第十一話  「激突! 熱血男子高校生・対・冷血女子高生」




 屋内プールの水面が割れ、中から青い人型ロボットが姿を現す。全体的スマートな感じがするロボットだ、額に三日月、PTのような鋭い二つの目、腕は円柱で構成、足も円柱だがスマートな本体に反し太い。
 「私の技術の結晶・・・これで皆に私の偉大さを見せつけてやる!」
 そう言い結奈はそのロボットに乗り込んで行った。

 「燃えろ〜!燃えろ〜!」
 依然ガムダは攻撃の手を休めない。赤い光線が町中にほとばしる。
 「ふん!まだ出てこないのか?ならば次は・・・・」
 アレクシムは目線に無傷の学校を見つけた、間違い無くきらめき高校だ。
 「あそこにするか・・・・行けガムダよ!」
 ガムダはゆっくりと高校に向かって全身を始める。

 「おい・・・あの化け物、コッチへ来る!」
 「あたし達を殺す気よ!!」
 「あら〜困りましたね〜・・・」
 「イヤー!こんな所で死にたくない!!」
 生徒達が泣き叫ぶ。
 その様子を見て、ユナが呟く。
 「こんな時に限って、ジーナ・マリナ・エリナがいないなんて〜!エルラインならアイツなんか〜。」
 「無いものねだりしても仕方が無いわ。今の戦力で何とかアイツを食い止めなきゃ!」
 リアが自分に言い聞かせるように言う。ユナのロボットであるエルラインは、ユナのサポートアンドロイド三人と自分の参謀役でもある小型ロボ『英知のエルナー』が合体する事で、完成する。だが、今は三体のアンドロイドは、連れていなかった。三人とも別の任務の為に現在不在なのだ。その為エルラインに合体する事が出来ずにいた。
 「こうなったら、エレメント・フェアリー号と私のエクスカリバーで少しでも時間を稼ぐ・・・」
 リアはユナ達の移動母艦でもある宇宙クルーザー二機で、ガムダに攻撃を仕掛けようと思った。元々民間宇宙艇を改造したものだが、並の宇宙戦闘機くらいの戦闘力はある。
 「よし・・・」
 リアがクルーザーを遠隔操作で呼び出そうと思った時それは起こった。
 「アレは!!」
 屋内プールの天井が開き、そこから一機の人型ロボットが姿を現したからだ。
 「まさか・・・彼女が・・・」

 「感度良好・・・オートバランサーリンク・・・システムオールグリーン・・いくわよ。」
 姿を見せたロボットはそのままガムダに向かって飛んでいった。
 「さあ・・・お披露目よ!『世界征服ロボ』!!」
 世界征服ロボはガムダのすぐ前に降りた。そしてガムダ目掛けて右手の人差し指を指す。
 「そこのロボット!私の領域を侵犯するとはイイ度胸ね!」
 結奈は強気に出た。自分より巨大なガムダに対しても臆した様子は全く無い。
 「この私の偉大なる力の前にひれ伏すがいい!」

 「何だ?このロボットは?TDFには見えないが・・・・」
アレクシムは眼前の正体不明のロボットを警戒していた。だが、こちらも自分には自信がある。
 「まあいい・・・どんな奴であろうと、私に逆らうの者は死あるのみだ!」
 お互い相手の素性も技量も解からぬまま向かい合った。そして次の瞬間両者は激突した!

