第10話 『宇宙探偵と代理刑事』

 


 新東京・・・・かつての東京湾上に建設された自由と平和の象徴たる未来都市であった。
 だが、今は違う。 過去から続く悪の組織達が自分達の支配力の象徴とするために、暗躍している戦場と化していた。
 この21世紀初頭に、人々は悪の組織達の跳梁跋扈する様子を見て、こう言っている。

 
『時期外れの世紀末の魔王』

 と・・・・

だが、冗談ではなく、20世紀終盤に一部で囁かれていた終末論・・・それが今になって現れただけだと・・・
 そんな中にあっても人々は、逞しく生き抜こうとしていた。
そして、そんな人達を守る為の『正義』も確実に存在していた。
 
過去存在していた正義の組織『HUMA』は壊滅していたが、細々ながら個人レベルで戦いつづけている者いた。
 またHUMA壊滅を知り、新たにやってきた者達もいた。
そういった正義を名乗る者たちは、個人レベル。または連絡を取り合い小規模ながら地下組織等を編成し、非合法の抵抗勢力として活躍していた。

 そして・・・某保険会社に勤務する会社員、中村等もそう言った『正義』と呼ばれる側の人間であった。
アルファー遊星人と呼ばれる宇宙人より、『超変身物質』と呼ばれる物を与えられた等は、「超絶隣人ベラボーマン」と言う超人に変身し、悪と戦いつづけていた。
 「ベラボー!!」
中村等が変身した超人、ベラボーマンの声と共に、ベラボーマンのジャバラ状の右腕が、まるでピノキオの鼻よろしく伸びた。
 これがベラボーマンの最大の能力だ。 ベラボーマンの四肢と首は人体構造を全く無視して、身長の数倍以上の長さに伸ばす事が出きるのだ。
 吹き飛ばされる全身黒タイツの異形の集団。 一息つく間もなく指すような敵意を感じた。
 「中村さん、左に新手っ!!」
 青年の声がした。 ベラボーマンが左の方を向けば、奇怪な怪生物が・・・クラゲのようなタコのような・・・半透明のぶよぶよとした無数の触手をうごめかせている。
 そして、その怪生物を護衛する様に、コウモリ型の小型生物がうようよ周囲に浮いている。
 「くっ・・・『くらやみ乙女』の勢力ですか・・・」
 ベラボーマンは、怪生物を見て顔を歪めた。
 「山田君!ライオットと大紋寺さんとは連絡がつかないのかい!?」
 ベラボーマンは、山田と呼んだ青年の方へ振り向いた。 そこにはシルバーメタリックに輝くプロテクターを身に付けた茶髪の青年の姿があった。
 「駄目ッス! ライオットは旧都心付近で『爆田軍団』と交戦中って観剣博士から!モモヴァルスも横浜に現れた新興勢力の偵察に出てて・・・」
 「あの・・・女性型ばっかりの連中ですね・・・」
 ベラボーマンは、周囲を見渡した。 全身タイツ集団はあらかた片付いた。だが、目の前の怪生物がどんな力を秘めているのかさっぱり解らない。迂闊に手を出すと危険だ。
 「くそ・・・秘密結社Qと爆田軍団だけでも大変だって言うのによぉ・・・これで時給制じゃ割に合わないッスよ。」
 銀色のプロテクターを身に着けた青年が、ゴーグルの下に隠れる表情を曇らせた。 彼・・・本名やまだたろうは、とある企業から電池駆動型プロテクターを借り受けて戦っているのだ。
 そして、プロテクターの利用料を稼ぐ為に、日々何でも屋的に人々の依頼を受けて働いていた。 その為彼は何時の間にか、『賃貸英雄(レンタヒーロー)』と呼ばれるようになっていた。
 ここ新東京では、秘密結社Qを初めとした、数々の悪の組織から狙われており、HUMAが壊滅した昨今、人々を守る為に、企業からの依頼で、超人アルバイターとして戦っていたのだ。
 「いけない・・・電池が限界だ・・・」
レンタヒーローのバイザーは、サングラス型のHDD(ヘッドマウントディスプレイ)としても機能する。 バイザーに残りの残量が示される。 既に電池の残量はレッドゾーンだ。
 レンタヒーローのプロテクターは、ベラボーマンのような特殊な物質による変身ではなく、純粋な機械的動力で稼動している。エネルギーである電池が失われれば、それはレンタヒーローの力も失う事と同意義だ。

 「メタモルV・・・って、今は4人しかいないんだっけ? 4人で良いから応援に来れないんですかね?」
レンタヒーローは、ベラボーマンと背中併せになって言った。 既に肩で息をしているほど疲弊している。 持久戦になったら不利だ。
 「現実には3人・・・。あの、婦人警官の子が休職中なんだ。それに・・・」
 「それに? なんです中村さん。」
 「ウチのボウズ達と同じくらいの子供を、こんな戦いに巻き込みたくは無い。」
その言葉にレンタヒーローは、「中村さん・・・」と、軽く感動した。
 「よし・・・持久戦は不利です!中村さん、俺が盾になります!その好きに奴を!!」
 「解った!! やまだ君、終わったら、うちへ夕飯を食べにこないかい? マリコさんのご飯は美味しいぞ。」
 その言葉にレンタヒーロ−は笑みを浮かべた。
 「はい!」
 「よし、行くぞっ!!」
二人は怪生物の群れ目掛けて駆け出した・・・






