二十二話   『魔法少女と聖霊機』




 「・・・・いってて・・・・。みんな無事か?」
トウヤはくらくらする頭を押さえて言った。
 「大丈夫・・・・トウヤ・・・」
 アイが同じように頭を押さえて言った。見ればリーボーフェンのブリッジ中の人間が同じように頭を抱えているか、いまだ意識を取り戻さず倒れているかである。
 「あ〜メガネ・・・メガネ・・・。」
 青いブレザーを着た少女が床に手をついてあちこち手探りしていた。
 「ほらよ。大丈夫か?カスミ・・・」
 トウヤがカスミの近くに落ちていた眼鏡を広い、カスミに手渡す。
 「ありがと、トウヤちゃん。でも・・・何が起きたの?」
 トウヤは答えられなかった。自分にも何が起きたのかさっぱりだからだ。
 やがてブリッジの人間はほぼ気を取り戻したようだ。すぐさま状況の把握と現在地について調べ出した。
 「砂漠・・・?アガルティアにこんな砂漠なんてあったか・・・」
 190cm以上はある肩幅のしっかりした男がブリッジの眼下に広がる景色を見て呟いた。
 「こんな広大な砂漠は、アガルティアにはありませんよ、クロビス。私はなんだか故郷を思い出しますね。」
 知的な風貌の黒人男性が答える。
 「だよなアーサー。そういやお前ジンバブエの出身だったな。」
 アーサーと呼ばれた男性は頷いた。その背後では数人のブリッジクルーが現在地を確認しようと必死でコンソールを叩いていた。
 「アガルティアの何処の地とも一致しない・・・。どう言う事・・・?」
 副艦長の席についた薄紫の長い髪をした女性がコンソールに表示されるデータに頭を傾げた。
 「ユミールさん。ひょっとして私達、リーボーフェンごと地上に放り出されたんじゃぁ無いですかね?」
 アイが副艦長席の女性に呼びかけた。
 「アイ・・・それはありえないわ。第一、貴方達地上の人間はまだ因果律の鎖から解かれていないのよ。もしここが地上なら、貴方達は因果律の崩壊で存在自体が消滅してしまうわ。」
 ユミールの言った事は正論だった。トウヤやアイ達は何らかの原因で、自分達が住んでいた世界の因果律が崩壊しかかり、存在が消滅しかかっていた。そこでアガルティアという異世界に召喚される事でその存在を維持しているのだ。
もし安易に地上に戻れば、因果律の崩壊に巻き込まれその存在を失う事になる。
 つまり『最初から存在しなかった』事になってしまうのだ。
 「でも・・・・ここどう見ても地上みたいな雰囲気なんだけどね。」
 金髪の白人女性が外の光景を見て呟く。
 「オーレリィさんの言う通りですよ。ユミールさん、地上の世界地図と照らし合わせてみてくれませんか?」
 カスミがユミールに進言する。頷くユミール。
 「解ったわ。シスク、お願いできる?」
 「はい、解りました。」
 シスクと呼ばれた観測主の女性はコンソールを叩いた。すると・・・
 「解りました!周囲の地形データと照らし合わせてみました結果、我々は南アメリカと呼ばれる大陸の北部に位置しています。」
 すると、クルー達はざわざわと騒ぎ始めた。
 「やっぱり、地上なのか・・・?」
 トウヤはそう呟いた時、砂漠の向こうで何かが動いたように見えた。
 「なんだ?」
 それは十数機の人型ロボットと地上戦艦であった。
 「装兵機・・?違う・・ロボット!ロボットだ!」
 トウヤは叫んだ。するとブリッジのレーダー中に機体反応が現れた。
 「当艦の周囲に無数の人型兵器と陸上戦艦の存在を確認!」
 シスクは叫んだ。
 「そんなバカな!俺達のいた地上には、あんな戦闘用ロボットは存在してないぞ!」
 クロビスが叫んだ。
 「じゃあここは何処なんですか!?」
 カスミが悲鳴に近い声を上げた。
 「知らないよ。大方、別の平行宇宙にでも来ちまったんじゃないか?私達は。」
 オーレリィが冷めたように言い放つ。そのセリフに頷くアーサー。
 「それが正解かもしれませんね。それよりまずいですよ、向こうの方々は我々に攻撃をしかようとしていますね。」
 アーサーの言葉は当った。地上戦艦がリーボーフェンに向けて攻撃を開始したのだ。そしてロボット達が突っ込んでくる。
 「おのれ!俺が叩き潰してやる!」
 マントを羽織った青年がブリッジから駆け出そうしていた。それを白髪の青年が止める。
 「止めろフェイン。」
 「何故止めるシゥチェン!」
 シゥチェンと呼ばれた青年は静かに口を開いた。
 「ここは地上でもアガルティアでもない。我々は言ってみればイレギュラーな存在だ。事を荒立てるわけにはいかない。」
 するとユミールは頷いた。
 「そうですね・・・・。ミヤスコさん!向こうの地上戦艦に通信を開けますか?」
 すると通信士の席についている金髪女性が頷いた。
 「周波さえ会えばなんとか・・・・」
 「すぐにコンタクトを取ってください!我々に敵意は無いと!」
 「はい!」




 その数時間前・・・・
 我等がオンディーヌ隊は、ファティマ城でのマルー救出作戦成功に沸き立っていた。
 そして後はマルーを聖地ニサンに送り届ける事となったのだが・・・・その道中で事は起きた。
 ・・・・・恐ろしい出来事が