 世界征服ロボがパンチを浴びせる。だが、巨大なガムダには大したダメージにならない。
 「その程度か!!」
 今度はガムダが殴り返す。拳だけで自分の上半身くらいの面積が世界征服ロボに迫る。
 「遅いのよ。」
 ロボは今立っている場所から数歩だけ動いてかわす。そして無防備なガムダのボディに向け突っ込む。
 「食らいなさい!」
 そのまま肩からガムダにぶつかる。だが、やはりガムダの巨体にぶつかったところで決定的なダメージはあたえられない。聡明な彼女にしてはおろそかな手だ。
 「ふ・・・」
 彼女はコクピットで微笑んだ。何か目的があったようだ。次の瞬間、ロボはいきなり逆立ちした。そして腕の力で飛び、ガムダの中心目掛けてドロップキックを放つ。さすがにこの奇襲には驚いたのか僅かに後ずさりする。その時、逆立ち状態であったロボの姿がいきなり変わっていた。本来足であったものが長い腕と化し、腕が短いながら足となっていた。そして元は脚の付け根付近から、一つ目のライトのようなものがせりあがり、頭部と化した。
 「変形完了・・・・始動!『紐尾アーマー』!」
 これが世界征服ロボ第二の形態、紐尾アーマーである。これは以前、彼女が北海道に修学旅行に言った時、彼女は平原に出来ていたミステリーサークルを調査中に『宇宙人』と思われる生命体の攻撃を受けた事があった。その時、持ってきていた試作機を始動させ、何とか撃退したものの、同伴していた男子生徒は宇宙人の攻撃により重傷を負ってしまった。
 「あの時のデーターを生かし、試作機の機能をロボに組み込んだ・・・対宇宙人戦闘形態よ!」
 紐尾アーマーは右腕のドリルを回転させ、ガムダの胴体にねじ込む!さらに左腕の強化型マニュピレイターを何度も叩きつける。しかも電撃のオマケ付きだ。さしものガムダも全身をのたうたせ、苦しむ。
 「調子にのるなぁー!」
 ガムダは巨大な手で紐尾アーマーを掴むと、軽々と持ち上げた。両手でがっしりと捕まえられ、動きが取れない紐尾アーマー。
 「食らえ!」
 そのまま抱え上げ放り投げる。放物線を描き、無事な建物をなぎ倒しながら地面に叩き落される。
 「燃えろ〜!!」
 紐尾アーマーの落下地点付近に赤い光線を放つ。街が再び燃えあがる。
 「たやすい・・・」
 アレクシムは燃える町を見てほくそえむ。だが、アレクシムは爆炎の中でこちらに向かってまっすぐこちらに向かってくる影を見た。次の瞬間、ガムダに頭部に何かが飛びついた。それは青いライオン型ロボットだった。
 「高速格闘形態・・・・『サイバーファング』よ。このまま食いちぎってくれる!」
 ライオン型のロボットがガムダの頭部に爪をつきたて、噛み付く。ガムダは振りほどこうと手足を振りまわす。

 「やばいわよ・・・」
 リアはロボとガムダの戦いを見つめ呟く。彼女の目線の先には前より燃え広がった街とニ機のロボットが回りも気にせず暴れまわっている光景だった。
 「学校は・・・・無事だけど・・・街が。」
 幸いガムダの攻撃は完全にロボに向けられていた。その為学校には被害は無いものの、街の被害は、二機の戦闘行為によりますます広がる一方だった。
 「これ以上・・・被害広げないでよぉ〜」
 リアはがっくりと頭を落とした。そんな彼女の気も知らず、ロボとガムダの戦いはさらにヒートアップしていった。
 「燃えろ〜」
 赤い光線がガムダから出る!かわすロボ。流れ光線で燃えるビル!
 「落ちなさい!」
人型に戻ったロボが足からミサイルを放つ。ガムダに命中!倒れるガムダ。巻き添えで倒壊する市民ホール!
 「生意気な〜!!」
 ガムダ、指からミサイル数発発射!ロボ、サイバーファングに変形!避ける。吹飛ぶ美術館!
 「科学の力、思い知れ!」
 サイバーファング、口から火を吐く!炎に包まれるガムダ。一緒に燃える図書館!
 「潰れろ!」
 ガムダ、突然消える。そしてサイバーファングの頭上にいきなり現れ落ちてくる!避けるファング。踏み潰される映画館!
 「まさに芸術の域だわ!」
 紐尾アーマーに変形!頭部からビームを発射、消えて避けるガムダ。燃え広がる中央公園!
 きらめき高校の生徒ご用達のデートスポットが、ことごとく失われて行く・・・・新しくデートスポットを開拓するのは大変そうだ。
 