 ・・・・・古都 鎌倉
 とある日本家屋の一室の中で、備前長船は古文書のたぐいと見られる書物と睨み合っていた。
部屋の中には長船一人ではない。 この日本家屋の持ち主の娘、『柊巴』と、長船が数日前に助けた『村正姉妹』の姉の方がいた。
 3人は手分けして、古文書を開き、柊家の過去をはじめ、魔物や妖怪になどと言われる存在の事を調べていた。
 柊家の客間を借りての調べ物は、朝からはじめて既に昼に差しかかろうとしていた。
 「そろそろ休憩しよう。 昼食の仕度もあるし、食べていくでしょ?」
 巴が席を立ってそういった。 二人は「そうだね・・・」と言って手を休めた。 「ん〜」と、背伸びをする長船。デスクワークは苦手ではないが、長時間の読書とノート取りは流石に疲れる。
 「ね!ねね!! 考えてくれた?」
 背伸びする長船に向けて、村正姉妹の姉の方、村正彩は、巴の姿が見えなくなったの確認すると同時に長船に期待する目を向け、詰め寄った。
 「・・・・協力には感謝する。 だが・・・君達を危険な目に合わすわけには・・・」
言葉とは裏腹に明らかに迷惑そうな長船の顔。 だが、気にせず詰め寄ってくる。
 「危険な目になら、もうあったじゃない。 なら・・・これ以上同じような目にあっても同じよぉ・・」
そう言って、90以上の胸をグイグイと長船の腕に押しつけてる彩。
 「あの・・・当ってるんだけど・・・胸・・・」
ちょいと困惑。
 「あててんのよ♪」
その言葉に、何か違和感を感じ長船は冷静さを取り戻す。
 「・・・・色仕掛けには応じんぞ。 俺は警官だ。」

 「ほら〜!お姉ちゃん、それだけじゃダメって言ったじゃない! もうちょっと胸元広げるとかぁ!」
いきなり客間の扉が開くと同時に、見た目中学生ぐらいの女の子が、顔を出した。 村正姉妹の妹の方、村正宮乃だ。
 「そーそー、もうちょっとガバッとぉ! トモに匹敵する胸持ってんだからぁ!」
 同じように金髪美女が姿を現し、頷いた。 この家の三女、柊瀬芦里だ。 どうやら彼女の入れ知恵らしいと、長船は思った。
 「・・・でも・・今のだって凄く恥かしかったし・・・」
顔を真っ赤に染める彩。 どうやら乗り気でやったわけではないらしい。 どうも彼女らしくない行動だと違和感を感じていた長船。

 
 彼女達が、こうも長船にねだっているのは、数日前の出来事だ。
クロウと呼ばれる、謎の怪生物の襲撃から村正姉妹を救った長船。 だが、大正時代の連戦からのダメージが抜けておらず、エネルギーも枯渇しかかった状態での戦闘であった。 もし、柊巴の変身した指輪の戦士ジガの応援が無ければ危うい所であった。
 結果として、ジガに助けられる事になった長船は、その場で意識を失い、あまつさえ助け出した村正姉妹の目の前で変身が解除されてしまい、正体を知られてしまった。
 村正姉妹は長船への恩義と、メカ好きからの趣味で、長船の変身体であるガルファーに興味を持ってしまった。 そこで気を失った長船が身に付けていた手甲と手袋(ガルファーへの変身アイテム)を無断で拝借してしまった。
 半ば脅迫同然に、手甲&手袋の返還と正体の隠蔽を交換条件に、長船のパートナーにしてくれと脅したのだ。
 表向きには、秘密捜査中の警官と言う事で行動している長船にとっては、頭を抱える問題であった。
そこで止む無く、「戦闘には参加しない」と言う条件付で、パートーナーに渋々任命した。 どのみち、この時代でのバックアップ体制が整っていなかった長船にとっては、彼女達の家が修理工場と一緒に経営しているアパートを活動の仮拠点にしようと考えていた。
 そして、味方となる柊巴との連絡を円滑にするためにも、彼女達を伝令役代わりにしようと思っていた。

 どのみち、戦闘が激しくなれば、何の戦闘力も持たない彼女達は足手まといにしかならない。 そうなれば怖がって、彼女達から離れていくだろう。
 長船はそう考えていたが・・・
だが、考えは甘かった。 あれから何度かクロウとの戦闘を重ねたにも関わらず、彼女達は、長船の元を離れようとはしなかった。
 そればかりか、果敢に戦闘に参加しようとする。 勿論何の変身能力も火器も持たない彼女達ではクロウに太刀打ちできるわけは無い。 はっきりいって足手まとい。 長船にとっては御荷物だ。
 それでも改造エアガンや違法改造電気銃で、懸命に戦おうとしている。 ある時なぞ、小型のチェーンソーでクロウに挑みかかった事もあり、危うく八つ裂きにされかけた所を巴が必死でカバーした事もある。

