のロボットである事は理解できた。
「なに?あれ・・・」
アヤがロバートに尋ねると、彼は苦笑した。
「スーパーロボットの売込みさ。蛇の道は蛇・・・かな?TDFに天宮財閥(レイカの家)や香坂財閥(お嬢様軍団のエリカ7)が出資や技術協力していることを、どこからともなく嗅ぎ付けたらしいんだ。」
「それで、自分たちも・・・って事?」
「ああ・・・自分達の所のロボットや兵器が採用されれば、膨大な実戦データが得られるし、格好の宣伝だからな。」
「ふうん・・・で、あの子、どこの財閥?」
アヤがメイを見て尋ねた。
「伊集院財閥さ・・・。そしてあの子は伊集院財閥のお嬢様ってとこだな。名前はメイ、高校生にしては科学知識が旺盛で、去年の学生サイエンティスト(科学者)グランプリで準優勝した逸材さ。」
「アークライト少尉・・・・任せる。私は商売の話はできない。」
セレインはアークの肩を叩き、何処かへ行ってしまった。
「あ〜!!セレイン!オマエ〜、逃げるな〜!!」
だが、アークのうろたえを無視し、メイはアークに詰め寄る。
「TDFが、マオ・インダストリーや天宮や香坂の連中と繋がってるのは解っているのだ!!コレ以上天宮や香坂に大きな顔をさせる訳にはいかないのだ!さあ!早く上役に取り次ぐのだ!!」
「やれやれ。参謀達を呼んできてあげるか・・・・」
アヤはそう言って、壁にかけてある受話器を取ろうとした。そんな時・・・
どかっ!!───アヤは何かとぶつかった。しりもちをつくアヤ。
「いたた・・・何?」
すると、あやの目の前には、中学生くらいの女の子が同じようにしりもちをついていた。
「あいたぁ〜・・・」
女の子は頭を打ったのか、頭を両手で押さえていた。ショートカットとキャロットスカートの似合う女の子だ。
だがそこへ、基地の衛兵達が駆け寄ってきた。
「大丈夫ですか!大尉殿。」
衛兵がアヤを助け起こす。
「ええ、大丈夫よ・・・ありがとう。」
「ええい!手間取らせて、さあ来なさい!」
衛兵達は女の子を捕まえていた。
「いや〜〜!!放してぇ〜!!お姉ちゃんに会うんだぁ〜!!」
と声を上げ抵抗している。
お姉ちゃん・・・・その単語にアヤは敏感に反応した。アヤには行方不明になった妹がいたからだ。
「待ちなさい。その子なんなの?」
アヤが尋ねると、衛兵が答えた。
「はっ、侵入者であります。あそこの女子高生の社会科見学に紛れ込んで、無断で基地内に。」
「う〜・・・」
涙目で唸る女の子。見れば大きなスポーツバックを持っている。中学生の持ち物にしては多すぎるようだが・・・
「貴方・・・名前は?私はTDF、SRXチームリーダー、アヤ=コバヤシ大尉。」
すると女の子は口を開いた。
「薙(なぎ)・・・・匕首薙(あいくち なぎ)・・・・」
すると、アヤとロバートは驚いた。匕首・・・その苗字に聞き覚えがあったからだ。
「匕首・・・・もしかして貴方のお姉さんって・・・・」
薙は答えた。
「香田奈・・・・匕首香田奈・・・」
アヤは衛兵達を見て、一言。
「この子は、私の方で処理します。放して上げなさい。」
「いや・・・しかし・・・」
ためらう衛兵達にアヤは睨んだ。
「貴方、階級は?」
すると、衛兵達は背筋をただして敬礼した。
「し!失礼しました、大尉殿!!」
そう言って衛兵達は、薙を放し、去って行った。
「かっこいい・・・・・。お姉ちゃんとは違う魅力が・・・・」
見れば、薙はアヤを羨望の眼差しで見ていた。その様子にアヤは苦笑するしかなかった。
「さて・・・・話を聞かせてもらおうかな?こっちに・・・。ロバート、R−3の調整は後でね。」
「あ?ああ・・・」
そしてアヤは薙を連れて行ってしまった。
「やれやれだな・・・・」
するとロバートは何かに気付いた。
「念動測定計が・・・・動いている?まさか・・・・」
「それが・・・パイロット用の服なんですか?」
応接室に通された薙は、アヤの格好を見て言った。アヤはR−3搭乗用のパイロットスーツのままなのだ。開いた胸元で、透明素材で覆われた太腿・・・。
「ええ・・・そうだけど・・・」
アヤはこの時だけ、このスーツをデザインしたイングラム=プリスケンに殺意を覚えた。
「かっこいいな・・・・。お姉ちゃんと、お兄(おにぃ)もそんなの着て戦ってるんだ・・・・」
予想外の答えに、アヤは拍子抜けした。
薙はアヤから、将輝が偶然からR−ガーダーを動かしてしまった事や、香田奈が極秘裏にパイロット候補に選ばれいた事を聞かされた。
そして、二人が地球を守る為、R−ガーダー・R−ブースターと言う念動マシンのパイロットとして今はアヴェやキスレブの方で戦っていることを聞かされた。
「それで・・・ずっと帰ってこないお姉さん達が心配になって、基地に忍び込んだのね?」
薙は頷いた。
ある日、将輝の試験会場である軍基地に行ったきり、姉も兄も帰ってこなくなった。数日後に香田奈から電話連絡が入ったが、応対した伯父は「そうか・・・解った。後は任せてくれ。」と言って電話を切ってしまった。
薙は伯父に事情を尋ねたが、伯父は詳しい事は教えてくれなかった。
それから薙は、伯父の家に預けられた。独身で子供のいない伯父は薙を心から可愛がってくれたが、やはり薙は不安だった。
小学校低学年の時に母親を亡くした薙にとって、香田奈は母親以上の存在だったのだ。
己の青春を犠牲にして、母親の役目を果たしていた姉・・・。
唯一の姉の青春と言えば、恋人と一緒にいる間だけ・・・それも僅かな時間だ。その時間が終われば、姉は自分達の世話や面倒を・・・・。
