第七話 「銀河最強のお嬢様!」
「わああああ!!」
ディクセンが横一文字にザッキュンを切り裂く・・・・
「・・・・・・・」
「エェェェクッゥゥゥス!!ビィィィム!!」
ゲッP−Xの腹部から青いビームが無数のビーストをなぎ払う。するとゲッP−Xの目の前に巨大な鳥の姿をした宇宙ビ−ストが姿を現した、大きさだけならゲッP−Xの5倍以上ある。
しかし、ゲッPーXは臆した様子を少しも見せず三機のメカに分離してビーストの攻撃をかわす。次に合体した時には姿が変わっていた。スピード重視の海戦形態X−2だ。
「サンダァァ!!アタァァクッ!!」
X−2は両手の先端を一つの槍のような形に変え、天空から稲妻を呼び、手の先端にそれを集めてビーストに向かって放つ。稲妻を受けた鳥形ビーストは爆発四散した・・・・
「・・・・・・」
「だいっ!!せんぷうっ!!投げぇぇ!!」
キカイオーが自分より巨大なクヴァールを軽々と放り投げる・・・・
「・・・・・・」
「いくぜ!!ねーちゃん!!」
「ええ!いいわよ!!」
R−ガーターが片腕でガスタンクのボディのロボットを持ち上げていた。ガスタンクロボは手足をじたばたと動かしているだけであった。
「くらえ!!」
R−ガーダーの手首が凄まじい勢いで回転し始めた・・・無論持ち上げられているガスタンクロボも回転する。
「必殺!!回転叩きつけぇぇぇ!!」
「安直な名前・・・もうチョットいいのにしたら?」
「うるせ〜!!」
R−ガーダーは回転したままのガスタンクロボをそのまま地面へと叩きつけた。轟音と共に猛烈な横回転しながらガスタンクロボは地面をえぐり、手足や頭など、丸い胴体部以外を撒き散らしながらバラバラになってしまい、最後には爆発した。R−ガーダーの手首にはガスタンクロボの装甲の一部が握られたままであった・・・・
「・・・・・・」
「・・・以上です。」
暗い部屋だった・・・・いや部屋であるかどうかも解からない空間。数人の人間が・・・地球人ではないが、人間が空間の中心に浮かび上がった映像を見ていた。
「以上が現在確認できた、地球側の新たな戦力です・・・・」
何も無い空間から女性の声が響いた。
「フ・・・無様な・・・」
仮面を被った黒髪の女性が呟いた。その言葉に、水色の肌をした金の装飾を付けた男が顔をしかめた。
「何ですと?」
「無様は無様と申しているのですよ。ゴルディバス軍も宇宙悪魔帝国も・・・・」
仮面の女性が口元を緩めて薄ら笑いしている様子に、金の装飾の男と、露出の高いレオタードのような服を着た角の生えた美女が怒りをあらわにした。
「どう言う意味だフロイライン=D!」
「言った通りですわよ、ヒッサー将軍?」
フロイラインの態度にヒッサー将軍と呼ばれた女性は詰め寄る
「我々が無能だとでも言いたいのか!!」
「そう、とらえてもらっても構わないが?」
すると金の装飾の男も同じように反論する。
「貴様・・・貴様がいくら評議会の後ろ盾があるからといって今の言葉聞き捨てならん!!」
金の装飾の男が今にもフロイラインに掴みかかろうとした時、一人の男が声をかけた。
「待たれよ、お二方・・・。」
二人は声のほうを向いた。そこには仮面と覆面を付けた二人の赤い男が立っていた。
「シャドーレッド!!」
「ジャーク将軍!!」
ヒッサーと金の装飾の男は同時に言った。
「この度の失態は我にある。」
「責めを受けるのは我々ではないか?」
二人の赤い男はフロイラインに向かって言う。それを聞いてフロイラインは微笑する。
「さすが両軍団でも、『赤い死神』と『赤い悪霊』の名を持つお二方・・・自分の非を素直に認めるとはそこのお二人よりは出来ていますな?」
「!!」
怒る二人を制して、ジャーク将軍がフロイラインに言う。
「タカマガハラに入港していたTDFの艦・・・あれにはザッキュン二機を易々と倒した新型機が配備されている。」
「それで・・・?」