 「どうせ襲われるなら、貴方の傍にいたほうが安全よ。」
と、彼女達は言うのだ。 確かに一理ある。この街全てがクロウに狙われていると言うわけではないが、巴の話しに寄れば、ここ最近になってクロウの動きが活発化しているらしい。
 そうでなくても悪の組織が跳梁跋扈して、普通に暮らしていても、100%とは言えない。 それなら長船の傍にいた方がまだ安心できるのかもしれない。
 「それに、戦い以外にも役に立つよ、あたし達。」 「メカの事ならお任せあれ〜♪」
との事。
 「悪いが、ガルファーはマイクロマシンの集合体で、メンテナンスフリーなんだ。」
と、言いのけたが、彼女達の技術力は、民間レベルとは思えないくらい高い。 姉が設計/ソフトウエアを担当し、妹が組みたてる。
 「・・・まあ、もう秘密を共有しちゃったんだ・・・」


 「解った。 その代わり、戦闘にはこれ以上首を突っ込まない事が条件だ・・・」
長船折れる。 その横で「やったあ♪」と、笑みを浮かべる彩。
 「武器に関しては大丈夫だよ。 海先輩に力貸してもらって、工業用ドリル(※)改造してるの!コレなら十分イケルよ!!」
 宮乃が親指を立てて笑みを浮かべる。 そう言えば、この家の6女はメカの天才だと聞いた・・・。 長船は言ってしまった事を撤回しようかどうか悩んだ。

※注:工業用ドリル ──某国において、某企業が開発した生体兵器の影響で、とある市街にゾンビが跋扈。その際に、内務省特務調査課の捜査員が対ゾンビ用の武器として使用した実例がある。  <民冥書房刊:毒島アフロ漢日記より抜粋>

 「ところで、くーちゃん瀬芦里さんと庭で何やってたの?」
 「長船さんと巴さんのバイクのメンテとカスタマイズ!」
宮乃が言うと、瀬芦里はニッコリと笑みを浮かべて、宮乃の頭に手を乗せた。
 「この子、さっすが!あたしより早いんだもん。トモのバイクもやってもらっちゃった!」
 「・・・発信機は外したろうな・・・」
長船の言葉に何故か答えない宮乃と瀬芦里だった。


 柊家での昼食を終え、長船は巴が淹れてくれたお茶を飲んでいた。 既に柊家の他の家人の姿はない。 瀬芦里はフラフラと出払い、雛乃は自室に戻っている。空矢は夕飯の買出しだ。
 客間には長船と村正姉妹、そして巴の4人だけだ。
 「東京に行こうと思う。」
長船は突然そう切り出した。
 「東京に?」
宮乃が尋ね返すと、長船は頷いた。
 「それって・・・、長船さんが言ってた『魔物は封じられた筈』って言ってた事と関係あるの?」
 「ああ。 話したと思うが、俺は一度『太正時代』にタイムスリップしている。 その時に魔の者を封じた筈なんだ。」
 長船は話を続けた。 長船が過去の世界に遡り、帝国華激団と呼ばれる組織に力を貸していた。そこで同じように何らかの原因でタイムスリップさせられてきた異世界と関わりのある少女セツナと翠、サイボーグ超人シュビビンマン、24世紀の傭兵部隊サイバーナイト達とで、魔の力で政府転覆を企む黒乃巣会と呼ばれる組織と戦った。
 そして、黒乃巣会首領、天海を打ち倒し、天海が解放させようとしていた『六波星降魔陣』の発動を阻止した。 これにより帝都の魔の力の解放は抑えられた筈なのだ。

 「だけど・・・現にこの時代にクロウと言う立派な魔の者がいる・・・」
巴が言うと、長船は頷いた。 
 「そうなんだ。天海が生き延びていたとはとても考えられない。 それに今の世にこれほど悪の組織が動き出しているのも不可解なんだ。」
 それを調べる為にも、東京へ行く・・・。長船はそう言っている。
さらに、村正姉妹が言っていたHUMAと言う組織が壊滅したとはいえ、悪の組織に対峙する正義と呼ばれる人達も存在するらしいのだ。 長船はそう言った正義と言う人間達と接触したいと考えていた。
 とにかく、今の長船には解らない事だらけだ。 だから少しでも情報が欲しい。
 「その為に、東京に行こうと思う。 東京・・・銀座と浅草には帝国華激団の本部と支部がある。そこに行けば世界がどうなったかが解るかもしれないんだ。」
 その言葉に村正姉妹と巴は頷いた。 巴はクロウの秘密がわかれば戦いを避けられるかもしれないし、それに自分と同じように『守る者の為に戦っている』と言う人々と会いたいと言う感情があった。
 村正姉妹は、長船のパートーナーだから、と言う簡単な理由だ。 だが悪に襲われたと言う事実がある彼女達にとっては、自分達を襲った連中の正体を知りたいという真実への探求心だ。
 4人は頷くと、席を立った。 出向く為にもまずは準備が要る・・・



