第二十八話 「飛べっ!R−ブースター!!」
「エクスカリバー!改修作業終了!!」
「引き続き、予備弾薬ならびに給油作業開始!!」
ホワイトローズの格納庫で整備員達の声が響き渡る。流線型の美しい赤いボディが自慢のリア用の宇宙クルーザー『エクスカリバー』が、補給用の支援機として改修されている。
普段は偵察や航路チェック等に使用されていたが、この改修により支援機として生まれ変わるのだ。
そして、そのコクピットでは、いつものポリリーナの衣装ではなく、正規の装甲に身を包んだリアが、変更点を結奈から説明を受けていた。
「いいこと?変更点は大きく分けて二つ。肝心の給油装置・・・まあ『補給装置』と言っていいわね。今回のミッションに合わせて、R−GUN・R−1・ラファーガ・バイパーU用の予備弾薬と推進剤が積みこんでるわ。」
そう言い、コクピットのコンソールを操作する結奈。モニターに本来カーゴスペースであった部分が表示される。
「エクスカリバーのカーゴの許容量は、決して満足がいく程多くは無いわ。まあ・・・その分はクイーンフェアリーがカバーしてくれる。」
結奈はそう言うと目線をコクピットのキャノピーに向けた。キャノピー越しに隣のハンガーでクイーンフェアリーが同じように予備弾薬や推進剤を積みこまれている所であった。
クイーンフェアリーは、本来ゲッP−X用の支援ロボットである。その為、他のロボット達にも補給が行なえるように、結奈が改造してあった。さらに金属製の巨大なトランクのような物を足元に並べられていた。恐らく補給用の物資と思われる。
「ライフルやリボルバー、バルカンの弾丸はカートリッジ式にしてるから、普通の攻撃と同じように味方機に向けて撃ち出せばいいわ。相手がキャッチするでしょうし・・・。ラファーガ用のミサイルだけは、取りに来て貰ってね。あと肝心の燃料は、普通の戦闘機同様に空中給油すればいいわ。」
淡々と説明する結奈。リアはそれを一つ一つ聞き逃さないように、頷きながら聞いている。前線においての補給は、ある意味、武器の性能の優劣以上に重要な事だからだ。
「最後の変更点は、このエクスカリバーの火器よ。今までは自衛用のバルカン砲二門だったけど、小口径のレーザーバルカン二門に変更したわ。」
そう言って、コンソールを操作すると、機首に装備されていたバルカン砲がレーザーに変更されている事が表示されていた。
これは攻撃力向上の為に加えた改造である。だがそれだけではない。武装を実体弾から光学兵器に変更する事で、万が一の誤爆や、被弾した際の誘爆を防止する為である。
補給装置を積んだエクスカリバーは、改修前に比べて被弾した際の誘爆率が、数段上回っている。その為、可能な限り誘爆の可能性のある部分は改良しなくてはならない。バルカンをレーザーに変更したのはその為だ。あと、重量物増加による為の、機動力低下を防ぐ為の軽量化の意味もある。
天才、紐尾結奈の作業に意味の無い事や、無駄な事は一切無いのだ。
「では・・・艦長。後は御願いします。」
ブリッジでヴィレッタは艦長にそう言った。既に服装は専用のパイロットスーツに着替え、脇にはヘルメットを抱えている。
「ウム。頼んだぞ、ヴィレッタ君。こっちは私に任せてくれ。」
「ライディース少尉。不在中のロボット達の指揮はお前に一任する。やっと帰ってきたR−2だ、大いに活用してやれ。」
ヴィレッタはライに向かって微笑すると、ブリッジを出ていった。
やがてカタパルトに、次々と戦闘機らしき機体が姿を見せた。ラファーガとエクスカリバー・・・そしてリュウセイのR−1が変形した飛行形態「R−WING」だ。
「アフターバーナー全開っ!リュウセイ=ダテ、いきまあ〜すっ!!」
そして、轟音を上げてR−WINGは飛び立った。続いてラファーガが二機・・・そしてエクスカリバーが飛び立つ。
次にカタパルトに現れたのは、R−GUN・・・いや、プラスパーツを装備した真の姿『R−GUNパワード』だ。搭乗者は勿論ヴィレッタだ。
その隣にはクイーンフェアリーとバイパーUが待機している。とくにクイーンフェアリーはトランクのような物を両手に持っている。補給用物資が機体内に納まりきらないので、こうして手に持っていくほか方法が無かったのだ。だが、その量はエクスカリバーと合わせれば、長距離遠征に十分過ぎる量だ。
そして、ヴィレッタのR−GUN、ミオのクイーンフェアリー、プロンガー曹長のバイパーUが飛び立つ。
最後に飛び立つのは、レイカのディアナ17とサルペンが乗ったバイパーUだ。注目するのはサルペンのバイパーUだ。プロンガー機と識別の為に、標準の赤色ではなく紫に塗装されている。