「お姉ちゃんが、あの人に処女捧げたのも解るような気がする・・・・。僅かな時間しか会えなかったから、その人と思い出を多く作りたかったから・・・・」
その言葉に、アヤは、汗ながら苦笑いを浮かべた。
「あ・・・あなたのお姉さんって、結構積極的なのねえ・・・」
だがその恋人との幸せな時間は終わってしまった。爆発事故により、姉の恋人は後輩であった兄・・・将輝を庇ってその命を落した。
姉はそれからは、恋人を作らなくなった。いや・・・男性と接触する事すら避けるようになり、今まで以上に自分達の面倒を見るようになった。
「だから・・・あたしはお姉ちゃんの負担になら無いように務めてきたんだもん・・・。でも、あのバカお兄ぃは・・・」
「ば・・・バカお兄ぃ・・・」
間違い無く将輝の事を言っている・・・・。アヤはそう感じ取った。ヴィレッタからの報告を聞いていたし、リュウセイやライからも個人的な連絡はいくらかもらっていたので、匕首姉弟の事はだいたいは理解している。将輝が香田奈にいつもベッタリなのもリュウセイから聞いていたが、妹からバカ呼ばわりさせるほどのシスコンだったとは・・・
もうアヤは苦笑いの連続だ。
薙が話すには、香田奈が恋人を亡くしてから、将輝はますます香田奈にくっつくようになったと言う。
香田奈の恋人であった男を目標にしていた将輝は、血の繋がりこそ無いが、香田奈の恋人に段々と雰囲気や仕草が似てきたのだ。
香田奈にしてみれば、嬉しい事だが、将輝に恋人の面影を見るようになり、将輝を甘やかすようになったのだ。
「お兄ぃもお姉ちゃんから、自立しようとしてるんだけど・・・、やっぱり甘えてるのよね。あたしわかるもん。」
そして、しばらく薙と話し合ったアヤは、軍の機密であるが、オンディーヌ隊が日本に戻ってくる事を薙に告げた。軍規違反だが、肉親と離れ離れになるつらさをアヤは知っていたからだ。
「じゃあ!お姉ちゃんに会えるんですね!!」
薙は笑顔でアヤに詰め寄る。アヤも笑顔で頷いた。
詳しい日時は解らないが、近日中である事は間違い無い・・・と教え、その時が来たら真っ先に薙に連絡する・・という事をアヤは約束した。
「じゃあ!お姉ちゃんが帰ってきたら、コレを渡さなきゃ!!」
薙は、持っていたスポーツバックをアヤに見せた。
「何が入ってるの?」
「お姉ちゃんの着替えや化粧品!ついでにお兄ぃのも。あと・・・お姉ちゃんの宝物!」
薙は、親切にしてくれたお礼・・・と言ってアヤに、その宝物を見せた。それは写真立てだった。
「この人が・・・・」
写真には、薙と将輝が・・そして香田奈と剣道着を着た一人の男性が映っていた。
そして今日の所は薙は家に帰る事にし、アヤが送る・・・と言って、応接室を出た時であった・・・・
「オマエじゃ、話にならないのだぁぁぁ!!!」
と、隣の応接室から、物凄い剣幕の少女の怒声が響いた。
「ええい!司令室は何処なのだ?ここの司令と直接話をするのだぁぁ!!」
応接室のドアを突き破るように、少女が飛び出してきた。先ほど、アークに怒鳴っていた少女・・・『伊集院メイ』だ。
「こまりますよぉ〜!!部外者が基地内を走り回られてはぁ〜!!」
なかば嘆願するように、アークが制止しているがメイは聞いていない。
「じゃあ!司令を!幹部クラスを呼ぶのだぁ!!メイは伊集院家の者なのだぞ!この基地の士官は、伊集院に対して礼儀がなってないぞ!!」
「そりゃ・・・ウチに協力してるのは、天宮と香坂の財閥ですから・・・・伊集院のお金は一門も入ってないわけだし・・・」
言わなくてもいい事をアークは言ってしまった。自分でも「マズ・・・」と思ったが、もう遅い。
「咲之進。」
メイは指を鳴らした。後に控えているタキシードの男が歩み寄る。
「はい。メイ様。」
「この男は、礼儀を知らないと見える。教えてやれ。」
「はい。メイ様。」
静かな笑みを浮かべてアークに近づく咲之進。そして・・・・
「あ〜〜〜〜〜!!!!!」
アークの悲鳴。笑みを浮かべる咲之進。
「見ちゃダメ。」
薙の目を塞ぐアヤ。
「お・・・おなか減ったでしょ?御昼時だし、ご飯食べに行きましょう。ご馳走しちゃうから・・・・」
そう言って、アヤは半分無理矢理げに薙を士官食堂に連れて行った。
「おかわり・・・・・」
士官食堂では、社会科見学(メイの売りこみの表向きの理由)の女子高生と引率の女性教師が唖然とした表情で、ある男を見つめていた。
「五杯目だよ・・・・あの軍人さん・・・」
ショートカットの少女が隣の長髪の少女に言った。
「光、軍人は身体が資本よ。アレぐらい食べて当然じゃない。」
と友人らしき少女が平然として言う。
「おかわり・・・」
六杯目のどんぶり飯を軍人は食らいだした。
「ウチのお兄ちゃんより立派な体つき・・・強そう・・・。でもあんなに食べられたらボクん家の食費凄い事になりそう。」
「・・・・そう・・・ね・・。凄いわね・・」
「う〜ん!あんなにスゴイ身体なら、スポーツとかもスゴイんだろうな・・・。あんな人がうちの部にいればな〜。」
と、反応様々。そこへ、アヤと薙。そして渋々メイと咲之進がやってきた。
「とりあえず、小休止なのだ。咲之進、今日は、軍人が普段食べている物を食してみる。
「はい。メイ様。」
すると、やたら元気そうな少女が、メイに話かけてきた。
「なあ〜、あのロボット、一回でいいから、俺に動かさせてくれよ〜。さっき基地の人に頼んで、PTの操縦席入ったんだけど、ドリルが付いてねえんだよ。お前んとこのドリルついてんだろ?」