 「嘘だろ・・・・こんなの嘘だろ・・・」
将輝が泣きそうな声を出していた。目の前の光景が信じられなかったからだ。
 「そんな・・・バカな・・・」
普段冷静なベイツ艦長でさえ絶句するほどの出来事であった。
 「な、なんてこと・・・・。ありえないわ・・・絶対ありえないわ・・・」
結奈が顔を真っ青にしていた。
 ホワイトローズの眼下には見渡す限りの荒野が広がっていた。砂漠地帯がやっと終わった地点での出来事であった。
 オンディーヌ隊の目の前には二機のロボットがいた。だが、一体は装甲が所々脱落し、露出した内部機関からは火花を散らし、大地に横たわっていた。
 「鋼鉄巨神が・・・・、キカイオーが負けた・・・・」
 将輝が力無く呟いた。そう・・・負けたのだ。今までどんな敵にすら破れる事の無かったキカイオーが負けたのだ。
 一体の不恰好なロボットの前に・・・・

 「これが愛の力のよ!」
 謎の不恰好なロボットから幼い少女の声が響いた。


 時はさらに数十分前の事であった。
 ユグドラシルと共にニサンに向かう途中のホワイトローズに、突如通信が入ったのだ。
 慌てて回線を開くと、モニターには一人の幼い少女が映った。
 「ねえ?その船にジュンペイ君いるんでしょ?」
 少女の第一声がそれであった。
 「君は何者だ?まずは君の所属と姓名を聞かせてもらおう。」
 艦長が表情を変えず言い返す。
 「あたしポリン!魔法の国から来たの。ね〜おじさん、ジュンペイ君に会わせてよ〜」
 「??ふざけているのか君は・・・。こうみえても我々は軍組織だ。子供の遊びに付き合ってはいられん。」
 すると、そこへ当のジュンペイがブリッジに姿を見せた。
 「んん?なんかあったんスか?」
 すると、少女はジュンペイの姿を見つけたとたん笑顔を見せた。
 「あっ!ジュンペイ君だ。やっほ〜ジュンペイ君、浮気してなかった?」
 「なんだ?お前は。年上を気安く呼ぶんじゃねえ。」
 ジュンペイはモニターに映る少女に怒鳴った。
 「やだ〜、ジュンペイ君、ポリンのこと忘れちゃったの?じゃあ思い出させてあげる。」
 すると少女は持っていたバトンを頭上に掲げた。
 「ボロン!やっちゃえ〜!!」
 すると、モニターには少女の代わりにガスタンクを中心に雑居ビル・漁船・バス・銭湯等が無作為に連結されたロボットが姿を現した。
 「な、何!?」
 いきなり現れたロボットに艦長達は度肝を抜かれた。そしてヴィレッタとジュンペイはまだ日本にいた時の事を思い出した。
 「あのロボットは・・・」
 「間違い無いぜ、隊長。あの時テクノドームを襲いにきたロボットだ!」
 ジュンペイが叫ぶ。
 「緊急警戒態勢!ユグドラシルにもそう伝えろ!」
艦長が直ちに指示を発する。艦内に警報が鳴り響く。
 「隊長!俺が行くぜ!ご指名には答えなきゃな。」
 ジュンペイはヴィレッタにそう言い駆け出していた。
 「解った。頼むぞ・・・。我々は万が一に備えて待機しておく。」
 「へっ!キカイオーに万が一もねえよ!」
そう意気込んでキカイオーが単独で発進した。ヴィレッタにもその時は油断があったに違いなかった。
まさか・・・その『万が一』が起きてしまったのだから・・・・・

 「やいやい!俺をご指名とはイイ度胸だな。お前もゴルディバスの一員だな!」
 ガスタンクロボ───ボロンの前に単独で現れたキカイオーは啖呵をきった。ジュンペイの威勢のいい声が荒野に響く。
 だが、予想もつかない返事が返ってきてしまった。
 「きゃ〜!さっすがジュンペイ君。カッコイイ〜!」
 「・・・・ふざけてんのかテメー!!」
 
 「どう思う?ヴィレッタ少佐。」
 艦長はヴィレッタに尋ねる。
 「あの少女の目的は、ジュンペイに接触する事のようですね。ゴルディバスのつかわした刺客とも考えられます。」
 「そうだな・・・。だが1度は撃退が出来たのだろう?」
 頷くヴィレッタ。事実ボロンはテクノドーム襲来の際、R−ガーダーによって一度敗退している。
 「ですが、すこし解せない事があります。」
 「なんだね?少佐。」
 「同型機・・・と考えるのが妥当なのですが、あのロボット、どう見ても民間建造物の集合体に見えませんか?」
 「うむ・・・確かに。」
 ボロンをはじめて見た艦長の目にも、そう見えた。ヴィレッタの指摘通り、ボロンはガスタンクを中心に、それぞれ雑居ビルや銭湯、漁船・バス等で身体を構成していた。
 「とても、前もって設計された機体とは思えません。」
 ヴィレッタの言葉は正論であった。艦長も即答を避け、黙ってモニターに映るボロンを見つめていた。
 とてもじゃないが、説明のつかないロボットであった。
 だが、その二人の思案をよそにキカイオーとボロンの戦いが始まった。