「奴から一番近いの場所にいるのは私だ。今度こそ倒して見せよう。」
それを聞きフロイラインは微笑んだ。
「よろしい、やってみせていただこうかしら?ジャーク将軍。」
その言葉にジャークは表情を変えず頷いた。
「いいですとも、ですがフロイライン殿。」
「なんです?」
「先程の言葉は『やってみせてください』の間違いではないか?」
ジャーク将軍は口元をにやつかせた。その台詞にフロイラインは口をゆがませた。
「何ですと・・・・!」
「貴公がいくら評議会の幹部とはいえ、我等宇宙悪魔帝国に命令する権利など無いと言っておるのです。まあ戦場と言う物を知らぬ貴公に何を言っても無駄だがな・・・・先程の言葉、貴公からの『頼み』として聞いておこう。」
品位の高いフロイラインがその言葉に黙ってはいなかった。その場を離れようとしたジャーク将軍を呼びとめた。
「ジャーク将軍・・・・」
「何か?」
ジャーク将軍は何食わぬ顔で答えた。その態度がますますフロイラインを不機嫌にさせた。
「・・・その新型機殲滅に・・私も加わろう。・・・一度戦場というものを見ておきたい。」
口の端を引きつらせながら話していた。その様子にジャーク将軍はニヤリと笑い、答えた。
「それは、評議会の言葉ですかな?」
「そう捉えてくれてかまわない・・・・」
フロイラインは必死に平静を装っていたが、口調には怒りが混じっていた。
「よろしい。では私が陽動を担当しよう。貴公には敵艦の殲滅を依頼しよう。不慣れな貴公では正面から敵と戦うのは難しいですからな。」
「了解した・・・・」
その様子を見ていたシャドーレッドは微笑しながら思わず呟いた。
「ジャーク将軍か・・・なかなか面白い男だ・・・他人と言う気がせん・・・」
その言葉を聞いた金の装飾の男はこう言った。
「おぬし等、声が似てるぞ・・・」
コロニー『タカマガハラ』を出港した練習艦ラズベリーは、その航路を一路、同じ極東系コロニー『アスカノミヤ』に向けて移動していた。難民の受け入れと補給の為である。
「結局・・・生き残れたのは新兵と候補生だけか・・・・」
ラズベリー艦長のベイツは、報告の結果にため息を付いていた。ザッキュンの奇襲攻撃により殆どの正規兵は死亡した為に、現在この艦を運用しているのは、新兵と訓練生ばかりであった。
「この艦が練習艦で良かった・・・」
思わず呟く。何故なら練習艦だからこそ、運用方法は通常艦に比べて容易になっている。この為新兵や候補生といった経験の浅い兵でも運用できていた。だが戦闘力に関しては貧弱なのは否めない。
「機動兵器の方は、ディクセンが三機だけとはな・・・・」
艦長の嘆くのも無理は無い。艦の戦闘力が貧弱な上、運用しているのは素人同然。こうなった場合頼りになるのは艦載兵器なのだが、僅か三機では心もとない。
さらに追い討ちをかけるようにオペレータが報告する。
「内、三号機は小破していますが・・・修理できないことは無いです。」
「予備部品だけはふんだんにあるからな・・・」
九機配備される予定だった機動兵器は、ザッキュンによって六機が完膚無きまで破壊された。無事であったのはナカトが動かした『ディクセン』の一号機と既に搬入を終えていた未完成の同ニ号機だった。残る三号機はザッキュンの攻撃を受けたものの幸い破壊された他の六機に比べて損傷が軽かった。
ザッキュンとの戦闘の後、ナカトが破壊された六機の残骸で使えそうな部品を必死でかき集めたため、幸いと言っていいのだろうか・・・・機体の予備部品には、丸々約三体分のストックが出来た。
「ディクセンの二号機は、組みあがったのか?今の我々には一機でも多くの機体が必要なんだ。」
艦長はオペレータに尋ねる。
「格納庫からの報告では、あと三十分程で組みあがるそうです。」
「そうか・・・」
「ですが艦長、パイロットは?どうするんですか。」
