第十六話  「熱砂の激闘!強襲、前線司令部!」



 「待ってくれ!俺は敵じゃない!」
 黒いギアから男の声が出てきた。
 「何言ってやがる!アヴェの運搬船から出てきて、よく言うぜ!」
 赤いギアは取り合おうとしない。
 「本当だ!信じてくれ!俺はアヴェの軍人じゃないんだ!」
 黒いギアは、続けて言う。ナカトには口調から本当みたいだなと、感じていたが赤いギアは信じていないらしい。
 「ふん。もうちょっとマシな命御いは出来ないのか?」
 赤いギアが、黒いギアに向かってムチを放つ。だが、黒いギアはそれを軽々と避ける。
 「ほれ見ろ!軍人でもない人間に、そこまでギアが、操れるわけねえだろ!!」
 そう叫び、次々とムチを繰り出す赤いギア。黒いギアは攻撃を仕掛け様とは思っていないらしく、防戦一報だ。
 「なんなんだ?このギア達は・・・」
 ナカトは、ただ呆然と見ていることしか出来なかった。

 「ディクセンからの連絡が途絶えた?!」
 艦長が驚愕して、オペレーターに聞き返す。
 「間違いありません!一号機、二号機ともに連絡が・・・。かろうじて二号機の所在だけは確認できていますが・・・」
 艦長は即断した。
 「救援を向かわせろ!ライード隊のワイズダック!ディアナ17!R−ガーダー!それと、ライデンニ機だ!」
 そのすぐ後、五機のロボットは砂漠を駆けていた。

 「う〜!う〜!」
 R−ガーダーの中で、将輝はうめいていた。
 「どうしたの?」
 香田奈が尋ねる。
 「足遅い〜・・・・」
 そうであった。オンディーヌの保有するロボットの中でR−ガーダーは、一番大きく、そして一番重たい。汎用とは言え、その歩行速度は速いとは言えない。高機動で軽量なディアナはともかく、いかにも鈍重そうなワイズダックやライデンにも劣っていた。
 しかも、R−ガーダーは足で『歩行』していた。それに比べディアナは長距離ジャンプが出来るし、ライデンやワイズダックは足の裏からホバー走行している。ただでさえ足場の悪い砂地だ、先頭の四機とは離される一方だ。
 「足に付けたカンジキみたいなもの、役に立たないじゃねえかよ〜!」
 砂地用に、足の裏にスキー板のような物を取りつけてはいたが、砂地に足がめり込まないだけで、移動速度は非常に悪かった。
 「くそ〜!日が暮れちまうぜ〜!」
 仕方なく、足の速いディアナが先行する。ライデンとワイズダックはR−ガーダーに合わせる。
 「ソイツ、本当に汎用なんですか?」
 ライデンに乗っているアイボリー軍曹が将輝達に話し掛ける。勿論、傍受の恐れがあるため機体同士を接触させての通信だ。
 「その筈なんだけどな〜。」
 将輝は苦笑する。その様子を見て香田奈はハッとした。
 「そうだ!いい事思いついた!」
そのすぐ後・・・
 「ん?」
 レイカは後ろを振り向いた。何かが砂塵を上げて走ってきた。
 「ほ〜!やるわね!」
 レイカはそれを見て感心した。そこにはR−ガーダーの広げた腕にそれぞれライデンが掴まり、R−ガーダーの腰をワイズダックが押すような形で持っていた。
 つまり両脇をライデンで、後ろをワイズダックがそれぞれ大柄なR−ガーダーに掴まり、ホバー走行しているのだ。
 「イイ考えでしょ♪」
 香田奈はニッコリと笑った。
 そして、フォーメーションを組んだ四機とディアナは、ディクセンの元へ走った。

 「四の五の言ってないで、さっさとソイツをおいて帰りやがれ!」
 赤いギアのムチの手は緩まない。そして黒いギアは反撃せずただ避けているだけだ。
 そんな時、両者は砂塵を上げてこちらに向かって来るディアナとR−ガーダーに気がついた。
 「増援か?」
 赤いギアが身構える。
 