 「もう・・・いい加減にしてよ・・・・何処まで壊せば気が済むの・・・」
 「残ってるの、動物園と駅前・・・それと商店街くらいだね・・・・」
 ユナが肩を落としているリアに向かって呟く。リアに言い返す気力は無い。
 「ナカトさん達、まだかな〜・・・」
 ユナが作り笑いをした時、頭上に黒い影が差した。
 「なに?飛行機?」
 黒い影に見えたのは二機の航空機だった。だが、航空機にしては形が変だ、主翼らしきものが見えない。
 「どうやって飛んでいるんだろう・・・・?反重力かな?」
 ユナが呟く、その二機は重力制御で飛んでいる訳ではなかった。例え、重力制御が行われているとしても、大気中を飛行するためにはそれなりの機能が必要となる。
 例えば、ユナ達の宇宙クルーザーでも重力制御は行われているが、大気圏内を飛行するため、空力効果を出すため通常の航空機の様に主翼を有している。だが、今飛んでいる二機はそれが無かった。
 「どうしてるんだろう?」
 そう呟くと、その内一機から何か人の型したものが飛び降りた。それはTDF主力量産機『ゲシュペンストMK−U』だった。
 ゲシュペンストは校庭に着地するとリア達の前にしゃがみ込んだ。そして胸部のハッチが開く。そこには長い金髪の美男子が姿を現した。
 「リーアベルト=フォン=ノイエシュタインさんとユウナ=カグラザカさんですね。」
 金髪の男はリアとユナに向かって言った。
 「詳しい話は天宮氏から伺っています。私はTDF所属、SRXチーム少尉『ライディース=ブランシュタイン』です。」
 男はそう名乗った。
 「リアで良いわ。」
 「私もユナでいいよ〜。」
 二人はライに向けて言った。ライは頷く。
 「神戸支部の方?」
 リアは尋ねるとライは首を横に振った。
 「いいえ、任務により北京で合流予定だった者です。特命により北京より参上しました!」
 ライはそう言い二人に敬礼した。
 「私達は軍人じゃあ無いから敬礼はいいよ。」
 ユナがライに向かって言う。ライは頷く。
 「それより、あの二機をどうにかお願い!このままじゃこの街は全滅よ!!」
 「解かっています。私があの青いロボットをどうにかする。」
 そう言い、ライは世界征服ロボへ目線を移す。
 「ガムダは?」
 ユナが尋ねると、ライは問題無い顔をしていた。
 「残念だが、この機体ではガムダと正面切って戦えない。その為に彼等がいる。」
 ライはマイクを取りだし、上空を旋回している二機の航空機に向かって呼びかけた。
 「空ちゃん、大地君、出番だ。ガムダのほうは任せたぞ!」
 ライが言うと二機の航空機はまっすぐガムダの方へ飛んでいった。
 「すぐに増援も来る。それまでここを頼みます。」
 「増援って?」
 ユナが尋ねるとライはニヤリと笑った。
 「凄い奴ですよ・・・・」
 
 名古屋上空・・・・
 「味噌煮込みうどんが食いてぇな・・・・・」
 何か人型のものが飛んでいた。

 「しつこい奴め・・・・」
 アレクシムが眼前の世界征服ロボを憎たらしげに見ていた。その時彼は気付いた。自分に向かって飛んでくる二機の航空機を、それはアレクシムには見覚えがあった。忘れたくても忘れられない存在だった。
 「あ、あいつらは!!」
 アレクシムの前で二機の航空機は先頭の赤い機体に後続の青い機がまるで激突するように見えた。

 『チェンジ!クロス・フォームッ!!』
 二機の航空機は空中で激突・・・いや合体した。そして変形して行く・・・次の瞬間には上半身が赤く、下半身が青いロボットが立っていた。
 