するとメイは、不機嫌な顔を崩して、ニヤリと笑みを浮かべる。
「当然なのだ!ロボットにドリルは無くてはならない物なのだ!でも、お前にはパイロットは任せられん。」
「ケチ〜。おい、白鳥。お前の占い外れたぞ。『望む物が手に入る』って言ったのによぉ。」
すると、おっとりした少女がニコニコしたまま首を傾げた。
「あ〜、そうですか。それは残念。」
すると、食事をしていた軍人がいきなり立ちあがった。
「きゃっ!」
その行動にビックリした少女が、椅子から転げ落ちる。
「あたた・・・美幸、こけちゃった。」
だが、明るい。
その様子を無視して、軍人はメイと元気そうな少女の元へ歩み寄った。
「な・・・なにか用なのか?」
ビビるメイ。
「でっけえ身体・・・。オッサンなんか用か?」
すると軍人は口を開いた。
「お前・・・名前は?」
少女は即答。
「俺は『赤井ほむら』!!ひびきの高校の生徒会長だぜ。オッサンは?」
「俺はゼンガー=ゾンボルト。PT部隊の隊長。俺の機体ならドリルは付いている・・・・。乗って・・・みたいか?」
すると、薙に食事を奢ろうとしたアヤは驚いた。
「ぜ・・・ゼンガー少佐!ダメですよ。部外者をPTに・・・それも参式に乗せようなんて!」
だがゼンガーは平然と言い返す。
「彼女は信用できる。動かしはしなければ問題無いだろう。」
「どうして信用できるんですか!!」
その問いに、ゼンガー即答。
「ドリル好きだからだ。」
「・・・・・・・・・・・・・」
アヤ絶句。
そんな時であった・・・・・・
基地内に警報が鳴り響いた。瞬時にゼンガーの顔が引き締まる。プロの軍人の顔だ。
次の瞬間、基地内に激しい震動と爆音が響き渡る。それに恐怖し、女子高生達が悲鳴を上げる。
「みんな!落ちついて!落ちつくのよ!!」
引率の教師が必死になだめるが、教師の顔もこわばっている。
すると、士官食堂に、ロバートが飛び込んできた。
「ゼンガー!!アヤ!!大変だ!!ゴルディバスのガムダとゼ=オード、それと正体不明の機動兵器の奇襲攻撃だ!!」
だが、次の瞬間、士官食堂の天上が大きく揺れ、天上が崩れてきた・・・・
「ゼ=オードだと!!畜生!俺達の居場所を嗅ぎ付けたのか!!」
リーボーフェンのブリッジで、トウヤが拳を握り締めて叫んだ。
「恐らくやつらの目的は、アタシ達とキカイオーだろうね。アタシ達を料理した後で、テクノドームへ進行する気だね。」
リーボーフェンの聖霊機パイロットの一人、オーレリィがそう推測した。
「だろうな・・・・。セリカ、キカイオーは動ける状態なのか?」
同じく聖霊機パイロットのクロビスがセリカに尋ねた。だがセリカは首を横に振る。
「まだ無理・・・・副動力しか生き返ってないもの・・・。今のキカイオーは本来の4分の1も性能を発揮できないわ。」
「と、言う事は、我々が出撃するしかなさそうですね。」
聖霊機パイロットのアーサーが言うと、ブリッジ全員が頷いた。
「しかも相手はゼ=オード。PTじゃ太刀打ちできるかどうか解らんしな・・・」
パイロットの一人、シィチェンが言うと同時に歩き出していた。
「同感だ!急ごうぜ!!」
「ガムダだと!くそ・・・キカイオーさえ動ければ・・・・」
ジュンペイが悔しがった。念の為にテクノドームに来ていたが、それが今の自分の無力さをさらに引き立たせる事になってしまった。
「とにかくジュンペイ君。ここはTDFに任せましょう。基地にはトウヤ君やゼンガー少佐もいるんだし・・・」
サオリが、励ます様に言う。だがその姿にポリンは嫉妬した。
(なによあの女・・・何も出来ないくせに私のジュンペイ君にベタベタしてぇ・・・・)
すると、ポリンはひらめいた。
(そうだ!アイツをやっつければジュンペイ君は喜んでくれる筈!そうすれば・・・・)
ポリンの脳裏に、独善的な妄想がよぎる・・・・そして彼女はそれを実行に移した。
「ジュンペイ君、大丈夫よ!あんなのポリンがやっつけてきてあげる〜!」
「へ?」
次の瞬間、ポリンの姿は消え、テクノドームの敷地の外にボロンが出現した。突如の事に、警備していたソルディファー達が驚いていた。
「じゃ、いってきま〜す♪」
そう言ってボロンが出撃した。
「あ〜!!ポリン!!アイツ・・・・」
するとケイの反応は素早かった。
「ジュンペイ君はココにいて!私も行きます!」
ケイは、そう言い残して、司令塔から外に出た。そして、彼女は携帯電話のような装置を取り出し・・・・
「守って見せる・・・・。パルシオォォォンッ!!!」
ケイの身体を光が包み、次の瞬間には、青と銀色の巨人、パルシオンが出現した。
『デュワッ!!』
そしてパルシオンはボロンの後を追って大空に舞った。
「くっ!動きが予想できん・・・・第二アルブレード小隊は左翼へ廻れ!ガムダを基地に近づけるな!!第三小隊は第四小隊と連携し、聖霊機を援護しろっ!!」
ラーズグリーズの中でセレインは、出撃したアルブレード達を指揮しながら、小隊不明の機体と戦っていた。
「今まで全ての敵対組織の機体に該当しない・・・。新勢力か?しかしこのままでは・・・」
セレインは、目の前の機体に対してミサイルを放った。だがミサイルは全て、着弾せずあらぬ方向に飛び散ってしまった。
「ミサイルジャマー(ミサイル妨害兵器)か!くそっ・・・」
ラーズグリーズの目の前にいた機動兵器。それは一見、ふざけたようなデザインだが、強力な力を秘めた『タコ』型の機動兵器だった!!
