第5話 「無敵!!ゲッP−X発進!!」
日が沈みかけていた。キカイオーと七機のライデンの戦いは、キカイオーの圧倒的な力とヴィレッタの多少人道を無視した狙撃により幕を降ろした・・・・。
キカイオーの活躍により、市街地の被害は最小限度に食い止められた。犠牲者も殆ど出なかった・・・・だが、殆どと言う事は、間違い無く犠牲者は出たという事である。
犠牲者は二名・・・・轟ジュンペイの祖父とSHBVDの隊長であるリットーである。
祖父が亡くなった事を聞いたジュンペイは、ある程度予想していたらしかった為、ショックは少なかった。だが、彼は事情聴取の為に、ヴィレッタに呼び出される寸前まで祖父が安置されているTDF極東本部の霊安室から出なかった。
リットーの方は敵対者であるという事から、戦死という扱いであるため、犠牲者には数えられなかった。したがって事実上、犠牲者は一名という事になった。
GEOとTDFの救助活動が進む中、夕日によって、キカイオーとR−ガーダー、そしてヒュッケバイン、グルンガスト、二機のライデン達、物言わぬ鉄の巨人達が赤く染まっていた。
「・・・以上で、聴取を終了する。すまんな、こんな時に・・・」
極東本部に戻ったヴィレッタは、応接室でジュンペイの事情聴取を行っていた。ヴィレッタはあまり乗り気ではなかったのだが、形式上どうしても必要だったのだ。唯一の肉親である祖父を失ったばかりのジュンペイに頭を下げた。
「いいって、別に・・・。」
面倒そうに呟くジュンペイ。やはり祖父が亡くなったショックは大きい。
「それにアンタには感謝してるんだぜ。助けてくれた上に、キカイオーの整備もやってくれてるんだろう?」
「ああ・・・」
ヴィレッタは頷いた。ひとまずキカイオーは本部の格納庫に収められていた。ジュンペイの自宅の地下工場は調査の為に封鎖されたからだ。強大な敵であったサルペン達のVR部隊を倒してくれた恩人として迎えられたキカイオーは本部の整備員達によって、優先的に整備が行われていた。無論、調査の意味を含めてだが・・・。恩人とは言え、タダで整備してやるほどヴィレッタはお人よしではない。
「とりあえず、今日はココで休んでくれ、部屋を用意した。明日はキミの今後の進退に関しての相談と、祖父殿の葬儀も含めて、『巽テクノドーム』にキミの身柄を移す・・・」
「巽テクノドーム?何だそこは?」
ジュンペイが聞き返す。
「キミの祖父殿・・・轟博士の研究を引き継いでいる研究施設だ。先程連絡が入って、そこの所長が、キミの今後の後見人になってくれるそうだ。」
ヴィレッタはそう言うと案内役の兵士にジュンペイを士官用の宿舎へと案内させた。
「ふう・・・・」
ヴィレッタは一息つくとソファーに深く身体を預けていた。そこへコーヒーカップを持ったリュウセイが入ってきた。
「お疲れ様です。大尉。」
そう言い、コーヒーカップを手渡す。ヴィレッタはそれを味気なさそうに一口だけ口にした。
「いい写真は取れた?夕日がバックだったから、絵になっていたんでしょう?」
コーヒーを口にしながらリュウセイに向け何気なく尋ねた。その言葉に苦笑して頭を掻くリュウセイ。
「解かりました?やっぱり・・・」
「あれだけキカイオー見て騒いでいたら、察しはつく・・・。GEOも一緒だったからさぞかし、いい被写体だったでしょ・・・?」
リュウセイは苦笑して頷いた。リュウセイのスーパーロボット好きは今になって始まったものではないからだ。
「匕首姉弟は?」
ヴィレッタがリュウセイに尋ねる。
「ジュンペイ君と同じく士官用の宿舎に休ませています。よっぽど疲れたんでしょう・・・将輝君はコクピットで寝ていましたよ。俺と香田奈さんで、宿舎に運んでおきました。」
