第十八話   「海賊アジト、戦う理由・死ぬ理由」



 「こちら、ゴンザレス!敵通信室、制圧完了!」
 「こちら、エリカ7(セブン)!コンピュータールーム制圧!」
 白兵戦要員・・・とまでは行かないが、ロボットを降りての戦闘が出来る連中が、司令部の各施設を押さえていた。
 どんなに世界が変わろうと、兵器が優れていようと白兵要員・・・『歩兵』が必要なのは戦いにおいて変わりは無いのだ。絶対に・・・
 「みんな!封鎖される前に、急いで出来る限りのデータを集めるのよ!」
 コンピュータールームを占拠したお嬢様軍団の一グループ『エリカ7』のリーダー、『香坂エリカ』が仲間のお嬢様たちに指示を飛ばす。
 徹底的に情報の無いオンディーヌにとって、敵の情報は喉から手が出るほど欲しい。
 聡明なエリカには、ライから指示を受けるまでもなく、解かっていた。さすがリーダークラスだけあって大局を見ている。
 「情報・・・今の私達には最大の武器なる・・・」
 双子の卓球お嬢様を部屋の護衛に回して、エリカ自身もデータの収集に当たっていた。
 「エリカ様!敵が情報の封鎖に掛かりました!」
 一人のお嬢様が声を挙げる。それを聞きエリカは顔をしかめた。
 「早い・・・・。障壁展開!時間を稼いで!」
 「ハイ!」
 「こうなったら、時間との勝負よ・・・」
 エリカの端末を操作する手が早まった。


 「ヒッサー将軍!TDFの部隊がそこまで来ています!」
 伝令の兵士が顔色を変えて報告する。ヒッサーは持っていた杖をへし折った。
 「くっ!ここまでか・・・。」
 ヒッサーは立ちあがり、兵士に伝えた。
 「遺憾ながら当基地を放棄する!自爆装置のスイッチを入れろ!残存戦力は『大空魔艦』へ集結!急げ!」
 「はっ!」
 大空魔艦へ向かうヒッサーはモニターに映る、オンディーヌ隊のロボットを見て奥歯を噛み締めた。
 「この屈辱・・・忘れんぞ!TDF!」
 

 その頃、基地のシャトル発射場ではバグ=ナクは既に脱出の準備に入っていた。
 「自爆三十分前・・・と、言ったところか。」
 脱出用のシャトルだと言うのに、まるで旅客機にでも乗っているかのようなリラックスぶりだ。
 「監査官どの。捕獲したディクセンの積み込みは終わりました。」
 シャトル内にアナウンスが流れる。ナクは手もとのレシーバーに話かけた。
 「よし、発進だ。カウントダウンはいらんぞ。」
 そして、司令部制圧に全力を上げていたオンディーヌに、限りなく白煙を押さえたシャトルが宇宙に飛び立ったのに気付くものはいなかった。