「アハハハハ!!いくのじゃ〜!壊すのじゃ〜!」
タコ型機動兵器・・・・・もとい、タコ型VA『S−008・スーパー8(エイト)』の中で、まさに「お姫様」と言った白いドレスに金色の冠をつけた少女が笑っていた。そしてそのコクピットにはさらに、登頂部のみ剥げた頭をした不可思議な髪形で長い鼻にちょびヒゲ。そして額に『悪』と書かれた男と、白衣を着たフランケンシュタインのような男がいた。
この三人こそ、ゴルディバス軍の下請けと化したコロニー666、デスサタン王国の者であった。
「ハハハハなのじゃ〜!見ろ!TDFのPTもたいした事ないのう?地獄大師。」
「そ〜ですとも、デビロット姫。このワタクシ地獄大師の会心作、スーパー8の前では、恐れる物はな〜んにもございませんです。ハイ。」
地獄大師と呼ばれた、出鼻にちょび髭男は、姫にごまするように言う。
「これで、TDFの連中を倒し、キカイオーをやっつければ、我々もよ〜やくゴルディバス軍の下請けから上り詰める事もできるかと。」
すると、デビロット姫は笑みを浮かべる。
「そ〜であろう。そ〜であろう。これで我等も下請けから脱出!いや!いつかゴルディバスすら従わせ、この『デビロット=ド=デスサタン\世(きゅうせい)』が!我等デスサタン王国が、全宇宙を支配するのじゃ〜!!」
デビロット姫は高々と叫ぶ。その様子に地獄大師は涙する。
「だ〜!!なんという誇らしいお言葉!王様が聞かれたらなんとお喜びになることか〜!!」
「では行くのじゃ!!まずは目の前のこざかしい手足の生えた戦車をギタギタにしてやるのじゃ〜!!」
そして、手足の生えた戦車呼ばわりされた機体・・・・ラーズグリーズとスヴァンヒルド小隊。だが、確かに劣勢である。なんとか距離を取ろうとするスヴァンヒルド達だが、スーパー8の機動力は高く、思うように火器が使えない。
蛸足の一本に、一機のスヴァンヒルドが掴まった。蛸足の先端がUの字磁石に変形し、スヴァンヒルドを吸着して離さない。
「くっ・・・くそぉ・・・」
僚機を救出しようと、セレインは、格闘戦用兵装ヴァルキュリアソード(長剣)を取りだし、蛸足の一本に斬りつけた。だが、通じない。ヴァルキュリアソードは格闘戦が不得手なラーズグリーズの接近戦における補助兵装でしかないからだ。ラーズグリーズは最初から格闘戦を想定した設計ではない。
「やられるのじゃ!」
スーパー8は、蛸足に吸着したスヴァンヒルドをラーズグリーズに投げつけた。轟音を上げて地面を擦るラーズグリーズとスヴァンヒルド。
「ぐうっ!!」
ミシッ!!──ラーズグリーズの頭部キャノピーに亀裂が走った。ロケット弾の直撃にも耐えられる強化アクリル製のキャノピーも、今の衝撃には耐えきれなかったようだ。今度、攻撃を食らえば完全にラーズグリーズの頭部・・・いやコクピットは剥き出しになってしまう。セレインの額に冷たい物が流れる。
「つ・・・強い・・・。これがガムダか・・・」
アークは目の前のガムダが絶壁に見えた。動きこそ鈍いが、その頑強なボディに高い火力。そして瞬間移動能力。どれを取っても、アルブレードでは歯向かう事すら難しい。そして今、目の前で一機のアルブレードがガムダのパンチを浴び爆発した。アルブレードの残骸が、アシュクリーフの装甲に飛び散る。
「くっ!くそっ!死んでたまるか!!あんな死に方だけはゴメンだぁ!!」
今、アークを動かしているのは「恐怖」という言葉だった。ビームガンを乱射する。だが、分厚いガムダのボディには効き目が薄い。足止めぐらいしかできない
「うわぁぁぁ!!」
絶叫してミサイルを放つアシュクリーフ。だがアークの目の前からガムダが消えた。
「!?」
驚くアークをよそに頭上からガムダが降ってきた。とっさに避けるアシュクリーフ。だが近くにいたアルブレードが何機か踏み潰される。
「それがミサイルか?」
アレクシムがアシュクリーフを見てあざ笑う。
「教えてやる。ミサイルとはこのような物だ!!」
ガムダの指先から無数のミサイルが発射された。狙いは勿論アシュクリーフだ。
「うわああああああ!!!!」
悲鳴を上げるアーク。
「ふ・・・少しはできるようになったか。アガルティアの聖霊機!!」
レイオードが振りかざした長剣を、トウヤの聖霊機ゼイフォンが必死で受けとめる。前回は剣を受けとめただけでゼイフォンの片腕がもげてしまったが、今回は関節や装甲を強化しているのである程度は耐えられるようになっていた。
これもTDFの技術をセリカが聖霊機に応用した結果だ。
だが、決定的な物ではない。レイオードを初めゼ=オードの機体には特殊なフィールドが備わっており、聖霊機の攻撃を中和してしまうのだ。
したがって、トウヤ達の聖霊機ではレイオードには傷一つ付けられないのだ。以前、R−ガーダーやR−GUNが、レイオードとガイオゾンにダメージを負わせる事が出来たのは、T−LINKシステムによる念動フィールドで、無理矢理フィールドを引き裂いたからだ。
だが、トウヤ達の聖霊機ではフィールドを引き裂くほどの攻撃力は無い。
「やっぱり・・・・ライブレードじゃないと・・・・」
聖霊機ビシャールのコクピットでアイが嘆くように呟く。ライブレードにはどうやらフィールドを無効化する機能が備わっているらしいのだが、他の聖霊機にはそれがないのだ。
「くそっ!どうすればいいんだ!」
聖霊機ディッセルドフの高周波ランサーをレイオードに叩きつけながらフェインは悔しがった。その攻撃も無効化されているとしりながら・・・・
士官食堂はガレキと化していた。ガムダの攻撃によるものだ。その中で女子高生達がうめいていた。
「あいたたた・・・・・、生きてる。良かったぁ・・・」
ショートカットの少女が安堵の息を付いた。見れば他の生徒達も皆無事だ。どうやら崩れた場所が一箇所に集中した為、それほど大きな崩壊は免れたらしい。
「ふう・・・・どうなるかと思った・・・」
アヤも気を取り戻した。怪我もしていない。丈夫なパイロットスーツのおかげだ。
「イングラム少佐に感謝しなくちゃね・・・」