「個人的には、赤がいいんだけどね・・・」
サルペンはそう呟くと、隣のディアナが口元を押さえた。恐らくそのぼやきを聞いて、レイカが微笑んだのだろう。
そして、残ったバイパーとディアナも大空目掛けて飛び立った・・・・
大空に舞い上がった、8機は雲の上に出ると陣形を組んだ。速度は飛行速度の一番遅いR−GUNに合わせている。
R−GUNのコクピットでヴィレッタは、航路図を睨みながら心の中で呟いた。
「七号機に追いつければいいのだが・・・・無茶するなよ・・・」
カシャンッ──
軽い音を立てて、フェイの首から爆弾首輪が外れた。バトリングチャンプとなった事で、無罪放免となったのだ。これでフェイは大手を振って表を歩く事が出来るのである。
あとはキスレブを脱出するだけである。フェイは早速キスレブを脱出する為の情報収集にキスレブ市内を探索する事にした。勿論シタンや香田奈、サポートクルーであるハマーも一緒だ。
「そうか・・・・キスレブを離れるのか。お前とは一度本気でやりたかったんだけどな。」
そう言ったのはジンだ。情報収集の傍ら、友人と言えるだけ親しくなったジンには、是非声をかけたかったのだ。
ジンはフェイと解れる事を、惜しんだ。
「キスレブから出る方法か・・・・。それは俺にも解かんねえな。お前、訳ありなんだろ?普通に出国する訳にはいかねえよな。」
ジンの隣にいたサンタナが、相変わらずガムをクチャクチャ噛みながら言う。
フェイは表向き、『領土侵犯』と『ギア強奪』の容疑がかけられていた。無罪放免になったとはいえ、新型ギア開発のデータがより多く欲するキスレブ政府が、易々と出国させる筈は無い。何かにつけて、フェイを拘束させようとするのは目に見えている。
「闇のルートか・・・強硬手段・・・。1番良いのは、アヴェ辺りが攻めてきたドサクサを狙うのが最高なんだけどな。」
サンタナは冗談混じりにそう言った。だが、そう簡単に事が進む訳が無い。
「ま・・・何か良い方法があったら教えてやるよ。」
ジン達と別れる間際サンタナはそう言ってくれたが、あまり期待は出来ない。とりあえずフェイ達は情報収集を打ち切り、宿舎で休む事にした。
酒場の二階・・・・・それがバトリングチャンプに与えられたキング専用の宿舎だ。今まで収容されていたD区画の宿舎とは雲泥の差だ。
収集を後日に改める事にしたフェイ達はそこで夕食をとっていた。
「やっぱり、ヴェルトールを取り返すしか、無いんじゃないかな?」
香田奈がフェイに進言した。
「ヴェルトールを?でも・・・・」
いい顔をしないフェイ。できる事なら、何かと災いを呼ぶヴェルトールとは縁を切りたいからだ。
「ワガママ言わない!ヴェルトールなら、強硬手段で国境を突破できるし、動きも速いから追撃を振りきれるよ。」
「そうですね。ヘイムダルとR−ガーダーは、目のつきにくい場所に隠してありますけど、総統府の外に出なくてはなりませんし・・・」
シタンが言うと、フェイは少し考えこんだ。
そんな時だった。
「フェイの兄貴〜〜〜〜!!!!!」
ハマーが絶叫しながら、部屋に駆け込んで来た。
「た・・・大変でヤンス!!キングが・・・じゃなかった、リコのダンナが、ダンナが・・・・」
「落ちつけ!リコがどうかしたのか?」
フェイが沈めるように言う。ハマーは呼吸を整えて、再度口を開いた。
「へ・・へい。リコのダンナが、明日の晩、処刑されるでヤンス!」
「処刑!?どう言う事だ!」
ハマーが言うには、キングの座から転落したリコは、愛機の修理が終わると同時に、バトリングの最中にバトルフィールドから突如、観戦中だったキスレブ総統、ジークムントの観覧席目掛けてギアごと突っ込んだらしい。
だが、ギアでの攻撃は失敗。そのまま期待を放棄、生身で総統暗殺を企てたが未遂に終わり、捕らえられてしまったのだ。
「なんで、そんな事を・・・・」
フェイが驚きながら尋ねた。ハマーは、話を続けた。
「これは、アッシも偶然手に入れた情報なんでヤンスが、実はリコのダンナは、総統と血縁関係にらしいんでヤンス。」
「血縁!?」
フェイが驚くと、ハマーは頷いた。
血縁と言っても、どのような間柄なのかはハマーも掴めていない。だが、リコは母親の無念を晴らすために、バトリングチャンプという立場を利用して、ずっと暗殺の機会を伺っていたらしい。そしてフェイに敗れた事を総統が知り、復帰戦を観戦しに来た。
リコはそこを狙ったらしい。
「お母さんの無念を・・・・」