オペレーターが不安そうに尋ねる。正規のパイロットは最初から艦には乗っていなかった。殆どが候補生だけだった。一号機を動かしたナカトも候補生である。しかもそのパイロット候補生すらも、ナカト以外は死亡または重傷を負っている。
「一号機にはそのままファーランド候補生にパイロットをやってもらう。二号機は完成次第フロックハート少尉に搭乗してもらおう・・・」
つまり、艦長は現在運用できるディクセン二機をナカトとハルマにパイロットを任せるつもりでいた。パイロットがいない今はこうするしかない。ディクセンはVRのように遠隔操作による操作や無人機として完全自動にする事は出来ないからだ。
「そうですね・・・正規の兵はハルマ少尉とライード曹長くらいしかいないんですから。」
オペレーターは悲しげに呟いた。
その頃、格納庫ではナカトがディクセンの整備をしていた。整備兵の数が足りず、猫の手でも借りたい状況だったからだ。
「外装チェック終了・・・・異常なし。電気系・・・OK。システムオールグリーン・・・」
「お疲れ・・・ナカト君。」
片手を吊った金髪の女性がディクセンのコクピットにいるナカトに声をかけた。イエールだ・・・
「イエールか・・・。ダメじゃないか!じっとしてなきゃ!!」
ナカトが気遣う。彼女はナカトと同じパイロット候補生であったが、ザッキュンの攻撃で腕を負傷していた。
「みんな頑張っているのに私だけ寝てなんて・・・・」
彼女は残った腕で伝送系チェック用のキーボードを持っていた。
「今の私でもコレぐらいは出来るから・・・・」
「イエール・・・・」
その時、艦内に警報が鳴り響いた。ナカトは叫んだ。
「敵襲だ!!」
ブリッジに緊張が走る。慣れない仕事にブリッジ中が慌てていた。そんな中、艦長だけは冷静に事を見ていた。
「落ち着け!!観測員何をしていた?」
「すみません!!突如現れたんです。」
観測員の報告に嘘はなかった。レーダーには現在一つしか無かった反応がいきなり三つになったからだ。
「敵の数と機種は?どこの勢力か解かるか!?」
艦長は叫ぶ。観測手は少し慌てながら報告する。
「え・・解かりました!宇宙悪魔帝国の『ザッキュン』です!数は三機!でも・・・」
「でも?どうした!?」
観測手は疑問口調で報告した。
「先頭のザッキュンだけ、突出して速いんです・・・通常の3倍ものスピードで・・・ザッキュンにはこんなにスピードは出せなかったハズなんですが・・・」
「新型かしら・・・?」
その報告に艦長は青ざめた。手が小刻みに震えていた。
「艦長・・・?何か心当たりが・・・」
艦長は少し怯えながら話し出した。
「奴だ・・・・第三次防衛ラインでの宇宙悪魔帝国の地球降下作戦で・・・奴一人の為だけにTDFの戦艦五隻が沈められた・・・」
「艦長・・・・」
「奴だ・・・『赤い死神』のジャークが来たんだ・・・」
漆黒の宇宙に浮かぶ白い練習艦ラズベリーにむけ一機のザッキュンが飛んでいた。だがただのザッキュンではなかった。色が赤い・・・さらに通常の三倍ものスピードで飛んでいた。そのザッキュンにはジャーク将軍が乗っていた。
「TDFの新型の性能・・・・試させてもらおう!!」
「フィクサーキャノンは!!」
ディクセンのコクピットでナカトは付近の整備員に怒鳴った。ディクセン最強武器であり高出力ビーム砲である超長距離支援攻撃兵装のフィクサーキャノンがディクセンの背中に取り付けられていなかったからだ。
「キャノン無しでジャークと戦えってのかよ!!」
「しょうがねえだろ!!まだ整備と修理が終わってないんだ!!代わりにとは言ってはなんだが、右腕に『ナックル・ショット』付けといた!それでなんとかしてくれ!」
ナックル・ショット・・・・ディクセンの右腕用の外付けオプションの一つ。貧弱な手首を強化手甲で保護し、手甲に内蔵された補助推進器でパンチの威力を増す格闘武器である。強力かつ命中制度が高い上、消耗も少ない武器ではあるが、敵に接近しなければ意味が無い為、使用範囲がかなり制限されるのである
