第五話 「サイバーナイトの秘密。 信頼の強さ」
その場所は、異質だった・・・・・
まるで、中世の王室のような雰囲気をかもし出しているのにも関わらず、ハイテク電脳機器が数多く立ち並んでいる。
そこは、巨大な要塞・・・・と言っていいのだろうか?
闇の中に浮かぶ、巨大な異形の要塞・・・・・
その一室の中で、一人の男・・・・歳は四十歳ぐらいだろうか、がっしりとした体格に知的かつ冷徹な顔・・・
その男が、部下の一人から報告を受けていた。
「なんだと?太正時代にガルファーが現れただと?」
男は少しばかり驚いたようだ。
「はい。間違いありません。先遣隊をモニターした結果、間違い無くガルファーです。総統閣下・・・」
部下は、感情の篭らない声で、そう報告した。
「ガルファーがあの時代に現れるとはな。あの異次元人の息子が生きていたのか・・・」
総統閣下と呼ばれた男は、そう呟いた。
「いえ、21世紀初期から現れました。『時間障壁』の制御ユニットを設置していた地域に向かわせた、一個中隊が全滅しております。どうやら子孫のようです。」
時間障壁とは、長船が駐在をしていた村の伝承に伝わる、天女の封印の事だ。そして制御ユニットとは天女像の事である。
「ガルファー・・・確か『聖魔装甲』と名乗っていたな。・・・異次元人が作った、『対時空兵器用精神感応型マイクロマシンアーマー』・・・・」
総統は僅かに表情をゆがませた。
「恐らく、障壁が破られる事を予見して、後世の為に保存しておいたのだろうな・・・」
そう呟き、後ろを向く総統。近くにあった小さな砂時計を手にとった。
総統は砂時計をさかさまにした。黄色の砂が、さらさらと流れ落ちる・・・・
「15年・・・・・15年掛かって、私は時間移動の手段を手に入れた・・・・」
遠い目をしながら総統は語り出した。
「タイムマシンの理論は、既に二十世紀に生み出されていた・・・・。だが、それは二十世紀のテクノロジーでは作り出す事が出来なかった・・・。いや!遥かに時が進んだ、私が産まれた二十八世紀の技術ですら、作り出す事は出来なかったのだ!!」
だが、総統と呼ばれるこの男は、15年掛かってその偉業を成し遂げたのだ。
「時間と空間を超越できる力を、ついに人類は手にしたというのに・・・・二十八世紀の人間達は、私の偉業を称えるどころか、異端者扱いにした!!」
思い出すだけでも、腹が立つのか総統は拳を握り締め、歯を食いしばった。
「私を学会から追放し、あまつさえタイムマシンの危険性から私の発明を公にしないように隔離した!」
だが、そこで不意に怒るのを止めた。昔の事を蒸し返しても仕方が無いと感じたのだろう。すぐに冷静な表情に戻る。
「だから私は、学会・・・いや、二十八世紀の人類に見切りをつけた・・・。神にも匹敵しようかという力を有効に利用する為にな・・・」
総統はそこで、静かに歩き始めた。部下が黙ってその後をついて行く。
やがて総統は、薄暗い部屋に入ってきた。その部屋は広い・・・・小学校の体育館ぐらいの空間が広がっていた。
そして、部屋の中には薄い緑色の水槽が幾つも並んでいる・・・・。まるで生物学の研究室のように・・・・
総統は、ある一つの水槽の手前で立ち止まり、水槽の中身を笑みを浮かべながら眺めていた。その中身は、ガルファーの敵、時鬼だった・・・
「私が独自に開発した生物兵器『インベイド・オーガ(侵略鬼)』。殺戮本能と捕食衝動を入力され、命令には絶対服従の生体兵器・・・その生命力と維持する為、有機体を捕食・・・燃料とする殺戮兵器だ・・・。」
今まで、時鬼と呼ばれていた鬼達は、この男が創り出した生物兵器なのだ。そのエネルギー源は有機物そのもの・・・つまり、動物や人間だ。
敵地に送り込めば、インベイド・オーガは、食事と殺戮行為を同時に行なえるのだ。
「過去の世界はいい・・・。人間が野心に溢れていた・・・・全てが整然と管理されている二十八世紀とは活気が違う・・・」
総統は羨ましそうに呟く。
「だから、侵攻の時間軸は人間が野心に溢れている時代を選択した。そして野心と活気に溢れた国・・・日本を手始めに侵攻した・・・」
部屋の奥にある少し大きめの水槽の前で総統は立ち止まった。
その水槽の中には、半身を失った人型の物体が揺れていた。しかもその失われている半身からは骨格が伸びつつあり、あたかもこれから身体を構成しようとしている段階のようにも見えた。
「奴らにしてみれば数百年だが、時間を超越できる我にとっては僅か数年・・・・。」
「最強のインベイトですね・・・総統。」
部下が口を挟んだ。
「そうだ・・・・。あの時代でのガルファーとの最後・・・になるのか・・・その戦いに敗れたインベイドだ。
「ガルファーとほぼ相打ちで果てたインベイド・・・。数年かけて復元させたのですか。」
「うむ・・・・。勿論バージョンアップはしている。さらにコイツのデータを基に、新型のインベイドも量産体制に整いつつある。」
総統は自信があるようだ。誇らしげに言った。勿論、偉そうにふんぞりかえっている訳ではない。静かに口元を僅かに動かしたにすぎない。
「忌々しいのは、ガルファーよりもあの異次元人の女です。何処の時間軸の存在かは知りませんが、あのガルファーを産み出し、我々の時間跳躍を妨げるゲートまで作り上げるとは・・・」
部下が、今までの事務的口調から、感情を感じさせる口調に変わった。総統の自信に溢れた雰囲気につい己が出てしまったのかもしれない。
「お陰で我々は、この時間軸とある程度の時代にしか動けなくなってしまった・・・」
だが総統は、微かに口元を緩ませた。過ぎた事に腹を立ててもしょうがない・・・・と顔が語っていた。
「まあ良い・・・・。その二代目のガルファーの実力がどれくらいなのかは知らんが、侵略には障害が付き物だ。それと障害はガルファーだけではないのだろう?」
ガルファーが現れた事をまるで楽しんでいるように尋ねる総統。部下は慌てて口調を元に戻す。
「は・・・はい。これをご覧ください。太正時代に現れた我々に対すると思われる勢力です。」
部下は手持ちの小型端末を叩くと、総統の目線に合わせて何も無かった空間から鏡のような物体が浮かび上がり、モニターとなった。
モニターの中には黒之巣会と戦っている帝国華激団の姿があった・・・・
「ほう・・・。この時代にしては随分と高性能なパワードスーツではないか。動力は・・・蒸気と人間の精神力・・・と言った所か。装甲は・・・ほう鉄鉱石と鉛を、微妙なバランスで配合した素材か・・・。なるほど対ESP用装甲としている。しかも重量過多を防ぐ為に空間構造とハニカム構造を併用している・・・」
部下は、表情を変えた。驚愕の顔で総統を見ていた。モニターには光武の分析データを表示していない。ただの映像のみから、総統は光武の大まかな構造と用途を言い当てたのだ。
「・・・御見事です総統。続きまして・・・」