 「いた!ハルマ少尉!ナカト少尉!」
 レイカが叫んだ。そにのは片足を失い横倒しになった赤ディクセンと、力なく立ち尽くした青ディクセンがいた。しかもその回りには宇宙悪魔帝国のビーストの残骸が死屍累々と散らばっている。
 「二人とも大丈夫!?」
 レイカは無線で呼びかけたが、両方とも返事は無い。やむえず危険を承知でレイカはディクセンの側につけた。まずは横倒しになったハルマの方からだ。
 「ハルマ少尉!返事をして!」
 だが、声は返ってこない。黒と赤のギアに向けて牽制しながら、レイカは接触回線でディクセンをモニターした。回線を通じて映し出されたディクセンのコクピット内でハルマは気を失っていた。よく見れば、ヘルメットのバイザーに亀裂が走っていた。
 「まずい・・・・」
 ライードのワイズダックが近づいてきた。心配そうに機体をディクセンに近づける。
 「ハルマ!!」
 ライードが呼びかけるものの、やはりハルマは目を覚まさない。するとライードはいきなりワイズダックの搭乗ハッチを開けた。
 「そ・曹長!?」
 他の兵士が呼びとめる隙を与えないくらいの速さでライードはワイズダックから飛び降り、ディクセンへと駆けた。
 そして、ディクセンの緊急解放スイッチを押した。コクピットが開く、ライードはそこからハルマを半ば引きずるように出した。
 「ハルマ!しっかりしろ!」
 だが、ハルマは意識を戻さない。打ち所が悪かったのだろうか?ライードはハルマを抱えてワイズダックに戻ってきた。
 「ディクセンを回収して戻るぞ!」
 戻ってきたライードの第一声がそれだった。そしてワイズダックは横倒しになったディクセンを背中に背負うと、そのまま艦へ戻って行った。
 
 「ちっ!獲物を一つ取られたか・・・」
 赤いギアはそう呟いた。どうやら黒いギアだけでなく、各座したディクセンまで奪うつまりだったらしい。
 それを察したのか、レイカのディアナが立ち尽くすナカトのディクセンの前に守るように出る。

 「貴方達!何者かは知らないけど、これ以上やる気なら、美と正義の使者!ディアナ17が相手になるわ!!」
 すると、ひらっきぱなしになっているディクセンのコクピットからナカトは出来うる限りの大声で叫んだ。
 「待ってくれ!レイカさん!黒いギアは、僕を助けてくれたんだ!!」
 ナカトの声に気付いたのか、ディアナが動きを止め、振りかえる。
 「ナカト少尉、無事だったのね。」
 レイカが外部出力で呼びかけた。
 「ディクセンの伝送系が、やられて動けないだけなんだ!」
 ナカトの声にライデンが両脇からディクセンを抱える。
 「ナカト少尉殿は我々に任せてください!」
 二機のライデンがディクセンを抱えて、ゆっくりとその場を離れる。
 「貴方達、一体何者なの?」
 レイカが二機のギアに向かって呼びかける。だが、ギアは答えない。

 その頃、砂漠の町ダジルに情報収集に出ていたお嬢様軍団は、ある情報を仕入れていた。
 「砂漠の海賊?」
 リアが思わず声を出す。頷くミキ。
 「ええ、この辺りで、砂漠用の潜水艦でアヴェ軍の積荷を狙ってる海賊がいるらしいんです。」
 「へえ・・・」
 「でも、噂によるとただの海賊じゃあなくて、レジスタンスに近い組織なんだそうです。」
 そこに別のお嬢様部隊が駆け寄ってきた。
 「何か掴めた?」
 リアが尋ねると、お嬢様軍団の一人、『弓岡かえで』が答える。
 「すごい事が解かったのよ!今のアヴェは、宰相シャーカーンが国政を代行しているそうよ!」
 「宰相が?国王はどうしたの。」
 「数年前に急死して、王子も行方不明。それでシャーカーンがアヴェの全ての実権を握っているみたい。」
 かえでの話はそこで終わった。
 「他には?」
 「後は、この辺りの遺跡によく宇宙悪魔帝国が出るらしいのよ。遺跡を巡ってアヴェ軍と何度も戦闘が行われているらしいわよ。」
 そこでリアは血相を変えた。
 「そっちの方が重要よ!どの辺りに良く出るの!!」
 かえでの両肩を掴んでグイグイ揺らすリア。
 「ここからニサンより〜・・・」
 かえでが頭を揺さぶられながら答える。
 「召集かけて!艦に戻るわよ!!」
 