と、苦笑する。だが、一人の女子高生の声が、安堵する皆を悲劇に追い込んだ。
「大変!!伊集院さんと会長がいない!!」
一人の女子高生が叫んだ。その言葉通りにメイとほむら、そして・・・・
「な・・・薙ちゃん?薙ちゃんどこ!?」
アヤは薙もいない事に気付いた。ガレキと化した食堂内に三人の姿は何処にも見えない。メイのお付きである咲之進がクールな表情を崩して、「メイ様!メイ様!」と叫びながらガレキの中を掻き分けていた。
「み・・・みんな・・・見て・・・」
長髪の少女が気を失いそうな顔でとある場所を指差していた。
「!!!!」
その場にいた全員が声を失った。少女がしめした方向には、天上の一部と思われる残骸の下から、赤い液体が流れていた・・・・・。間違い無く血だ。
「いやああああああ!!!」
少女達が頭を抱えて泣き出した。だが、咲之進だけがそのガレキに近づき、ガレキをどかし始めた。アヤ以外が目をそむけた。無残な姿を見たくなかったからだ。だが・・・・
「いってぇぇよ・・・・」
声がした。ガレキの下から声がした。
「うう・・・・咲之進・・・早く助けるのだ・・・」
また声がした。
「あ・・・アヤさあん・・・」
間違いない。三人は生きている。言われるまでもなく全員がガレキをどかす為に力を合わし始めた。そして・・・・
三人は無事だった。傷一つ負っていない・・・奇跡的に無傷だ。だが・・・
「ぜ・・・ゼンガー少佐・・・」
ガレキの下から現れたのは三人だけではなかった。そこには全身ボロボロになった傷だらけのゼンガーの姿があった。
「オッサン・・・オッサン!!返事してくれよ!!」
「おい!目を覚ますのだ!メイの命令だぞ!!目を・・・覚まし・・」
「こ・・・この人が・・・守ってくれた・・・」
薙は泣きながらアヤに抱きついた。
「しょ・・・少佐・・・・・」
その時であった。女子高生達の引率の教師が気がついた。ゼンガーの胸が動いているのに。よく見れば微かに呼吸もしている。ゼンガーは生きていた。
「大丈夫!この人生きてますよ!!」
教師の声にその場から歓声が湧いた。良かった!良かった!と言う声が響く。
「よし!すいません。少佐を御願いします!」
アヤは教師に携帯式の無線を渡して立ち上がった。
「今、連絡しました。すぐに救助隊と医療部隊が来ます。私は行きます!」
「アヤさん・・・。何処へ行くの?」
薙が尋ねると、アヤは引き締まった顔をした。
「戦いに行くの。」
幸い、基地の損傷はそれほど酷くなかった。被害が数カ所に集中したためだ。だがそれをアヤにさらなる悲劇を呼んだ。
「R−3が・・・・」
格納庫も少なからず損害を受けていた。そしてアヤの愛機であるR−3も同様に・・・。
R−3は、多量のガレキに埋もれていた。走り回る整備兵の声から推測するに損傷は酷くないらしいが、ガレキを撤去してコクピットハッチまで辿りつくにはかなりの時間を要するようだ。
「このままでは・・・・・」
アヤは格納庫全体を見渡した。PTは全て出払っている。出撃可能な機体は無い。アヤは悔しがり歯を食いしばった。何も出来ない自分が恨めしい。
だが、そんな時、アヤの目にある物が飛びこんだ。
それは、赤い大型の戦闘機と二本の強固そうな大型ドリルを装着したドリル戦車を・・・
食堂だった場所には、すぐに救助の部隊と医療班が到着していた。救急隊員が重傷のゼンガーを診ていた。
「大丈夫です。命に別状はないですよ。」
その言葉に女子高生達は喜んだ。
「少佐は頑丈な人ですからね。そうでなきゃあんなに沢山食べたりしませんよ。酒よりメシの人ですから。」
救急隊員のジョークにみんな笑った。だがその中で何か真剣な眼差しをする三人がいた。
メイ・ほむら・薙だ。
メイはほむらに話し掛けた。
「お前・・・『あれ』を動かしたいと言ってたな。」
「ああ・・・。」
頷くほむら。
「もう遊び半分ではできんぞ・・・・」
「承知の上だぜ。オッサンに恩返ししなきゃな・・・」
「メイもそのつもりだ。責任は伊集院家が・・・いや、メイが持つ!!」
二人は顔を見合わせ頷き、次の瞬間、制止を振りきり駆け出した。行き先は格納庫だ!!
ほむらとメイは、格納庫に辿りついた。幸いトレーラーは無事だった。
メイはトレーラーの助手席に飛び乗り、備え付けてあるコンピューター類を起動させた。
「後の座席に、パイロットスーツとヘルメットがあるのだ!形状記憶合金入りのオートフィット式だから、サイズは関係無いのだ!」
メイの言葉通り、後部座席に飛び乗ったほむらは、目の前にかけてある白いパイロットスーツを見て、急いで着替えをはじめた。
「メイは・・・本当は『あれ』は、TDFに売りこむ為でもあるが、本心は『ある女』に勝ちたい為に作ったのだ。」
メイは『初めて心から』本音を語りだした。
「天宮や香坂の連中がTDFと繋がっていると知った時、その中にメイの知っている女がいたのだ。その女は以前、学生サイエンティストグランプリでメイを負かして優勝した・・・。メイは準優勝だったが嬉しくなかったのだ。伊集院家はTOPにならなければならないからなのだ・・・。」
システムを起動させながら、メイは語り続けた。
「だがその女は『優勝して当然』という顔だったのだ。それより先の事を見据えていたのだ・・・。そしてその女は、TDFに協力していると言うのだ・・・」
着替えを終えたほむらは黙って聞き、そのまま荷台のロボットのコクピットに潜り込んだ。ヘルメットから聞こえてくるメイの指示通りに、ほむらは計器を操作した。やがてコクピットの中に光が宿る。
「メイは勝ちたかった。その女に、だからそのロボを作った。その女も同じようなロボットを建造してTDFにパイロット兼主任技術者として参加しているのだ。だが、今はそんな事どうでもいいのだ!!」
「その通りだぜ!今は、ねたんでいる個人より、みんなの為にコイツを動かそうぜ!!」
メイはほむらの言葉に頷き、端末を叩き続けた。
「準備完了なのだ!!」
「よおし・・・・ゴッドリラー・・・・ゴオォッ!!!」
トレーラーの幌を弾き飛ばし、水色の人型ロボットが立ちあがった!!