 「見つけたぁ〜!!中枢だぁ〜!!」
 リュウセイが声を挙げる。先程までヒッサーがいた司令室にリュウセイのグルンガストEXがたどりついたのだ。
 「ちっ・・・もぬけのカラか・・・」
 リュウセイは軽く舌打ちした。
ゴゴゴ・・・・
 何やら妙な地響きのような音が中枢に響いた。
 「何だ?」
 次の瞬間、司令室の床を突き破ってゲッP−X・・・陸戦用のX−3とツインザムが姿を現した。見れば両機とも両腕が
ドリル
だ。
 「ドリル・・・男のロマン・・・」
 リュウセイはゲッPとツインザムを羨ましそうに見ていた。グルンガストにはドリルは壱式と参式にしか装備されていないからだ。量産機である弐式、それの改良機であるEXにはドリルは無い。
 「おお!リュウセイ。ここが中枢か?」
 ケイがそんなリュウセイの気も知らず話し掛ける。
 「ああ、そうだ。ただ誰もいなかったんだが・・・」
 「なら、壊しちゃおうよ!」
 大地が嬉しそうに言う。
 「待て、壊す前に情報を得るべきだ。リキ、降ろしてくれ。」
 ジンが大地を制して言う。そうしてからジンが携帯端末を持ってゲッPから降りた。
 「急げや。」
 リキがせかすように言う。ジンはそれを無視するかのように、端末のコードを司令室のコンピューターに繋いだ。
 「・・・・・・」
 しばらくジンはディスプレイに目を走らせていた。すると、いきなり立ちあがりゲッPに戻ってきた。
 「どうしたんや?」
 「さすがだな。肝心なデータは処分か転送した跡だった。俺達が乗り込んでくるのを察していたみたいだな・・・」
 ジンは敵を誉めるように言った。
 「じゃあ、もう壊して良いんだね!!」
 大地が待ちかねたように言う。見ればツインザムは形態を変え、ツインザム1になっていた。
 「ああ、さっさと破壊して、誰も利用できないようにしたほうがいい。」
 ジンの言葉が終わるやいなや、ツインザムは早速攻撃に移ろうとしていた。
 「後は、他の連中が何か掴んでくれればいいんだが・・」
 「ああ、そうだな。」
 「せやな。な〜んも情報がつかめてへん。」
 ゲッPチームが呟くように言う。それをよそにツインザムは高々と掲げた両手の中に真っ赤な火炎球を生み出していた。
 「ファイヤー・サンシャイン!!」
 ツインザムは火炎球を司令室の中心に向かって放った。爆発は起きたものの、イマイチ効果が薄い。
 「う〜ん。この技、威力無いのかな?」
 大地がぼやいた。それを見てゲッP−Xがツインザムの肩を叩く。
 「大地君。それじゃあ駄目だ。技に魂がこもっていない。」
 ケイが大地に語りかける。
 「さっき、君が放ったのは、ただ技を叫んでいるだけ、それじゃあ駄目だ。魂を込めるんだ。」
 「どうやって込めるの?」
 大地の質問に、ケイはニッコリと笑った。
 「いいか。ロボットの技や武器は、『漢の魂』がこもって、初めてその威力を最大限に発揮するんだ!」
 「そ・そうなの・・・?」
 空が不安そうに言う。心配になってリュウセイのグルンガストを見ると、リュウセイは『ウンウン』と力強く頷いていた。
 「そうだ!技には魂を込めなきゃ駄目なんだ!!」
 リュウセイは涙を流しなら、叫んだ。
 「よし!俺のやる通りにやってみるんだ。」
 ケイはゲッP−XをX−1に変形合体させると、ツインザムがファイヤー・サンシャインを放つ動作と同じ動きをした。
 「ここまでは一緒だ。」
 「うん。」
 ケイと大地の行動に、空は黙って成り行きを見守った。
 「はああああ!!」
 ケイが叫んだ!すると、ゲッPの手の中に『装備されていない筈』の真っ赤な火炎球が生み出されていた。
 「す・すごいや!!」
 大地は驚嘆した!!
 「君もやってみるんだ!」
 「ウン!はああああ!」
 すると、ツインザムの手の中に、いままで以上の大きな火炎球が現われた!
 「で・できた!!できたよ!!」
 大地が感激しながら叫んだ。その様子にケイは満足そうに頷いた。
 「よし!やるぞ!!」
 「うん!」
 ゲッPとツインザムは、普通ならそのまま投げる火炎球を維持したまま、腰を落とし両手を腰の横まで持ってくる。そのポーズはまるで格闘ゲームのキャラが気孔波か何かを放つ動作に似ていた。
 「ここが一番大事だ!腹の底から声を出すんだ!!大地君!!」
 「解かったよ!」
 「いくぞぉ!」
 次の瞬間!ケイは基地の中全てに響き渡るような声を出した。
 
「ファイアァァァァァァ!サァァァァン!シャァァァインッ!!!!」


 「ファイヤァァ!サァン・シャァイン!!」
 同時に大地も叫んだが、ケイに比べればまだまだ甘い。だが、ツインザムの放った火炎球は確かにいままでのものより威力が増していた。
 そしてゲッPが放った火炎球はツインザム以上の物凄い唸りを上げて司令室に大爆発を起こさせた。
 「どうだ!」
 ケイが自慢げに言った。
 「す・凄えや・・・。」
 大地は感動していた。その横にリュウセイは滝のような涙を流していた。
 「か・カッコよすぎる・・・」
 「感動するのは後だ!脱出だ!」
 ジンが叫ぶ。中枢を破壊された基地は機能しない。爆炎の上がる中枢から三機は急いで脱出した。
 「こちらゲッP−X!敵中枢の破壊に成功。なお、敵司令官は既に脱出したもよう!」
 ジンが無線に呼びかけた。それはすぐにオンディーヌ隊全員に伝わった。
 「了解した!各員急いで脱出せよ!」
 脱出口を確保していたライから指示が出る。