 「かっこいい・・・」
 香田奈が黒いギアを見た第一声がそれだった。飽きれる将輝。だが、将輝自身も黒いギアに対しての感想は同じだった。
 自分たちの二倍近い大きさを誇るR−ガーダーを見て思わず身構える、黒と赤の二機のギア。黒いギアはまるで中国拳法のような構えを取った。
 「うわ〜。単三電池背中にしょったロボットみたい〜。手足にタービンは無いのね・・・残念。」
 香田奈がまるで意味の無い言葉を発する。将輝はそれを無視してギアに近づく。
 「こいつら何なんだろう・・・?」
 無用心にもギアに近づくR−ガーダー。その重い重量で砂地に大きなくぼみがいくつも出きる。
 「気をつけて・・・」
 レイカがそう言った次の瞬間、急にR−ガーダーを中心に足もとが大きく、くぼんだ。そしてまるでアリジゴクの巣のように流砂に飲み込まれて行くR−ガーダー。
 「うわああ!!流砂だ!」
 必死に這い上がろうとするが、その重い機体が災いしてどうにもならない。流砂は勢いを増し、黒いギアと赤いギアも飲み込んで行く。
 「うわあああ!」
 黒いギアが声を挙げる。
 「や、やべえ!」
 赤いギアも叫ぶ。
 「くっ!」
 間一髪、ディアナだけは軽い機体と機動性のおかげでいち早く空へ逃れた。
 「香田奈さん!将輝君!」
 叫んだ所で既に遅かった。三機は既に流砂に飲み込まれ、もう姿が見えなかった。
 「そんな・・・」
 レイカは呆然と見ているしかなかった。すると、地面にバギーが止まっているのが見えた。運転席にいる男がじっとディアナを見上げている。レイカはディアナを着地させた。
 そしてレイカがディアナから顔を出すと、レイカが呼びかけるより早くバギーの男が呼びかけた。
 「お嬢さん、申し訳無いのですが、あそこに隠れている潜砂艦まで私を連れて行ってくれませんか?」

 「何?偵察中のリャンビャ=リャル隊からの通信が途絶えた?」
 ワイングラスを傾けていた女が驚いた。宇宙悪魔帝国の女幹部、ヒッサー将軍だ。
 彼女は、宇宙悪魔帝国での地球上の指揮を任されていたのだ。
 「アヴェの部隊にギュフーが倒せたのか?いや・・・まさかソラリスか!」
 ギュフーは宇宙悪魔帝国の量産型ビーストでも新型の類に属する。陸上での戦闘力はザッキュンを大きく上回る。並のギアに倒せる代物ではない。
 伝令役の兵士は報告を続ける。
 「いえ、最後の通信記録から推測するにTDFと交戦していたらしいのです。」
 「TDFだと!!奴等ここを嗅ぎ付けたのか!」
 ヒッサーの表情が変わる。
 「どうやらそうらしいです。」
 「奴等、どうやってココを・・・」
 最高幹部であるヒッサーも、まさか下っ端中の下っ端である踵兄弟が情報を漏らしたとは気付いていないらしい。
 「基地内に警戒態勢!!じきに奴等はココを見つけるのは時間の問題!外周に回している部隊を全て戻し、直援態勢を取れ!偵察部隊を二小隊出せ、TDFの連中の動きを探らせろ!」
 「ハッ!」