「アヤ!そいつはお前じゃ無理だ!!」
青い大型戦闘機に乗りこもうとしているアヤをロバートが声をあげて静止しようとしていた。
「PTの操縦はみんな一緒でしょ!!わたしにだってやれる!」
「だからと言ってそいつは無茶だ!そいつは二人揃わないと、真の力を発揮しない!ゼンガー少佐だってGランダーを自動操縦で操って、六割の性能しか出せなかったんだぞ!」
だがアヤは譲らない。
「六割で十分よ!これはSRXを除けば、TDF最強のロボットよ!六割でも十二分に戦力にはなりうる。」
そう言い切り、乗りこもうとする。
「無茶だ!不慣れなお前が乗っても、中途半端な性能しか出せないぞ。二人いればなんとかなるが・・・その二人目は今、この基地にはいないんだ!」
するとアヤはついに怒鳴り声を上げた。
「だったら誰でもいいわよ!Gバイソンに乗せれば後は私がなんとかする!!」
「じゃあ!あたしがGバイソンに乗ります!!」
突然二人に声がかけられ、驚いて振り向くと、そこには薙が立っていた。
「誰でもいいんでしょ!?だったらあたしが!お姉ちゃんやお兄ぃに出来たんだ。あたしにだって・・・」
そい言って、開きぱなしになっているドリル戦車・・・Gバイソンのコクピットに入りこもうとする薙。
「やめなさい!君に出来るわけが無い。」
制止しようとするロバート。だが薙はきく耳持たず、Gバイソンのボディに掴まった。
「薙ちゃん!本当に戦う気?」
アヤが真剣な眼差しで薙を見つめた。薙は頷いた。
「戦いは怖いものよ・・・。遊びじゃ出来ない。大怪我するかもしれないし、痛い思いや苦しい思いもする。死ぬかもしれないわよ。」
すると薙は、涙目で口を開いた。
「怖いのは嫌・・・・痛いのも苦しいのも嫌だよぉ・・・。でも・・・でもお姉ちゃんやお兄ぃも同じ事してるんだよね!今までお姉ちゃんがあたしの面倒見てくれたように、今のお姉ちゃんは地球全部の人達の幸せの為に戦ってるんだよね。」
アヤは頷いた。
「それなのに、あたしだけ何も出来ないなんて、それの方がもっと嫌!!アタシの為にあの少佐さんは怪我をした。でもあの少佐さんはあたしの為だけじゃない!みんなの為に守ったんだ!あたし・・・何もできないのはいやだよぉ・・・」
泣きながら薙はアヤに訴えた。
「そうね・・・何もできない事ほどつらい事は無い・・・・。」
アヤは自分のヘルメットを薙に投げた。
「え?」
ヘルメットを受け取った薙はアヤを見た。アヤはにっこりと笑みを浮かべ頷いた。薙は理解した。「ウンッ!」と強く頷き、アヤのヘルメットを被り、Gバイソンのコクピットに入った。
「お・・おいアヤ!」
狼狽するロバートに対しアヤは言った。
「ゼンガー少佐が動けない今、PT部隊での最高士官は私です。私が責任を負います。『Gラプター』出るわよッ!」
するとロバートは笑みを浮かべた。
「やれやれ・・・・仕方ないな・・・。」
そう言って、近くの無線を手に取った。
「薙ちゃん、聞こえるか?ロバートだ。これから俺とアヤで、君の乗っている『Gバイソン』の操作を簡単に説明する。いいか無茶はするなよ。」
「はい!御願いします。」
通信機から薙の元気のいい声が聞こえた。
「いい返事だ。まずは・・・・」
そして数分後・・・・格納庫から、ドリル戦車Gバイソンが出撃した。
ブチィィィィッ!!!───鈍い音と同時にアシュクリーフの左腕がもぎ取られた。アシュクリーフは完全にガムダに掴まった。既に全身はボロボロだ。
「ワハハハハハ!!脆い!なんと言う脆さだ!これがTDFの新鋭機か?笑わせる。」
アレクシムの笑い声が響く。この場合アシュクリーフが弱い訳ではない。ガムダが強いのだ。オンディーヌ隊ならガムダぐらい雑作も無いかもしれないが、それはキカイオーやゲッP−Xなどの超絶的能力を秘めたロボットがあるからだ。
新鋭機とは言え、アシュクリーフは通常のPTに過ぎないのだ。
「ここまでかよ・・・・」
アークは悔しそうに、拳を握り締めた。
「死ね。」
ガムダの手がアシュクリーフを握り潰そうとした・・・・・・が、その瞬間は訪れなかった。
「破壊ドリルぅぅ〜!!」
ガムダに巨大なドリルがつきたてられた。仰け反るガムダ。おもわずアシュクリーフを手放してしまった。
「援軍!?」
アークは、不恰好なボロンが何故かやたらかっこよく見えた。
「き・・・キサマは一体!?」
驚くアレクシム。突然の奇襲に動転しているらしい。だが、そんな事お構いなしにボロンは攻撃の手を休めない。パワーショベルと化している腕でガムダを滅多打ちだ。
「アンタをぶっ倒して、あたしはジュンペイ君とラブラブになるのぉ〜!!だからとっとと地獄へ行けぇ〜!!」
可愛いのか、残酷なのか、解らないセリフを吐きながらボロンの攻撃は続く。煙突から火炎放射だ!
「ふんっ!やはり相手にならんか。」
クロビスの聖霊機バルドックを蹴飛ばし、ライルは呟く。やはりフィールドを持つ、トウヤ達はあまりにも無力だ。
「さて・・・・基地内にあるリーボーフェンを仕留めさせてもらうか。」
ライルはトウヤ達を支援していたアルブレードの残骸を踏み潰しながら、基地に近づく。
「い・・・行かせるか・・・」
トウヤのゼイフォンが這いながらもレイオードの足を掴み、抵抗する。
「往生際の悪い・・・・アガルティアよりこちらの世界の土になりたいらしいな!」
レイオードが長剣を振りかざす。
「死ねぇっ!!」
モコ・・・・・レイオードの足下の地面が盛り上がった。そして・・・・
「なんだぁ!?地下からだとっ!!!」
驚くライル。
ギュィィィィンッ!!!───地面から鋭いドリルと共に、水色に塗装されたロボットが姿を現した。
「な!なんだ!?コイツは!」
目の前で水色のロボットの右腕に装着されていたドリルが縦半分に割れ、そのままバックパックにくっついた。
「ゴッドリラー参上!!!」
ゴッドリラーのコクピットでほむらが叫んだ。
「よくも、みんなを・・・オッサンを酷い目に合わせたな!ひびきの高校生徒会長の俺がキサマを倒す!!」
ゴッドリラーの右手の人差し指がレイオードにつきつける。
「いくぜ!ゴッドリラー!!アームロケットぉぉっ!!」
ほむらの声に反応し、ゴッドリラーの左腕がロケットのように飛び出した。
「そんなものがこのレイオードに通じるかっ!!」
ゴッドリラーの左腕はレイオードのフィールドに阻まれるが、推進力は失っていない。
「ならもういっちょっ!!!」
右腕も発射する。両腕はやはりフィールドに阻まれているが・・・・
トレーラーの中でゴッドリラーの戦いをモニターしていたメイは叫んだ。
「推進力を全開にするのだ!!」
「おおっし!!」
ほむらは推力を全開にした。腕のロケット噴射の勢いが増す。
「いける・・・いけるのだ・・・よおしっ!粉砕なのだ!!」
メイが確信を得たように叫ぶ。そしてその通り・・・
「ぐはっ!!フィールドを・・・」
突き破った。ゴッドリラーのパンチはレイオードのフィールドを突き破ったのだ!!