 「エリカ様!脱出せよとの指示が!」
 卓球お嬢様がエリカに話し掛ける。が、エリカは今だ端末から離れない。
 「もう少し・・・もう少しなのよ。」
 最後のデーターを抜き出しているエリカ。その横にいた別のお嬢様が基地の異変に気付いた。
 「エリカ様!敵が自爆装置を作動させています!!このままでは危険です!」
 だが、エリカは耳を貸さない。ディスプレイに釘付けだ。
 「エリカ様!!」
 「終わったぁ!急いで脱出よ!」
 エリカは収集の終わったディスクを胸元にしまうと、仲間のお嬢様たちと共にコンピュータールームから飛び出した。外ではワイズダックかライデンが待っているはずだった。
 「お待たせ!」
 エリカ達は外で待機していたワイズダックにしがみついた。
 「出して!」
 「了解だ!お嬢さん。」
 ワイズダックは猛スピードで走り出した。


 「どうした!自爆装置の作動にはまだ早いぞ!」
 大空魔艦のブリッジにたどり着いたヒッサーは基地の変化に気付いた。爆発しているのは解かるのだが、様子がおかしい。
 「どうやら、TDFが中枢を破壊したようです。」
 「それでか・・・。まあ自爆の時間が早まったと思えば良い。」
 ヒッサーはあまり取り合わない。むしろ脱出した後での事の方が大事だった。
 「TDFめ・・・。これではデービン様に何と言えば良いのだ・・・」
 その時、大空魔艦を格納しているドックの一角に小さな爆発が起きた。
 「むっ・・・」
 爆発の中から一機の航空機が飛び出した。ラファーガだ。
 
 「とんでもない所に出ちまったな。少尉!」
 後に座っているナカトにサイモンが呼びかける。
 「少佐!それより多分あの艦ですよ!!」
 ナカトはサイモンに向かって言った。大空魔艦にディクセンがあると思っているのだ。
 「よし・・・しっかり掴まってろ!!」
 サイモンはラファーガを大空魔艦に向けた。いきなりの行動に艦は迎撃を行っていない。一気に接近するラファーガ。
 「食らえ!!」
 サイモンはラファーガから次々とミサイルを放った。白い軌跡を引きながらミサイルが飛ぶ。そして爆炎を上げ着弾するミサイル。
 「よし!!」
 サイモンはラファーガをスピナーに変形させ、大空魔艦の外壁を滑るように走る。
 「くそっ!突入口が見当たらない・・・」
 サイモンは顔をしかめていた。残った全てのミサイルを叩き込んだと言うのに、外壁が多少変形した程度で、内部に突入できるほどの穴は開いていなかった。
 サイモンは、ファイターで攻撃並びに接近。スピナーで突入、最後にバト○イド・・・もといソルジャー形態で内部を制圧、又はディクセンを奪回・・・と考えていた。だが、大空魔艦の装甲は予想以上に堅牢だった。
 やがて、敵も落ち着いてきたのか、外壁を走るラファーガに「これでもか!」という程の機銃の雨が降ってきた。
 一発一発は大した威力ではないが、ここまで浴びせられてはラファーガの装甲などボール紙同然だ。それに被弾して装甲が歪めば、変形機構は無事でも空力が生み出せなくなり飛行が不可能になる恐れもある。
 「・・・・!!」
 サイモンはラファーガをファイターに変形させた。
 「しょ、少佐!!」
 ナカトがサイモンに訴えるような声を挙げた。ファイターに変形した・・・高速でここから離脱すると言う事。つまりディクセン奪回を断念するという事を現していた。
 「少尉。これ以上は危険過ぎる。ここから離脱するぞ。」
 「でも!ディクセンが!」
 なおも食い下がるナカトをサイモンは無言で睨みつけた。その目に一瞬たじろぐナカト。その後ラファーガは全速力でドックから離脱した。