 「ロケットブロー!」
 キカイオーの両腕がボロンに炸裂した。無様に後ろに倒れるボロン。丸いボディが災いしている。
 「うう・・・、殴り合わないと、語り合えない愛もあるのね〜。」
 よたよたと立ちあがりながらポリンは言った。
 「いいわぁ!相手したげる。これがポリンの愛の拳よ〜!!」
まるでワイズマンがフェイに語ったような武道家のうんちくを口走りながら、ボロンは両腕を振りまわしながら突っ込んできた。
 ガンガンと激しい音を立てながらボロンの両腕・・・・鉄球とパワーショベルバケットがキカイオーを襲う!
 「いて〜な〜コノヤロ〜!!」
 次々と襲う振動に、ジュンペイはコクピットのあちこちに頭をぶつけてしまった。
 「やったな!!」
 今度はお返しとばかりにキカイオーのショルダータックルがボロンを襲う!!
 「うぎゃ〜!」
 後方へ派手に吹っ飛ばされるボロン。
 「ざま〜みやがれ!」
 
 「おかしい・・・こんな事って・・・」
 オペレータのチェンミンがモニターに表示されるデータに疑問の声を上げた。
 「どうした?」
 ヴィレッタが不審に思い傍によって尋ねる。
 「キカイオーの・・・・キカイオーの装甲強度が低下しています。」
 「なんだと!?そんなバカな。」
 ヴィレッタがチェンミンの脇からモニターのデータを覗き込む。だがモニターには間違い無くキカイオーの装甲強度が70%切っている表示を示していた。
 「どう言う事だ・・・?紐尾主任を呼び出せ。大至急だ。」
 「はい!」
 チェンミンが慌てて無線に呼びかけ始めた。その横でキカイオーとボロンの戦闘を観察しながらヴィレッタは考えていた。
 「(どう言う事だ?オリハルコン合金はあの程度のダメージで強度が落ちる代物ではない・・・。やはり超次元機関の出力を押さえているのが原因か・・・)」
 それをよそにモニターでは、ボロンはいきなり前傾姿勢を取り、頭部の煙突から火を吐いた。炎に包まれるキカイオー。
 
 「このやろ〜!頭来た!!」
 完全に頭に血が上ったジュンペイはその場にあった大岩を地面から引き剥がした。
 「くらえ〜!!」
 思いっきり振りかぶり、大岩をボロンへと投げつける。激突する大岩!前のめりに倒れこむボロン!
 「あ〜!ジュンペイ君のぶぁかぁ〜!!」
 ポリンが絶叫!その瞬間、ボロンの右腕がピコピコハンマーに姿を変えた!これには流石のジュンペイも面食らった。
 「なっ?」
ピコ〜ン!!───情けない音を立てて、ハンマーがキカイオーの頭に炸裂!すると漫画のようにキカイオーの目の回りに星が回った。

 「どう思う?」
 ブリッジに呼び出された結奈はモニターのデータに食い入るように見入っていた。
 「・・・ありえない。ありえないわ・・・・」
 結奈の発した言葉はその一言だった。
 「いくら出力3分の1の超次元機関でも、あの程度の攻撃でこんなに装甲強度が下がるなんて事、物理的にはありえないわ。」
 結奈の言葉にヴィレッタは何か感づいた。
 「物理的なら・・・って言ったな。なら物理攻撃以外の手段ならどうだ?」
 「それなら可能かもしれない・・・・。けどそれは相手が超次元機関に干渉できる能力を有しているならの話・・・」
 ヴィレッタはモニターに目を移した。キカイオーのボディに亀裂が入っているのは誰の目にも明らかな状態だった。
認めたくない状況だが、事実だ。ヴィレッタはボロンに目をやった。ボロンはその身体を巨大な鉄球に変えキカイオーに襲いかかっていた。
 「間違い無い。あのボロンとか言うロボットには、超次元機関に干渉・・・または超次元機関の空間転移能力を中和できる能力を持っているんだ。」

 キカイオーの最大の能力・・・超次元機関。キカイオーの動力源にして心臓部である。
 ジュンペイの祖父と父親が作り上げた究極の動力機関と言ってもいい。
 その能力は、いかなる攻撃を物理法則の通用しない空間に転移させてしまう。それがキカイオーの構成素材であるオリハルコン合金の強さの秘密でもあった。
 すなわち、キカイオーにはいかなる攻撃も中和・無効化されてしまうのだ。たとえ目の前で核攻撃されようとキカイオーは無傷である。
 キカイオーはそんな強力過ぎる動力機関を胴体・両脚部の三箇所に搭載していた。
 だが、ボロンはそんなキカイオーの超次元機関を無視してダメージを与えていた。これはジュンペイにとっても初めての経験であった。
 無敵を自負するキカイオーがまさかこんな無様なロボットに遅れを取るなどと・・・
 「き、キカイオーをあまく見るなよ・・・」
 ジュンペイが精一杯の強がりを放つ。だがそれを無視するかのようにボロンは巨大なドリルを突き出した。
 「破壊ドリルゥ〜!!」

 「装甲強度が低下しています!!このままでは危険です!」
 チェンミンが悲鳴に似た声を上げた。それを黙ってみていたヴィレッタはマイクを手に取った。
 「全機!緊急発進!キカイオーを援護しろ。」
 だが、それは遅すぎた指示だった。

 「いけぇ。」
 ボロンがキカイオーに殴りかかった瞬間それは起きた!

 「な、なんだぁ?」
 艦長が声を上げた。いきなりモニターに真っ赤な垂れ幕がかかったのだ。
そして、数秒後幕が上がった。するとそこには信じられない光景が映っていた!!