「D鉱泉(こうせん)フラッシュなのだ!!」
「おう!D鉱泉フラぁぁぁシュっ!!!!」
ゴッドリラーの両目が輝く。光線兵器『D鉱泉フラッシュ』だっ!!フィールドを突き破られたレイオードに直接ダメージッ!
カシャァァァンッ───
セレインは、とっさに自分の頭部を守った。ついに強化アクリル製のキャノピーが吹き飛んだのだ。剥き出しになるラーズグリーズの操縦席。
「ムッ・・・・あの女が動かしていたのか・・・」
剥き出しになったラーズグリーズの頭部にセレインの姿を見たデビロット。
「ふん・・・でもわらわの方が美しいのじゃ〜。」
「そうですとも。そうですとも。姫様の美しさは宇宙1ですから。」
地獄大師がおだてる。
「じゃが・・・・対抗馬は少ない方がいいよな?ぶっ潰せ〜!!」
スーパー8が八本の蛸足を回転させながら突っ込んできた。セレインはグレネードランチャーを全弾射出して距離を取ろうとする。
「無駄じゃ無駄じゃ。お前の手足付き戦車ではわらわは倒せんのじゃ〜。」
回転する蛸足がグレネードを全て弾き飛ばす。そしてまたしても蛸足の先端をUの字磁石に変える。
セレインは焦った。今あの磁石の吸着攻撃を食らえば、機体は無事でも、キャノピーが壊れた今、自分はただではいかない。
必死に距離を取ろうと後退するが、ラーズグリーズの足は遅い。
「死ぬのじゃ〜!美女はわらわだけで十分なのじゃ〜」
「アイソリット・レーザー!!」
突如、スーパー8の頭部にレーザーが照射された。思わず後退するスーパー8.
「な?なんなのじゃ?戦闘機の分際で、わらわに刃向かうとは・・・・地獄大師やってしまうのじゃ!」
だが、地獄大師は答えない。
「どうしたのじゃ?はやく、あの戦闘機を撃ち落せ。」
「それが・・・スーパー8には対空兵器は積んでおりませんので・・・」
「なに〜!!こら〜地獄大師ど〜ゆ〜事なのじゃ!!」
「実は〜スーパー8の武器は、対人型兵器を前提にしとりましてえ〜、まさか戦闘機が来るとは思いも知らなかったものでしてぇ〜。それに蛸足は、空まで届きましぇんのでして・・・はい。」
指をいじりながら弁明する地獄大師。
「こうなったら浮け!浮くのじゃ!!浮いて奴を叩き落せ!!」
「姫様〜申し訳ございましぇん。スーパー8はそこまで高くは・・・」
「いいから浮くのじゃ〜!!とにかくあのハエ(戦闘機)を叩き落せ〜。」
半ば無茶と解りながら、スーパー8はブーストを吹かして飛びあがろうとした・・・・だが・・・
はやり、無理だった。途中まで飛びあがったが、途中で失速・・・・
「あ〜落ちるぅぅ〜!!」
失速したスーパー8は地面に向けて落ちていく・・・・
「薙ちゃん。出番よ!!」
戦闘機・・・Gラプターのアヤが叫んだ。
「はい!」
地面の一部が盛りあがり、そこから二本のドリルが顔を出す。
そこは丁度、スーパー8の落下場所だ。
「薙ちゃん!ドリル全開!!」
「はい!Gバイソンドリルアタック!!」
地上に突き出た二本のドリルは物凄い勢いで回転し始めた・・・・・
「あ〜!姫様、着地地点にドリルがぁ〜!!」
「何!ドリルじゃと!」
デビロットは見た!着地地点に突き出た二本のドリルを!!ドリルの先端が鈍く輝く・・・・
「う・・浮くのじゃ!!なんとしても浮け〜!!」
「姫様無理ですじゃ〜」
スーパー8は蛸足をばたつかせ、最後の抵抗を見せる。だが・・・・
ぶすっ───
鈍い音を立てて、ドリルがスーパー8に突き刺さる。
「ひええええ!!!!」
「ひ・・・姫しゃまぁぁ!!」
ドリルはスーパー8の操縦席まで突き刺さった。ドリルの先端にデビロットが座ったままの座席があった。
「ち・・・恥骨に響くのじゃ・・・・」
自分の尻の下にドリル・・・・これほどの恐怖が今だかつてあろうか。多分無い・・・・
「ひ・・・姫しゃま。う・・動いてはなりませんぞ。けっして動いては・・・」
「わ・・・解っておる・・・。は・・早くなんとか・・・せよ・・・。こ・・これが回ったら、わらわは・・・」
顔面蒼白のデビロット。普段は青白いライトに照らされているコクピットだが、今の彼女はそれ以上に青い。ここでドリルが回れば、彼女の命は無い。
「ど・・ドクターシュタイン。キサマが一番近くにおる。ひ・・姫しゃまを・・・」
ドクターシュタインが無言のまま、ゆっくりとデビロットに手を伸ばす。
「急げ・・・でもゆっくりとな・・・そ!そうじゃ通信機じゃ!」
地獄大師は通信機を手に取り、外部スピーカーで呼びかけた。
「え・・ええ〜、このドリルの所有者。回すなよ〜、絶対回すなよ〜、頼むからさ〜。」
「???」
理解できない薙とアヤ。
「どうします?アヤさん。」
「ん〜、一旦抜きましょう。」
「はあ〜〜〜・・・・・」
デビロットの深い呼吸。彼女は助かった。そしてスーパー8のコクピットの中央部には、大きな風穴・・・いや、ドリル穴が開いていた。
「助かった・・・・」
「だ〜!姫様、よくご無事でぇ〜!」
「無事じゃないのじゃ〜!もしもあのままだったら、痔じゃ済まない所だったのじゃ〜!!」
デビロットは、眼前にいるドリル戦車・・・・Gバイソンを怒りの炎を燃やし睨んでいた。
「おのれ〜!わらわに、こんな醜態をさらした罪は重いのじゃ〜!!」
「あ〜ですが姫しゃま・・・これ以上の戦闘は・・・もう無理かと・・・」
確かに、足下に大穴の開いたスーパー8だ。
「ええい!構わぬ、殺せ!殺すのじゃ〜!!そして相手の死体の尻にドリルを突っ込んでやるのじゃ〜!!」