 「俺が最後だ!!」
 ライ達が死守していたハッチからスピナー形態のラファーガが飛び出した。勿論サイモンのラファーガだ。
 それを確認したライは自機のアルブレードを走らせた。一刻も早くここから離れなくてはならなかったからだ。
 「総員!対衝撃防御〜!!」
 ライはアルブレードを砂漠に伏せさせた。皆それに習う。ゲッPとツインザムは地中に潜っていた。爆発をやり過ごすつもりらしい。万一生き埋めになっても自力で脱出できる機能をこの二機は備えている。
 「来るぞ!!」
 次の瞬間、大地を揺るがす巨大な振動が周囲を襲った。そして巨大な火柱が上がり、そこから大空魔艦が爆炎に隠れるように空へと飛び去って行った・・・
 こうしてアヴェにおける宇宙悪魔帝国との戦いは終わったのだ・・・・


 「ん?なんだろう・・・・あの火柱。」
岩山の一角からR−ガーダーが二機のギアを背中に背負って姿を現した。地下鍾乳洞から生還したのだ。
 「貴方達、私達の船に来る?腕の良い技術者いるし、治せるよ貴方達のギア。」
 香田奈は背中にヴェルトールとブリガンディアをしょったまま、オンディーヌ隊に向けて歩き出した。
 「いや・・・それよりあの辺りに隠れている船に連れてってくれないか?俺の船なんだ。」
 バルトは香田奈に向かって言った。
 「お前も来るだろ?」
 バルトはフェイにも声をかけた。
 「ああ・・・」
 フェイは頷いた。
 二機のギアを背負ったR−ガーダーは、オンディーヌ隊からそれほど離れていない所に停泊していた巨大な潜水艦を思わせる黒い円柱の艦に向けて歩き出した。


 「若!心配しましたぞ!!若に何かあったら先代に私は・・・・」
 初老の紳士がハンカチで目尻を押さえていた。
 「また爺は・・・。それより客だ!歓迎しろよ!」
 巨大な潜砂艦『ユグドラシル』の甲板で四人を出迎えたのは、初老の紳士と銀髪の長身の美男子、最後に眼鏡をかけた知的な風貌の黒髪の男だった。
 「フェイ、無事だったんですね。」
 「先生・・・」
 フェイに眼鏡の男が声をかけた。先生と呼ばれた男は将輝と香田奈に気付き、二人にも声をかけた。
 「貴方がたは、TDFの方ですか?」
 二人は頷いた。
 「私は『シタン=ウズキ』といいます。フェイを助けてくださってありがとうございます。」
 シタンは二人に向かって頭を下げた。すると香田奈は何かを思い出したようなそぶりを見せた。
 「ウズキ?軍曹さんが助けたっていう女の人と同じ苗字・・・・」
 そう呟くと、シタンはにっこりと微笑んだ。
 「レイカさんのお仲間ですね。ええそうです、ユイは私の妻です。」
 「やっぱり・・・でもなんでレイカさんを知ってるんです?」
 香田奈の問いにシタンは答えた。
 「貴方達が、流砂に飲み込まれた後、少し・・・」
 そんな中、バルトが割り込んだ。
 「立ち話もなんだ!中へ入れよ!お姉ちゃん達は船まで送っててやるぜ!」
 バルトは笑いながら言った。
 「ありがとう。」
 すると、甲板の方から声が聞こえてきた。
 「若〜!!副長〜!!コイツ、でかくて重くて格納庫に入りませんぜ〜!!」
 小型だが、恰幅のいいアメフト選手のような赤いギアが数機、R−ガーダーに張りついていた。
どうやらR−ガーダーをギア格納庫へ収容しようとしているらしい。
 「ミロクの大将!そいつは無理だ!ワイヤーで甲板に固定しとけ!傷つけるなよ、客人のなんだからな〜。」
 「了解〜!!」
 赤いギア達は指示通りワイヤーでR−ガーダーを落ちないように固定していた。
 「さて・・・まずはお姉ちゃんたちの艦に行くとするか!シグ!」
 「了解です。若。」
 シグと呼ばれた銀髪の美男子は頷いた。
 「いい男・・・・付合うんだったら、ああゆう男ね・・・」
 香田奈はシグを見て顔を赤らめていた。
 「ねーちゃん、年上が好みなのか?」
 将輝が尋ねる。
 「妬いてる?」
 「別に・・・」
 将輝はブスッとした。それを見て香田奈は微笑む。
 (可愛い・・・)
 そんな事を姉が考えてるとも知らず、将輝はバルト達の後について行った。