 「ちょっと座りなさい。」
 赤い絨毯がひかれた狭い部屋に腰に手を当てたボロンが立っていたのだ!そして、相手をしていたキカイオーは寝そべりTVを見ていたのだ!!
 「うるっせぇよ!あっち行けよ。」
 片手をめんどくさそうに振るキカイオー。それを見てボロンはワナワナと身体を震わせて、足もとのちゃぶ台に両手をかけた!そして!!
 
「ぶぁっかもぉ〜んっ!!」
ちゃぶ台が、キカイオー目掛けて宙に舞った・・・・・

 そして皆の目の前でキカイオーは大地にひれ伏していたのだ。
 「うおおおお!!キカイオーが!キカイオーが負けた!!」
号泣するジュンペイ。まあ無理も無い。だが、それはオンディーヌ隊全ての人間がそう思っていた。
 「愛の力は無敵なのよ♪さあジュンペイ君、一緒に魔法の国に・・・・」
 ボロンがキカイオーに手をかけようとした。ジュンペイをキカイオーごと連れ去る気らしい。

 「いかん!急いでキカイオーを救出しろ!ゴルディバスにキカイオーを渡すわけにはいかん!!」
 艦長の焦りにも似た声がブリッジに響いた。だが、今から出撃しては間に合いそうに無い。
 ボロンはキカイオーを引きずり出した。このままでは・・・・、が!その時奇跡は起きた!

 「ヘアッ!」
 ボロンの前に何かが立ちはだかった!それは・・・・

 「パルシオン!」
 艦長が叫んだ。ボロンの前に立ちはだかったのは紛れも無くパルシオンだった。
 「??色が違う。」
 チェンミンが呟いた。彼女が言うのも無理は無い。以前彼等の目の前に現れたパルシオンとは姿形は全く同じだが、赤と銀ではなく、青と銀色のパルシオンだった。
 その様子は発進寸前の各ロボットのコクピットでも確認できていた。
 「ヒイロウだ〜!ジュンペイのピンチに駆けつけるなんて、憎い演出だぜえ!」
 りきが久々に見るパルシオンに感動を覚えていた。モニターを見る眼差しが熱い。
 そしてりきとは逆に涼やかな目で見ている者もいた。レイカだ・・・・
 「ケイラム・・・・。今回は助けられたわね・・・」
 そんな事とはつゆ知らず、ボロンは突如現れたパルシオンを睨みつけていた。

 「ちょっと!アタシのジュンペイ君を取り上げる気?」
 すると、パルシオンは女性の声で語り掛けた。
 「貴方に、その人は、キカイオーは渡しません!」
 「何よ!アタシとジュンペイ君との愛の絆は海より深いのよ!邪魔させないわ〜。」
 するとパルシオンは首を横に振った。
 「貴方の愛は、一方的な独占主義!そんな邪な心に愛を語られては迷惑です。さあ彼を放しなさい!」
 「ええ〜い!地球外生命体のくせに図々しい!相手したげる〜。」
 ボロンはパルシオンに躍り掛かっていった・・・・。
 「やむをえない・・・すぐにケリを付ける!!」
 パルシオンは胸を張り身構えた。真正面にボロンが迫る!だがパルシオンは避けない。
 「!!」
 ボロンがパルシオンの眼前に迫った瞬間、それは起きた。
 「ぎゃあああ!」
 パルシオンの両肩の装甲が開き、不可思議な色を放つ光のバリアーがボロンを包み込んだのだ。バリアーに飲みこまれ、しびれたように身体を震わせるボロン。
 「だめぇ・・・」
 仰向けにばったりと倒れるボロン。その瞬間、パルシオンはボロンに襲いかかった!

 この時の戦闘を、一番最初に緊急出撃したワイズダックの副操縦兵、アービン二等兵はこう語っている。
 「馬乗りです。そう、子供の喧嘩みたいに・・・。ボロンも多少の抵抗はしていたみたいですけど」
 ボロンに馬乗りになったパルシオンは、そのまま両の拳でボロンを滅多打ちしていた。
 「オンディーヌ隊に配属されてから、パルシオンの噂は聞いていました。でも聞くと見るとではねえ・・・」
 とにかく殴りまくるパルシオン。ボロンは抵抗すらままならない。
 「鬼気迫るっていうか・・・。りき君ならずともちょっと憧れちゃいますよ、男としては・・・」
 しこたま殴ったパルシオンはボロボロのボロンを強引に投げ飛ばした。そして両手を拝むように合わせる・・・。
 「!!」
 ポリンが気付いた時にはもう遅かった。パルシオンの手から放たれた虹色の光線に。
ドカーン!───ボロンは大爆発した。残骸を飛び散らせ四散してしまった。
 