 一方、ホワイトローズでは、戻ってきたお嬢様軍団と同じく戻ってきたレイカの報告を受けていた。
 ライは悩んでいた。何故なら重大な選択を迫られていたからだ。
 選択とは、流砂に飲まれたR−ガーダーの救出か。やっとおおよその場所の特定できた宇宙悪魔帝国の前線司令部を討つのか・・・・
 「将輝と香田奈さんは、俺達の大事な仲間だ!助けに行くのが当たり前だろ!!」
 「そうだよ!ジュンペイさんの言う通りだぜ!流砂なんてツインザムならあっという間に掘り返せる!」
 「友達が大変なのに、ほっとけないよ!」
救出案を支持するのは、ジュンペイや大地、ユナ等の非軍関係者である。
 「でも、グズグズしてれば、それだけ宇宙悪魔帝国やゴルディバスに時間を与える事になる・・・」
 サイモンが眼鏡を光らせて言う。アムリッタもそれに同意して頷く。
 「そうですね・・・それに救出活動に専念している所を逆に襲われかねない。」
 「同感だ。それに無用心に近づいて流されたんだろう?自業自得だぜ!」
 そのリッキーの発言にジュンペイが怒って、リッキーの胸倉を掴む。
 「何だと!!お前、それでも仲間か!!」
 「俺はお前等のような素人と仲間になった覚えは無いね。」
 激怒したジュンペイがリッキーに殴りかかる。不意を付かれたのか、顔面にもろにパンチを食らうリッキー。
 「てめえ〜!!」
 口を袖で拭ったリッキーがジュンペイに殴り返す。
 「ぐっ・・・」
 強烈なボディブローをくらい、ジュンペイが両膝を付くが、すぐに立ち直り殴り返す。
 それからは両者の激しい殴り合いが始まった。慌てて皆で取り押さえる。
 興奮した両者を引き離すのは大変だったが、最後にリッキーをゴンザレスとトーマスが押さえつけ、ジュンペイはケイが説得して静めた。
 「いいかげんにせんか!!全く、何をやっとるのだ!お前等は!!」
 艦長の一括で静まり返るブリッジ。そこにレイカが発言する。
 「R−ガーダーが飲み込まれた箇所なのですが、どうやら私が接触した人物によると、その地下には巨大な鍾乳洞になっているようなのです。」
 「R−ガーダーはその鍾乳洞に落ちたと?」
 「はい。ですからそこに落ちたとしても大量の砂がクッションとなり、二人が無事な可能性は十分にありえます。」
 艦長とライは少し考えた。
 「その君の接触した人間の言葉は真実なのか?信用出きるのか?」
 その問いにレイカは頷いた。
 「信用できると思います。」
 「しかし、その人物は、レジスタンスとは言え海賊に接触したんだろう。大丈夫なのか?」
 レイカは、ゴンザレス達へと振り向き答えた。
 「大丈夫でしょう。何故なら、その人物はゴンザレス隊が救出した少女の父親ですから。」


 暗い巨大な鍾乳洞・・・・その中に巨大な砂山が出来ていた。巨大だ・・・高さにして二十メートル以上はある。
 砂山の上から微かに光がさし込む・・・砂山は流砂によって生まれたものだ。しばらくして砂山の一部が盛り上がる。そしてそこから一本の巨大な腕が突き出された。
 R−ガーダーの腕だ。
 さらに砂山が盛り上がり、そこから腕だけでなくR-ガーダーが全身を現す。二人は無事だった。
 「助かったあ〜・・・」
 香田奈が声を挙げる。
 「よし・・・機体はどこも壊れてないっ!さ〜すが頑丈!」
 いくら砂がクッションになったとはいえ、数十メートルは落下してきたに関わらずR−ガーダーは無傷であった。
 「だいぶ、下まで落っこちちゃったね〜しょうちゃん。」
 香田奈が前座席の将輝に呼びかける。だが返事は返ってこない。
 「しょうちゃん?」
不思議に思い、前の座席を覗きこむ。すると将輝は肩を振るわせ、口でハアハアと呼吸を荒げていた。
 「ま、まさか・・・」
 香田奈は座席のハーネスを急いで外し、将輝の前に来る。そして慌てて将輝のヘルメットを外した。
 「やっぱり・・・」
 将輝は冷や汗を流し、目が虚ろだ。
 「しょうちゃん!しっかりなさい!」
 香田奈は将輝の頬を何度も叩く。すると、将輝の目線がようやく定まってきた。
 「大丈夫?」
 「ね・ねえちゃん・・・・うう・・」
 将輝の目線が緩んだ。次の瞬間・・・・
 「うわあああ!!ねえちゃあん!!」
 将輝は大声で泣き出し、香田奈に抱きついた。
 「まだ・・・克服できてなかったんだ・・・」
 将輝は泣き出したまま香田奈から離れようとはしなかった。まるで恐怖にかられた子供が母親にすがるように・・・・
 今の将輝はまさにそうだった。
 そんな時、モニターに自分たちと同じように二機のギアが砂山から這い出てきた。
 「どうしようかな〜・・・ハハハ・・・」
 今だ、しがみつく将輝。こちらに向かって歩いてくる二機のギア。今の香田奈には苦笑するしかなかった。