 「レイジよ・・・」
 「ハハッ!!」
新東京の某所にある秘密基地・・・・
 それこそが、現在の新東京・・・否!日本を恐怖に貶めている秘密結社Qのアジトであった。
 そして、その基地の中枢とも言える、総統への謁見の間にて、新幹部レイジ(19)は、壁にはめ込まれた黒い怪人のレリーフに向けて、跪いていた。
 瞳の部分のみを輝かせるレリーフの前には、紺色の軍服に身を包んだ眼帯をつけたドイツ人がいる。 そしてレイジの傍らには、濃紺のチャイナドレスに身を包んだ長身の美女が。
 ドイツ人は、幹部の一人で作戦立案も担当している『M・ガデス』。 総統を心酔しており、本気で千年帝国建国の野望を携えている男だ。 レイジは幹部としては信頼しているが、個人的にはいけ好かない。
 チャイナドレスの女性は、レイジの秘書であり、自分をこの秘密結社Qへとスカウトした『シャドーローズ』だ。 自分の秘書以外にも、組織内の食事なども担当していて、ある意味一番多忙な人間だ。
 そして、レリーフから発せられる声の持ち主こそ、秘密結社Qの総統『総統Q』だ。
そして、総統から新幹部に抜擢されたレイジへ、はじめての作戦が言い渡されようとしていた!!
 「レイジよ。 貴様を幹部に任命しての初の作戦だ。心して掛かれ!」
 「ハッ!!」
初陣を控える若武者の様に、若き幹部レイジは心を振るわせていた。 
 今までの秘密結社Qの活動は、怪人や戦闘兵士によるテロや破壊活動の他に、駐車場にゴミ箱の中身をぶちまける・近所の魚屋の魚を食い散らかす・小型車に箱乗りし暴走する・スプレーで壁や道路にラクガキをする等と、世にも恐ろしい作戦の数々・・・
 「貴様の初任務は、
『幼稚園バスをジャック』する事だ!!」
 「はあ?」
総統Qから放たれた言葉に、思わず気の抜けた返事をするレイジ。 無理もないが・・・
 「よ・・幼稚園バスジャックぅ? あのぉ・・・本当に、そんなバカな事しなきゃならないんですか?」

 
「たわけっ!!」

─ビクぅっ!! 総統Qの怒号に、思わず身を縮めるレイジ。 首領の名は伊達ではない、声を荒げただけで、冷や汗が流れる。 レイジは額の汗を拭った。
 「貴様は何もわかっとらん!! 幼稚園バスジャックというのは、今まで幾多の組織が挑戦しつつも、成し遂げられなかった偉業なのぢゃっ!! そう!幼稚園バスジャックには、悪の組織の伝統と悲願が秘められておる! 美学なのじゃ!ロマンなのじゃ!!」
 「ろ・・・ロマンですか・・・」
総統の迫力に、たじろぐレイジ。何がロマンなのかは解らないが、命令とあれば聞かなければならない。
 「了解しました。 レイジ、この作戦をやり遂げて見せましょう。」
 「良くぞ言った。 では貴様に、今回の作戦に使用する怪人を与えよう。 出でよっ『デスパイダー』!!」

 「ダーっ!!」

総統Qの命により姿を見せたのは、緑色の赤い単眼を輝かせる、クモの怪人だった。
 「俺の名は『デスパイダー』!! 腕っ節なら誰にも負けないダー!!」
 クモの怪人が自慢げに叫ぶ。 
─秘密結社Qの怪人は基本的には改造人間の類である。 素体となる人間に、様々な物を融合させているのが特徴である。
 ちなみに、このデスパイダーが、どんな怪人かと言うと・・・・
 「このデスパイダーは、クモと爆弾合成させた怪人でな。 こやつの体内で作り出される爆弾は、実験段階でノラ猫27匹を吹き飛ばし、口から放たれる毒は、仕事帰りのサラリーマンを一発で昏倒させる威力を持つのじゃ!!」
 良く解らないが、とにかくスゴイ威力の様だ。
 「貴様は、こやつを使って、今回の作戦を見事成し遂げて見せよ!!」
 「ははっ!!」
レイジはレリーフに向かいふかぶかと頭を下げた。


 「はぁ〜。 テロリストからこっちに鞍替えして、幹部になって初めて与えられた任務が幼稚園バスジャックとは・・・」
 <幹部室>と名づけられたレイジ専用の個室の中で、レイジはため息を付いた。 幹部室と名付けられているものの、実情はその辺の中小企業の事務所と殆ど代り無い。 壁にかけられた一日一善ならぬ『一日一悪』の達筆な毛筆が悪の組織である事を実感させた。
 「こんな馬鹿馬鹿しい事、だいの大人がやるようなことなのか?」
 そうブツブツ言っているレイジ。 悲願だとかロマンだとか言われても、他にやる事はある筈だ。 最近、自分達秘密結社Q以外にも、人々を襲う、俗にいう『悪』と言う連中が他にも多々現れている。 その他勢力への対応など、重要な事柄はあるのに・・・・
 「おめでとうございます!レイジ様!」
女性の声で、レイジは現実へ引き戻された。 声を発した本人・・・秘書であるシャドーローズが笑みを浮かべて立っていた。
 「初めての任務が幼稚園バスジャックだなんて、喜ばしい限りですわ!」
 「あの〜、本当にそう思うのか?」
 「勿論ですわ!! 幼稚園バスジャックを任されると言う事は、総統がレイジ様に期待している証拠ですわ!」
 まったく裏表の無い口調からして、彼女は本気で言っているようだ。 どうやら『幼稚園バスジャック』と言う行為は、悪にとって、ただの作戦以上の意味を持つのかもしれない。 レイジはそう思うことにした。
 「まあ・・・俺にとって初陣だし、よし!張り切っていくか!!」
 「はい!では、本作戦を便宜上、『バスジャッカー電撃隊』と呼称します!!」
レイジは、作戦名にはあえてつっこまないことにした。