 「御久しぶりですね・・・・。レイカさん、ヴィレッタさん。」
 ホワイトローズのブリッジには青いボディスーツを着た女性がいた。女性は深深と二人に頭を下げた。
 「御礼を言うのは我々だ。キカイオーを助けてくれて感謝する。」
 ヴィレッタが頭を下げる。
 「いえ・・・そんな・・・」
 「でも、あまり貴方の手は借りたくは無いわね。」
 冷たく言ったのはレイカだ。
 「ええ・・・解っています。貴方の言いたい事は・・・」
 レイカの言葉に女性は表情を曇らせてうつむいた。
 「だけど、今は少しでも力のある協力者は欲しい。これからも頼むわねケイラム・・・いえケイ。」
 レイカは打って変わって笑顔を見せた。その表情に偽りは無かった。
 「ハイっ!」
 ケイは笑顔で返した。
 「お〜いたいた!その女性がパルシオンなんですか?」
 突然、3人に言葉がかけられた。3人が声のした方へ向くとそこにはライードとハルマ、りきとまみがいた。
 「なんだ?彼女に用か?」
ヴィレッタがライード達に言う。
 「いや〜、りきが『ヒイロウに会いたい』って言うもんですから・・・」
ライードが笑いながら言った。その隣ではりきがサイン色紙を持って頬を紅潮させていた。
 ヴィレッタは察した。りきはパルシオンのサインが欲しているのだと。思わず苦笑する。
 「ケイ・・・いいか?」
 ヴィレッタが尋ねるとケイはにっこりと笑った。
 「喜んで!」
 母性的な笑顔を浮かべて、ケイはりきの方へ歩いて行った。その様子にヴィレッタはまたも苦笑した。それにレイカが気付いた。
 「どうしました?ヴィレッタ隊長。」
 「いや・・・同世代の女性なのに、私には彼女のような顔をするのは無理だな・・・とな。」
 それを聞いてレイカは微笑した。
 「可笑しかったか?」
 「いえ・・・。貴方からそんな言葉が聞けるとは思わなかったので。」
 「私も・・・・指揮官である前に女だからな・・・。私はこの部隊では女性として見られていないようだからな。」
 それを聞いてレイカはまた微笑んだ。

 「ケイさんのその服は、あの『BIT』の制服なんだよな!」
 りきの質問にケイは笑顔で頷いた。
 「BIT?あの日本政府直属の特殊公安組織か?」
 ライードが思い出すように言う。りきが笑顔で頷いた。
 「ああ!特殊犯罪や、超常現象・はては特殊科学捜査を専門に行う、正義の組織でい!」
 「詳しいわね。大正解よ。」
 ケイがりきにむけて笑顔で答える。照れるりき。
 「ええ・・・そのBITを参考に、男星でも同様の組織『BAT』が存在するくらいなんです。」
 まみがライード達に説明する。
 「へえ〜。」
 すると、その様子を遠目で見ていたヴィレッタに、ライが駆け寄ってきた。そしてヴィレッタに何か耳打ちしていた。
 「・・・・解った。ケイ、すまないが来てくれ。」
 「はい。りきくんまたね。」
 サインを書き終えたケイは色紙をりきに手渡すと、足早にヴィレッタの元へ向かった。


 「ゆっくりよ〜。ゆっくり!」
 格納庫に結奈の声が響く。格納庫へボロボロのキカイオーを抱きかかえたR−ガーダーが入ってきた。
 「今でも信じられない・・・・。キカイオーがここまでやられるなんて・・・」
 将輝はゆっくりとキカイオーをキャリアに乗せた。すぐさま整備員達が群がり始めた。
 「無敵でも・・・いつかは倒れるのね・・・・」
 キャリアに乗せられたキカイオーをまるで自分のことのように呟く香田奈。
 「ジュンペイ・・・大丈夫かな?」
 「たいした怪我じゃないらしいけど。でも精神的なダメージの方が大きいみたい。」
 「だろうな・・・」

 その頃、ブリッジでは・・・・
 「ジュンペイ君。その子誰?」
ホワイトローズのブリッジのモニターに、目一杯『不審な顔』のサオリが映っていた。
 「フィアンセのポリンだよ。」
何故かジュンペイの傍に寄り添うようにポリンが立っていて、そう答えた。
 「誰がフィアンセだっ!?勝手に艦に乗りこんできやがって・・・。」
 「もう、てれちゃってぇ」
 「てれてねえ!!」
するとモニターのサオリは顔を真っ赤にした。そして・・・
 