────バタンッ!!
 大きなその音と同時に独房の扉が開いた。そしてゴンザレスがナカトを強引に独房の中へと押し込んだ。
 「軍曹!上官に対して無礼だぞ。」
 ナカトはゴンザレスに向かって言った。確かにナカトは少尉、ゴンザレスは軍曹。年は若いとは言え、ナカトの方が階級は上だ。
 「悪いな、命令なんだ。少佐のな・・・」
 ゴンザレスがナカトに向かって冷たく言う。そこへサルペンとサイモンが現われた。
 「ナカト少尉、なんでココに入れられたかは解かるわね。」
 サルペンがナカトに向かって言う。
 「ディクセン三号機の無断使用、しかもその三号機を敵に捕獲される始末・・・」
 サルペンは淡々と語る。
 「普通なら厳罰ものだけど、今は非常時ゆえ、しばらくそこで反省してなさい。」
 「一方的だ!僕だって、好きでディクセンを奪われたわけじゃない!」
 ナカトは覗き窓から顔を張りつけて、必死に弁明する。
 「聞く訳にはいかないわね。」
 「そんな!」
 立ち去ろうとするサルペンに代わってサイモンがナカトに話しかけた。
 「ナカト少尉、なんで俺が危険を犯してまで、敵艦に近づいたか解かるか?」
 「それは・・・やはり僕の為にディクセンを・・・」
 だが、ナカトが期待した答えは帰ってこなかった。
 「自惚れるな。ディクセンが帰ってくればいいと思っただけだ。」
 そしてサイモンもナカトのいる独房から離れて行った。
 「そこんところをよく考えるんだな。」
あくまでも冷たい態度で二人は去って行った。ナカトは必死で呼びかける。
 「待ってくれ!話をすれば解かる!話を・・・」
 ナカトはだんだん泣き声になってきた。
 「サイモン少佐!ハルマ!ライード!チェンミン!聞えてるんだろ!?誰か聞いてくれよ!!」
 ナカトは独房の床に力無くうずくまった。
 「僕がディクセンを・・・一番上手く・・・一番上手く・・・」
 
「一番上手く使えるんだぁぁ!!」
 「一番上手く・・・・うう・・・」
 ナカトのそんな声は誰にも届かなかった・・・


 「艦長、ユグドラシルと名乗る艦の艦長が会見を申し入れたいと、通信を入れてきています。」
 「モニターに出せ。」
 そこには巨大な黒い潜砂艦が映し出されていた。
 「あ、R−ガーダーだ。」
 大地がユグドラシルの甲板に立つR−ガーダーを見つけて呟いた。
 「あいつ等無事だったんだ!!」
 ジュンペイが嬉しそうに言った。他のメンバーも同様だ。
 「よかった無事で・・・」
 思わずユナが涙ぐむ。
 「これでまた、香田奈さんのゴハンがたべれますですぅ〜。」
 ユーリィの台詞にみんな笑った。ユーリィは香田奈の料理が好きだったからだ。
 「良かったですよね、結奈ちゃん。」
 ユナが隣に立っている結奈に話し掛ける。性格正反対の二人だが、いつのまにか仲良くなっていた。メンバーは二人を『光暗コンビ』と呼んでいたが、何故仲良くなったのかは『オンディーヌ隊・七不思議』の一つとして不思議がられていた。
 「そ、そうね・・・」
 ユナから目線を反らし、微かに顔を赤らめながら結奈が頭を掻きながら照れくさそうに言った。彼女は以前、香田奈に差し入れをもらった事があった。
 食事は効率的に軍用のレーションや合成飲料で済ませてしまう事が多い結奈だが、差し入れてもらった食事は、きちんと全部食べた。
 (栄養学的にも問題無かったし・・・。美味しかったもの・・・)
 そんな事は口が裂けても言い出せない結奈だった。
 「レイカ君。君が接触した男は、あの艦にいるのだな?」
 艦長がレイカに尋ねる。その問いにレイカは頷く。
 「よし、会見を持とう。通信を開け。」
 そしてホワイトローズは、ユグドラシルのすぐ側に着陸した。