「こんなの・・・近づかなきゃ意味無いじゃないか!!・・・これで死んだらどうするんだよ・・・」
文句を言いつつナカトはディクセンを発進台に付けた。
発進は飛行機のカタパルトのように射出される・・・無論、ナカトは訓練で何度も行ってきていたが、今回は訓練ではなく実戦だ。
「ナカト!ディクセン!いきま〜す!!」
カタパルトに足元が勝手に前に出る。踏みきりの所でナカトはディクセンの背中のバーニアを吹かす。ディクセンが漆黒の宇宙を飛んだ。
その頃、格納庫では、パイロットスーツを着たハルマがいらついていた。何故なら彼女が搭乗する予定のディクセンが、未だ組みあがっていなかったからだ。彼女の前には『形だけ』完成したディクセンが無言で立っていた。
「急げ〜!!」
「左腕の回路が繋がってないぞ〜!!」
「火器管制プログラム終了〜!!」
整備兵達が必死に最後の追い上げを行っていたが、今のハルマには亀の足程のスピードにしか見えていなかった。
「まだなの!!」
ハルマが怒鳴る。だが返事は返ってこない、それほど切羽詰った状況なのだ。
「・・・・!!」
いきなりハルマの身体が浮いた。すぐに後を振りかえるとそこにはパイロットスーツを着込んだライードがいた。
「ライード?」
ライードは無言でハルマをディクセンのコクピットへ押し込んだ。
「あと十分・・・・すぐ動かせるように操縦系のチェック、やってろ。」
ライードはニヤリと笑い、コクピットのハッチを手動で閉めた。薄暗いコクピット内でハルマは思わず苦笑した。
「落ちろ〜!!」
レーザーライフルをザッキュンに向け乱射するナカト。ビーム兵器を主流にしたPTとは異なりディクセンはバリヤー兵器に対抗する為、携帯火器はレーザーを使用している。ビームより初速の速いレーザーだが、それでもザッキュンには当たらなかった。
「この・・・赤いザッキュン・・・速い!」
青いレーザーは赤いザッキュンにかすりもせず虚空に消えて行く。
「これがエースか・・・」
「ふ・・・、新型のパイロットめ。まるで素人ではないか。」
ジャークは呟き、ザッキュンのマシンガンを連射する。だが、ディクセンの装甲にマシンガンの弾ははじかれていく。
「なんて装甲だ・・・マシンガンを全く受けつけんとは!!」
ジャークは知らなかった。ディクセンの装甲は月産の合金『ルナニウム』の複合材で構成されていた。コストは高いものの軽量さと頑強さを併せ持つ優れた装甲だった。ナカトのように素人同然のパイロットでも直撃を受けたのに無事なのはこの装甲のおかげだった。
「ジャーク将軍!!」
部下が叫ぶ。どうやら後方のザッキュンが追いついたようだ。二機のザッキュンが肉眼でも確認できた。
「マシンガンは効かん!包囲して格闘戦に持ち込め!!奴を艦から引き離せ。」
「了解!!」
二機のザッキュンがディクセンの左右に散った。包囲攻撃を仕掛けるのだ。
「ファーランド候補生だけでは無理か・・・・」
ブリッジで戦闘の様子を見ていた艦長が悔しそうに呟く。ナカトのディクセンは善戦はしていたものの、3機のザッキュンの見事なフォーメーション攻撃に苦戦していた。
「艦長!ディクセンの装甲がもう持ちません!!」
オペレーターが叫ぶ。普通なら援護攻撃の一つでもしてやりたいのが本心なのだが、乱戦のなかでむやみに打ち込めばディクセンにも当たりかねない。第一練習艦であるラズベリーにはそんなに高感度で命中制度の高いセンサーなど装備されていなかった。
「二号機はまだか・・・」
「あと五分ください!!」
格納庫から整備兵が叫ぶ。そんな中、モニターにライードが映った。
「艦長!!俺が候補生三人とでワイズダックで出ます!」
ライードが叫ぶ。仮駐屯地に配備されていた機体を倒壊した格納庫から掘り出していたのを、補助兵器として積み込んでおいたのだ。
「ワイズダックだと!曹長、あれは陸戦用だぞ!」