「ジュンペイ君のロリコンーっ!!」
サオリは涙をほとばしらせモニターから消え去った。
 「わー!!サオリ、待ってくれ〜!!」
ジュンペイはモニターに向かい叫びながら手を伸ばした。もしテクノドームにいたのなら駆け出そうとしてるだろう。
 「・・・・取り込み中すまないが、巽博士と話がしたいのだが。」
 ヴィレッタはジュンペイに向けて言った。それを聞いて肩を落としてジュンペイはブリッジから出ていった。
 「あ〜ジュンペイ君、待ってよ〜!」
ポリンが慌てて後を付いて行く。それをライとレイカ・ケイが黙って付いて行く。
 「巽博士・・・・どうでしょうか?」
 ヴィレッタはモニターに映る巽博士に、送信したデータを見てもらっていた。巽博士は黙ってデータを見つめていた。
このデータはキカイオーの損傷状況を表すデータだった。艦に収容されると同時に、結奈が急いでチェックしたデータであった。
 「かなり酷いですね・・・。ホワイトローズの設備では完全な状態に戻すのは難しいのでは・・・」
 巽博士の言葉にヴィレッタは表情こそ変えなかったが、内心はその通り・・・と思っていた。
 「とりあえず、紐尾主任ができうる限りの修理を行っていますが、オリハルコン合金の備蓄が・・・」
 「解りました。こちらで手配しておきましょう。輸送部隊をTDFに依頼して・・・」
 だがヴィレッタは巽博士の言葉を遮った。
 「今のアヴェの情勢で輸送部隊が無事にこちらに来れる保証はありません。こちらでの事が一段落したら一度日本に戻ろう考えていますので。」
 「解りました。ではこちらは準備を整えておきます。」
 「お願いします。」
 そこで巽博士との通信は終わった。ヴィレッタはそのまま格納庫に通信を入れた。
 「どうだ?キカイオーは?」
 すると無線から結奈の不機嫌そうな声が返ってきた。
 「備蓄のオリハルコン合金じゃあ、完全な状態に戻す事は不可能ね。とりあえず出きるだけ修理するけど、少なくとも動けるまでには十日はかかるわね。」
 「そうか・・・。よろしく頼む。」
 無線を切ったヴィレッタは、無言のままブリッジから出て行った。
 「隊長・・・どうするんでしょう?」
チェンミンが不安そうにイボンヌに尋ねた。
 「キカイオーが使えないのは痛いわね。何といってもウチの最強ロボなんだから・・・・」
 「うん・・・それと、あのポリンって女の子、何者なんだろう?」
 「隊長はゴルディバスと関わりがあるってふんでるみたいだけど・・・・」
その真偽を確かめるため、ヴィレッタは医務室へと向かっていた。
 医務室には詩織がジュンペイを手当てしていた。ポリンはその傍を離れ様とはしていなかった。それをライとレイカがじっと見つめていた。
 「どうだ?何か解ったか。」
 ヴィレッタはライに尋ねた。ライはヴィレッタに向かって小さく頷き、口を開いた。
 「はい。彼女はジュンペイを守る為にやってきた・・・と言っています。」
 「ジュンペイを?」
 「ええ・・・。何でも彼女が言うにはジュンペイは『厄介事を引き寄せる特異点』なんだそうです。」
 その言葉にヴィレッタは片眉を動かした。『特異点』という言葉に憶えがあったからだ。
 「恐らく、特異点というのは・・・・」
 ライが慎重に口を開いた。ヴィレッタもレイカも黙って頷いた。
 「キカイオーの超次元機関の事でしょう。超次元機関は一種の次元操作システムです。つまりキカイオーには『事象を操作または干渉できる』能力があるのでしょう。」
 ヴィレッタはライの推論は正しいと感じていた。自分も同じように考えていたからだ。
 「まるでキカイオーは重力制御こそ不可能ですが、『アーマード・モジュール・グランゾン』と同じようなシステムを備えているとしか・・・」
 ライはそう言い切った。グランゾン・・・・TDFで極秘裏に建造された、重力制御装置を初めて組み込んだロボット。
グランゾンはEOT技術の粋とも言え、強力すぎる心臓部は、事象を操る事すら可能とまで言われていたのだ。
 「解った。」
ヴィレッタはそれだけ答えた。
 「それより、彼女はどうするんです?ゴルディバスの関係者なのかもしれないんですよ。」
レイカは不安そうに詰め寄った。ヴィレッタはもう一度ポリンに目をやってから答えた。
 「彼女が本当にジュンペイを守りに来たと言うなら、そうさせてやろう・・・」
 「隊長!?」
 ライとレイカが同時に言った。ヴィレッタの口からそんな言葉が飛び出すとは思えなかったからだ。
 「私とて、完全に信用・・・・いや全く信用していない。だからこそ利用できる。勿論監視はつけるがな。」
 「彼女を・・・・利用・・・。ジュンペイ君に監視させるんですか?」
 レイカは尋ねた。ヴィレッタは頷いた。
 「表向きはな。目には目を・・・・、ゴルディバスにはゴルディバスだ。」
 レイカは、はっとした。ヴィレッタが何を考えていたか察したからだ。
 「ケイを・・・監視役に?」
 ヴィレッタは頷いた。
 「彼女も元はゴルディバスで勇者と呼ばれた存在だ。うってつけだろう?少なくともポリンはキカイオーの修理が終わるまでは我々を裏切らない筈だ。」
 レイカはヴィレッタの考えに驚嘆した。この人はここまで考えていたのだと・・・・
 ヴィレッタはケイに目をやった。
 「お願いできるか?ケイ。もうゴルディバスとは関わり無い君を使うのは気が引けるが、こんな事を頼めるのは君しかいない。」
 ケイは頷いた。
 「解りました。元ゴルディバス軍の私やカイを受け入れてくれた御礼もしたいですし・・・」
 それを聞いて、レイカが口を挟んだ。
 「それはそうと、カイ君は?どうしてるの?」
 「カイは宇宙でソラリスや宇宙悪魔帝国と戦っています。カイが言うにはゴルディバスは戦力を温存しているらしいんです。」
 その言葉にヴィレッタは眉を動かした。ケイは言葉を続けた。
 「今宇宙では『永遠のプリンセス号』を旗艦としたオンディーヌ宇宙艦隊を再編中です。リューディア艦隊の改装も順調に進んで、近いうちに艦載機収容も可能となります。」
 「艦載機?」
 ライが尋ねた。それをレイカが答えた。
 「一部のリューディア艦やプリンセス号は艦載機の収容が出来ないのよ。それで改装してるの・・・」
 レイカの言う、永遠のプリンセス号とは、元々は異星人の文明破壊兵器で、強力な惑星破壊兵器を備えた戦艦であった。
 それをユナの活躍により、和平が成立(友情を育んだとも言う)。ユナの大切な友人として、お嬢様軍団の宇宙での活動拠点となっていた。
 そしてリューディア艦とは、ユナの先代の光の救世主・・・ユナにとっては頼れる先輩のような人物『リューディア=フレイルド=ルイーズ=マーニアス三世』が保有する艦隊の呼称であった。
 彼女は異星人の末裔であり、数多くの艦隊を率いていた。だが、彼女の保有する艦隊は数は多いのだが人材不足で殆どが無人制御で、しかも艦載能力はあまり高くなかった。
 そこで、オンディーヌに協力するにあたって艦載機を搭載出きる様に改装を行っているのだ。
 「それで肝心の艦載機はどうしてるんですか?」
 ライが尋ねるとレイカは答えた。
 「六割はVA・・・ゲイツタイプになるわね。千代丸君の所で生産できる機体って言ったらあれぐらいしかないから・・・」
VAゲイツ・・・・・VAの中で最も初期に開発された機体。汎用性に非常に優れた機体ではあるが、すでに旧式化しつつあった。
 「残りはVR・・・。まっ10/80だけどね・・・。」
 「数揃えるにはもってこいのVRですね。」
 ライは苦笑しながら言った。
 「まあ宇宙は、リューディアさんを筆頭に、カイ君と千代丸君達が頑張ってくれてるから大丈夫でしょう・・・」
 ヴィレッタはそう話を締めくくった。今は他にやる事が山ほどあるからだ。すると突然、ヴィレッタの携帯通信機が音を鳴らした。
 「どうした?」
 通信機からこぼれる声は、何か慌てていた。ヴィレッタはその声を黙って聞いていた。そして・・・
 「なんですか?隊長。」
 ライが尋ねる。ヴィレッタは静かに口を開いた。
 「特異点崩壊の余波が出たかもな・・・」
 「どう言う事ですか?」
 「バルト君からの通信だ。アヴェの国境警備艦隊が謎の戦艦に攻撃を仕掛けているらしい・・・。」