 「サイモン少佐とアムリッタ中尉は左翼!回り込め!」
 「キカイオー、現在巨大陸上戦艦型ビーストと交戦中!」
 「十時の方向からザッキュンニ小隊接近!バンガイオーが向かっています!!」
 ホワイトローズのブリッジは、指示と報告が飛びまわっていた。メインモニターには敵が赤、自軍は青と色づけされて、シュミレーションゲームのようなものが映し出されていた。無論ゲームではない、実戦だ。
 救出か、敵基地破壊か、その選択でざわめく中、ホワイトローズは偵察中の宇宙悪魔帝国の部隊に発見された。
 宇宙悪魔帝国のビースト軍団は機動力の高い兵器が多い。発見されるや否やまるで餌に群がるアリのごとく、大量に襲いかかってきた。
 討論を重ねている場合ではない。否応無しに応戦せざるを得なくなったのだ。
 そして熱砂の砂漠での激闘が始まった。そしてオンディーヌ初の集団戦でも有る。
 「三時!ゴンザレス隊撃てぇ!」
 指揮官用アルブレードに乗ったライが指示を飛ばす。的確な指示では有るが、味方の数が多いしタイプもバラバラ。先行した味方までに指示が行き届かない。
 ライの指示が行き届かない部分はサルペンがカバーする。それでもこの乱戦の最中、支持通りにはいかない。故に各々のスタンドプレーが目立つ。
 元より、TDF以外のロボットは、集団戦闘など考慮されていない。キカイオーやゲッピーXなどは殆ど勝手に動いている。
 「ええい!ジュンペイの奴が邪魔で、援護が出来ない!」
 ライデンのコクピットでプロンガー曹長は毒づいた。火力を生かした攻撃支援はライデンが最も得意とする攻撃である。プロンガーは巨大陸上戦艦に真正面からぶつかっているキカイオーを援護しようとレーザー砲の照準を定めていたが、フォーメーションという物をまるで考えていないジュンペイの動きで援護が出来ずにいた。
 「あのバカ!キカイオーの力を過信し過ぎだ!」
 プロンガーはそう言ったものの、実際キカイオーに援護は不要であった。
 「ぬおおおお!!」
 ジュンペイは吠えた。キカイオーのおよそ5倍から6倍はある陸上戦艦をキカイオーは真正面で受け止め、そして持ち上げた!
 「これでも食らえええ!!」
キカイオーは持ち上げた陸上戦艦をそのまま振りまわし始めた。
 「ヤバイ・・・・」
 それを見たサルペンは顔が青ざめた。そしていそいで味方機全てに連絡を入れた。
 「みんな!急いでキカイオーから離れなさい!!」
 何故ならキカイオーは大旋風投げの態勢に入っていたからだ。
 「だいっ!せんっぷう!なげぇ!!」
 キカイオーは陸上戦艦を放り投げた。そこまでは良かった。だが・・・
 「ひええええ!!」
 アイボリー軍曹の乗ったライデンは顔面蒼白で逃げた。何故ならキカイオーが投げた陸上戦艦が自分の近くに降ってきたからだ。
 命からがら逃げ延びるアイボリー軍曹。自分の背後から爆風が迫ってきたが、なんとか無事だった。
 「わりーわりー・・・」
 頭を下げ、すまなさそうに頭を掻くキカイオー。