次に映ったのは、ブレイド達、サイバーナイトだ。その映像には総統は僅かに表情を変えた。
「これは・・・・西暦二千三百年頃の機動兵器・・・。確か『バトル=モジュール』と言う・・・・。この時代にありえない存在が・・・」
総統はしばらく考えたあと、笑みを浮かべた。そしていきなり笑い出した。
「そ・・総統?」
「はははは!!!あの異次元人の女!やってくれる。」
「どう言う事ですか?」
総統は表情をいきなり元に戻した。
「あの異次元人の女も、我々と同じように時間を制する事が出来るのだよ。」
「ええ!?」
「これで全てに合点がいった。あの女はまだ生きている。恐らくはもう自ら戦う事はできんのだろう。我々が各時間軸に侵攻できるように、あの女は、様々な時代や平行宇宙から、我々に対する防衛手段を召喚しているのだろう。ガルファーは恐らくその中心となる存在だ。」
総統はニヤリと笑う。
「面白くなってきたな・・・。他の時代の映像を出せ。侵攻部隊を送りこんでいる時代のな!」
部下は慌てて端末を操作し、モニターに表示させる。
「時間障壁の影響で、侵攻が可能な時間は、二十八世紀・二十世紀中盤〜二十一世紀序盤のみです。現在侵攻部隊が送っているのは、西暦1990年代!」
「よかろう。出せ。」
するとモニターの中に現れたのは、白い未来的コンバットスーツが光り輝く剣を振りまわし、手足がスプリングのように伸び縮みするハデなコスチュームの男がキックを繰り出し、プロテクターに身を包んだ茶髪の青年が乾電池を手に取り、白い全身タイツを着込んだ中年男性が、赤いバレリーナ・青い婦人警官・黄色のバニーガール・黒い子悪魔・紫の看護婦に戦闘の指示を与えていた。変わったドレスを纏った少女三人組も確認できた。
さらにその連中に敵対していると思われる組織も確認できていた。
しかも、それとは別に「Q!Q!」とか言っている謎の戦闘員集団の姿もあった。
「ほお・・・・面白い。こんなにも我等に対する連中がいたのか。しかもきちんとそれぞれに対する敵対組織まで・・・『悪があってこその正義の味方』かな?」
総統は面白そうな笑みを浮かべる。その顔はまるでこれから新作のゲームに挑もうとしている、子供のそれと同じ顔だった。
「よし!手始めに太正時代を攻め落としてガルファーを倒す!あの女の子孫であるガルファーさえ倒せば、他の時間軸への侵攻も楽になる。」
「はっ!」
「それと、各時代の勢力に援助を出してやれ、その方がやつらも戦いがいがあるだろうからな!」
「了解しました!『ハル=バート』総統!!」
部下は総統をフルネームで呼んだ。
男の名は『ハル=バート』。二十八世紀の天才科学者・・・・・。そして時間を制する事を可能とした男・・・
「我が組織『GK(ジェネレーション・キル)』の行く手を阻む物には、死の制裁を!!」
富士の裾野・・・・・・
太正時代のこの場所は、帝国陸軍の演習場となっていた。
そして、ここで帝国華激団花組とサイバーナイト達の模擬戦が行われていた・・・・が・・・
「そ・・・そんなぁ・・・・」
さくらが泣きそうな声を出していた。彼女の光武は仰向けに倒れ、眼前にはキリ=ザンジヌ駆る重量級モジュール『サウルス』の左腕の格闘戦用武器マッシャークローが輝いていた。
「勝負あり・・・って奴?」
キリのからかうような明るい声が聞こえてきた。
「あ〜あ、さくら負けちゃった。ね?ジャンポール。」
花組最年少の『イリス=シャトーブリアン』通称アイリスが、膝に抱えたティディベアに向かって言った。若干9歳の彼女は、そのティディベア(彼女曰くジャンポールという名前)と合わさって、まるで人形のように愛らしい。隣にいたサイバーナイトの一人、シャイン=リーはクスリと笑みを浮かべた。
彼は他のメンバーに比べて戦闘能力が劣っている(彼曰く銃を撃つのは苦手)ので、今回は他のメンバーの戦闘データ収集の方に当っていた。
「シャインのお兄ちゃんの仲間って強いんだね。」
アイリスがシャインに向かって尋ねた。
「まあね。長い間戦っているからね。」
シャインがそう答えると、アイリスは表情を曇らせた。
「アイリス戦争嫌いだよ・・・」
「僕だってそうさ・・・。だから戦争を終わらせる為に戦うんだ。少なくても僕はね・・・」
「てぇぇぇぇいっ!!」
すみれの紫色の光武が気合と共に薙刀を振り下ろす。彼女は神崎風塵流の薙刀術の免許皆伝の腕前でもあるのだ。その動きには殆ど無駄が無い。演習地を舞うように動く。だが・・・
「・・・・・・」
ニジーナのウィナーはその動きを軽々と避ける。搭乗者の動きを確実にトレースする光武だが、殆ど宇宙服同然の外観のウィナーと比べれば、その運動性はかなりの差がある。すみれの動きを確実に先読みしていた。
「うろちょろとっ!!」
血気にはやるすみれは、ブンブン薙刀を振り回す。
「・・・・・そこね。」
ウィナーが銃を構えた。それを見たすみれは、距離を詰めようと突進してくる。だが、銃から放たれたのは弾丸でも光線でもなかった。
「!!」
その瞬間、光武のカメラが閃光に包まれた。瞬間的に視界を奪われるすみれ。
ウィナーが放ったのは、フラッシュグレネード───つまり小型の照明弾だ。殺傷力は無いが、相手の視界を奪う事が出来る。
そして視界を取り戻したすみれの光武の眼前にウィナーがプラズマライフル(ビームライフル)を突き付けて立っていた。
「わたくしが・・・・・負けた・・・」
呆然とするすみれ。冷静な状態ならば、すみれほどの実力者なら、視界を奪われた所でも気配と聴覚のみで相手を捕らえる事も出来るだろう。
だが、頭に血が上った状態では、そんな事が出来る筈も無い。これはすみれの血気を利用したニジーナの作戦勝ちと言っても良いだろう。
「うう・・・ウチの光武、真っ赤になってもうたぁ・・・」
紅蘭が鳴きそうな声を出した。緑色の光武は訓練用の模擬弾を受けて真っ赤に染まっていた。緑の部分が見えないくらいに・・・・
「俺の勝ちだな!修行が足りないぜぇ〜、メガネのお嬢ちゃん。」
元から赤いタイタンから、クレインが明るい声を上げる。彼にしてみれば、戦歴の浅い紅蘭では不足気味にも思える。
その証拠に、彼のタイタンは紅蘭からの攻撃は殆ど食らっていない。僅かな赤い斑点が一つ二つ見える程度だ。
「そんな・・・・・」
マリアは信じられない顔をして、対戦者である黒いバトルモジュールを睨んでいた。
「・・・・・・・」
対戦者である黒いモジュール。『シェリフ』、軽量級の対空戦用モジュールだ。武装はバルカン砲、機関銃を武器とするマリアとはいい勝負だったらしい。だが、技量の差・・・・シェリフのバルカン砲は確実にマリアの光武に致命傷を現す攻撃を加えていた。その証拠にマリアの黒い光武には赤い斑点があった。
搭乗者であるヴィンドは、勝負がついたのを確認して、無言でマリアに背を向けて立去ろうとしていた。
マリアはその背中に戦士としての風格を感じていた。