 丁度その頃、新東京に3両のバイクが辿りつこうとしていた。 長船と村正姉妹、そして柊巴だ。 4人はそれぞれのバイクにまたがり、新東京を目指していた。
 東京湾へ作られた新東京へ渡る為の、新東京大橋を望んだ辺りで小休止を取っていた。
 「あれが新東京か・・・」
 話には聞いていたレベルで、4人とも実際に来た事は無かった。
 旧都心にまっすぐに来ず、こちらへ来たのは、何かしらの情報がつかめるかもしれないと思ったからだ。
 「新東京名物の『新東京ねずみーランド』行こうっ!!あそこならナイトショーもやってるし!」
宮乃がガイドブック片手にはしゃいだ。 彼女のバイクは50ccの為、今回は使わず、ずっと長船の大型スクーターに乗っていた。
 「あたしも、新しいぬいぐるみが・・・」
巴も同感して、笑みを浮かべる。
 「貴方達・・・遊びに来たんじゃないのよ・・・」
彩がしかると、宮乃はむくれ、巴はガッカリした。 長船はまあまあ・・・となだめた。 だが彼も本心から言えば、新東京名物の『54倍カレー(レトルト)』が買いたかったことを黙っていた。
 「とにかく、少し休んだら橋を渡ろう。 すぐに市街地があるし、情報も掴めやすいだろう。」
そう言って、新東京でも最も外側に位置する為、ここからでも見える市街地を見た。
 『うん。』
3人は頷いた。

 
 
 ───私立自習院幼稚園  新東京の市街地に存在する幼稚園で、政財界の著名人の子息や孫が多く通う名門であった。
 そして、今この幼稚園から、一台のバスが出発しようとしていた。 この幼稚園の送迎バスだ。 名門の幼稚園の割には旧型だが、今だ元気に園児達を送り出そうとしている。
 「はい!ではみんな、おうちに帰りましょうね。」
 『は〜い!!』
保母の声に、園児達は元気な声を出しながら、「先生さようなら」を言いながらバスに乗り込んでいく。 そして・・・園の外から、それを見つめるオープンタイプの小型オフロード四輪駆動車の傑作、スズキのジムニーに乗っている一組の男女の姿が。
 「平和な光景ね。ところで、私達が接触しなきゃならない人物ってのは?」
ジムニーの助手席に座るショートヘアの革ジャンを着た女性が、バスに乗り込んでいく園児や保母達を見つめながら口を開いた。
 「あの白いコートを着た、顔に大きな傷のある男性だ。」
運転席に座る青年が、示す様に軽く指を動かした。 その先には、言われた通りの容姿の大柄な男性が、バスに乗りこもうとしていた。 そして・・・明らかに園児ではない、小学生ぐらいの少女が3名ほど同伴していた。
 「『大紋寺激』・・・宇宙刑事シャトナー。宇宙連邦警察太陽系方面長官で、過去の負傷により変身能力を喪失、惑星保護法により現地住人に戦闘行為を依託、代理刑事・・・通称『メタモルV』を組織。」
 青年が淡々と言うと、女性は頷いた。
 「数ヶ月前のマジカル星人事件を解決した立役者ね。」
 「そうだ。 そしてつい数週間前に、今度は民主クーデターによって、惑星アドニスを追われた王族一派が地球侵攻を企んでいる事が発覚し、シャトナーに対応を指示した・・・と言う所で終わっている。」
 「それ以来、シャトナーに銀河連邦警察から連絡ならびに指示が無いのは・・・」
 男性は頷いた。
 「俺達は、それを彼に伝える為のメッセンジャーの役割も持っている。」
そう言い、ハンドルを握り締めた。
 「・・・そして、俺達は彼らに協力し、アドニス王家一派・・・そして『麻龍』を叩く事にある。」