話を聞いて、香田奈が胸を押さえた。
「明日、処刑されるでヤンス・・・・」
するとフェイは、意を決したような顔をしてシタンと香田奈の方へ向いた。そして一言。
「リコを助ける。」
その頃、アヴェとキスレブの国境付近の原野のど真ん中で、一機のロボット・・・・・Rマシン七号機が立ち往生していた。
そして、その機体を操縦していた者の一言。
「ガス欠・・・・・・」
さらに一言。
「ここ・・・・・何処?」
リコが処刑される日の晩・・・・・・フェイはD区画のとある工場の屋根の上にいた。
「いいですかフェイ。この下を列車が通る時を狙って飛び移りますよ。」
「OK、先生。」
フェイとシタンは、リコを助け出すと同時に、ヴェルトールを奪還する為、ギアドックに忍び込もうとしていた。
ヴェルトールは、普通のギアと異なり、キスレブ政府が直々に管理しているらしく、バトリング用のギアドックにはおさめられておらず、政府の軍用ドックに収容されていると言う事だ。勿論この事は、昼間のうちに調べておいたのだ。
そして、軍用ドックに忍び込むには、市街地から軍用施設に物資を運ぶ輸送列車を使う事にしたのだ。
流石に、屋根の上から走る列車に飛び乗るというアクロバティックな事が、香田奈には出来ない。その為香田奈は、一足早く市街地へ出て、R−ガーダーの元へ向かうことにしたのだ。
チンチンチン・・・・列車の近づく事を表す音色が鳴った。フェイとシタンは眼下を除きこむ。
「来たな・・・・」
やがて轟音を立てて、列車が近づいてきた。
「行きますよフェイ!」
次の瞬間、フェイとシタンは、屋根から飛び降りた。
「隊長!見つけました!七号機です!」
リュウセイが叫んだ。R−WINGの眼下に、原野のど真ん中で立ち往生している七号機があった。
「あんなとこでなにやってんだ?」
サイモンが呆れたように呟き、ラファーガを人型に変形させ地上に降りた。
そして次々と着陸するオンディーヌ隊の面々。最後にR−GUNパワードが降り立ち、七号機に近づいてきた。
「お前、こんな所で何をしている?キスレブに向かったんじゃないのか。」
そして帰ってきた答え。
「ガス欠?道(?)に迷った?」
次の瞬間、リュウセイ大爆笑。
「何故助けた・・・・・」
リコは、目の前のヴェルトールに向けて話しかけた。ヴェルトールの背後には、巨大な恐竜のような生物が横たわっている。リコの処刑を面白く、そして残酷にする為の肉食獣だ。
処刑は、この生物と戦わせる事だったのだ。リコは死を確信した。万が一にも勝ち目は無い。
だが、突然のヴェルトールの登場により、彼は命を救われた。
「何故、助けたんだ・・・」
再度尋ねた。
「さあな・・・・。俺はコイツ(ヴェルトール)を取り返したかっただけだ。逃げるなら今のうちだぜ・・・」
フェイはそう言って、ヴェルトールのエンジンを吹かし、飛び立って行った。
「合流時間は過ぎてるのに・・・・どうしたんだろう?」
一足早く、総統府を離れた香田奈が、R−ガーダーの中で心配そうに呟いた。
「なにかあったんじゃあ・・・」
そう言って、機体のカメラを望遠にして周囲を見渡した。だがヴェルトールの姿は見えない。
だが、そのかわりにカメラに何かが飛びこんできた。
「なっ!何よあれ!!」
R−ガーダーのカメラに映った物・・・・・・それは上空に浮かぶ、巨大な空中戦艦であった。
そう!爆弾戦艦ヘヒトが、ついにキスレブに辿りついたのだ。
「攻撃開始!」
エリィは、部下であるゲブラー特務部隊に指示を出した。
次々にキスレブ総統府に攻撃を仕掛けるソラリスギア部隊。街のあちこちから火の手が上がり、夜のキスレブ首都は赤く染まった。
「私は・・・・軍人・・・命令には絶対・・・・」
多くのソラリスギアが空爆や、迎撃に出たキスレブギア部隊を攻撃している。高性能なソラリスギアに対して、キスレブの首都防衛部隊は成す術無くやられていく。
ソラリスギアの空爆で、軍事施設や総統府だけでなく、市街地や民間施設も破壊されていく・・・・。広がって行く戦火。逃げ惑う民間人・・・・
「でも・・・私は・・・私は・・・フェイ、貴方だったら・・・」
エリィは、軍人としての自分と、人間としての自分の間でせめぎあっていた。
「はははは!!楽勝、楽勝!」
新しい愛機の中で特務部隊の一人フランツは笑っていた。彼の目の前で、またキスレブ軍の兵器が破壊された。
「フランツ、あまりはしゃぐな。また出鼻をくじかれるぞ。」
同じ部隊のランクが注意を促す。
「まあ、いいじゃないか。そういうお前も楽しそうじゃないか。」