「やれやれ、全敗か〜。もう少し粘るかと思ったんだけどよ。なあ、あやめ君。」
米田司令が、指揮所のテントの中でぼやき、後ろに立っていた女性副指令に声をかけた。
「司令、まだ大神君が残っていますが?」
「マリアがあっという間にやられた相手だぜ。大神が太刀打ちできる相手かよ。」
そう言って、軍帽を目深に被ってモニターを見つめる米田。その様子にあやめはクスリと微笑した。
「大神みたいな奴には、口で言うより身体で覚えさせたほうが、いいのは解ってるんだよ。大神もこれで何か掴んでくれればいいんだけどよ。」
そう言い、モニターを見つめる米田。モニターには白い二刀流の光武・・・・大神とレーザーライフルを構えた白と青に塗装されたモジュール・・・・ブレイドのレックスが対峙していた。
「はあ・・・はあ・・・」
大神は肩で息をしていた。これまで自分の攻撃が易々と避けられ、いいようにあしらわれていた。
士官学校主席・・・・・剣術の腕前にも免許皆伝クラスの腕前も、このブレイドの前には何の役にも立っていなかった。
光武とレックスの性能の差を抜きにしても、ブレイドと大神には雲泥の差があった。
「・・・・」
ブレイドはレーザーライフルを捨てた。驚く大神をよそにブレイドは大神に、「少し待ってくれ」と言い、その場を離れた。普通の演習ならば、考えられない事だが、今の大神にはありがたかった。僅かでも呼吸を整える時間が出きるのだから。
そして戻ってきたブレイドのレックスは、さくら機用の刀を握っていた。どうやらさくらから借りたようだ。
「剣術で勝負・・・ですか?なぜ肩にある光る剣を使わないんです・・・」
尋ねる大神にブレイドはすぐに答えた。
「レイブレードでは、君の武器はおろか、光武まで斬ってしまうからね。模擬戦ならばこれが丁度いい。」
そしてレックスは刀を構えた。大神は驚いた。刀を構えるレックスの構えが、日本剣術とほぼ同じだったからだ。
「面白い。未来の剣術を見せてもらう。」
次の瞬間、光武とレックスが斬り結んだ!・・・・・・・そして。
──ガシャン
音を立てて仰向けに倒れたのは光武の方だった。大神の光武の腹部に切り傷がはっきりとできていた。
「いい筋をしている・・・・」
ブレイドはそれだけ言って、大神の光武を助け起こした。レックスのボディにも、小さいながらも×印に斬られた後が合った。
「ええと・・・・宣伝広告費がこうで・・・・舞台の照明機材の発注が・・・・」
長船は無数の書類の山と対決していた。事務的業務は苦手ではないが、いたって効率が悪い。
「先月分の支出と、チケットの売上金・・・・・あ〜!!!パソコンとまでは言わん!せめて電卓ぐらいないのかよ〜!!」
長船は声を上げて頭を掻き毟った。
「大声出さないでくださいよ備前さん。はい、そろばん。」
ロングヘアーの和服の女性が、長船にそろばんを手渡す。
「う〜、俺はそろばんは4級なんだよぉぉ・・・履歴書にも書けない4級・・・」
ぼやきながら、そろばんを打ち、計算を再開する長船。
帝国華激団の諜報員・・・・加山と名乗った男に連れられて、帝国華激団の本部に長船とセツナはやってきた。
そこで長船は、帝激司令の米田に未来からやってきた・・・・と説明した。
普通のならば、信用されない話ではあるが、米田はあっさりと信用し、長船とセツナを受け入れた。その理由こそサイバーナイトの存在だった。
セツナが20世紀終盤、長船が21世紀序盤から来たと説明すると、サイバーナイト達は自分達よりも遠い未来24世紀からの来訪者である事を告げられた。
「お前さん達、俺達に協力する気は無いか?」
米田はそう言ってきた。困惑するセツナをよそに、長船はあっさりとOKした。どのみち、華激団とは接触しようと考えていたし、この時代に来たのは何らかの意味があると踏んだからだ。
こうして長船とセツナはサイバーナイト達と同様、帝国華激団に協力する事となった。そして華激団の隊員達が普段は舞台女優として活躍している事を聞かされ、長船たちも大帝国劇場にて働く事となった。
そして平時の長船に与えられた仕事は、事務局での事務・・・・という事になったのである。
「備前さん。さっき言ってたパソコンってなんですか?」
事務局で働く女性の二人の内の片方、帽子を被ったショートカットの女性が声をかけてきた。
「由里さん・・・でしたね?パソコンってのは、俺の時代に多く普及している・・・・そうだな高性能演算機とでも言えばいいのかな?」
すると由里は、へえ〜という声を出した。
「地下の蒸気演算機みたいなものですか?」
もう一人の和服の女性が割りこんだ。
「ええ・・・あれをもっと小型化したような奴ですよ、かすみさん。」
長船はそう答え、計算を再開した。
「う〜、あのサイバーナイトって言う人達も平時はこんなことしてるのかい?」
今度は長船が尋ねた。するとかすみが笑顔で答えてくれた。
「ええ、そうですよ。この間まで花小路伯爵の所にいたそうなんですけど、黒之巣会と同時に鬼も頻繁に出るようになったから、正式にこちらに配属になったから・・・」
その続きを由里が答えた。
「皆さんね、傭兵って言うからもっと怖そうな人達かと思ったら、結構いい人達なんですよ。特にキリさん、すごく絵が上手なんで、看板の絵とか描いてもらってるんですよ。ヴィンドさんは照明器具とか修理してくれてるし・・・」
「ふうん・・・」
長船は、傭兵という職種にいい感じはしなかったものの、そういった人間味を持った人達なのか・・・と感じ少し安心した。
「ところで、セツナちゃんが舞台女優とはな・・・・」
長船は、ふと呟いた。
セツナが「深闇の者」と戦う宿命を背負っていると聞かされ、さらに降魔とも五部に戦ったという事を聞かされた米田は、セツナをさくら達と同じように舞台に出るように指示した。
「清らかなる乙女の祈りは魔を静める力がある。」
これは藤枝と名乗った副指令から聞かされた事だ。つまり、セツナはさくら達が『霊力』と呼ぶ力と似た性質を持っていることから配慮した配置だ。
以前、華激団に参加する前のすみれが、霊力だけで降魔を倒せた事ができたのと同じように感じたのだろう。
「にしても、その花組の隊長が受付担当・・・・モギリってのはねえ・・・」
長船はそう言って苦笑した。さくら達の隊長である大神少尉は普段は劇場受付兼雑用係として勤務しているのが長船には可笑しかった。これも米田司令の配慮らしい。
数日前、舞台倒壊の責任を感じ、細々と修理していた事もあったらしい。ちなみに倒壊したセットは帝劇総動員+サイバーナイトのヴィンド=ベルクが協力する事で修復できたらしい。
そしてつい先日は、倒壊したセットを一人で支え、腰を痛めてしまったらしい。この時は花組最古参の隊員『霧島カンナ』のおかげでどうにかなった。
そんな時、事務局に一人の青年がやってきた。サイバーナイトの一人『シャイン=リー』だ。あだ名は『教授』。理系の大学を出て数字やデータに強いので、平時は帝劇での事務を手伝ってくれている好青年だ。