言われた通りワイズダックは陸戦兵器だ・・・宇宙空間での機動用装備は全く無い。宇宙に出たが最後、短い足と手を振り回すだけで何も出来ない。
「甲板に立って砲台にはなります!それにコイツの射撃管制システムはこの艦より上です。行かせてください!!」
「・・・・機体が艦から落ちないようにワイヤーで繋いでおけ。」
それは発進を許可する言葉だった。ライードが嬉しそうに敬礼する。
「ありがとうございます!!行きます!」
やがて甲板上に緑色の機体が姿を現した。足の裏に磁力を発生させゆっくりと前進する。
「いいか〜!新米ども!艦から落ちたら最後だからな〜。肝に銘じとけ!」
「了解!!」
「よし!ディクセンに当てるなよ〜・・・撃てえ!!」
ワイズダックは足の付け根近くの重機関砲と背部に装備されたミサイルを発射した。
「ふ・・・援護のつもりか?手足のついた戦車風情で何が出来る。」
ジャークは艦の上に立ったワイズダックを見てそう思った・・・だが
「何!?」
一機のザッキュンが直撃を食らった。爆発はしなかったが動きが緩む。
「そこだ!!」
ディクセンが隙を逃がさずライフルを放つ。青い光がザッキュンに突き刺さる・・・・爆発した。
「ヤツめ!戦艦並の火力を持っているのか?!」
爆発したザッキュンを見てジャークは思わず口に出た。
「距離を取れ!艦から引き離す!・・・・そろそろか・・・」
ジャークは時計をちらりと見た。
「ジャークめ、てこずっているようだな・・・いくか。」
フロイラインはニヤリと笑った。
虚空から多種様々な無数の小型ロボット達がラズベリーに向かって進撃し出した。
「艦長!!六時の方向から小型兵器群が接近中!」
「何!」
レーダーには無数の小型兵器が映し出されていた。
「しまった!!ジャークは囮か!!」
だが、気付くのが遅かった。小型兵器群は機動性を生かしラズベリーに接近してきた。
「いかん!!機銃発射!弾幕を張れ、ファーランド候補生を呼び戻せ!!」
「了解!弾幕張ります。」
ラズベリーの船体各部から機銃が発射される。だが小型兵器群は飛び交う弾丸の雨を交わしつつ接近してくる。的が小さすぎるのだ、小型兵器達の大きさは一番大きな機体でも3m程しかない。艦載機が少なく火力も弱い練習艦を叩くには絶好の機体だ。
これらはフロイライン=Dが所属する『評議会』と呼ばれる組織が所有の機体で『戦機』と呼ばれている。火力も防御力も低いが、機動性を生かした集団戦を最も得意とする局地制圧用の兵器だ。
無数の戦機がラズベリーに群がろうとしていた。
「何で、バズーカなの!!相手は小型機よ、バズーカでどうしろってのよ!」
やっとの事で完成したディクセンのハルマは装備された武装に文句を言っていた。初速の遅いバズーカでは小型機のスピードについて行けないからだ。おまけにナカト同様フィクサーキャノンは無い。
「仕方ないんですよ!ライフルはナカト候補生が持っていった一丁しか無いんですよ!!」
「だからって・・・バズーカは無いでしょバズーカは・・・せめて機関銃くらい無いの?」
「火炎放射器なら・・・」
「ハルマ!いきます!!」
整備兵の意見を無視してハルマのディクセンは出撃した。
「え?練習艦が!」
ナカトが通信を受けた時には既にラズベリーは戦機に群がられていた。
「急いで戻って!!」
オペレーターが悲鳴に近い声を挙げる。
「無理だよ!こっちも必死なんだ!!」
確かにナカトの言う通りだった。二機のザッキュンに阻まれ、身動きが取れずにいた。
「一号機はは戻れないのか!!」
艦長は叫ぶ。
「無理です!ジャークに阻まれて・・・」
「後部甲板損傷!」
「第三副砲大破!!」
「敵小型兵器、二号機に群がっています。」
見れば、ハルマのディクセンは関節と言う関節に小型機が群がり動きが取れなかった。
「艦長!!第一甲板のワイズダックが!!」