『ツインザム・Vッ!!』

 そのロボットはまるで鬼の角の様に鋭い突起が頭部の左右へと張りだし、二つの鋭い目には片方だけ人間の瞳のようなものが入っていた。肩幅は広く、胸板は厚い。航空機形態のキャノピーがそのまま胸に残っていたが、それも装甲の一部に見えて、好戦的なイメージを持ち合わせた赤鬼をイメージさせるロボットだった。
 「また暴れてんのか〜!こりないヤツ!」
 「今度こそ、ビシッとやっつけちゃうぞ!!」
子供の声だった。男女、子供一組が乗っていた。そんなロボットにまるでガムダは恐ろしいものでも見たかのように、後ずさる。
 「ツ、ツインザムV・・・どうしておまえたちがここに・・・?」
 アレクシムの声は震えていた。先程まで見せていた覇気がすっかり失せていた。
 「お前のよ〜な悪いヤツが現れるところに俺達は現れるのさっ!・・・・ねえちゃん、今の台詞カッコイイだろ?」
 「ば〜か言ってないで、大地、さっさとやっつけよう!本当に子供なんだから・・・」
 「ちぇ〜。ねえライさんはどう思う?カッコイイよね?今の台詞!」
 だが、そこにライはいなかった。彼のゲシュペンストは既に世界征服ロボの取り押さえに入っていた。
 「これだから大人は・・・」
 大地は少しムスッとした。そしてその怒りをガムダへと転化させていく。すでにツインザムの右腕には真っ赤に燃える斧、『ファイアートマホーク』が握られていた。
 「お前が悪いんだからな〜!!」
 そう言い放ち、ツインザムはトマホークをガムダに向けて振りかぶった。

 「止まれ!紐尾結奈!私はTDFだ!」
 ライのゲシュペンストが、がっちりと世界征服ロボの肩を掴む。
 「紐尾君!今、君がしている事は『自衛権の行使』にはならない!したがって犯罪だ!」
 ライが続けて言う。するとロボの動きが止まる。一息つくライ。
 「解かってくれたか・・・・」
 だが、次の瞬間ロボはサイバーファングに変形していた。ライが話しかける隙も与えずに、ファングはゲシュペンストを押し倒し、上に覆い被さった。ファングの鋭い爪がゲシュペンストの肩に食い込む。この一撃だけで肩の装甲が悲鳴を上げている。さらに巨大な牙がゲシュペンストの顔前にある。
 「う、動けない・・・。止めろ!紐尾君!!これ以上罪を重ねるな!!」
 まるで、警察官が犯人を説得しているような台詞だったが、ライは本気だった。
 「三流刑事ドラマのセリフね・・・TDFの軍人さん。」
 結奈はまるで、獲物を仕留めた猛獣のように優艶な目をして舌なめずりした。
 「ライディース少尉だっ!!」
 ライは勧告のように叫んだ。
 「では、ライディース少尉・・・・罪を重ねるなとはどう言う事ですの?」
 ゲシュペンストに向かい怪しい笑みを浮かべる結奈。
 「君がいましている事だっ!」
 「これは心外・・・私はただ、自分の領域が侵されたので、それなりの処置を取っただけよ・・・」
 結奈はファングの前足の力を強めた。ゲシュペンストの両肩に亀裂が走る。ゲシュペンストが腕で突き放そうとするがパワーの差は歴然だった。
 「自分の領域だと・・・」
 「そうよ!すなわち貴方達は領空侵犯したのよ!その外敵を駆除するのは当然!」
 ついにゲシュペンストの両肩が砕けた。破片を飛び散らしゲシュペンストの身体から両腕がちぎれ飛ぶ。
 「今だ!!」
 ライはゲシュペンストの出力を全開にした。馬乗りになった状態から何とか抜け出せた。そのまま距離を開け、ロボと対峙する。
 「その程度のロボットで私と戦おうとするのが無謀なのよ!私のロボは世界を征服する為に造ったのよ!あなたの貧相な量産型とは出来が違うのよ!」
 両腕を肩から失ったゲシュペンストMK−Uを見て、うすら笑う結奈。
 「それはこちらの台詞だ。君こそ、その程度で世界を牛耳ろうなど片腹痛い!」
 ライが結奈に向かい言い放つ。それを聞き、表情を変える結奈。
 「なんですってぇ〜!!私のロボより優れたロボットなどある訳無いわ!!」
 「ある!!」
 ライは言いきった。その言葉に結奈は普段のクールさからは考えられない怒りに満ちた形相をしていた。
 「見せてあげよう、史上最強のロボットを!!」
 ライは空を見上げた。それを見て結奈も目線を空に移す。
 「君なら、この時点でわかっているんじゃないかな?」
 ライはニヤリと笑った。対する結奈は冷たいものが顔に流れた。何故ならロボの計器が上空から異常なエネルギー反応を捉えたからだ。
 そしてそれは徐々に姿を現した。黒い巨人を・・・・
 「来たな・・・」
 ライが呟く。そして轟音を上げ、巨人は着地した。その正体は!!
 