「あらシャインさん。どうしたんですか?」
「手伝ってくれるんですか?」
かすみと由里が言うと、シャインは首を横に振った。
「いいえ、備前君に用がありまして、見せたいものがあるんです。」
呼び出されたのは長船だけではなかった。花組一同とセツナも来ていた。一同は、シャインに案内されるまま、帝劇地下へとやってきた。
帝劇の地下は、帝国華激団の総司令部だが、これのさらに地下の最深部に案内された。
東京大空洞・・・・・帝都の地下には、そう言った巨大な空洞が幾つかあった。帝国華激団の施設も、そう言った空洞を利用している。そして一同がやってきた空洞は、巨大な整備ドックとなっていた。そしてそこあったのは・・・
「こ・・・これは・・・」
「す・・・凄い!」
皆々がそれぞれ声を上げた。一同の目の前にあったのは二百メートルを超える大きさのグレーの巨大な物体だった。
「これは・・・一体?」
マリアが呟いた。
「紅蘭解る?」
さくらが隣の紅蘭に尋ねた。だが紅蘭は目を輝かせているばかりで、さくらの声など耳に入っていない。
「宇宙船・・・・宇宙船ですか?」
そう答えたのはセツナだ。シャインは満足そうに頷いた。
「正解。これが僕達が使っている『強襲揚陸艦ソードフィッシュ』さ。」
強襲揚陸艦ソードフィッシュ・・・・・ブレイド達サイバーナイトの拠点となる宇宙船だ。
シャインが話すには、この艦の所有者は既に死亡し、ブレイドが臨時の指揮官になっているとの事だ。
ブレイド達は、元の24世紀で、とある海賊基地の襲撃任務を受けていたらしい。作戦は成功したものの、ソードフィッシュは残存していた敵からの激しい追撃を受けて、その追撃から逃れる為、やむなく強行ジャンプ(ワープ航法)を行なって、銀河系の中心まで飛ばされたと言う。
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
花組の隊員たちは、あまりにも途方も無い話で、理解できなかった。それよかこの時代は宇宙にも進出していない時代である。
「ええと、つまり宇宙の彼方に行っちゃった・・・と言う事ですか?」
さくらはそうとしか言えなかった。頷くシャイン。
「ん〜解るか、すみれ?」
カンナがすみれに尋ねた。
「解るわけ無いでしょう!わたくし天文学は・・・・」
だがセツナと長船は理解できるようだ。SFの知識がある程度あるので、だいたいは理解できるらしい。
そして、銀河中心に飛ばされたサイバーナイト達は、そこで様々な異星人や機械生命体と出会い・・・戦い・・・そして、全宇宙の生命体の『父にして母なる存在』と接触。そこで銀河文明の癌である機械生命体バーサーカーと戦い、そして勝利して、やっとの事で地球圏に帰ってきたらしい。
「なんですか?その・・・『全宇宙の生命の父にして母なる存在』って・・・」
さくらが尋ねると、シャインは簡単に言えば『神様に近い存在』と答えた。時間を超越する事も、全ての生命の命の起源を操る事もできるし、見通す事もできる。死者すら生き返らす事も出来るらしい。
「凄い・・・・それなら私のお父様も生き返らせてもらえないかなぁ・・・」
そう言うさくらに、シャインは首を横に振った。
「それは無理。その神様みたいな存在・・・・メンターナって言うんだけど、人々の祈りや願いは決して叶えない事にしているんだ。」
「どうしてだい?そんなに凄い力を持ってるのに。」
大神が尋ねた。
「全知全能だからだよ。全ての知性の感情を理解できる代わりに、何が正しいのか決められないんだ。そして全てが見通せるから、何も手だしできないのさ。」
その言葉に、マリアは頷いた。
「確かに・・・・頼れる存在に甘え続けていては、人間は進歩しない・・・」
「だな!強くなるには自分の力で無いとな!」
カンナが自分に言い聞かせるように言った。
そしてシャインはソードフィッシュの中へ一同を案内した。なんでも地球圏に帰還する際、目に見えないダメージが表面化してメインエンジンが停止してしまったらしく、修理が終わるまで飛べないそうだ。
「それにしても、どうしてこの時代に?」
セツナが尋ねると、シャインは答えはじめた。
「実は僕達にも全然解らないんだ。」
メンターナの創り出した『スターゲート(超空間通路)』を通って、ソードフィッシュは地球圏に帰還した。
だが、スターゲートを通りぬけた直後、メインエンジンが停止し漂流状態となった。するといきなりまたしてもスターゲートに似た超空間が出現し、ソードフィッシュはそれに飲み込まれた。
そして超空間を飲みこまれたソードフィッシュの目の前に現れたのは青い星・・・・地球だった。
「恐らく、二回目のスターゲートは超高密度物質のリング・・・・『ティプラー型時空解』だったんだろうね。」
シャインはそう説明したが、花組のメンバーはなにがなんだかさっぱり理解できない。いや・・・セツナもである。
「ティプラー型時空解?確か1974年に提唱されたタイムマシンの理論か!!」
どうやら理解できたのは長船一人。1974年の理論なら花組は知らなくて当然だし、セツナはSFには興味が無い。
「その通りだよ。つまりソードフィッシュはティプラー型時空解・・・つまりタイムマシンによってこの時代に運ばれたのさ。セツナちゃんと備前さん、貴方達二人もそれと同じような物体によって、この時代に運び込まれた可能性が高い。」
すると長船とセツナは顔を見合わせた。どうやら二人とも心当たりがあるようだ。
「じゃあ・・・エルツヴァーユへの扉が・・・」
「時の空洞が・・・」
それを見てシャインは確信し、話を続けた。
ソードフィッシュの眼下に広がる惑星は、間違い無く地球である事が判明した。ただし太正時代ではあるが・・・。全知全能のメンターナが間違いを犯すとは思えない。恐らく別の意志によるものとソードフィッシュのクルー達は判断した。
ブレイド達にしてみれば、四百年ほど遡ってしまったが、『間違い無く地球に帰ってきた』訳である。
ソードフィッシュのメインコンピューター『MICA』の言葉によると、メンターナに匹敵する知性体は銀河全域でも『数えるほどだが確実に存在する』らしい。ソードフィッシュのクルー達は『どうやら我々を必要とする知性体は銀河系でもかなり多いようだな』と冗談半分で結論づいた。
サイバーナイトの一人、クレインは家族がいない為故郷に帰える、と言う事自体に他のメンバーより執着が無い為・・・
「どうやら地球人の中でも俺たちゃ、アイドル並みのひっぱりだこだな。スケジュールぐらい組んで欲しいぜ。」
と楽天的に構えていた。
「有能なマネージャーでも付けるんだな。それだけ、他の知性体は戦いが下手って事か・・・・。俺達は銀河規模の出張教官にされちまったらしいな。」
ヴィンドはそう静かに呟いていたと言う。
サイバーナイト達が銀河中心星域で戦っていたのは、超知性体メンターナの思惑だった。