特務部隊の一人ストラッキイが笑みを浮かべていた。彼等のギアも真新しい。
以前、2度に渡りオンディーヌ隊とフェイに敗れた、彼等ゲブラー特務部隊には新型のギアが与えられていた。外観は殆ど変わりないが、アビオニクスや駆動系・エンジン・コンピューターOSに至るまで手を加えられた『ワイドナイツR』・『ソードナイツR』・『シールドナイツR』・『カップナイツR』である。
ゲブラー特務部隊の自信はここから来ていたのだ。
その為か、キスレブ首都防衛部隊が全滅したのは当然とも言えた・・・・
「うおおおおお!!!」
フェイが吠えていた。掌打がソラリスギア達をなぎ払う。所詮は一般兵の雑魚ギアなど、ヴェルトールの敵ではない。
「ソラリス・・・・・」
フェイはキッと空を見上げる。そこには巨大な空中戦艦が多くの爆弾を投下し、市街地に爆撃を繰り返していた。
この戦闘の混乱を利用すれば、キスレブ脱出なぞ容易だろう。キスレブには義理も何も無い。ここからさっさと出て行きたいのは本心だ。
だが、フェイはそうしなかった。無差別な爆撃が許せないのもある。だが、それ以上に空爆を仕掛けているギア部隊の中にヴェルエルジュ・・・・エリィのギアを見つけたからだ。
「君はこんな事をする人間じゃあない!」
フェイはそう確信していた。今度こそ、説得してみせる・・・・・。フェイはその一心で戦っていた。
「くそっ・・・・数が多い。このままじゃエリィに辿りつく前に・・・」
フェイが顔をしかめた。するとヴェルトールの背後にいたソラリスギアが爆発した。
「!?」
フェイが振り向くと、そこにはR−ガーダーの巨体があった。
「フェイ君!加勢するわ!」
格闘戦を挑んできたソラリスギア一機を握り潰しながら香田奈が言った。
「けど・・・・ちょっとR−ガーダーじゃあキツイなぁ・・・」
意気込んだ香田奈ではあったが、陸戦タイプで格闘戦を重視しているR−ガーダーでは、飛行可能なソラリスギアを相手にするには、確かにきついものがある。
頭部のバルカン砲で、牽制しつつ、接近してきたギアを長いリーチを持つ腕で叩き落すという、消極的手段しか取れなかった。
飛び道具で攻められたら、反撃のしようがない。胸の速射砲は射程が短いし、ビーム砲は足に装備されている為、空に向かって放つ事が難しいのだ。
「それでも・・・・やるしかないっ!」
香田奈は、念動フィールドを張りつつ、地上にいたギアを数機、アッパーカットで倒した。強烈なアッパーを浴びせられたギアは高く舞い上がり、その上を飛んでいた不運なギアをも巻きこんで爆発した。
その頃、シタンは、民間人を避難誘導させていた。
「皆さん。落ちついてください!冷静に行動すれば大丈夫です!!」
そう叫んではいるが、こんな状況で冷静さを保てるわけが無い。逃げるので手一杯だ。
シタンは、戦闘の様子を見てみた。キスレブの防空部隊は既に壊滅している。恐らくこの空爆で、他の軍事施設もやられているだろう。
現在戦っているのは、ヴェルトールとR−ガーダーの二機だけだ。しかもR−ガーダーは陸戦用。空に対する装備は無いのだ。劣勢は誰が見ても明らか。
「このままでは・・・・」
そんな時だった・・・・・
「そこまでだっ!悪党ども!」
戦場と言う、善も悪も無い場所には似つかわしくない声が響いた。ソラリス軍が一斉に声のした方向を向いた。
「な・・なんだ?」
ランクが不思議な顔をして声のした方を見ていた。
「何処のどいつだ?人を悪党呼ばわりしてんのは!」
フランツが怒鳴り、その一点を睨みつけた。
するとそこには、燃え盛る街をバックに、高い建物の上に赤い人型ロボットが腕組みして立っていた。
「戦争と言う、愚かな行為でも単なる殺し合いではない。戦場においても厳格な、そして最低限のルールは存在する。」
赤いロボットは、そう言った。
「ルールの無い戦いは、それはもう戦争ではない。単なる殺戮だ。誇りある軍人のする事ではない。志を持たない力はただの暴力!!」
赤いロボットは、ソラリス軍目掛けて指を突きつけた。
「ましてや、非戦闘員を巻き込むなぞ言語道断!」
そこで赤いロボットから、一人の男が姿を現した。
「この額の『V』の字に賭けて、貴様等に『正義の鉄槌』をくだしてやる!!」
そう言いきった男・・・・そう、ジン=サオトメだ。そして赤いロボットは、彼の愛機ブロディアだ。左腕は純正品になっている。完全な姿だ。
「ブロディアキッィィィィクッ!!!」
響き渡るような熱い叫びと共に、ブロディアの飛び蹴りが数機のソラリスギアに炸裂!たった一発の蹴りに四機が吹き飛ぶ!