「無理無いわね・・・。候補に上がっていたとはいえ、民間人がいきなり2度も前線に立ったんだから・・・」
そう呟き、カップに口をつける。
「機体の方は・・・?」
「R−ガーダーに目立った損傷はありませんでした。装甲がかなりやられていますが、機体そのものは殆ど無傷です。」
「当然よ・・・アレはそういう機体だから・・・」
「現在、修理と並行にコクピットを正式に復座に改造中です。明朝には終了します。」
「ところで・・・」
カップに口を付けているヴィレッタの眼光が急に険しくなった。子供が見たら確実に泣き出しそうなほどの鋭く冷たい眼差しが、リュウセイを凝視している。リュウセイは背筋が寒くなるのを確実に感じていた。
「キカイオーの方だけど・・・どうなの?」
鋭い目がリュウセイを突き刺す。多少、恐怖を感じながらリュウセイは口を開いた。
「ほ・報告によりますと・・、機体の構造は実にシンプルかつ簡潔に造られています。機体を構成している物質が調査中で詳しくは解からないそうですが、桁外れの耐久性を持っています・・・」
「ほう・・・シンプルイズザベスト。それであんなに強靭すぎる防御力を・・・。」
ヴィレッタはキカイオーが飾り立てた装飾が殆ど無い事を思い出していた。
「肝心の心臓部なんですが・・・」
「どうしたの?」
「調整方法が解かっただけで、まったくのブラックボックスだそうです。構造もワケがわからない・・・と整備員が言っていました・・・」
ヴィレッタは報告を聞き終えると、少し思案した。
「やっぱりか・・・初期動作だけでSRX以上の数値を出したあの心臓部・・・。ソラリスやDN社が欲しがる訳ね・・・。『究極の力』って、間違い無くキカイオーだわ。」
「やはり・・・」
「間違い無いわ。明日、巽テクノドームで徹底調査よ。同じ轟博士が関わっているなら・・・」
その言葉にリュウセイも頷いた。するとヴィレッタはいきなり表情を和らげた。
「休むわ・・・。明日は忙しくなりそうだから、貴方も早めに休んだ方が良いわよ。」
その言葉にリュウセイは拍子抜けした。
「た・大尉!DN社の兵士達の尋問は?」
「明日。彼女等も疲れていそうだからな。」
「・・・・・・」
そう言い残してヴィレッタはリュウセイに空のカップを渡して、部屋から出ていった。
将輝は闇の中を追われていた。後ろから白いギアとライデンが迫ってくる・・・・・
───助けてくれ!!叫べど誰もいない。ただ、闇があるだけ・・・・
白いギアが槍を突きたてた。将輝の眼前に巨大な槍が立ちふさがる。
───逃げなければ!!槍を迂回しようと回り込む・・・だが、そこで終わりだった・・・・
───うわー!!離せ!!離してくれー!!将輝の身体は黒いライデンにがっちりと握られていた。
逃げられない・・・。ライデンの握力は増してくる。
───助けて!!ライデンに掴まれた将輝は叫んだ。だが、何も返ってこない・・・
その時、闇の中に一筋の光が指し込んだ。光は数を増してくる・・・・。やがて光は巨人へと姿を変え、こちらに向かってくる。
───光の巨人達?将輝はそう思った。数人の光の巨人は、光の剣でライデンの腕を切り落とした。そして別の巨人が将輝を優しく包んで救い出した。
ライデンと白いギアは、黒い魔物へと姿を変えて、襲いかかってきた。だが、将輝は恐れはしなかった、先程までの恐怖心が嘘のように消えていた。
───信じるんだ!!巨人達が将輝に話し掛けた。
───愛を!!巨人が叫んだ。聞いたことの無い声だった。若い男女の声だ。巨人は鳥へと姿を変えた。
───絆を!!巨人が叫んだ。幼い少女のような声がした。巨人は金色に輝き胸から光を放った。