ジャンプミス(ワープの失敗)で、ソードフィッシュは本来なら絶望して朽ち果てている所だが、メンターナは数百年前に同じようにジャンプミスで銀河中心に飛ばされた移民用宇宙船のクルーにアドバイスを与え、地球人が移民可能な惑星に導いた。数百年後にやってくるサイバーナイト達を助けさせる為だ。何故なら、銀河中心星域には戦いに精通した知性体が存在しなかったからだ。メンターナは銀河文明を守る為、戦争のプロであるサイバーナイト達を救ったのだ、機会生命体と戦わせる為に・・・・
そしてサイバーナイト達はメンターナの思惑通り、銀河文明を滅ぼそうとしている機械生命体と激しい戦いを繰り広げ、ついに機械生命体バーサーカーを打ち倒し、銀河文明を救ったのだ。
「全く、戦士に休養は無いんですかね。銀河のあっちこっちから無理矢理アプローチかけられて・・・」
シャインは苦笑していた。銀河中心での経験から、太正時代にやってきた理由をそう結論していたが、実の所仮説に過ぎない。
「じゃあ・・・元の時代に帰る方法は・・・・」
セツナが尋ねた。シャインは首を横に振った。
「全く解りません。ですが我々が銀河中心での経験から推測するには、我々にこの時代に何かやってほしいんでしょうね。この時代に導いた知性体なり存在なりがメンターナと同じように考えているのなら、まずは我々がこの時代にしなければならない事を探さなくては・・・」
「それが鬼と戦う事?」
さくらが言うとシャインは頷いた。
「我々はそう考えています。あっ・・・ここが『モジュールハンガー』です。」
シャインがそう言って、部屋の扉を開くと同時に紅蘭が目を輝かせた。目の前には二十機近くの数の人型の機械・・・・バトルモジュールが合った。サイバネティクスの鎧・・・・電子の騎士『サイバーナイト』由縁たる存在だ。
「元は八十機は詰まれてたんですけどね。海賊基地襲撃と銀河中心での戦いで過半数が失われまして・・・」
シャインは苦笑しながら言った。ソードフィッシュのクルーは全部で二十三名、当初の目的である海賊基地襲撃の際に半数近くが戦死してしまったという。本来なら百数名で運用すべき宇宙船だが、その四分の一以下の人数で銀河中心で戦い抜いたのは脅威と言う他無い。しかもその二十三名の中でバトルモジュールが装着できる人間は僅か六名だというから更に驚かされる。
「うわ〜!凄い!凄いで!さっすが24世紀の技術!すっばらしい〜!!」
先程から浮かれているのは紅蘭だったが、バトルモジュールのハンガーに案内されてますます気分が昂揚していた。
「凄いな〜。しかもデザインもカッコエエし・・・。光武も四百年経ったらこんな風に進化すんのかな?」
整備中のタイタンの中に頭を突っ込んで喜んでいた。近くにいる整備員が苦笑していた。
「おい。そんなにジタバタしてたらパンツ見えるぜ。」
その紅蘭に苦笑した声がかけられ、紅蘭が慌てて、服装の乱れを直した。彼女の服は脚のスリットが長いチャイナドレスなのだ。
そして声をかけたのは、サイバーナイトの中でも紅蘭と同じように機械技術に優れた男ヴィンドだ。2mを越す身長に、いかつい顔からは想像も出来ないぐらいに手先が器用なのだ。
「どうだ?タイタンは?いい機体だろ?」
ヴィンドは、同じ機械に精通した人間がいるのが嬉しいのか、いつも無表情な顔とはうってかわって、微笑して紅蘭に話しかけた。
「ええですわ!この被弾性を考慮した曲面でしかも重装甲!あと武器の装着するハードポイントがようけあります!ウチの光武と同じような後方支援用・・・いや間接支援用ですな!」
「当たりだ。流石だな・・・技術者として鋭い観察眼だ。」
「でもち〜と気に入らん部分があるんですけど?」
「どこだ?」
「あそこです。」
紅蘭が示したのは肩のセンサーだ。あとアンテナやカメラレンズだ。アンテナやセンサーは不気味な触覚のようになっていたし、カメラレンズはまるで昆虫の複眼のようだ。
「ああ・・・あれか。あれはしょうがないんだ。予備パーツが足りなくなってバーサーカーマシンの触覚や視覚器官で代用してるんだ。あれなら解りやすいかな?」
そう言ってヴィンドが指差したのは、サイバーナイト達の指揮官ブレイドが愛用しているレックスだった。
紅蘭より先に大神とさくらが近づいた。光る剣・・・・レイブレードによる見事な剣術を見せたブレイドには大神とさくらは興味があったのだ。
「うわっ!」
「ちょっと・・・・これ・・・」
大神とさくらは同時に声を上げた。目の前のレックスは両腕がまるで怪物のような形になっていたのだ。
「それは腕をそっくりバーサーカーマシンの中でレックスと似たような性能の奴と取り替えたんだよ。ほら、右腕がレーザー砲で左腕はレイブレードになってる・・・」
ヴィンドはいたって冷静に説明した。この他にもバーサーカーマシンの表皮を装甲にしたり、腕そのものをライフルに改造したり、モジュールの指の関節をバーサーカーの筋肉に取り替えたりしていたそうだ。
長船や花組一同はこの他にもソードフィッシュの様々な設備を見せてもらった。だが、そうのんびり構えてはいられなかった。
「ウチ・・・もうちょっと見たかったな。光武の改良のええ手本になったのに・・・」
紅蘭が名残惜しそうに呟いた。
何故のんびり見学できなかったのか、それは黒之巣会が現れたからだ。
「深川に黒之巣会が現れた。帝国華激団花組は直ちに現場に急行せよ!」
米田司令の指示に、大神はすぐに号令を出した。
「帝国華激団。出動せよ!!」
黒之巣会・・・・・それは、徳川幕府の時代、江戸の霊的防衛の要であった『魔神天海』が、何らかの原因により現代に蘇り、現政府を転覆させ、今再び徳川幕府を復活させようとしている集団であった。
黒之巣会は、徳川幕府の遺産である『脇侍』と呼ばれる蒸気と呪術を併用した人型戦闘ロボットを武器として、破壊活動を行なっていた。
そして帝劇はこれらの迎撃に当たっていたのだ。
「オンキリキリバサラ・ウンバッタ・・・オンキリキリバサラウンバッタ・・・・・・」
奇怪な蒸気駆動ロボットの上で、子供・・・・そう子供と呼んで差し支えない少年が、なにやら呪文のようなものを唱えていた。
少年と言っても油断は出来ない。この少年は黒之巣会の四天王と呼ばれる幹部の一人『蒼の刹那』であった。
さらに彼の目の前で、なにか杭のような物体が、念力によって地中に埋められていた。
そして刹那の行動を隠すように、十数体の脇侍が築地の住宅を破壊して廻っていた。
「そこまでだぜ!!」
いきなり築地に声が響いた。それは花組の一人、カンナの声だ。
「帝国華激団!参上!!」
六色の煙幕と共に、六機の霊子甲冑が姿を現す。帝国華激団の参上だ。
「貴様達が帝国華激団か。性懲りも無く・・・・ククク・・・」
蒼の刹那が含み笑いをする。その人を小馬鹿にしたような態度が、すみれやカンナのような血気盛んなメンバー達をムッとさせる。