 大紋寺激が幼稚園バスに同乗していたのは、小学校の課外授業の一環だった。 簡単言えばボランティア活動の一つで、幼児の相手をしていたと言う所だ。
 帰りがバスに同乗なのは・・・
 「先生ぇ〜、なんでくるみが幼稚園バスに乗らなきゃなんないの〜?」
髪を二つに別けた少女が、すねた様に言う。
 「あら?楽しいですわよ。これも課外授業の一環だと思えば。」
 黒髪のエプロンドレスを着た、育ちの良さを伺わせる少女が微笑む。
 「・・・あたしも・・・そう思う」
おさげの少女も静かに頷く。
 「ったく! くるみは芸能人なんだからね。 先生が帰りのバス賃しぶるから。」
 「・・・いや〜!すまんすまん! まあ、これもぉう、経験だぁ!」
豪胆な顔をして笑う男。 この男こそ、先ほど青年が話していた男、『大紋寺激』、宇宙刑事シャトナーだ。
 太陽系方面警察長官と言えど、実情は辺境に派遣された一刑事に過ぎない。 その為安月給で38にもなって一人身だ。
 「でも、男性の方が一人でも多い方が安心ですよ。 最近この辺も物騒で・・・」
バスに乗っている保母の一人がそう言う。 保母が言うには、この近辺にも『悪』と呼ばれる連中が進出しているらしい。 新東京の治安を守る警察の特殊機甲隊、通称『特甲隊』の隊員達が巡回しているが、それでも不安らしいのだ。
 「ぶららぁはっはっ! まあ大丈夫ですよ!!」
相変わらず、豪胆に笑い飛ばす大紋寺である。 そんな時、バスがいきなり止まった。
 「?」
 大紋寺が前を見ると、『工事中』の立て看板が出ており、交通誘導員が蛍光棒を振っていた。 迂回してくれ・・・と、言っているらしい。
 「こんな所で工事か?」
 不審に思いながらも、バスの運転手は誘導通りにバスを迂回させる。 しばらくすると、また同じように誘導員が棒を振っている。
 それが何回か続けば、大紋寺も様子のおかしさに気付いた。
 「妙な誘導されている?・・・まるで誘い込んでいるように・・・」
大紋寺は気付くのが遅すぎた。 目の前の道は障害物で意図的に封鎖されていた。 慌ててバスを停車させた時には、バスの周りには不信な人影が!!
 
 「Q!Q!」
既にバスの廻りは、黒タイツの集団に囲まれていた。 Q!Q!と叫びながら、バスを威嚇(?)している。
 「しまった!!罠にはまった!」
 大紋寺が叫ぶが既に遅し、バスの目の前には白と黒のツートンカラーで塗り別けられた甲冑を着た青年が姿を現した。
 「ははは!!この幼稚園バスは、我が『秘密結社Q』が乗っ取った!!さあ!大人しく我等の指示にしたがってもらおうか!!」
 幹部らしき甲冑の青年・・・秘密結社Q、新人幹部レイジは、作戦の成功を確信しつつ笑っていた。 だがその反面、バスの中はパニック状態だった。 子供達は泣き叫び、保母達はただオロオロするだけだ。
 「うわ〜!こわいよ〜!」
 「まま〜!」
 「み!みんな!落ち着くのよ!」
そんな中、平静を保っているのは、大紋寺と彼が連れている3人の小学生だけだ。
 「先生!」
 「ああ・・・解っている。 だが、ここで変身は・・・」
 敵の組織ならともかく、一般人の前で変身というのは・・・。 しかし今は緊急事態だ。
 「なら、くるみがこっそり・・・」
一人の少女がそう言いかけた時であった。


 バロオオンッ!!───1300ccのエンジンを響かせ、バリケードや障害物を弾き飛ばし、一台の白いジムニーがこの場に突っ込んできた。
 「な!なんだっ!?」
レイジが驚き、見るとジムニーから一人の青年が飛び降りた。
 「とぉっ!!」
 青年は高くジャンプし、近くにいた黒タイツの戦闘員に飛び蹴りを浴びせた。
 「Q〜」
情けない声を出して、戦闘員は倒れこんだ。 青年はその隙にバスに近寄った。
 「君は・・・」
 バスの窓から、大紋寺は青年に声をかけようとした。だが反対に青年の方から話しかけてきた。
 「大紋寺さんですね! 俺は『神塚ダイ』、宇宙探偵です!」
 「宇宙探偵!?」
 「詳しい事は後で! ここは俺に任せてください!」
そう言うと、ダイと名乗った青年は、次々と戦闘員をなぎ倒していく。
 「おのれ〜!! こうなったら人海戦術だ!まとめて掛かれッ!!」
拳をプルプルと振るわせて、怒りを露にするレイジ。 彼の命に従い、戦闘員がアクロバット体操よろしく、バク転しながら、二人一組で飛びかかっていく。 だがダイは易々と避けると、ジャンプし一度間合いを開いた。 そして!!

 ダイはザッ!!と、大地を踏みしめ両腕を前に突き出した。
 「転送っ!!」
 その叫けんだと同時にダイの身体は光りに包まれていた。 次の瞬間・・・そう、瞬間と言うに間違いは無いぐらいの一瞬のうちに、その場に青年の姿は消え、シルバーメタリックに輝く近未来的なコンバットスーツに身を包んだヒーローが姿を現していた。
 
「宇宙探偵! ディバンッ!!」
神塚ダイ・・・否!宇宙探偵ディバンが高らかに叫んだ。

 (解説しよう。 宇宙探偵ディバンは、僅か六十分の一秒で、圧縮転送を完了する。 では、その転送プロセスをもう一度解説しよう。)
───高速度のパルスエネルギーが、宇宙空母ディオラスのセンターコントロールシステムにスパーク。 増幅されたパルスエネルギーは、ディバンに圧縮転送されるのだ。───(CV:政宗)


