第4話 「対決!華激団VSサイバーナイト」
「帝国華激団参上!!」
煙幕と共に現れた四体のロボット・・・・。人型はしているが頭部は無く、全体的にずんぐりとした印象をしている。人間同様の手足を持ち、そこにそれぞれ武器を携帯していた。
ロボット達は、二つの横レール式のカメラを動かし、目標を確認していた。
「なんでしょう・・・。あのロボット達は・・・」
セツナが長船に尋ねた。
「解らない・・・・、だが勾玉が反応している。俺と・・いや俺達と関係している事は確かだ・・・」
やがて、四体のロボット達は戦闘を開始した。それを確認してか、待機していた軍人達が、周囲の民間人を避難させ始めた。
「セツナちゃん、こっちだ・・・」
長船はセツナの手を引き、近くの茂みに身を隠した。
「なんで隠れるんですか?」
「避難したら、あのロボット達・・・帝国華激団とか言ったかな?その活躍が見れないだろう?」
長船は不敵に微笑んで、じっと帝国華激団の戦いを見ていた。勾玉が反応している所を見て、自分と関わりを持つ事は間違い無い。それを見極めなければならない。
「少尉。以後の指揮を少尉に一任します。」
片腕が機関砲になった黒いロボットから女性の声がした。それを聞いてか、少尉と呼ばれた二刀流の白いロボットが了解したようなそぶりを見せた。
「なるほど・・・、あの白い奴と黒い奴が指揮官機らしいな。」
黒いロボットから指揮を引き継いだ白いロボットが、残りの二機に向けて指示が出しているのが解った。
「でも、どうして最初から黒いのが指揮しないんでしょう?」
セツナが尋ねる。確かに最初から黒い機体が指揮していれば、指揮の現場引継ぎなぞしなくても済む。
「俺の予想なんだが、白い奴・・・今日が初陣なんじゃないかな?それで黒い機体が、補助してるんだよ。」
「つまり・・・新人指揮官って事ですか?」
セツナの言葉に長船は頷く。確かに白い機体の指揮は的確だが、どこか初々しい印象を見せている。
だが、四機のロボットは次々と怪ロボットを撃破していく。白い機体の指揮によく従っている。
ピンク色の機体が、怪ロボットを撃破した。
「大神さん!すばらしい指揮です。」
「ありがとう、さくら君。あと少しだ、すみれ君左翼を任せる!」
「了解ですわ少尉。」
紫色の機体が左へ廻りこむ。
「マリア、俺が突っ込む!援護してくれ。」
「了解。」
大神と呼ばれた白い機体の指揮の元、帝国華激団は、怪ロボットを倒して行く・・・。その様子にセツナは息を呑んだ。
「凄い・・・・。ん?長船さんどうしたんですか?」
セツナが隣の長船を見ると、長船は小枝で地面になにか書いていた。
「ふんふん・・・。白が大神少尉・・・・、ピンクがさくら・・・紫がすみれ、それで黒いのがマリアっと・・・」
そう呟きながら、長船は地面に文字を書いていた。会話の内容から、パイロットの名前を割り出したのだ。
「それが・・・あの人達の名前ですか?」
「ああ・・・、もしかしたら憶えておく必要になるかもしれないからね。おっ!そろそろフィニッシュのようだぞ。」
戦いの様子をじっと観戦していた長船が、にやっと笑った。青い着物を着た美形の侍のような男が操る黒いロボットに、ピンク色の機体が武器である日本刀を振りかざした!
「破邪剣聖・・・桜花ほうしぃぃぃんっ!」
ピンク色の機体・・・・、会話の内容から、さくらと言う女性の必殺技が炸裂した。日本刀からピンク色のエネルギー弾のようなものが発射され、怪ロボットを破壊した。
「へえ・・・やるじゃん。」
長船が呟いた。破壊された怪ロボットから、青い侍はどうやら撤退していったようだ。
「凄いですね。」
「ああ・・・」
すると、四機はなにか話し合っているようだ。長船とセツナが何を話しているんだろう?と思っていた時、華激団の機体の真正面の装甲が展開した。そしてそこから四人の男女が降りてきた。
「あっ!あの二人は・・・」
長船が思わず声を出してしまった。白い機体とピンク色の機体から降りてきた男女は、長船が上野公園で偶然見た二人だったからだ。
「そうか・・・あの二人が・・・」
「知ってるんですか?」
「昨日・・・ちょっと見かけたんだ・・・」
そう言い、残りの二人を見つめた。紫色の機体からは気の強そうなロングヘアーの美人。黒い機体からは金髪が美しい白人女性だ。
そして、さくらと言う女性が、唯一の男性・・・大神少尉に声をかけていた。なにかこれからやる気なのだろうか?