ワイズダックの足元に十数機の戦機が群がりワイズダックを甲板から引き剥がそうとしていた。
「曹長!敵がワイズダックを押してます!!」
「何!ふんばれ!磁力最大だ。落とされたら俺たちゃ終わりだぞ!!」
「曹長!敵がワイヤーを!!」
「何い!!」
ライードが後部モニターを見ると、敵がレーザーでワイズダックと艦を繋ぐワイヤーを切っていた。
「くそっ!右腕のパイルバンカーを甲板に突き刺せ!落ちるよりマシだ!」
「了解!」
ワイズダックが右腕の巨大な杭打ち・・・パイルバンカーを甲板に突き立てる。
「よし・・・」
だが、別の戦機が今度はワイズダックの右腕の関節にレーザーに撃ち始めた。
「こいつら・・・・」
ライードは、歯軋りした。振りほどこうにも、敵が小さすぎて無理、頼みのナカトは足止めを食らっている。ハルマも蓑虫同然だ。
「ここまでか・・・・」
艦長は諦めた表情を見せた。
「総員に退艦命令を・・・・」
その台詞を話そうと思った瞬間である。オペレーターが叫んだ。
「艦長!!」
「何!!」
ブリッジの眼前に戦機がいた。しかも両手と両肩が大砲になっているタイプである。
「・・・・・終わりか。」
艦長が覚悟を決め、目を閉じた。眼前では戦機の四つの銃口がキラリと光った。その時!!
───ドカーン!! 大きな音と共に戦機が爆発した。
「何が起こった!!」
だが、答えられる者はいなかった。誰も何が起こったか解からなかったからだ。
さらにワイズダックに群がっていた戦機も次々と爆発する。
「奇跡が起きたのか・・・?」
「艦長!あれを!」
オペレーターが指差した方向、戦機の残骸に一本の薔薇が刺さっていた。
「薔薇・・・だと・・・」
艦長が驚くのも無理は無い。
「艦長!上!!」
ワイズダックから通信が入った。あのライードがかなり仰天した声を出していた。
「上?上だと?」
「ブリッジの上!艦橋の上に人が立っています!!!」
「なんだと!!!映像出せ!」
オペレーターがモニターに艦橋の真上の映像を出す・・・そこには信じられない光景が映し出されていた。
「そんな・・・バカな・・・・」
モニターは嘘をつかない・・・事実のままに映し出す。だが、それを見ていた人間全てがそれを疑った。そこには、薄紫色の長い髪をした胸元に『P』というハート付きマークの白い服と、短いフレアスカートをはき、目元だけを赤い仮面で覆った女性が宇宙服も無しでそこに立っていたからだ。
「かよわき花にせまる黒い影・・・けれどこの私が、散らせはしない!!」
女性はそこでポーズを変えた。何故か艦橋の上だけライトアップされている。
「お嬢様仮面、ポリリーナ!!愛と共にここに参上!!」
「・・・・・・・」 「・・・・・・」 「・・・・・・・」 「・・・・・・・」 「・・・・・・」
その宙域にいる全ての者の動きが止まった・・・・ナカトもハルマもあまつさえジャークでさえ、その一点だけを見つめていた。
その瞬間をポリリーナは見逃さなかった。次々と薔薇を投げ、ラズベリー付近の戦機を難なく倒していく。
「みんな!出番よ!!」
ポリリーナが叫ぶ。すると何も無かった空間からいきなり白い戦艦が表れた。
「なんだ・・・あの白い戦艦?」
艦長は呟いた。
「艦長!あの白い戦艦から十数機の小型兵器の発進を確認。」
だが、それは間違った報告だった。小型兵器に思えたモノ・・・・それは様々な種類の装甲服・・・と呼んで言いのだろうか・・・とにかくそれらは肌もあらわな格好をした美少女コスプレ軍団だった・・・・
さらに最後は、白い戦艦から、妖精の羽を思わせる大きな肩をした白い巨大ロボットが姿を現した。
「何だアレ・・・・」
観測手が呟く。
「解からない・・・・でも、綺麗・・・」
そのロボットは確かに美しいかった。純白と深い青色に輝き、光そのものを思わせる・・・そんなロボットだった。
「艦長!なんか女の子が数名、格納庫を開けろって騒いでますけど・・・・」