 「行くぞっ!秘密結社Q!」
 転送を終えたディバンが、改めて戦闘員達の前に立ちはだかる。 生身でさえ敵わなかったディバンに、戦闘態勢を取られては、流石の秘密結社Qもひるむというもの。 ディバンはそれを見逃さなかった。
 「ラスターレーザーっ!!」
 ディバンの突き出した左腕から、光線が放たれた。 戦闘員と一緒に道を封鎖していたバリケードの一角が吹き飛ぶ。
 「今だ!マリー!」
 「OKよ、ディバン! さあ皆さん今のうちに!」
マリーと呼ばれた女性が、ダイが乗っていたジムニーを運転し、バスを先導する。ディバンの攻撃で崩した一角から逃げろと言っているのだ。
 「ああ!くそうっ!」
レイジが歯噛みする前で、ジムニーの先導を受けた幼稚園バスは、バリケードを突破し去っていく。
 バスの中から子供達の「ありがとう!」「ありがとー!」の声が響き、窓から大きく手を振っている。 去り行くバスにディバンも大きく手を振って答えた。

 「よくも子供達に恐怖を与えたな! 許さんっ!!」
怒りに手を振るわせるディバン。 その様子にすっかり気落ちする秘密結社Qの面々。
 「お・・・おのれ・・・」
 『苦戦しておるようだなレイジよ。』
周囲に声が響いた。 辺りを見渡すが、ディバンと自分達以外は誰もいない。
 「そ・・その声は総統!」
 レイジが叫ぶと、答えるかのようにまたも声が響く。
 『ふふふ・・・なら少々手助けをしてやろう。 シャドーローズ、魔Q空間を発生させよ!!』
 「はい総統。 魔Q空間発生装置作動。」
すると、いきなり周囲の空間に揺らぎに似た現象が発生し、頭上に摩訶不思議な渦巻きが現れた!!
 次の瞬間、レイジ達の姿は消え、うねりの中へディバンだけが取り残された。 しかし!コンな事で慌てるディバンではない。

 「モトアルファぁぁ!!」
 ディバンが叫ぶと、空中から白いSFバイクが飛来した。 「とおっ!」の声と共にディバンはジャンプしバイクに飛び乗り、そのまま頭上の渦巻きの中へ飛びこんだ。


 その頃、新東京の市街地に入った長船達は、特甲隊の検問を受けている幼稚園バスを発見した。
長船は警察手帳を出し、検問中の隊員達に事情を聞いた。 
 「秘密結社Qに襲われた!?」
 「ええ、動機は不明ですが、この幼稚園バスを秘密結社Qが襲おうとしたらしいんです。 それを・・・『正義っぽい』青年が助けてくれたと・・・」
 正義・・・長船はその言葉に反応した。 もしや・・と思い、胸元の勾玉を見た。 案の定光っていた。
 そんな時だった。 事情聴取を避ける様に、こっそりとバスの中から、教師と見られる男性と3名の小学生女子が抜け出しているのが目に付いた。
 幼稚園バスに小学生? 妙な感じはした長船は、特甲隊員に礼を言い、こっそりと後をつけた。
そのすぐ後だった。 物陰に隠れた一同は、つけている長船に気付かないまま、その姿を変えた。 そう・・・『変えた』のだ。
 3名の女子小学生は、それぞれ黄色のバニーガール。黒色の悪魔を思わせるコスチュームの女性。そして紫色の巨大な注射器を背負った看護婦へと姿を変えている。
 「よし!先ほどの宇宙探偵と言う青年が気になる。戻るぞっ。」
男性教師が3名の変身した女性に呼びかけると、3名は頷き駆け出そうとした。
 
 「ちょい待った!!」
大紋寺はその声に驚き、振り向いた。 そこには一人の青年が立っていた。
 「歩いていっても時間掛かるぜ。 俺のバイクに乗っていくかい?」
 「み・・・見たの?」
震える声で紫色の看護婦が尋ねると、青年・・・長船は頷いた。
 「見た。 でもまあ・・・あんまり、その事は問題ないんじゃない?」
 長船は、微笑して後ろへ手招きした。 すると、3名の女性・・・性格には二人の女性と一人の少女、柊巴と村正姉妹が姿を見せる。
 「君達・・・『正義』だろ?」
 長船は大紋寺達に向けて笑みを浮かべた。 今だ疑わしい目を向けている大紋寺たちに、長船は巴を見るとたがいに頷く。そして・・・
 「天女降臨!」 「纏身!!」
 その声が終わると同時に、長船と巴の姿は変わっていた。
 「俺達もなんだよ。」
長船の声に、大紋寺達が向けている視線は驚きと・・・明らかに好意が含まれていた。



 「こ!ここは!」
レイジは自分を取り巻く環境の激変に驚きを隠せなかった。 廻りが宇宙空間と言うか、小惑星上と言うか・・・とにかく摩訶不思議な場所に変貌していた。
 『案ずる事は無いレイジよ。ここは魔Q空間と言う、ワシが作り出した一種の異次元空間じゃ。』
 総統Qの声だ。
 「なんと!」
 『ここでは、戦闘員ならびに怪人達は3倍の力を出す事が出きるのじゃ!』
 「3倍ですと!それは素晴らしい!」
 『ゆけっ!レイジよ! その愚か者に、我等の力を思い知らせてやるのじゃ!』
 「ははっ!」
レイジは姿の見えない総統に深く頭を下げた。
 「ははは!!ディバンとやら!貴様に勝ち目はない! 行けっ!デスパイダー!貴様の仕事帰りのサラリーマンを一発で昏倒させた力を見せてやれい!」
 「ダー!!」
レイジの指示に、クモ怪人デスパイダーが、ディバンににじり寄る。
 「仕事帰りのサラリーマンを昏倒させただと・・・恐ろしい奴め。」
 ヘルメットの中で、ディバンは冷や汗を流す。
 「ダー!! そうだ!俺のテストに選ばれた哀れなサラリーマンがな!」