「あの〜姫しゃま。すこしお下品では〜」
ちなみに外部スピーカー入れっぱなし、外に丸聞こえの状態だ。
「あ・・・アヤさぁん・・・・あんな事言ってますよぉ・・・」
「・・・・カタをつけましょう。」
「え〜、姫しゃま、こんな事もあろうかと、先日、ドクターシュタインと共に色々と考えた『ビックリドッキリな』ものがあるんですがぁ〜」
「よし!流石、地獄大師!やってやるのじゃ!!」
「はい!お任せください。では〜今回の〜〜山場〜!!」
地獄大師、腕をぶんぶん回す。
「ポチっとな。」
スイッチオン
すると、スーパー8の装甲の一部が開き、そこから小型のスーパー8がうじゃうじゃ出てきた。
「エイト・エイト・エイト・エイト・・・・・(以下エンドレス)」
小型のスーパー8が、小破したラーズグリーズとGバイソンに群がってきた。
「あ・・アヤさぁん。コレ、Gバイソンを食べ様としてますぅ〜〜〜!!」
その言葉は事実だった。群がられたラーズグリーズの左腕が、ボトリ・・・と落ちた。
「こ・・・このままじゃあGバイソン、食べられちゃうよぉ〜!!」
「姫しゃま!効いてます!効いてますよ〜。もう最高♪」
「やったのじゃ!勝てるのじゃ〜!!これで下請け脱出間違い無しじゃ〜!!」
デビロット一味は勝利を確信したのか、コクピット内で、喝采を上げ、酒盛りをはじめた。
「これで、宇宙悪魔帝国や評議会の奴等にデカイ顔されなくてもいいんですのね〜姫しゃま〜。わたしゃ嬉しくて、嬉しくて・・・」
ウンウンと頷くドクターシュタイン。
「デスサタン王国に仕えて百有余年〜。この日を断腸の思いで待っておりました〜!!」
泣く地獄大使。
「これは、デスサタン王国の大きな一歩なのじゃ〜!!下請け脱出バンザ〜イ!!」
「ばんじゃ〜い!!」
「では、姫しゃま。今回の運勢を、みてみましょ〜!ポチッとな〜」
すると、モニターに何か、人影らしき物が映った。そして語りだした。
占いマシーン(え〜今回の運勢は・・・気分上場、その後地獄。ドリルと包丁に気をつけましょう。アンラッキーナンバーは3!ではまた来週〜)
「・・・・・なんなんでしょうね・・・姫しゃま。」
「ドリルは、さっき味わったのじゃ。だから後は・・・包丁?それに・・・3?」
解らない。さっぱり解らない。
だが・・・その意味は、数十秒後に訪れた。
「あ・・アヤさぁぁん・・・」
薙は、半分涙目だ。ラーズグリーズは既に両腕が食われた。Gバイソンは今の所無事だが、時間の問題だ。
「合体しましょう。」
「合体?」
アヤは頷いた。
「そうよ。GラプターとGバイソンは合体できるの。今からそれをやりましょう!そうすればあの小型マシンも振りきれる。」
「は・・・はい!」
薙は、Gバイソンのエンジンを全開にした。一気に距離を開ける。
「Gバイソン・・・Gラプター、ドッキングモード・・・・いきますっ!!」
そして、Gバイソンは飛びあがり、変形をはじめた。すぐ後にはアヤの乗ったGラプターが迫っている。
「合体!!超闘士!!」
薙の絶叫と共に、Gバイソンは、ロボットの胴体へと変形をはじめた。それに呼応するようにGラプターは、頭部と肩に・・・・
そして二つのGマシンは重なった・・・・
「だははは!!勝った、勝ったぁ〜!」
三人は既に宴が始まっている。
「何がドリルと包丁じゃ〜!包丁でスーパー8をさばいてみるか〜!」
それは・・・・起きた。
斬ッ!!!───
「あ?」
スーパー8の足が三本ほど消えた。そして近くを這っていた。綺麗に切り離されて・・・・
「ひ・・・姫しゃま?」
「な・・・何事・・じゃ?」
デビロット達は見た。目の前に、包丁としか思えない巨大な刃物があったのだ・・・・
「さばいて・・・あげましょうか?」
アヤの声だ。
「お刺身がいいよね・・・・」
薙の声だ・・・・
「き・・・キサマっ!何者じゃっ!名を・・・名を名乗るのじゃ!!」
すると、目の前の人型・・・巨大ロボットは、その口元に笑みを浮かべた。
「こ・・・コイツ!ロボットのクセに笑いましたぞ、姫しゃま!!」
「ぬぬ〜!こしゃくな〜、ミニスーパー8ども!食いつぶしてやるのじゃ!!」
「エイト〜」
と、無数のミニスーパー8達は飛びかかった・・・・だが・・・。
「ドリルブーストナックルぅぅ!!」
薙の叫びに呼応するように、ドリル付きの左腕が飛び・・・・・
「エイト〜!!!」
全てのミニスーパー8は吹き飛ばされた。
「ど・・・ドリル・・・・」
「ひ・・・姫しゃま。また・・・ドリルが・・・」
「でろっ!!斬艦刀っ!!!」
薙が叫び、肩の一部が外れた。するとそれは先ほど見た、巨大な包丁のような剣になった。
「・・・・グルンガスト参式!!推っ参っ!!!」
「参式・・・・つまり・・・・3・・・・」
デビロット達の顔から血の気が消えうせた。
次回予告
ついに薙は立ちあがった。姉を想う少女の怒りが今、グルンガストとなってタコを斬る!唸れ斬艦刀!!
逃げろデビロット!君達に勝ち目は無い!!
そして脅威のドリル軍団は、TDF基地を守り抜けるのか?ゴッドリラーVSレイオード!ボロンVSガムダ!!
そして、ついに復活!鋼鉄巨神!!だが、赤き鎧武者が立ちはだかる!激突必至!!
次回 サイバーロボット大戦三十話 「唸れ!覇王雷鳴斬!さらば聖霊機」にクラッシュファイトッ!!
次回も、対決がすげえぜ! 「大太刀(おおたち)ファイトだっ!!」