「アッパァァァァ!!!」
着地と同時に、またもや熱い拳が三機を吹き飛ばす。すさまじい強さだ。
「ジン・・・・手を貸してくれるのか。」
フェイがブロディアに向かって呼びかける。
するとジンは、にやっと笑った後、大きく頷いた。
「当たり前だ。俺は友の危機は見捨てん。」
「友・・・・」
友という言葉にフェイは感動した。知り合って一週間も経っていないのに、もう何年も付き合った親友のような気持ちがフェイの体を駆け巡った。
そこでブロディアが右腕を差し出す。フェイはヴェルトールの右腕を差し出すと、御互い強く握り合った。
「さあ!悪党どもを叩きのめしてやろうぜ!」
ジンが笑顔を見せた。フェイは大きく頷いた。
「悪党・・・・そうね。こんなものを原子炉に落そうなんて、本当・・・悪以外何者でもないわ・・・・」
エリィはヘヒトを眺めながら、そう呟いた。
「私は・・・・。悪党なのかな・・・・フェイ・・・」
「なに!?あの天辺にいる白い奴を説得したい?」
盾に装備された、機関砲を乱射しながらジンはフェイに尋ね返す。
「そうだ!彼女は・・・エリィはこんな事を・・・・ソラリスにいるような女じゃない!話せば解ってくれる筈だ!」
前蹴りで、敵の腹部を貫きながらフェイは言った。
「よっしゃ!解った!お前の言葉を信じる。そのかわり成功させろよ!」
「ああ!だが、この包囲網を突破しなきゃ・・・・」
フェイの言う通り、爆弾戦艦の傍にいるエリィの元へ辿り着く為には、数多くのソラリスギアを突破しなくてはならなかった。
「でも・・・・数が多すぎるわ・・・・おまけに私飛べないし・・・」
香田奈が申し訳なさそうに、言った。確かにこのギア部隊を突破するには、多くの味方機の援護か、強力な大型火器が必要としか思えない。
「くそっ!数が多すぎる!」
フェイが、指弾と機関砲で数機落すが、その程度では包囲網を突破できない。
すると、ブロディアがヴェルトールの肩を叩いた。
「フェイ。一機一機に構っても、あそこへは辿りつけない。俺に任せろ。」
ジンが自信満々に、言う。
「出来るの?その機体に、それほどの大型火器が?」
香田奈が尋ねた。するとジンは笑みを浮かべて首を横に振った。
「火器?違うな〜。そんなモンに頼らなくても、方法は幾らでもあるんだぜぇ・・・」
ジンはそう言って身構えた。香田奈は、スゴイ気孔波でも放つのかな?と感じた。
「サオトメサイクロンを、憶えてるか?」
ジンがフェイに尋ねた。
「ああ・・・憶えてる。身体全体で竜巻みたいになって突撃する技だろう?」
頷くジン。
「そうだ。その技を応用し、ブロディア用に編み出した技がある!!」
そう言い、呼吸を整え出したジン。香田奈には何をやるのか理解できない。
「何をする気だ?」
特務部隊のヘルムホルツが、奇妙な構えをするブロディアを不思議そうに見つめていた。戦場で、あんな不可思議な動きをするとは正気とは思えない。
「へっ!大方、命乞いのダンスでも踊ってくれるのかもよ!」
フランツが嘲笑する。
だが・・・・彼等はこの後、思い知らされる事となった・・・・・。
ジン=サオトメの強烈過ぎる力に・・・・・
「超級!サオトメっ!電影だぁぁぁぁぁんっ!!!」
その絶叫のすぐ後、ブロディアのボディは、頭部を残して体全体が高速回転し始めた。しかもその回転しているボディは、何かオーラと言うかエネルギーの塊のような物を帯びていた・・・・
「撃てっ!フェイィィィッ!!!」
「おっしゃああああああ!!!」
ジンの激を受けて、フェイはブロディアの後部を思いっきり掌打で叩きつけた。
「うおおおおおりゃあああああああああ!!!!!!!」
エネルギーと言うか、オーラと言うか・・・・・とにかく凄い勢いで回転しているブロディアは砲弾と化し、次々とソラリスギア部隊をなぎ払って行く。
とても人間技・・・・いやVA技とは思えないインパクトだ。
その光景は、現実一直線のソラリスの兵士はおろか、ゲブラー特務部隊でさえ、筆舌に絶えない光景であったに違いない。
「な・・・・なんなんだよぉ・・・アイツ・・・」
「わ!解らんっ!」
「・・・・ど・・どうやったらあんな事が・・・・」
「ば・・・バケモノ・・・バケモノだ・・・」
「おちつけっ!落ちつくんだぁぁ・・・・」