 バルトからの通信を受けたヴィレッタ達はすぐにブリッジに急行した。ブリッジのモニターではバルトが艦長に必死に説明していた。
 「おお隊長さん!大変なんだよ!ウチの先行偵察に出したミロクの大将が凄いの見つけてよ〜!」
 モニターのバルトがヴィレッタの姿を見つけて騒いでいた。
 「ここから近いのか?」
 「ああ!最大千速なら二分・・・って所だ。どうする?言ってみるかい。」
 ヴィレッタは頷いた。何やら胸騒ぎがしていたからだ。それを見てすぐに艦長が指示を出す。
 「最大千速!目標、アヴェ国境艦隊!」
 

 そして数分後・・・・・ホワイトローズとユグドラシルは肉眼で確認できる限界の距離まで、問題の地点に辿りついた。
 彼方に見える湧き上がる砂煙・・・爆音、間違い無く戦闘行為が行われていた。
 「アヴェの連中が一方的に仕掛けてるな・・・」
艦長が呟いた。国境艦隊が攻撃を仕掛けている相手は、巨大な白い多層構造の城のような戦艦だった。
 何か不調があるのか、一向に動く気配が無かった。
 「なんでしょう・・・あの戦艦・・・」
 イボンヌが呟く。
 「駄目です。TDFならびソラリスやVR社に該当する船籍ではありません。」
 チェンミンがデータを見ながら言った。
 「そうか・・・。バルト君、アヴェやキスレブに該当しそうな船籍はあるか?」
艦長がバルトに尋ねた。
 「今、シグが調べたが、何処にも該当しねえ!第一、イグニスの技術じゃねえよ。見た感じ。」
バルトの言葉にヴィレッタも同意していた。外観から察しても、ソラリスやDN社とは系列が全然違う印象を受ける。
 「だとすると、あの白い戦艦は何処の所属なんだ・・・」
艦長の呟きを聞いて、バルトが答えた。
 「解らねえ!でもよ、無線を傍受したら、アヴェの連中はキスレブの新型って決めつけてるみたいだぜ!」
 「よし・・・我々も奴等の通信を・・・・」
 艦長がそう言い、チェンミンがすぐにチャンネルを操作した。


 「撃て〜!!ハハハ!キスレブの新造戦艦恐るるに足らぬわ!」
アヴェ国境艦隊司令官であるヴァンダーカムは大声で笑っていた。
 「しかし、閣下。目標から、敵意は無いと何度もコールされておりますが・・・。それに見た印象的にもキスレブのものとは印象が違うような・・・」
 副官が恐る恐る述べた。だがヴァンダーカムは聞く耳を持たない。
 「黙れ!このような所に戦艦いると言うのはキスレブ以外何処が要るのだ!?あれはキスレブの新造艦で間違い無いのだ!」
 最近、負け戦続きのヴァンダーカムにとって、今の戦闘は久々の勝ち戦になると確信し、爽快感に溢れていた。部下の言う事など、今の自分には意味をなさない。
 「そろそろ、トドメをさしてくれる・・・。主砲準備だ!」
 ヴァンダーカムの指示が飛び、旗艦の主砲が動き出した。
 「ギアなどと言うオモチャのような兵器などより、よほど確実性があるわ!」


 「ユミールさん!駄目です!相手にしてくれません!!」
 ミヤスコが嘆くようにユミールに向かって叫んだ。
 「・・・・艦長。」
 ユミールは背後の艦長に向いた。艦長は『ウム』とだけ答えた。それを聞き、ユミールは頷いた。
 「やむをえません・・・・。聖霊機の出動を。ただし、リーボーフェン防衛を優先してください!」
 『了解!』
 トウヤ達は一斉に声をあげ、ブリッジから飛び出していった。