 その頃・・・新東京の某病院で・・・・
 「中村さん!中村さん!しっかりしてください中村さん!!もうすぐ奥さんが!」
 茶髪の青年が、病院のベッドの上で意識を失いかけているメガネをかけたサラリーマンを必死に励ましていた。
 その様子を看護婦が・・・
 「あのアルバイトのお兄さんと、仕事帰りに大きなクモに襲われたらしいのよ・・・」
 「まあ・・・クモに?」


 「くらえっ!クモ爆弾!」
デスパイダーの無数の小型クモ型爆弾がディバンを襲う。 実験段階でノラ猫27匹を吹き飛ばしたと言う愛猫家泣かせの武器だ。 まともに食らえばディバンとて危うい。
 「くっ!」
 爆風に耐えるディバン。 その隙にデスパイダーが爪と腕を突っ込んでくる。
 「アシュラコンボ、ダァー!!」
 強靭な腕でディバンに殴りかかるデスパイダー。せっかく背中に八本の足があるのに、それを使わず、腕だけで殴るところに彼の美学を感じる。
 「トドメダァー!!」
 そこで初めて、鋭い八本の足につけられた爪を突き出したデスパイダー。 これを食らえばディバンとて一たまりも無いだろう。レイジはそう確信していた。
 だが・・・
 「とうっ!」
爪がまさにディバンを包み込む様に襲いかかる瞬間、ディバンは態勢をわざと崩し、まるで滑りこむ様にデスパイダーの股の間をすり抜けてしまった。
 「なにっ!」
その為、行き場を失ったデスパイダーの鋼鉄の爪は、自分自身の身体に食い込む!!
 「ギャアアア!!」
 「で!デスパイダーっ!!」
爪が自身の身体を貫き、苦しむデスパイダーに向け、ディバンは瞳を輝かせる。
 「レーザー点棒!!」
ディバンの肘に装備された円柱を掴むと、それは光り輝く刀身を持った。
 光の剣を構えた時、異次元空間が消え去り、ディバンの背後に夕焼けが現れ、ディバンの姿を陰を残して覆い隠す。 どこぞの特撮調のBGMが聞こえてきそうな雰囲気。
 
「ディバン・クラッシュ!!」
 上段から振り下ろした光の剣がデスパイダーの身体を叩ききった。 
ギャアアア!!の断末魔の声を残して、デスパイダーは大爆発。
 デスパイダーが爆発すると同時に、周囲の空間は元に戻り、青空を輝かせていた。

 「お!おのれ!覚えておれ〜!!」
悪の組織伝統の負け惜しみと言うべき台詞を残し、レイジ達は逃げ去っていった。
 残されたディバンのコンバットスーツは、太陽の反射で光り輝いていた。



 「なにい!銀河連邦警察が壊滅しただとぉぉっ!!」
その後、ディバンの元にやってきた大紋寺は、ディバンから伝えられた言葉に驚愕していた。
 「残念ですが銀河連邦警察は、悪の組織『麻龍』と『惑星狩猟旅団クライオス』。そして・・・謎の惑星国家によって壊滅・・・正確には『ほぼ壊滅状態』に近い状態まで陥ってしまったんです。」
 変身を解いたディバン・・・神塚ダイからの言葉は重く沈んでいた。 だが当の大紋寺本人は気を失いかねないほどのショックを受けていた。
 「まあ・・・とにかく詳しい話は後ほど・・・」
ダイのパートナーであるマリーと言う女性がなだめる様に言う。
 「ところで君達は・・・」
 ダイは長船と巴に視線を移した。 ダイが長船を見ると彼の胸元から、何かが輝いていた。
 「貴方がたと同じ・・・『正義の味方』さ!」



 次回予告

 壊滅しかかった銀河連邦警察! 無秩序に人々を襲う魔物! 暗躍する秘密結社Q
 どうしてこんな世になったのか!! 事の真相を掴む為、長船は帝国華激団の基地へと向かう! そこで長船を待っていた驚愕の事実とは!!
 そして、卑劣な秘密結社Qの罠にはまり、無実の罪で投獄されてしまう大紋寺激!!
 大紋寺を思う少女達の言葉と涙は、氷の女をも動かした! 次の戦場は法廷だ!

 次回、サイバーヒーロー作戦 第十一話『逆転っぽい裁判 要芽VS御剣!!(前編)』にジャッジメント!!

 長船「弁護士?」 要芽「そう。」 長船「彼は?」 摩周「・・・」 要芽「秘書みたいなもの」
 長船「ゴローちゃん!?」 要芽「訴えるわよ・・・」



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