───友情を!!巨人が叫んだ。若い三人の男の声だ。巨人は熱く燃えるボールのような物を投げた。
───未来を!!巨人が叫んだ。また若い男の声だ。巨人は両の拳で魔物に殴りかかっていた。
───信念を!!巨人が叫んだ。男女の子供の声だ。巨人は体から無数の光の矢を放つ。
───真実を!!巨人が叫んだ。若い女性の声だ。聞き覚えのある声だ。巨人は肩から二本の光を放つ。
───夢を!!巨人が叫んだ。少女の声だ。巨人は腕、足、そして胸から光が飛び出す。
───人生を!!巨人が叫んだ。荒々しい男の声だ。巨人は全身で魔物にぶつかっていく。
───情熱を!!巨人が叫んだ。少年の声だ。巨人は、いなづまを放つ剣を振りかざす。
───正義を!!巨人が叫んだ。男女の声だ。人一倍大きな巨人は、大きな銃を構えた。
───そして、自分自信を!!最後の巨人が叫んだ。その巨人はR−ガーダーへと姿を変えた・・・・そして将輝は暖かく優しい匂いに包まれて行った・・・・・
「今のは・・・・一体・・・・?!」
将輝は飛び起きた。呼吸が少し乱れている。ハアハアと口で呼吸していた。額に手をやる・・・ぐっしょりと汗に濡れていた。
「何だったんだ!?・・・・愛、絆、友情、未来、信念、真実、夢、人生、情熱、正義だと・・・?」
将輝はうわ言の様に今の言葉を繰り返した。
「夢にしては、リアルすぎだぜ・・・・」
将輝は汗を拭うと、もう一度体を横にした。
「もう少し寝よう・・・悪夢はゴメンだけどな・・・」
そう呟き、目を閉じた。知らず知らず心が安らいで行くのを将輝は感じていた。夢で感じた暖かく優しい匂いが将輝を包んでいた。
「・・・軍の寝室も・・・中々・・・寝心地が・・・いいんだ・・な・・・」
心地よい安らぎが将輝を眠りへといざなって行った・・・・ここまでは・・・・
「う〜ん・・・・」
彼が寝返りをうったその時である。
───むにゅっ・・・・
「うん?」
半分夢へと入りかけていた将輝の顔に暖かく・・・そして柔らかいものが当たっていた。
───むにゅっ・・・・
「・・・?」
首を動かすたびにソレに当たる。やがて、夢へと入りかけていた将輝の思考は、徐々に覚醒して行った。
「・・・・」
───むにっ・・・
半覚醒状態の将輝は恐る恐る自分の顔に当たるソレをそっと触れた・・・・
「あ・あ・ああああ!?もしや・・・・・」
将輝は思いきって目を開け、ソレを見た・・・結果・・・・・
「うわああああああああ!!!!」
彼は完全に目が覚めた。それはそうであろう、彼が見たのは紛れも無く、実の姉。匕首香田奈その人であった。
「何で!ねえちゃんがぁぁ〜!!」
先程、彼の顔に当たっていたもの、紛れも無く将輝は、姉の胸の谷間に顔をうずめていたのであった。
「何で!何で!何で〜!?」
将輝は完全にパニックに陥っていた。その大声に当の本人が目覚めた。
「んん〜。あっ・・・しょうちゃん。おはよ〜」
香田奈はあくびをしながら将輝に話し掛けた。
「どう〜、よく眠れた〜?」
そう言いながらベットから起きた彼女は、立ちあがって伸びをした。
───カ〜ッ!!将輝は起きたばかりの姉を見て、顔面に血が上るのを感じた。みるみる顔が赤く染まる。
「ね・ねえちゃん・・・その・・カッコ・・・」
「え?パジャマ無かったから・・・・代わりに・・・」
香田奈の現在の姿・・・・上には男物のYシャツ、下はノーブラでショーツ一枚のみ・・・・という、俗に言う、『男が・・・いや!漢が見たら燃える!!俄然燃える。なおかつ萌える!!』という・・・お約束の格好をしていた。
「変?友達とかと旅行行った時なんかは、この格好で寝てるんだけど?」