特務部隊は混乱していた。
雄叫びと共に、ギアをなぎ払って行くブロディア・・・・・。理解できる筈の無い光景だ。まともな軍人ならパニックに陥るな・・・と言う方が無理と言うもの・・・・
そして、過半数のギアを葬ったブロディアはようやく回転を止めた。そして・・・
「ダイナマイツッ!!!」
この叫びの一言で、ブロディアが突き進んだ直線から、膨大な爆発が起こった。雑魚ギア部隊、8割消滅・・・・
その隙をフェイは見逃さない。スラスターを吹かして、一気に飛びあがった。
「エリィィィ!!!」
勿論、ゲブラーも馬鹿ではない。崩れた態勢を立て直し始め、ヴェルトールの行く手を阻もうとする。だが、そこへ機銃弾が飛んでくる。
「フェイ君の邪魔はさせないっ!」
香田奈が空中のギア達を睨んだ。フェイの為に自ら標的になろうとしているのだ。思惑通り、ソラリスギア達はR−ガーダーを狙い始めた。
「いいわよ・・・・私を狙え・・・。フェイ君、頑張りなさい。」
そして、エリィのもとへ向かうヴェルトールに、新たにゲブラー特務部隊が立ちはだかる。
「貴様をヘヒトに近づけさせん!」
「今の俺達を今までと一緒と思うな!」
シールドナイトRとソードナイツRが立ちはだかる。
「くっ・・・・」
顔をしかめるフェイ。だがそこへ機銃弾が飛んできた。ジンのブロディアではない。
「シューティア・・・・リコ・・・・」
飛んできたのは、リコが駆るギア、シューティアだった。
「ここは任せろ。行け・・・・」
「どうして・・・・」
するとリコは軽く微笑んだ。
「借りを返しに来た。」
シューティアが加わった事で、ゲブラーを突破したヴェルトールは、エリィのヴェルエルジュに急接近していた。だが、ヘヒトの弾幕が激しく接近が難しい。
「コイツを黙らせないと・・・・・」
そこへブロディアがようやく合流した。
「とりあえず、コイツをなんとかするぞ!」
「くっ!流石にキツイ・・・・」
香田奈は、ハアハアと息を荒げていた。フェイ達を行かせる為に、自ら雑魚の標的になっていた。だが満足な対空装備の無いR−ガーダーは、空中からの攻撃に対して無力に近い。念動フィールドと分厚い装甲で耐え忍んでいたが、やられるのは時間の問題であった。
「どのみち・・・・私の念動力が衰えればやられる・・・。空・・・空さえ飛べたら・・・・」
香田奈は無念そうに呟く。集中力が途切れそうになる・・・・、背後からのギアの接近に気付かない。
「!!後ろっ?」
だが、気付くのが遅かった。ギアはライフルを構えている。やられはしないだろうが、大ダメージは必至!
「念動ダブルレーザーキャノン!!!」
空中から、突然絶叫と同時に、二本の光が走った。そしてその光はソラリスギアを貫いた。
「え!?」
突然の出来事に驚く香田奈。するとR−ガーダーの頭上を、何か四枚の羽根をつけた飛行機のような物が通りすぎた。
「今のは・・・・。それに今の声は・・・・」
呆然と呟く。すると、空から次々をバルカン砲やビームが迸り、残存ギア部隊を蹴散らす光景が香田奈の目に入ってきた。
「香田奈さん!無事か?安心してくれ助けに来たぜ!」
一機の戦闘機から、聞き覚えのある声が聞こえてきた。そしてその戦闘機は、R−ガーダーの目の前で人型に変形した。
「リュウセイ少尉・・・?そのロボットは・・・・」
香田奈が尋ねると、リュウセイはニカっと笑みを浮かべた。
「よくぞ聞いてくれた!これが俺の本来の愛機『R−1』だ!」
「それがR−1・・・・」
香田奈は、目の前のヒュッケバインに似たロボット、R−1を見て呟いた。話には聞いていたが、現物を見るのは始めてだった。
「ヴィレッタ隊長やサルペンさんも来てくれてるぜ。安心してくれ。それと・・・・」
リュウセイが何か言いかけた時、R−1の背後にゲブラーのギア、カップナイツRが突っ込んできた。
「リュウセイ少尉!後ろっ!」
「戦場で背中を見せるが最後だぜっ!」
フランツが叫び、パワーアームを振りかざしながらR−1に襲いかかる!!
「うおおおおっ!!」
リュウセイは素早く振り向き、回避も行わずそのまま突っ込んだ。そして、カップナイツRの眼前で両足を思いっきり踏みしめ、背中からカップナイツに体当たり技を浴びせる!!