 「潜砂艦ユグドラシル艦長の『バルトロメイ=ファティマ』。」
 「同副艦長『シグルド=ハーコード』です。よろしく。」
 R−ガーダーの手のひらに乗った二人がホワイトローズに降りた時の第一声がそれだった。
 「こちらこそ。私がホワイトローズ艦長ベイツ大佐です。」
 「私はTDF独立遊撃部隊オンディーヌ、部隊長代理ライディース少尉です。」
 そこで艦長とバルトが、がっしりと握手を交わす。
 「では詳しい話は中で・・・」
 「ええ。」
 先程までの荒々しい賑やかなそぶりをちらりとも見せず、堂々とした艦長の風格をバルトは見せていた。
 「先程までとは別人ですね、フェイ。」
 前の二人と同じようにR−ガーダーの手に乗っていたシタンはフェイに向かって言う。
 「ああ・・・」
 「さて、私はミドリを助けてくださった方々にでも挨拶してきましょうかね。フェイもいい機会ですから艦内を回ってきたらどうですか?」
 フェイの返事も聞かず、シタンはさっさと艦内へ消えて行った。
 「・・・・」
 フェイはなにもする事が無いので、暇つぶしに歩く事にした。


 「しょうちゃんの様子が変?」
 艦に戻ってきて、休憩室で一息ついていた香田奈の元にユナとユーリィとゲッPチームが声をかけてきた。
 「そうなんですぅ。ゴハンもほとんど食べずに、お部屋に引っ込んじゃって〜。」
 「なんか、思いつめた表情しとったで。」
 ユーリィとリキが言う。
 「何か、心当たりは無いですか?お姉さんでしょ・・・」
 ユナのその言葉に香田奈は思い当たるふしがあった。
 「もしかしたら・・・」
 香田奈は地下鍾乳洞での事、将輝の暗所恐怖症の事を五人に話した。
 「もしかしたら、『自分は無力だ』と思ってるんじゃないのか?」
 ケイが言う。
 「そうかもしれないな。香田奈さんに・・・姉に頼っている事を恥じてるのかも。」
 ジンの台詞に皆頷く。
 「せやかて、香田奈はん達のロボットは、わいらと同じようにお互いの力が合わさって、その力を発揮出きるんやろ?別に頼る事は、恥や無いで。」
 リキも言う。香田奈は頷くが表情は暗い。
 「そうなんだけど・・・」
 「しかも将輝は、香田奈さんに頼りきりじゃなくて、『自分から進んで』動いてるんだろ?それだけの意思があるんなら、弱虫でも臆病者でもない。立派なもんだ。」
 ケイが将輝を誉めるように言う。
 「せや!ケイヤ兄いの言う通りや!」
 「互いの弱点は互いに補えばいい。それがチームってもんだ・・・」
 ゲッPチームは誇らしげに言った。
 「将輝君がそれに気付けばいいんだ・・・」
 「そうですね〜。」
 ユナ達も言う。それを聞いて香田奈は席を立った。
 「そうよね・・・。ありがとう!しょうちゃんに話してみるね。」
 香田奈は早速将輝の部屋へと走った。

 オンディーヌ隊用、ホワイトローズ居住区───
 元となった旅客船が外洋航海用の豪華客船であった為、居住区はいたって快適。長期間の航海(?)にも圧迫感を感じることなく生活を送る事が可能だった。
 そして個室は、客船の物をそのまま流用。観光ホテル並の居住性を有している。ここまでくるとホワイトローズはもはや軍艦ではないとも言えなくも無い。
 その一室に将輝はいた。部屋に備え付けのバスルームのシャワーを黙って浴びていた。普段なら大きな浴槽のある大浴場に行くのだが、今はとてもそんな気にはなれなかった。
 将輝は泣いていた。自分が情けなかったからだ。何をやるにしても、調子いいのは最初だけ、結局は姉の力に頼っていたからだ。
 今回の鍾乳洞の一件もそうだ。暗所恐怖症であるが為、姉の足を引っ張り、やっと本調子になったと思い、意気込んで放ったT−LINKナックルは力が全然足りなかった。
 「俺は・・・俺は・・・」
 将輝はうずくまって泣き出した。そんな時、自分の部屋に誰かが入ってきた。香田奈だ。
 「しょうちゃん・・・いるんでしょ・・・」
 「・・・・」
 返事は無い。だが、香田奈には将輝が何処にいるのかは解かっていた。
 「・・・ねえちゃん・・・」
 香田奈は察した。口調から将輝は泣いていると・・・
 バスルームにいるのを確認するまでも無く、香田奈は自分の衣服を脱いでいた。
 「入るよ・・・」
 香田奈は裸体を隠すことなくバスルームに入った。そこには将輝が泣きながらうずくまっていた。
 「しょうちゃん・・・」
 香田奈は後から将輝を抱きしめ、そっと囁いた。
 「しょうちゃんの気持ち全部わかるよ・・・・」
 「・・・」
 「でもね。そんな事で泣いちゃ駄目だよ・・・」
 「・・・」
 「ゲッPのみんなが言ってたよ。『頼る事は恥じゃない』って・・・」
 「・・・」
 「こうも言ってた。しょうちゃんは私に初めから頼りきりじゃなくて、『自分から進んで』てっ・・・」
 「・・・」
 「立派だって。別にいいじゃない、私に頼っても・・・。私だって戦いになったらしょうちゃんほど上手くR−ガーダー操れるかどうか解からないもの・・・」
 「・・・」
 「二人の足りないところは、二人で補い合おうよ。私達姉弟でしょ・・・遠慮はいらないよ・・・」
 「・・・ねえちゃん・・・」
 「何?」
 「・・・ありがとう・・・」
 香田奈は答える代わりに将輝を今度は真正面から抱きしめた。もはや二人には言葉は要らない。この抱擁こそが全部語っていた。