彼女の意見は正しい。だが、健全な18歳のウブな少年である将輝には、先日、裸で抱き付かれた以上の刺激であった。
「ね・ね〜ちゃん・・・ど〜して・・・俺の隣で寝てたんだ・・・・」
顔を真っ赤に染め上げて下をうつむいた将輝が尋ねる。
「だって〜。昨日の夜、しょうちゃん熟睡してて起きなかったんだもん〜。それでしょうがないから、リュウセイさんがここまで運んでくれたのよ〜。」
「それと・・・ねえちゃんが一緒に寝てたのはどういう・・・・」
今だうつむいたままの将輝。
「部屋に着いた時に、しょうちゃんの服脱がし終わったら、あたしも眠くなっちゃって。どうせだからそのまま・・・」
「・・・・・リュウセイ少尉、この事知ってんの・・・」
「多分・・・。でも別にいいじゃない。姉弟なんだから。変なことじゃないわよ?」
「・・・・・・」
将輝は黙り込んだ。
「さ〜て、シャワーでも浴びよっと!さすが、本部の士官用の宿舎ねえ〜。ちょっとしたホテル並の部屋なんだから。」
そう言い、香田奈は個室に備え付けられているユニットバスへと入って行った。
「しょうちゃんも一緒に入る?」
香田奈はイタズラっぽく話し掛けた。
「いいよ!!後で。」
それを聞いて彼女は微笑みながらシャワーを浴びた。
「まったく〜・・・。いろいろありすぎて、頭が混乱しそうだぜ。ねえちゃん、よくも平気だな!」
将輝はシャワー浴びている姉に向けて言った。
「平気な訳・・ないじゃない・・・・戦争やってるなんて・・・」
シャワーに打たれながら、香田奈は今まで見たことが無いような悲しげな顔をしていた。それは将輝やヴィレッタの前でいつもにこやかにしていた彼女からは想像も出来ない位悲しみに満ちた美しい顔だった。
「お母さん・・・」
いつのまにか香田奈の目から涙がこぼれていた。何年ぶりだろう・・・と香田奈は思った。
事故で母親を失ったその日から、大きな涙を見せた香田奈だったが、それ以上に号泣していたのは、当時中学生の将輝とまだ小学校低学年の幼い妹『匕首凪(あいくちなぎ)』だった。
その日から香田奈は泣くのをやめた・・・。死んだ母は死ぬ間際まで微笑んでいた。
『悲しく泣けばその分、幸せは逃げて行く。泣いて良いのは嬉しい時だけ』・・・・母親の口癖だった。母のようになろう・・・これからは私がお母さんになるんだ・・・。
それから彼女は誰と接する時でもにこやかに微笑んでいた。苦しい時こそ微笑む・・・・。それが彼女の心情となった。
「がんばろう・・・・がんばろうよ・・・・こんなんじゃお母さん悲しむだけ・・・」
「わたしが・・・わたしが・・・しょうちゃんを守るんだ・・・・」
香田奈は自分に言い聞かせるように呟いた。
「よしっ!!」
もう・・・泣かない。鏡にはいつもの・・・にこやかな自分が映っていた。
「しょ〜ちゃん!!寝汗かいてるんでしょ!背中流してあげよ〜か!!」
───ぶしゅ〜!!香田奈は全裸のまま、将輝の前に姿を見せた。将輝はついに鼻血を噴き出した。
「ほら〜汚れちゃってるじゃない!コッチ来る。」
「やめて〜!!お願い〜!!」
狭いユニットバスに将輝の悲鳴が響いた。
───巽テクノドーム。別名秘密基地銀座とも呼ばれる、富士の裾野にその建物はあった。ロボット工学、金属工学等など、数を上げれば霧が無い。輝かしい実績を持ちながら、老体故に引退した天才科学者『轟源三』。そして謎の事故死を遂げたその息子『轟守』。その二人の遺志を継いだ一番弟子が設立した研究所がこの巽テクノドームだった。
「ようこそ。私が所長の巽です。」
「こちらこそ、TDF極東本部PT部隊隊長ヴィレッタです。」