ドガァァァンッ──
見事なカウンターだった。体当たり技を浴びせられたカップナイツは胸部が見事にへこみ、火花を上げて仰向けに倒れていた。
「その程度の奇襲で、俺とR−1を倒そうなんざぁ・・・・」
「十年早いんだよッ!!」
「すごい・・・・リュウセイ少尉。今のなんて技?」
香田奈が尋ねた。リュウセイは思い出すようにして答えた。
「確か・・・・中国拳法の一派で八極拳の技で・・・ええと『鉄山なんとか』っていう技だ。」
だがその会話に割りこむ者が現れた。ヴィレッタだ。
「リュウセイ少尉!何をしている。雑魚はサイモン少佐達に任せて、爆弾戦艦を!」
ヴィレッタの言葉にはっとしたリュウセイは、了解!と答え、またも変形して飛びあがった。
「香田奈中尉!詳しい話は後だ。お前もすぐに爆弾戦艦投下阻止に参加しろっ!」
気付けば、R−ガーダーのすぐ傍にR−GUNが浮いていた。
「了解。でも・・・R−ガーダーは空が・・・」
するとそこにミオが割りこむ。空中にクイーンフェアリーが、ラファーガにミサイルを装填していた。
「いいえ!飛べます!R−ガーダーは飛べますよ、香田奈さん。」
「え?」
すると、先ほどR−ガーダーに援護射撃を浴びせた機体がまたも接近してきた。
「あれは?」
「Rマシン七号機・・・・空戦用にして多目的、及びR−ガーダーならびにSRXの機動力向上の為に開発されたPT・・・」
香田奈は、七号機の姿をじっくりと見た。
巨大過ぎる推進器ユニットにはりつけ・・・またはうずくまるように、中央にヒュッケバインやR−1似た細身のPTが納まっている。しかもその両腕には無骨で大型のライフルがある。
一瞬、両足のように見えた物は、中央の華奢なPTとは不釣合いな程大きなスラスターユニットだった。
さらに両脇には、それぞれ一門ずつ長距離砲が装備されている。先ほどの攻撃から察して、レーザー砲だろう。
そして巨大な四枚の翼・・・・・明らかに大気圏内飛行が可能と思える。
そして、Rマシンと言う事はT−LINKシステムも装備されているのだろう。恐らく空力特性は念動フィールドで構成しているのかもしれない。
「七号機、R−ブースターと合体する事で、R−ガーダーは空が飛べるんです。」
「R−ブースター・・・・でもパイロットは?ライ少尉?」
するとミオはクスリと笑って、答えた。
「いいえ・・・香田奈さん。あなたが一番会いたがっている人・・・そしてあなたの事を一番大切に思っている人ですよ。」
「え・・・・。まさか・・・」
香田奈は今一度、こちらに近づいてくるR−ブースターを見つめた。そして何かを感じていた。
「まさか・・・・まさか・・・・」
「待たせたな!姉ちゃん!俺が来たからにはもう安心だ!!」
コクピットのモニターに映ったパイロット。それは真新しいパイロットスーツに身を包んだ、将輝だった。
「しょ・・・しょうちゃんなの!?本当に!本当に!」
香田奈は涙目で叫んだ。
「当たり前だぜ!ゴメンな姉ちゃん、心配かけて。正真証明、匕首将輝だぜ!」
「ああ・・・・・しょうちゃんが・・・しょうちゃんが・・無事・・・」
「姉ちゃん!感動の再会は後だ!非常用ロケット吹かしてくれ!合体するぞ!」
「え・・・ええ!!」
香田奈は涙を拭うと、R−ガーダーの足の裏のロケットを吹かして、飛びあがった。その背後にはR−ブースターが急接近している。
「合体プログラム送信!いくぜ・・・・念動合体!!」
R−ブースターから誘導レーザーが発射され、それがR−ガーダーの背中に突き刺さる。そしてレーザーを通じて、合体用プログラムが転送されて行く。
「R−ブースター、モードチェンジ。ブースターモード!!」
将輝の声に反応し、R−ブースターは、航空機に似た形状に変形する。
「いくぞぉ・・・T−LINKクロォォォスッ!!」
R−ガーダーの後頭部を保護する装甲と背中の装甲の一部が展開し、そこへR−ブースターが合体する!!
ガシャンッ!!──
機体同士が完全に繋がったロック音と震動がコクピットに伝わってきた。R−ガーダーのコクピットのモニターに、『合体完了』をしめす表示が現れる。
「合体完了・・・・『R−G=ブースター』起動ッ!!」
将輝と香田奈は同時に叫んだ。匕首姉弟は一つになったのだ。
「砕きぃぃぃっ!!」
ジンの絶叫!ブロディアのパンチが爆弾戦艦の艦橋を言葉通り砕いた。爆炎を上げ機能を止める爆弾戦艦の艦橋。
「ふう・・・。てこずらせやがって。」
ジンが安堵の息を漏らす。するとそこへR−GUNやR−WING、ディアナやバイパーが近づいてきた。
「んん?あの姉ちゃんの仲間か?もう終わったぜ。」
ジンがそう呼びかけた。だが、次の瞬間、爆弾戦艦はゆっくりと降下を開始し始めた。
「な・・・何!?」
その様子にヴィレッタは叫んだ。
「しまった遅かったか!!」
「ヘヒトが落ちる・・・・」
エリィは降下をはじめたヘヒトを見て呟いた。
「エ・・・エリィ?」
やっとエリィのもとへ辿りついたフェイが、話しかけるが反応がおかしい。そして次の瞬間、ヴェルエルジュはいきなり急加速して、ヘヒトの先端に取り付いた。
「エリィ!どうしたんだ!」