 ゲッP−Xとツインザムが分離形態で小型空戦ビーストと戦っていた。
 「よしっ!このまま追い込むぞ!」
 ケイが叫ぶ。すると、目の前に巨大アルマジロ型ビーストが姿を現した。
 「パワーは有りそうだが、動きが鈍そうだな。ケイ俺に任せろ!」
 ジンがケイに向かって言う。
 「よし!X−2に合体だ!」
 ゲッPーマシンが合体しようと三機一列に並ぶ。それを見た大地は思わず、ツインザム一号機をゲッPの後ろにつけた。
 「ちょっと大地!何やってんの!!」
 ツインザム二号機の空が大地に向かって叫ぶ。
 「え?いや〜お互い似てるし、もしかしたら合体できるかな〜てっ思ったんだけど。ダメ?」
 「ダメに決まってるでしょ!あたし達も合体よ!」
 「ちぇ〜、つまんね〜。」
 ツインザムも一列に並ぶ。
 「チェンジX−2!カモン!」
 「チェンジ・クロスフォーム!」
ジンと空が同時に叫ぶ。お互いのマシンは変形合体し、スマートなロボットが姿を現す。
 「いくぞ!」
 X−2が槍やフォークのような形をした手首を突き出す。X−2の手首は、手首その物が強力な武器なのだ。それに対してツインザム2は手首は人間同様の手だが、空はその手首を収納しその代わりドリルが飛び出る。
 こうなると、色は違うものの二機は良く似たロボットとなる。
 「食らえ!」
 「いっけぇ!」
 X−2とツインザム2がそれぞれ手首をアルマジロビーストに向かって突く。
 案の定、巨体ゆえ動きが鈍い。だがアルマジロだけあって装甲が厚い。いくら突いても、貫けない。
 「くそ・・・こうなったら飛び道具だ!」
 X−2は至近距離でレーザーを放つ。空もそれに習い肩からミサイルを連射する。
 その時、突如アルマジロビーストが二本足で立ちあがった。そして腹からミサイルを乱射する。
 「くっ!」
 「きゃっ!」
 攻撃を浴び悲鳴を上げるジンと空。アルマジロビーストは思ったよりも強敵だ。
 「何て固い奴だ・・・」
 「どうすればいいんだろう・・・」
 すると大地がボソッと言った。
 「どうして腹を狙わないんだ?アルマジロの背中が堅いのは当たり前じゃん。」
 その言葉にジンは、ハッとした
 「そうか!その手があったか!」
 「大地!アンタ頭いいじゃない!よ〜し!」
 空の掛け声に呼応してツインザムがドリルを頭上に掲げ地中に潜る。
 次の瞬間、アルマジロビーストが苦しみ出した。見れば地面に接する腹に、ツインザムがドリルを突きたてていた。
 思わず、攻撃態勢の二足歩行になるアルマジロビースト。その瞬間、ジンはニヤリと笑った。
───チャンスだ!
 「一発で決めるぜ!Xミサーイルッ!!」

 X−2の胴から自分の胴より長いミサイルが発射された。ミサイルは無防備な腹をさらけだしたアルマジロビースト目掛けてまっすぐ飛ぶ。
───大爆発!!アルマジロビーストは粉々に吹飛んだ。
 「よし!次行くぞ!」
 「おっけ〜い!!」
 ゲッPとツインザムは分離し次の目標へ向け飛んだ。