 「ようやく着いたぜ・・・お待たせしたな!神戸までキカイオー大出張だぜぇ!!」
 キカイオーがゲシュペンストへ向きを変える。
 「アンタがライさんだな?ヴィレッタ大尉から聞いてるぜ。で?相手は誰だい。」
 「後ろの青いロボットだ。すまないが君の力を彼女に見せてやってくれないか?」
 キカイオーが振りかえるとそこには世界征服ロボが肩を震わせて立っていた。
 「コイツか・・・いかにも悪役って感じだな。」
 ジュンペイが言うと結奈はいきなりキカイオーに殴りかかった。考えも何も無い、結奈はただ殴りたかっただけだった。だが、キカイオーはそのパンチを簡単に受け止める。
 「認めない・・・絶対、認めない・・・、こんなロボット・・・認めるわけにはいかないのよぉー!!」
 結奈は、半狂乱で何度もキカイオーに殴りかかる。だが、キカイオーには通じない。
 「私を超えるロボット!私より優れた技術などあるわけがないのよー!!」
 結奈は計器から表示されるキカイオーのエネルギー波長を既に読み取っていた。それゆえ、自分の科学力に絶対の自信を持っていた彼女にとって、絶大な反応を示すキカイオーを認めることは自分のプライドをズタズタに切り裂くも同然だったからだ。
 「服従パーンチ!!」
ロボの右腕が飛んだ。まっすぐキカイオーに向かって来る。だがキカイオーは避けない。
 「ロケットブロー!」
キカイオーの右腕も飛んだ。二つの拳は空中で激突!そして爆発!!
 「くっ・・・」
爆発したのはロボの拳だった。無傷なキカイオーの拳は本体に戻る。
 「独裁ミサイルッ!」
ロボの右足の脛が一部開き大型ミサイルが発射される。
 「キカイオーボンバー!!」
キカイオーの腹部からミサイルが発射、迎撃する。
 「う・・・・うわぁぁぁ!!」
結奈は涙を流しながら吠えた。普段の冷静さは微塵も感じられない咆哮を上げる。いつも暑苦しいジュンペイの方が冷静に見える。
 「世界征服・・・・ビィィームッ!!」
ロボの最強武器、世界征服ビームがロボの頭部から発射された。その威力はPTクラスなら三機は一撃で葬る威力を誇る。赤く太い光線がキカイオーに迫る。
 「ヒィィートォ・・・」
 キカイオーが両腕を上げ、胸を張る。胸の星と三日月の装飾に光が宿る・・・
 「ブレイザァァァー!!」
 キカイオーの胸から凄まじい光線が放たれる!キカイオーの武器の中でもトップクラスの威力を誇る必殺技『ヒート・ブレイザー』だ。超次元機関が生み出す絶大なエネルギーを放出する、その威力は計り知れない。
 「そ、そんな・・・」
 結奈は顔面蒼白になった。完全に圧倒されていた、今の彼女には19.5mのキカイオーが数倍の大きさに見えた。
 ロボのビームはヒートブレイザーによって相殺された。ジュンペイはそれ以上の攻撃を加えようとしない。
 「どうしたの・・・?とどめをさしなさいよ・・・」
 片腕を失い、がっくりうな垂れるロボ。結奈も同様だ、力無く呟く。完全に戦意喪失だ。
 「・・・・・・・」
 キカイオーは背を向け、地面に落ちたゲシュペンストの両腕を拾い出した。
 「何してるのよ・・・とどめを。」
 ジュンペイは静かに口を開いた。
 「俺はキカイオーの力を見せただけだ・・・」
 「・・・・わたしの負けだわ・・・」
 結奈は生まれて初めて『敗北』を認めた。それを聞き両腕を失ったゲシュペンストが近づいてきた、ライだ。
 「君を基地に連行するいいかな?」
 結奈は頷く。その頃・・・・・