フェイもヴェルトールを同じようにヘヒトに取りつかせた。
「フェイ、良く聞いて。ゲブラーはこの爆弾戦艦を、キスレブの首都近郊の原子炉へ落そうとしているの!!」
「なんだって!!そんな事をしたら、放射能で人が死ぬ!それどころかこの辺りは人が住めなくなる!!」
「そうよ!だから・・・だからせめて軌道さえ変えれば・・・」
エリィの顔は必死だ。ヴェルエルジュのスラスターも限界まで吹かしている。嘘は言っていない。
「解った!みんな協力してくれ!!」
フェイは皆に呼びかけ、ヴェルトールのスラスターを全開にする。
「了解したぞ!全機取りつけ!原子炉落下を防ぐんだ!!」
ヴィレッタが叫び、R−GUNを初め、バイパーがディアナが、シューティア・ブロディアが取りつく。皆スラスターは全開だ。
「皆でやれば軌道は変えられる・・・・」
エリィは必死に操縦管を握っていた。
「いや!破壊する!!」
「え?」
いきなりの声にエリィは驚いた。こんな状況で冗談を飛ばす輩などいるはずが無いからだ。
「俺達に任せろぉ!!」
すると、地上から物凄い勢いで、何かが急上昇してきた。R−ガーダーだ。R−ブースターと合体した事で飛行能力を得たのだ。
「うりゃああああああ!!!!」
将輝が叫び、ヘヒトの先端に取り付く。
「いくぜえ・・・R−ブースターの推進力と・・・・」
「R−ガーダーのパワーが合わされば・・・・」
香田奈が思いっきり力を込める。
『恐れる事は・・・無いっ!!!』
将輝と香田奈は同時に叫ぶ。そしてR−ガーダーの両腕に力が入る・・・・
「ヘ・・・ヘヒトが・・・」
エリィが驚いた。
「押し返されてる・・・・56,000tの爆弾戦艦が・・・・」
「うおおおおおおお!!!!」
「うわああああああ!!!!」
姉弟の絶叫に呼応してR−ガーダーはヘヒトを押し返す。そしてキスレブ首都から離れた所まで押しやった。
「いくぜ・・・仕上げだ!姉ちゃん、力貸してくれっ!」
「もうなんでもいいわよっ!しょうちゃん!」
R−ガーダーはヘヒトを渾身の力で、押し投げた。そしてR−ブースターの二門のレーザーキャノンを展開させる。
ちょうど、R−ガーダーの脇の下から砲身が顔を出す。腰だめで銃を放つように・・・
「念動フィールド展開・・・・いくぜ・・・・」
将輝が狙いを定める。香田奈は念動力に専念。
「念動壱式砲!!ファイヤぁぁぁ!!」
R−ガーダーの両脇から、緑色の光線が発射された。その光は物凄い勢いでヘヒトへ突き刺さる・・・・そして
「やった・・・・」
将輝と香田奈の目の前で、爆弾戦艦は爆発四散した・・・・・。粉々に吹き飛び、市街地ならびに原子炉への落下も防がれたのだ・・・・
「しょうちゃん・・・・・」
地上に戻った香田奈は、R−ブースターから降りてきた将輝を見つめていた。将輝は今までのブカブカのイングラム用のスーツではなく。リュウセイやライと同じデザインのスーツを着ていた。
「姉ちゃん・・・」
香田奈が将輝へ歩み寄って来た。そして・・・・
パッシーンっ!──
香田奈の平手打ちが将輝の頬に炸裂した。
「な・・・何すんだよっ!」
いきなりの平手打ちに、将輝が怒鳴る。が・・・・
「ばかっ!!無事だったら無事って、連絡ぐらいいれなさいよっ!」
逆に怒鳴り返されてしまった。だが・・・
「本当に・・・・ホントに・・・死んじゃった・・・かと・・・思ったんだから・・・・」
大粒の涙を流しながら香田奈は言葉に詰まり詰まり話した。
「姉ちゃん・・・ゴメン・・・俺・・・」
がばっ!──
香田奈は将輝を力一杯抱き締めた。
「もう・・・良かった・・・。無事で・・・しょうちゃん・・・もう離れないでよぉ・・・・」
「姉ちゃん・・・・。うん・・・ずっと一緒だよ・・・」
「あ・・・そうだ。」
香田奈は、何か思い出したように、身体を将輝から離した。
「??」
疑問調の顔をする将輝をよそに、香田奈は胸元をまさぐった。
「ええと・・・あ、あった!」
香田奈の胸元から一枚の青いバンダナが姿を見せた。そう・・・将輝の愛用しているバンダナだ。
「巻いてあげるね・・・」
そう言って、将輝の額の髪をかきあげた。露になる将輝の火傷の痕・・・香田奈はそこに、そっと口付けし、その後バンダナを巻いた。
「やっぱり、しょうちゃんには似合うよ・・・それ・・」
将輝は照れながらも、笑みを浮かべた。
「これ・・・・姉ちゃんの匂いがするよ・・・」
次回予告
新たな力!そして新たな仲間を加えたオンディーヌ隊!だが!そんなオンディーヌ隊を知らぬ所で、新たな悪が動き出そうとしていた!!
日本で修理中のキカイオーを狙って、ゴルディバス軍の下請け組織(?)日本を襲う!!襲撃タコ型VA!!
そしてレイカやお嬢様軍団に対抗心バリバリの財閥の高校生が、TDFに新たなスーパーロボットを売り込む!起動せよ、ゴッドリラー!!
そして、アヤ=コバヤシの前に現れた、匕首家次女がついに立ち上がる。君の出番だ、『匕首 薙(あいくちなぎ)』!
次回、サイバーロボット大戦第二十九話 『アヤとドリルと妹と』に斬艦刀、稲妻重力落しっ!!
次回もドリルと参式がすげえぜ! 「ドリルのドリルによるドリルの為の戦いがはじまる・・・」