所長室で向かえてくれたのは、所長の巽教授だった。背丈も大きく身体もがっしりとしたレスラー体系ではあったが、知的な風貌の紳士だった。
「そちらは?」
「私の部下とTDFに出向している民間テストパイロットです。」
ヴィレッタは連れて来たリュウセイと将輝、香田奈を紹介した。
「伊達流星少尉です!」
「元気のいい若者だ。」
巽教授はニッコリと笑った。
「匕首将輝です。」
「匕首香田奈です。」
二人が自己紹介すると、教授はハッとした。
「もしかして君達は、『匕首戦斧(あいくちせんき)』教授のご子息か?」
すると二人は顔を見合わせ、巽に向かって話した。
「父をご存知なのですか?」
「そりゃあ、『重機の天才』と呼ばれた機械工学の権威だからねえ。確か、『匕首重工』の研究所に在籍なさっているのだろう?」
匕首重工・・・・将輝の父親の兄。つまり叔父が経営する大手重機メーカー。連邦崩壊による会社の危機も努力と信念そして愛で乗りきった、優良企業である。
「そうか、その研究所から出向しているのか、君達は。」
「・・・・・(違うんだけど・・・)」
書類上、表向きは将輝達は匕首重工の研究所からの出向と言う事になっている。だから巽教授の言葉は形式上間違ってはいない。
「巽教授。失礼ですが、キカイオーについて・・・・」
ヴィレッタが、これ以上詮索されるのを嫌ったのか、ココに来た本来の用件を口にした。
「おお、すまない大尉。」
巽教授は謝ると、部屋に備え付けられたモニターのスイッチを入れた。モニターには、外装を外され、内部機構が剥き出しのキカイオーが映し出されていた。キカイオーには多数の作業員やマジックアームが群がっていた。
「現在、私達がキカイオーを調査中です。幸いこの施設は轟博士の研究データーがありますので、それを基に行っているので、キカイオーの調査、整備には問題ありません。」
「教授。我々が交戦したソラリス・VR社・ゴルディバス軍はそれぞれキカイオーを『究極の力』と呼んで狙っていました。キカイオーにはそれ程の力が本当にあるのですか?」
巽教授は頷いた。
「恐らく、彼等の言う『究極の力』とはキカイオーの心臓部・・・『超次元機関』の事でしょう。」
「超次元機関?・・・それは・・・」
その時研究所内に警報が鳴り響いた。それと同時に所長室にジュンペイが飛び込んできた。
「巽教授!大変だ!!こっちに妙なロボットが接近中だ!!」
「なんだって!!」
教授はモニターを切り替えた。そこにはガスタンクを基本とし、頭部と背中は銭湯、左腕は雑居ビル手首は金属玉、右腕は在来線とパワーショベル。足はバスと漁船の本当に奇妙なロボットが歩いていた。
「何だあれ?」
ジュンペイ以外あっけに取られていると、次は巽教授の娘であるサオリが穴の開いた紙テープを持って飛び込んできた。
「お父様!大変!東京の湾岸部に宇宙悪魔帝国のビースト軍団が!!」
「なんだって!!こんなときに・・・」
サオリの持ってきた紙テープをヴィレッタは拝借し、凝視した。
「宇宙ビーストが湾岸部B34エリアに多数・・・」
ヴィレッタは焦った。現在の極東本部で戦えるのはR−ガーダーのみ。自分のヒュッケバイン、リュウセイのグルンガストはライデンとの戦いで激しく傷ついており、今だ修理中。頼みのキカイオーは整備中で動けない。
「そうだ・・・・」
ヴィレッタは無線機を取り出した。そして凄い勢いで周波数を合わせる。
「・・・・わたしです。・・・いけますか!お願いします・・・ハイ、そうです。」
ヴィレッタが何処に連絡を入れたのかはこの時点では誰も知らなかった。
「おい!じ〜さん。俺をこんなトコに呼び出して何のつもりだ!!」