 「あははは・・・どうしよ〜かな〜?」
 苦笑しながら、香田奈は自分達の目の前まで来ている二機のギアを目にして途方に暮れていた。
 「とりあえず・・・」
 香田奈は抱き着いて離さない将輝を後部座席に押し込む。
 「うわ〜!ねえちゃん。一人にしないでくれ〜!!」
 幼子の様に駄々をこねる将輝を無視して、香田奈は危険を承知でハッチを開けた。鍾乳洞特有の冷たく湿った空気がコクピットに流れ込む。
 「ちょっと・・・寒いかな・・・」
 香田奈は少し身震いした。今着ているパイロットスーツはヴィレッタから借り受けたもので動きやすかったが、薄手でしかも胸元が開いている。将輝の着ているイングラムの物と似てはいるが、機能性のみを重視した服だった。
 香田奈が姿を見せたのがきっかけとなったのか、二機のギアもしゃがみ込み胸のハッチを開く。
 黒いギアからは、黒髪で後方髪しばりで拳法着を着た青年が、赤いギアからは左目に眼帯を着けた金髪ロン毛の赤い服を着た青年だった。
 「ようっ!」
 眼帯の青年が笑いながら近寄ってきた。
 「お前がこの黒い奴のパイロットで〜」
 拳法着の青年を見る。そして目線を香田奈に移す。
 「そこの目のやり場に困る姉ちゃんが、このデカブツのパイロットか。」
 香田奈は二人の青年の目線が自分の胸元に注がれているのに気付き、思わず両手で胸元を隠す。
 (今度、わたし用の服、作ってもらおう・・・・)
 香田奈はそう思った。
 「まあ、お互いこんな状況だ!ここは休戦といこうぜ!」
 眼帯青年は笑いながら言った。香田奈と拳法青年は頷く。
 「俺はバルト!海賊の頭領だ!んでコイツが愛機『ブリガンディア』だ!」
 バルトと名乗った青年は自分の赤いギアを示す。
 「俺はフェイ・・・コイツは『ヴェルトール』。」
 拳法着の青年が名乗った。
 「私は香田奈。匕首香田奈・・・TDF中尉よ。そして私達の『R−ガーダー』。」
 「達?」
 バルトが尋ねると、香田奈は頷く。
 「まだ乗ってるのか?どこか調子でも悪いとか・・・」
 フェイが不安げにR−ガーダーを見上げる。微かにだが、誰かがすすり泣く声が聞えてくる。
 「弟が・・・ちょっと・・・」
 香田奈が苦笑しながら言う。
 「どうしたんだ?」
 バルトが尋ねる。香田奈はためらいがちに答えた。
 
「暗所恐怖症なのよ・・・・」
 「うわ〜!!ねえちゃ〜ん!どこ〜!!」
 恐怖のあまり、すっかり幼児退行した将輝の情けない泣き声が鍾乳洞に響いた。


 「敵の行動パターンと出現場所から、敵の本拠の位置が割り出せました!」
 オペレーターが艦長に向かって叫ぶ。艦長は頷く。
 「ライディース少尉!サルペン准尉!聞いたな?今そっちにデーターを送った。」
 アルブレードのコクピットでライはモニターに映し出された、映像を確認した。
 「了解!全機に通達!!これより敵司令部殲滅戦に移る!」
 アルブレードの眼前には、まだ見えぬ敵の司令本部が映っていた。



 

 次回予告

  宇宙悪魔帝国の前線司令部に突入する我等がオンディーヌ隊!そこで待ちうけるヒッサー将軍の恐ろしい魔の手が迫る!!
 巨大鍾乳洞に迷い込んだ将輝達は謎の老人「バルタザール」と出会う。老人の正体は!?
 そして!迫り来る巨大ギア!!炸裂する不完全T−LINKナックル!!そしてこの危機にR−ガーダー最強の必殺技がついに繰り出される!!
 そして海賊バルトが語る伝説の「ギア=バーラー」とは!?
 
 次回 サイバーロボット大戦第十七話! 「超必殺!!香田奈、怒りのT−LINKラリアート!!」にとりあえず・・・・ご期待下さい。
 次回も姉ちゃんがすげえぜ!!   「主人公・・・誰だっけ?(爆笑)」



 

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