「誰が言ってるんだ?」
「そこ・・・目の前です・・・」
ブリッジのガラスの前に数人の少女が張りついていた。一人眼鏡をかけた紫色の服を着た少女が格納庫を開けろ、とこちらに向かって言っていた。
「開けてやれ・・・敵では無いようだ。ただし油断はするなよ。」
「はい・・・」
すぐに格納庫のハッチは開いた。そこから四人の少女が入ってきた。油断はするな・・・・と言われたものの、異性との接触が殆ど無い候補生や新兵が油断しない訳が無い。いきなりのコスプレ美少女の訪問に異を唱える者はいなかった。
「フィクサーキャノンってのは、どこ?」
少女の一人が整備員に尋ねる。整備員は鼻の下を伸ばしながら整備中のフィクサーキャノンへ案内した。
「エミリー!お願い。」
一人の少女が眼鏡をかけた少女に言う。エミリーと呼ばれた少女は二つのフィクサーキャノンをざっと見渡した。
「ふ〜ん・・・なるほど・・・いいわ・・・よし直せる・・・3秒待ってね。」
彼女は手から光を放つ・・・すると見る見るうちにフィクサーキャノンの回路や配線が繋がって行き、最後には外装まできちんと取りつけられていた。
「終わりです。」
整備員達は唖然とした。あと数時間は掛かる調整を3秒で終わらせてしまったのだから。
「じゃ、コレ届けてくるわね。」
四人の少女は十数メートルあるフィクサーキャノンを軽々持ち上げて、艦から出ていってしまった。
「いいのか?」
残された整備兵は言う。
「いいんじゃねえの?久々に目の保養になった。・・・・写真撮ったか?」
「バッチリ!!」
整備兵はスマイルでサムズアップした。
「この子達は・・・一体?」
ハルマは自分のディクセンにまとわりついていた戦機達が次々と謎の少女達に破壊されていくのを呆然と見ているしかなかった。そして数秒も経たない間にディクセンの動きに自由が戻ってきた。
「よし・・・・」
動けるようになったディクセンに何かが近づいてきた。フィクサーキャノンだ。
「なんで・・・こんなところに?」
するとディクセンの顔におとなしめの顔をした少女が映った。
「あの〜・・・これから〜・・・せなかに〜・・・たいほうを〜・・・つけます・・・ので〜・・・」
「??」
すると、別の少女が代わりに映った。どうやらディクセンの顔を無理矢理ねじったらしい。
「手短に言うぜ!これからアンタの背中に、大砲を付ける。だからち〜とばっかし動くな!!」
「動くなって・・・それじゃ的に・・・」
「だからその間、アタイ達が守る!いいな!」
迫力に押されてハルマは黙っているしかなかった、言った通り背中に一人の少女が取り付き、キャノンの取りつけ作業をしていた。そして同じことはナカトにも起きていた。
「動くなって!!それじゃいい的だ!」
ナカトはモニターに映っているバニーガールのような格好をした女性に怒鳴った。だが、反対に怒鳴り返されてしまった。モニターに女性の顔がどアップで映る。ディクセンの眼前にいるらしい。
「あ〜も〜!!うるさい!!男がいちいち文句いうな〜!!あの赤いのはユナが押さえてるから、大丈夫だって!!」
バニーガールの女性はそう怒鳴った後、ディクセンの肩に座り込んでしまった。
「ユナ?・・・あの白いロボットのパイロットの事か・・・・」
白い妖精のようなロボットがジャーク将軍のザッキュンに向けて飛んだ・・・・
次回予告
突如、現れたコスプレ美少女軍団!はたして彼女達は、敵か味方か?!
そしてナカト達の前に立ちふさがる宇宙犯罪組織『SF虎巣喪組』の尖兵、その名も『チンピラのサブ』!!
得体の知れない機動兵器の前にディクセン最大かもしれないピンチを向かえる。
そこに現れる、正義のスーパーロボット!みんなキミを待っていた。頼むぞ!戦え!勝利を掴め!
次回、サイバーロボット大戦 第八話『俺が男だ!バンガイオー!』
次回もな〜んかすげえぜ!! 「次回も・・見てくださいな!!」