「いいよ。相手してやるよ。」
刹那の言葉が終わると同時に、地面から光が放たれ、そこから異形の人型蒸気が姿を現す。刹那の愛機『蒼角』だ。
(帝国華激団の強さの秘密は指揮官たる、大神一郎とタチバナ=マリアによるものが多い。この二人さえ仕留めれば・・・)
刹那はそう考えていた。彼の目には白と黒の光武が映っていた・・・・
「相手が黒之巣会なら、俺達の出番は無いな。」
帝劇本部の地下司令室でモニターしていたクレインはそう呟いた。
「そうね。霊力を持たない私達じゃあ、黒之巣会に通用できるか解らないもの。」
キリも同意する。幾ら戦争のプロであるサイバーナイト達でも、霊力を有していないのであれば、黒之巣会の霊的波動に通用するのかどうか疑問が残るのだ。
「私はどうなのかな・・・」
そう言ったのはセツナだ。敵の幹部が同じ名前なので、すこし嫌悪感を感じていた。
「通用するかもよ。でもここは本職任せておきなさいよ。それに我々も黒之巣会と戦えるようにモジュールに改造を加えるらしいわよ。」
ニジーナがセツナに優しく微笑みながら言った。そのセリフを聞いたクレインが驚いた。
「マジかよ!どうやって?」
「装甲に光武と同じ対呪術のコーティングと、弾丸に霊力を混めるらしいわよ。あと人工の霊子水晶の組みこみ・・・。ヴィンドとシャインが頭悩ませてたわ。まあモノポール動力と蒸気動力の違いはあるけど、基本は似たようなものだし。」
笑顔で言うニジーナ。だがその横で長船が不穏な表情でモニターを見つめていた。
「ん?どうした、正義の味方。」
クレインが長船にからかうように尋ねた。長船がガルファーに変身できるという事を知ってから、サイバーナイト達は長船を『正義の味方』という愛称で呼んでいた。
「イヤな予感がする・・・・」
その頃、大神達は脇侍を一掃し、刹那を追いつめていた。築地の外れに刹那の蒼角を追い込んだ。もう後は無い。蒼角の後ろは運河だ。
「さあ!覚悟しろ、刹那!!」
六機の光武が刹那の蒼角ににじり寄る。間合いに入れば、すぐにでも攻撃できる態勢だ。
その時であった。───タタタ・・・と光武と蒼角の丁度中間の当たりから、近くの民家から逃げ遅れた子供が飛び出してきた。そのまま駆け抜ければ問題無かった。
だが、少年は光武と蒼角に驚き、転んでしまった。しかも蒼角の眼前で・・・・
「邪魔だっ!」
蒼角が腕を振り上げた。
「やめろぉぉぉ!!」
その瞬間、大神は少年を庇う様に飛び出した。迂闊にも蒼角の前に無防備な状態をさらす事になってしまった白い光武・・・・・
「ばかめっ!」
刹那が笑った。無防備な光武は蒼角の攻撃をもろに食らってしまった。
「うわああ!!」
「くそっ!悪い予感が当たった!!」
長船は壁に拳を叩きつけた。
その後・・・・、刹那には逃げられた。
大神は手術台の上に貼り付けにされていた。手足を動かそうにも、完全に拘束されている。そして目の前には、薄ら笑いを浮かべる黒之巣会の首領、天海が・・・・そして怪しげな笑みを浮かべた紅蘭まで・・・
「ははは!!大神一郎!キサマは我が黒之巣会に囚われたのだ。これからはキサマには我等の手足となって働いてもらうぞ!のう?紅蘭。」
「ほんまやわ〜。ウチいっぺん、改造人間を造ってみたかったんや〜。」
「や!やめろ紅蘭。やめてくれ!!」
「大丈夫や、動物実験では失敗した事ないんや〜。ささ、痛い事ないからな・・・。」
「やめてくれぇぇぇぇ!!」
「おっ、気がついたか。」
大神は絶叫すると同時に目が覚めた。大神の目に最初に入ってきたのは、平然とした顔をした長船だった。
「ここは・・・・?」
状況を確かめようと廻りを見渡す大神。そこは自分の部屋だった。長船は大神の意識が戻った事を他の花組のメンバーに知らせに出ていった。
すると、すぐさま花組のメンバーがなだれ込んできた。
「みんな・・・・そうだ!あの子はどうなった!?」
自分の事よりまず、少年の事を気にした大神に、花組のメンバー達は好感を持った。(ぴんぴろぴろぴん♪) ←(好感度UPの音)
「ええ、大丈夫でした。」
「そうか・・・俺はあの後どうなったんだ?」
「刹那の攻撃をまともに食らって・・・三日も意識不明だったんですよ。」
さくらが心配そうに言う。
「でも、大神さん凄いですね。とっさに子供を庇うなんて!」 「ああ!そう簡単にはできないぜ。」 「お兄ちゃんカッコイイ!」 「わたくし、少尉を見直しましたわ。」
と、花組のメンバーは大神を褒め称えていた。だが、そこへ紅蘭が割りこんだ。
「まあ、みんなそれぐらいにしとき。はい、大神はん。」
とさくら達を遮り、紅蘭が大神に何かを手渡した。それは丸薬だった。
「ああ・・?薬か・・・」
と大神は何の疑問も持たず、薬を飲み込んだ。
「うわっ・・・苦いな・・・・あれ・・・急に・・・」
すると、大神は再び意識を失った。
「こ・・・紅蘭!?それは・・・」
さくらが尋ねると、紅蘭はニカッと笑った。
「ウチの作った、特性の回復薬や。みるみる傷も塞がるで。ま・・副作用として猛烈に眠たくなるけどな。今の大神はんには、休息がなによりの薬や。」
こうして大神は再び眠りについた。そして・・・・
うすらうすら大神は意識を取り戻し始めていた。今だ身体は自由にならないが・・・・
「・・・・」
大神の額に何かが触れたのが感じ取れた。冷たい手だ。だが、不思議と大神は心地よかった。
「・・・・」
手が離れたらしい。大神はゆっくりと瞳を明ける事が出来た。すると目の前には金髪の女性・・・・マリアが立っていた。
「しょ・・・少尉!気がついていらっしゃったんですか!?」
普段、冷静なマリアが驚いていた。だが、すぐにいつものポーカーフェイスに戻った。
「ああ・・・。ところでマリアはどうして・・・」
「いえ。ちょっと様子見に・・・」
「そうか。すまないな・・・隊長である俺がこんなザマで・・・」
すると、マリアはそこで表情を険しくした。
「何故・・・飛び出したんですか・・・。」
「え?」
「何故飛び出したりしたんですか!!」
「それは・・・あの子を助け・・・」
だが言葉は途中で遮られた。
「いいですか少尉!貴方は帝都を防衛という重要な任務を帯びている身なんですよ。あの場合は敵を倒せる状態にありながら・・・」
「それは違うぞ、マリア!子供一人助けられなくて何が華激団だ!」
だが、それはマリアの激情をあおってしまった。
「その短絡的な行動が、このような事を起こしてしまったのではないですか!!隊長にもしもの事があったら、私は・・・」
マリアは、それだけ言って立ちあがった。
「大神少尉、貴方は隊長失格です。」
マリアはそう言い残して部屋から出ていった。
「待ってくれ、マリア!マリア・・・」
一人取り残された大神。隊長失格・・・・その言葉が脳裏に焼き付いていた。そして自分自身の行動を自問自答していた。
「確かに、あの時刹那を倒せる絶好のチャンスだったかもしれない。だが、俺にはあの子を見殺しには出来なかった。」