 「向こうも艦載機を出してきたな・・・・」
 何気なく将輝が呟いた。未確認の戦艦がいる・・・と言う事でパイロット連中も状況確認のためブリッジに上がっていたのだ。
 白い戦艦から数機の人型兵器が出撃して行った。タイプはバラバラだが、共通のラインと言うか雰囲気的に同じ系列のロボットらしかった。
 「どうするんです?助けるんですか?」
 まみがヴィレッタに尋ねた。
 「今は様子見だ・・・。」
ヴィレッタはそう答えたが、心の中では『ある予感』がしていた。
 「(もし・・・あのポリンとか言う少女の話が事実なら、あの戦艦は・・・)」
 「見た感じ、ヒーローロボだな。結構カッコイイぜ!」
リュウセイが呑気に言う。白い戦艦から発進したロボット達は攻勢に出ようとはせず、艦を守るような感じで戦っていた。
 「自衛に徹している・・・。余計な接触を避けようとしているのか?オペレーター!!」
 「は、はい!なんでしょうか隊長!」
突然呼ばれて慌てるチェンミン。そんな様子を無視してヴィレッタは言う。
 「あの白い戦艦の方の無線は傍受できるか?」
 「は、はい!やってみます!!」
チェンミンは慌ててチャンネルを調節した。すると、ブリッジのスピーカーから音声が聞こえてきた。どうやら白い戦艦と艦載ロボット達の通信を読み取れたらしい。
 『クロビス!三時の方向!』
 『OK!オーレリィ。』
 『ユミールさん。敵はまだいるの〜!』
 『がんばってアイ。』
 「これだけじゃ解らんな・・・」
艦長はそう呟いた。
 「そうですね。もう少し聞いてみないと・・・」
ヴィレッタも同意する。だが、次に聞こえてきた音声に空が反応したのである!
 『くっ!くそ・・・大丈夫か?カスミ!』
 『なんとか大丈夫よ・・・・トウヤちゃん。』
 「!!この声・・・・もしかして!!」
空が今の会話に反応した。
 「チェンミンさん!あのロボット達に通信は送れますか!?」
 「出きるけど・・・・」
困惑しながらチェンミンはヴィレッタに目をやった。無言で頷くヴィレッタ。それを見てチェンミンは空にマイクを手渡した。
 「いいわよ・・・。」
 「ありがとうございます!」
空はマイクに向かって叫んだ。
 
「カスミさん!その紫色のロボットに乗ってるの『蘇芳(すおう)佳澄美(かすみ)』さんじゃないですか!?」


 突然通信に乱入してきた少女の声にカスミは困惑した。
 「??誰?誰がわたしに呼びかけてるの?」
 「誰だ?カスミに呼びかけてるのは・・・。」
いきなりカスミを名指しした、謎の通信にトウヤ達は困惑した。こんな何処とも知れない世界で知り合いがいるとは思えなかったからだ。
 「カスミさん!カスミさんなんでしょ!?答えてください!!」
 少女の声は明らかにカスミを知っていた声だった。
 「そうです・・・。わたし、蘇芳佳澄美です。誰なんですか!?」
 カスミは勇気を出して答えた。
 「やっぱり!私です!近所に住んでる夢野です!『ユメノ=ソラ』です!!ほら、夕飯の買い物でよく近所のスーパーで会うじゃないですか!」
 するとカスミの表情が驚きに変って行った。
 「空ちゃん!?夢野さん所の?本当に!?」
 「そうです!待っていてください!すぐに助けに行きますから!!」
 「え!?」
 カスミが次の言葉を発しようとしたときに通信は途切れた。
 「助ける・・・・て・・・どう言う事?」


 「隊長!あの人達は私の近所に住んでいる人達が乗ってます!私、助けに行きます!!大地、行くわよ!」
 「おう!姉ちゃん!!」
そして大地と空は、制止の言葉も聞かず、ブリッジから走り去って行った。
 「予感が当ったな・・・。全機、出動!オペレーター、白い戦艦に通信を入れろ。貴艦をこれより援護する・・・とな。」

 「若、オンディーヌ隊は、白い戦艦を援護するようです。我々もいきますか?」
 シグルドがバルトに尋ねた。バルトはにやりと笑った。
 「当たり前よ!それに国境艦隊は、いつかはぶっ潰さなきゃと思っていたんだ。いい機会だぜ!」


 リーボーフェンとアヴェ国境艦隊の戦闘区域に分離状態のツインザムが突っ込んで行った。
 「いくわよ大地!カスミさん達を助けるのよ!」
 「OK!ぶっ潰してやるぜ!」
そして二機は直列に並んだ。
 「チェンジ!・クロスフォーム!!ツインザム1!」
 空中で合体したツインザムは、そのままアヴェの陸上戦艦に踊りかかって行った!



次回予告

 謎の戦艦リーボーフェン。彼等は一体何処からやってきたのか!?そしてカスミと空・大地の関係とは?
 そして一向は、ついにニサンに到着した。そこでフェイは衝撃的な物を見た!そしてバルトを襲うユーリィの恐怖!
 さらに、ラムサスを倒した赤い奴の黒いロボット!復讐に燃えるヒッサー将軍専用ビーストの比類無き力!
 過労で倒れた香田奈!単独出撃する将輝が取った手段とは!?
 
 次回、サイバーロボット大戦、第二十三話 『受け継いだ力・・・これは先輩の技だ!』を御楽しみに♪
 次回も、技がすげえぜ!   「匕首姉弟の過去が今・・・・」(何があったんだろうね?)






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