赤いジャージのようなパイロットスーツを着せられた熱血風の少年が、背の低いヨレヨレの白衣を着た眼鏡の老人に怒鳴っていた。
「うるさいの〜。お前さんは、ワシが造った合体変身ロボ『ゲッP−X』のパイロットにえらばれたんじゃ〜」
老人は少年の様子を笑いながら答えた。
「ゲッPーX?」
少年は聞き返す。
「わしが、宇宙悪魔帝国から地球を守る為に『こんなこともあろうかと』思って、このワシが造ったロボットじゃ〜。」
「ケイヤ兄い!!」
少年と老人の会話の間に、やたら体格のいい体育会系の少年が割り込んできた。
「わいは、やるでぇ!!わいの手で地球を守ったるんや!!」
「リキ!お前も選ばれたのか。」
ケイと呼ばれた少年はリキを見た。自分と同じデザインで黄色のスーツを着ていた、しかもその上に柔道着を羽織っていた。
「フッ・・・・お前も同じか・・・・ケイ。」
「ジン!お前も!」
ケイとリキから少し離れたところに、壁にもたれかかっている少年が口に草を咥えながら呟いた。見た目はクールな長髪の二枚目だった。ケイ達と同じように青のスーツを着ていた。
「フ・・・まさかお前と一緒とは思わなかったぜ・・・」
ジンは不敵に微笑んでいた。
「ジン・・・・」
その様子をニヤニヤ笑いながら見ていた老人へ、長身の美人が駆け込んできた。
「呉石博士!湾岸地区に宇宙ビーストが多数!TDFのヴィレッタ大尉から、正式な出動要請です!!」
「ついに来よったか〜!!おい、お前ら!!」
呉石博士は三人に呼びかけ、モニターのスイッチを入れた。そこには格納庫に鎮座している三機の小型メカだった。
「これが、ゲッP−Xじゃ〜!!お前達はコレに乗って宇宙ビーストと戦うんじゃ〜。」
三人は三機のメカを凝視していた。一機は流線型の小型の戦闘機。二機目は前後に張り出したジェットエンジンが目立つ角張った攻撃機。最後は二本のドリルを付け、六つのタイヤで走破する装甲車であった。
「ほ〜れ、とっとと行ってコイ!!」
そう言い呉石博士は、1・2・3と数字の振られた穴に三人を押し込んだ。1にはケイ。2にはジン。3にはリキ・・・・と、三人は押し込まれた穴・・・滑り台のようなシューターから、三機のメカのコクピットへと流れて行った。
「ゲッP−X、発進じゃ!!」
三機のメカは格納庫からエンジンを吹かし始めた。
「発進!!」
ケイの声と共に三機のメカは、巽テクノドームから、そう遠くない富士山の麓にある『宇宙ロボット研究所』から飛び立った。白煙を吹きながら大空へと飛び立つ三機・・・そして!!
「チェェェェンジ!エェェェクスッ・ワン!!レッツゴー!!」
ケイのメカを先頭に三機のメカが直列に並び、激突するかのように合体!!そしてメカの各部が不規則に変形、手が出る足が出る・・・そして頭が出る。そこには赤い鎌のような翼を生やした、円柱で構成された青いロボットが現れた。
「行くぞ!!宇宙悪魔帝国!!」
合体したゲッP−X・・・・空戦形態のX−1は燃え盛る湾岸地区の無数のビースト軍団に向けて飛び立って行った!!
次回予告
新たなロボット、ゲッP−Xが、今まさに戦いを開始しようとしていた頃・・・・宇宙では数少ない連邦加盟コロニーで最終評価試験を行っていたTDFの新型機・・・・対ゴルディバス用に開発されていた機動兵器に、宇宙悪魔帝国の赤きエース、仮面の男『ジャーク将軍』の魔の手が迫る!!
TDFの新米少尉ナカトの運命は・・・・!?。 次回より『宇宙激闘かも?編』スタート!
次回、サイバーロボット大戦、第六話。『ディクセン大地に立つ!!』
次回もかなりすげえぜ!! 「キミは生き延びることが出来そうか?」 声:永井一郎