何度も自問自答を繰り返した。そして大神はベッドから起き上がった。
「もう1度、マリアと話し合おう。」
大神は部屋を出た。そしてマリアの部屋の近くに行くと、マリアの部屋からカンナの怒声が聞こえてきた。どうやらカンナは先程の大神とマリアのやり取りを聞いていたようだ。
マリアとカンナは花組でも古参のメンバーだ。親しい間柄である事は聞いていた。どうやらカンナは大神に行動を非難したマリアに反感を持っていたようだ。
どうやら話は一方的に終わったようだ。大神は盗み聞きしたように思われるのに抵抗を感じ、カンナが出て来る前に離れようとした・・・。だが、薬の効果が残っているのか、また意識を失った・・・・
「やれやれ、よく倒れる隊長だな、君は。」
苦笑する声が聞こえた。気がつけば大神はラウンジのソファーの上に寝かされていた。しかも丁寧に毛布までかけられて・・・
「ブレイド・・・さん。」
大神に声をかけた人物は、サイバーナイト達の指揮官ブレイドだった。自称38歳と言うが、そうは見えない印象を与える。実業家と言っても通用する知的な風貌を持っているが、かなりタフな男らしい。
「図書室近くで倒れているのを見つけてな。部屋に運んでも良かったんだがロックが掛かっててね。やむなくココにな。」
大神は思った。同じ指揮官としてなら自分の悩みを解ってもらえるかもしれないと。思いきって大神はブレイドに打ち明けた。
「ブレイドさん・・・。俺は隊長失格でしょうか?」
「突然何を・・・」
「マリアに言われたんです。俺は隊長失格だと・・・」
前回の戦闘の事はブレイドも知っていた。子供を庇い、負傷し、敵には逃げられた事をマリアに責められたのであろう。
「君はどう思うんだ?自分の行動に間違いは無いと思ったのか?」
大神は強く頷いた。
「はい。俺は自分が間違っていたとは思っていません。確かに刹那に逃げられた事は失態ですが、あの子を見殺しには出来ません。」
ブレイドはその答えに満足そうに頷いた。
「ならそれでいい。」
「それでいいって・・・・」
「君は指揮官だ。指揮官は常に最善と思える行動を選択しなくてはならない。君が正しいと思って行動したのなら、それでいい。」
「それが、間違っていたら?」
「私にでも自分の判断が間違っていたら?と言う時がある。その為に部下達を、銀河の中心や、四百年も昔に連れてきてしまったしね。」
ブレイドは話を続けた。
「不安は感じる。罪悪感もある。だがこれは『私にしか出来ない事だ』。そして後悔はしていない。皆が私を信頼してくれている。私はそれを裏切るわけにはいかない。」
「信頼・・・・」
ありきたりな言葉だが、今の大神には、ずしりと心に響いた。確かに、宇宙の彼方だ、過去の世界だ、と引きづり回されて、平静を保っていられるのが不思議だ。サイバーナイト達はブレイドを心から信頼しているのだ。ブレイドの判断が最善のものと解っているのだ。
「君は、花組のメンバーを信頼しているかい?」
「勿論です。」
「自分がそう思っても、彼女達はどうなのかは私にも解らん。信頼を勝ち取るには自らの行動で示すしかない。」
そこでブレイドはようやく笑顔を見せた。
「ま・・・マリアとよく話し合ってみるんだ。しっかりしろよ隊長。」
ブレイドはそう言って立ち去った。大神は再び立ちあがり、ブレイドに頭を下げた。そして歩き始めた。マリアと話し合う為に・・・
「私の出番は無いみたいね・・・隊長さん。」
影で大神とブレイドのやり取りを見ていた華激団副指令のあやめはそっと微笑んだ。
劇場内でマリアを探していた大神は劇場の玄関近くでマリアを見つけた。
マリアは「もう自分には関わらないでください」と言ったが、大神にはそうはいかない。マリアが玄関から外へ出ようとしたとき事は起きた。
「!!」
帝劇の夜空に巨大なスクリーンが投影されたのだ。映し出されているのは刹那だ。その表情は、なにやら確信を得たような笑みを浮かべている。
「タチバナ=マリアに告ぐ・・・タチバナ=マリアに告ぐ。僕は黒之巣会四天王の蒼の刹那・・・」
「キサマの過去を仲間に知られたくなければ、一人で築地まで来い。待ってくるよ、クワッサリー。」
それだけ言って、映像は途切れた。また静かな夜空が広がっている。
「マリア・・・」
大神が心配そうな顔でマリアを見つめた。
「大丈夫です、少尉。私があんな兆発に乗ると想いですか?」
マリアはそれだけ言って、帝劇内に戻って行った。
大神は、話すタイミングを外したな・・・と想い自室に戻ろうとした。だがそこへさくらが駆け寄ってきた。
「大神さん!大変です!!」
「マリアが一人で!?」
地下司令室に来た大神が聞かされたのは、マリアの単独出撃の事だった。大神は先程の事をあやめに報告した。マリアの事をクワッサリーと呼んで挑発した事を・・・
「そうね・・・。もう話しても良いかもね。」
あやめがマリアの過去のことを語り出した。マリアはロシア革命で活躍した兵士の一人であり、その時のコードネームがクワッサリー(火食い鳥)。革命運動の最中、マリアは恋人同然にまで慕っていた部隊長を、自分の援護の遅れから失ってしまったと言う。
それからマリアは人一倍、戦場でのミスに気を配っていたのだ。そして大神を責めたのは自分の過去と照らし合わせていたからであった。
「まったく水臭いぜ。古くからの付き合いだってのによ。」
カンナが言う。みなその言葉に同意する。
「マリアの救出に向かおう。」
大神の言葉に全員頷いた。
だが、事は遅かった。花組が築地に到着した時に見たのは、数機の脇侍の残骸と、小破した黒い光武。そしてマリア愛用のロケットだけだった。
捜索を続ける花組の目の前に、舵取りのいない船がやってきた。刹那が差し向けた物である。マリアを助けたくば、大神一人で来い・・・・そう言う事だ。
罠だと言う事は明らかだった。だが大神は行くしかなかった。そして、「マリアは必ず助ける」。「俺が戻らなければマリアを隊長にして花組を再編しろ」と言い残して、大神は船に乗った。
築地から少し離れた廃屋にマリアはいた。廃屋の奥に柱に貼り付けにされていたのだ。その前で刹那がナイフのような鋭い爪を舐めていた。
「よく来たな大神。」
「さあ!マリアを放せ!!」
すると刹那は笑みを浮かべた。
「いいよ・・・貴様の命と引き換えにな!!」
シュンッ───刹那の鋭い爪が大神の肩を切り裂く!!
「くっ・・・・」
大神の左肩に赤い物が滲み出る。
「少尉!私に構わず!!」
マリアが叫んだ。
「そうはいかない・・・・俺は花組の隊長だ。仲間を見殺しには出来ない。」
「でも・・・」
「マリア・・・・俺は甘いかもしれない。隊長失格かもしれないが、だがこれが俺に出来ることなんだ!」
「少尉・・・」
そのやりとりに刹那は苛立ちを感じた。
「面白くない・・・。かっこつけるのもいい加減にしろぉっ!!」
刹那の爪が今一度大神に迫った!!