 その頃、応接室では艦長とライ、そして負傷がまだ癒えていないヴィレッタが、バルトとシグルトと会談を行っていた。
 「では、貴方達はこの大陸統一の為に動いていると?」
 バルトは頷く。
 「そうです。貴方達なら解かっていると思いますが、ここアヴェでも宇宙悪魔帝国やゴルディバスと言った地球外からの侵略を受けています。もはや人間同士で争っている場合ではありません。」
 シグルトがバルトの言葉を代弁するように言った。
 「ここ、旧アメリカ大陸、今は『イグニス』エリアと呼んでいますが、我々の目的はイグニス統一にあります。」
 シグルトは熱く語った。
 「詳しい事はここではお話できません。よろしければ、我々の本拠地に来ては頂けないでしょうか?」
 「ここでは話せない事なんですか。」
 ヴィレッタが尋ねる。バルトとシグルトは頷く。
 「それ程重要な事なんですね・・・。解かりました。」
 ヴィレッタはそう答えた。
 バルト達との会見はひとまず、そこで終わった。そのすぐ後、ホワイトローズはユグドラシルに案内されるまま、砂漠を進んだ。


 「ヴィレッタ隊長は何と?」
 医務室に戻ったヴィレッタから後を引き継いだライに艦長が尋ねた。
 「今は彼らについて行けと・・・。何かしら情報が得られるかもしれないと。」
 「そうか・・・。しかし彼らが我々に接触した動機は察しがつくがな。」
 艦長は小声でライに言った。
 「ええ、九分九厘我々に協力を得ようとしていますね。」
 「彼らの真の動機は解からん・・・。だが、彼らに協力すればアヴェ政府との交戦は避けられん。我々は国家間の戦争をしにきたのではない。」
 艦長の言葉はもっともだった。ここでバルト達に協力すれば、アヴェとの戦争になってしまうからだ。
 「ですが、彼等が本当にイグニス統一を目指しているのなら・・・」
 「統一後は、逆に我々に協力してくれる・・・というのか?」
 「はい。」
 「あまり期待はできんな・・・」
ライと艦長の会話はそこで中断した。ホワイトローズの眼前には、海賊達の本拠の秘密の入り口である、一本杉が見えていた。
 「さて・・・凶と出るか吉と出るか・・・」
 ホワイトローズは、海賊アジトに入港しようと、船体に光学迷彩を貼った・・・・




 

次回予告


 海賊達のアジトにたどり着いたオンディーヌ!そこで明かされる衝撃の事実!!
 そこでグラスを傾ける謎の人物(?)
 あくまでも戦いを拒むフェイ!そんな時、アジトに迫るソラリスのエリート部隊『ゲブラー特務隊』が迫る!!危うし海賊アジト!!
 そして、オンディーヌ隊の決断とは!!
 
 次回サイバーロボット大戦 第十九話 「強襲!ゲブラー特務隊・たちあがれヴェルトール!!」に応援よろしく!!
 次回も、奮い立ってすげえぜ!!  「ついに・・・みんなが待っていたヤツが出るんです!!」




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