 「ファイヤースラッシャー!!」
 ツインザムが高く飛びあがり斧を上段に構えてガムダを斜め上から切り裂く!そしてガムダの下半身まで切り裂くと手首を返し、反対側に切り裂く。Vの字斬りだ。
 「ぎゃああああ!!」
 アレクシムの絶叫!Vの跡を中心に爆発するガムダ。
 「決まったあ!!」
大地が嬉しそうに声を挙げる。
 「子供と思って、甘く見たわね!」
 「ば〜か!」
空と大地の声が残骸と化したガムダに向かって馬鹿にしたようにこだまする。
 
 「終わったな。」
 ライードが夕日に染まり出した町に向かって呟いた。
 「それはそうと・・・出遅れたな・・・」
 ナカトも呟く。
 「わりい、ここいらの地理、詳しくなくてな〜」
セリカがきまづそうに頭を掻いた。ナカト達が出遅れたのも彼女が道に迷ったせいだった。
 「まだ、やる事あるわよ〜。むちゃくちゃになった街の消化活動と被災者救出!いくわよ。」
ライフルの代わりに消化剤を抱えたハルマのディクセンが基地を出た。
 「バンガイオーのミサイル、冷凍弾と消化弾に換えといたからな〜」
バンガイオーの足元で整備員がりきとまみに向かって叫ぶ。
 「おうよ!人助けだぜぇい!まみ。」
 「そうね、兄さん!」
バンガイオーは燃え盛る街に向けて飛んだ!

 「火災は片付きそうだな・・・」
 神戸支部に戻ったライは尋問室の窓から街を見ていた。町ではディクセンやお嬢様軍団が被災者の救助にあたり、キカイオーとワイズダックが瓦礫や障害物を排除し、バンガイオーが上空を旋回しながら火災を消していた。
 「ユーリィ、食べちゃダメだからね!」
 ユナが隣のユーリィに向かって戒めるように言う。お嬢様軍団の一部は避難所の炊き出しを行っていた。
 「わかってるですぅ。みんなお腹が空いてたら元気が出ないですぅ。」
 ユーリィは自分用の電子ジャーからご飯を取りだし、次々とお握りを作っていた。

 「さて・・・君の処遇だが・・・」
ライが尋問室に力無く椅子に座ってる結奈を見て言う。先程までの覇気が全く感じられない、ただの女子高生にしか見えなかった。
 「通常なら君のやった事は許されるものではない・・・」
ライが結奈に向かって言う。
 「このまま、犯罪者として刑に服してもらうか・・・」
 結奈の身体が、ビクッと震える。それを横目で確認したライは話を続けた。
 
「我々と共に地球を守るか!二つに一つだ!!」

 「おい!誰だ!俺のキカイオー勝手にいじってるのは!!」
 格納庫にジュンペイの怒声が響く。救出活動を終えたキカイオーに白衣を着た何者かが工具片手に作業していた。ジュンペイが怒鳴ったのは、整備員には見えなかったからだ。
 その人物は振りかえった。ジュンペイはその人間を知っていた、モニターで見ていたからだ。自分とそう変わらない年齢、知的な風貌、片目を隠した髪型・・・
 「あ〜!お前は・・・」
 ジュンペイは叫んだ。その人物はジュンペイに向けて胸のIDカードを見せた。ジュンペイも、勿論持っていた、極東本部でヴィレッタにもらったからだ。
 IDには人物の写真と氏名、そして所属が記してあった。人物は不敵な笑みを浮かべてジュンペイに向かって言った。
 「わたしは、主任技術者として、TDF極東本部に任命された・・・」
 人物は先程までの落ち込み様からうってかわって自信に満ちた表情をしていた。
 
「『紐尾結奈』だ!!」



次回予告


 一癖も二癖もある奴等が極東本部に集結する!TDF残存戦力が本部に集まる!陸軍からワイズダックが!空軍からラファーガが!宇宙軍からディクセンが!海軍は・・・全滅してます・・・。
 そして!スーパーロボットが!!いよいよ反撃の時!!だが・・・船が無い。

 次回、サイバーロボット大戦 第十二話『流用母艦ホワイトローズ!壊滅TDF本部!』 
 次回も、ライバル登場にすげえぜ!! 「この基地は死んでいる・・・」なんかマジ。



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