「少尉っ!!」
ズキューンッ!!──一発の銃声が鳴り響いた。見れば刹那の爪が折られていた。
「だ・・・誰だ!?」
刹那があちこち見渡すが誰もいない。
「ここだっ!!」
刹那が声のする方を向いた。すると廃屋の抜けた天上の上に誰かが立っていた。
「人の過去を利用し、あまつさえ女性を人質にするとは・・・ふざけた奴だな。」
そこには拳銃を構えた警官が立っていた。
「だ・・・誰だ!?キサマっ!帝国華激団か!?」
「ふふふ・・・・まあ帝劇の協力者・・・・正義の助っ人だな!!いくぞっ!」
警官・・・・長船は袖をめくる・・・・変身だ!!
「天女降臨っ!!」
空から天女が舞い降り、長船の体を包む。神々しくも美しいシーンだ。そして次の瞬間には、警官の姿は消え、銀色の装甲を纏う戦士が現れていた。
「聖魔装甲・・・・ガルファー!!」
「くっ・・・貴様一人で何ができる。」
刹那が強がるが、ガルファーは慌てない。
「獣皇召喚!!ん〜ええい!全部召喚!!」
どうせなら・・・と言う事でガルファーは短剣と鏡に獣皇の宝玉全てはめ込み、獣皇を全部呼んだ。
築地の上空に虹がかかり、その虹の上を六匹の獣が駆けていた。
今回は、フェンリロウガン・ツキノワ・マンネンに続き、ドラゴロード(龍)・グランプリ(鷹)・そしてゴリ・ライモー(ゴリラ)全ての獣皇が勢ぞろいしていた。
「形勢大逆転ってとこかな?さらにぃぃ・・・」
突如、廃屋の壁が吹き飛んだ。そこにいたのは・・・・
「帝国華激団、参上!!」
四機の光武がそこにズラリと並んでいた。
「ど・・・どうしてここが・・・」
焦る刹那。
「こんなこともあろうかと、隊員の制服には発信機が付けてあるのんよ。」
と紅蘭。
「よくもマリアをいたぶってくれたな。百倍返しだぜ!」
カンナが闘志剥き出しだ。
「マリアはんの光武はまだ使えるよって、二人ともはよう合流しいや!」
「お・・・おのれ!!」
刹那はたまらず逃げ出し、自分の人型蒸気を召喚した。
「こうなったらまとめて片付けてやるっ!」
蒼角に乗りこんだ刹那は、多数の脇侍を召喚した。数には数で攻めようと言うのだ。
「雑魚は任せてっ!大神さんとマリアさんは刹那を!!」
さくら達が、脇侍を迎撃する一方で、光武に乗りこんだ大神とマリア、そしてガルファーが蒼角を迎え撃っていた。
「死ねっ!死ねっ!」
蒼角のトンファー攻撃が大神の光武を襲う。蒼角は図体に似合わず、機動力があった。マリアの射撃ですら回避してしまう。
「ははは!どうやらさっきの傷と破損で本調子じゃないようだな!」
あざ笑う刹那。その言葉は事実だった。大神は肩を負傷し、マリアの光武は小破している。劣勢は明か。
「くっ・・・・光武さえまともなら・・・」
マリアが毒つく。だが、この場での応急処置は不可能だ。現状で戦わなくてはならない。
「手負いの狼は強いぜ。」
大神の精一杯の皮肉だ。だが左肩の負傷で思うように光武が動かない。
そんな時だった。
「あ・・・・光武が・・・・」
マリアが驚いた。光武が完全な状態の輝きと動きを取り戻していたのだ。そして同じことは大神にも・・・・
「肩が・・・肩の傷が・・・」
癒えている。肩の傷が癒えていたのだ。
すると大神は見た。ガルファーの装甲が紫色になっていたのを・・・
「紫色は癒しの力なのか・・・・・。すごいな機械まで直すとは。」
当のガルファー本人が驚いていた。大神達を助けたい・・・・という感情が、ガルファーの新しい力を呼んだのだ。
癒しのパープルガルファーを・・・・
「ふっ。傷さえ治れば、アイツなど敵ではないな。一気に仕留めてやれ!」
ガルファーがそう言うと、近くにいた獣皇達が、何かを訴え出した。もちろん言葉に発している訳ではない。テレパシーのようなものだ。
「なに?獣皇武装?お前達が・・・・俺の武器になるのか?」
獣皇達はそう言ってきた。そして次の瞬間、獣皇達は光になり、その姿を変えた。
獣皇達は、それぞれの身体を6種類の手持ち用の武器へと姿を変えた。しかし、いっぺんに六つも武器が持てる訳は無い。だが、その心配をよそに、六つの武器は一つに重なり、いびつだが強力そうな剣になった。
ガルファーはその剣を手に取った。
「ほほう・・・。ヒーロー特有の合体武器か。いいじゃないの。」
剣を身構えたガルファーは、大神達に向かって叫んだ。
「俺が動きを止める!止めを刺してやれっ!!」
そして、ガルファーは蒼角の真正面に立った。キッと相手を見据える。
「破邪獣皇剣・・・・・・」
ぐるりと円月さっぽうよろしく、剣を回す。
「悪鬼殲滅斬りぃぃぃぃ!!!」
斬ッ!!
この一刀で、蒼角は左半身を寸断された。その隙を大神とマリアは見逃さない。
大神の光武が刀を頭上に掲げる。すると二本の刀の間にエネルギーが発生した。
マリアの光武がそのエネルギー目掛けて発砲!!
「ゾロティ!ボロータッ!!」
大神とマリアが同時に叫び、金色の霊子弾頭が蒼角を撃ち抜くぅ!
「そ!そんなあああああ!!!」
刹那の絶叫と共に蒼角は爆発した・・・・・
夜が明けた。大神達は光武を降り、マリアを囲んでいた。マリアは明るい表情をして大神を見ていた。
「大神少尉。貴方は私達花組の隊長です。」
それは大神にとって、なによりの誉め言葉であった。
そして大神はマリアにロケットを返し、朝日を見つめていた。
「じゃあ、いつものやりましょうか!」
すると、ガルファーの装甲がピンク色になった。
「あっ、備前さん照れてる。」
さくらが笑った。
「感情が現れやすい正義の味方だな。」
カンナがそう言うと、全員からどっと笑いがこぼれた。
「じゃあ、いくわよみんな!」
「勝利のポーズ・・・きめっ!!」
朝日を浴びて、花組とガルファーは輝いていた・・・・
その頃・・・・とある山中。
「兄貴、朝飯できたっスよ。」
金串にキノコを刺して焼いていたアドンだ。隣のサムソンは山菜を炒めていた。
「ううう・・・こんな生活してるのって、この辺じゃあオラ達ぐらいダスね。」
「そっスね・・・・」
「うううう・・・・朝日が憎いダス・・・。」
次回予告
太正時代にやってきたのは、セツナやサイバーナイト達だけでは無かった。肉体に機械を埋めこんだ、無敵のサイボーグ二人がその姿を現す!!
そして、帝劇内に黒之巣会が侵入!あやうし帝国華激団。サイバーナイト対霊子力装備出動だっ!
そしてガルファーの新たな力、守りのグリーンガルファー参上!放てベアーキャノンッ!
次回 サイバーヒーロー作戦 第六話 「魚屋と女子高生。危うし大帝国劇場!」
太助「本業は魚屋なんだよ。」 キャピ子「現バレー部でえ〜す。」 長船「本当にサイボーグ?」