「勝利のポーズ・・・・決めッ!」
四人はポーズを決めて微笑んでいた。それを見て長船とセツナは苦笑した。
「何でしょう・・・あれ?」
セツナが長船に尋ねる。
「カーテンコールみたいなものかな?戦い終わる度にやるのかも・・・」
「大神さん、御疲れ様でした。」
さくらが笑顔で大神に言った。
「さくら君こそ、御疲れ様。ふう・・・・勝てて良かったよ。」
大神は額の汗をぬぐった。それを見て白人女性・・・・マリアが声をかけた。
「初陣としては上出来です、大神少尉。ですが私はまだ貴方を隊長として認めた訳ではありません。」
マリアは淡々として言った。
「貴方が隊長としての力量があるかどうか・・・・それを見極めてから、隊長と呼ばせていただきます。」
マリアの言葉は大神をまだ信頼していない事が現れている。だが大神は当然だと解釈した。何せ自分は今日が初陣であるし、仲間となるメンバーの事を何も解っていないのだから。
「ああ・・・解ったよマリア。」
大神はそう答えた。
「さあ、早く引き上げましょう。わたくし、さっさとシャワーを浴びてさっぱりしたいですわ。」
紫色の服を着た女性・・・すみれは髪をかきあげて言った。その意見には大神も賛成だった。初陣からの緊張で汗だくなのだ。
「早く戻って御花見にいきましょうよ!」
さくらがせかすように言うと全員が微笑んだ。
「ふう・・・初陣としちゃ上出来かな?」
陸軍の軍服を着た初老の男が、指揮車と見られる装甲車の中で呟いた。肩に階級章が見える。それは陸軍中将のものだった。
指揮車の中はレーダーやモニターが多く搭載されていた。そのモニターの一つを中将は見ていたのだ。安堵の息を漏らした。
「かすみぃ・・・、臨戦態勢解除だ。警戒態勢に移行しろ。」
中将は指揮車の中にいた三人の女性のうち、リーダー格と見られるロングヘアーの女性に声をかけた。
「了解です、米田司令。指揮車より全光武へ、臨戦態勢解除。警戒態勢へ移行します。」
かすみは、無線に向かって言った。それを聞いてか、モニターの中に映る四人は復唱した。
「(まあ・・・今回ぐれえで苦戦するようじゃあ、正直厳しいぜ・・・。俺の雇った『例の連中』の力も必要になるな・・)」
米田司令は心の中で呟いた。そして撤収支持を出そうとした時、三人の女性のうちショートカットの女性が叫んだ。
「霊子レーダーに反応!!数多数!来ます!」
「なんだと!黒之巣会か!?」
米田は女性に向けて、叫んだ。
「違います!反応が脇侍のものとはまるで違います!接触まで30秒!」
その報告に米田ははっとした。
「『奴等』だ!畜生、こんな時に!大神に繋げ!敵襲だ!」
「う・・・なんだ?悪寒が・・・」
長船は突然悪寒に襲われた。見ればセツナも同様に震えていた。
「お・・・長船さん・・・何かが来ます・・・」
「(セツナ!しっかり!)」
セツナの震えようは、長船にも理解できるものだった。昨日、降魔が現れたときも同じように感じたからだ。
「鬼が・・・時鬼がくるのか・・・」
「大神!花見は後回しだ!敵が来るぞ!」
無線から米田の声が響く。
「敵?黒之巣会の増援ですか?」
「違う!別の敵だ!すぐ現れるぞ!気をつけろ!」
大神が「了解・・・」と言いかけた時に、それは現れた。
「な・・・なんだ!こいつ等は!!」
大神達四人の目の前に現れたのは、身の丈2m半はある、醜い魔物・・・・時鬼だった。
「ガアアア!!殺ス、人間ハ、ミンナ殺スゥゥ!!」
時鬼はしゃがれた声で、大神達に向けて叫ぶ。大神達は時鬼の容姿に恐怖を感じた。
「よ・・・米田司令・・・。こいつ等はなんなんですか。」
すると米田は、声を低くして無線に話し掛けた。
「大神、よく聞け。そいつ等は数年前から帝都・・・いや日本全土に突如現れた魔物だ。いや・・鬼だ。」
「鬼・・・・」
大神ではなく、さくらが答えた。確かに鬼そのものの容姿だ。
「正体は軍部でも掴めていない。そいつらは黒之巣会とは無関係のようだが、同様に日本に恐怖を与える奴等だ。黒之巣会と違うのは、通常の武器でも倒せるって事ぐらいしか解ってねえ。」
「つまり・・・我々でなくても戦えると。」
答えたのはマリアだ。
「そうだ。だがべらぼうに生命力が高くてよ。よっぽどの重武装で無いと太刀打ちできねえ。」
「では、やはりわたくし達じゃなければ無理・・・と言う事ですわね・・・」
すみれが軽口を叩くが、表情は真剣その物だ。冷汗も流れている。
「そう言う事だ。大神!気をつけろよ。」
「了解・・・」
大神の手にじわりと汗がにじんでいた。
「出やがったな・・・・。俺の出番だ。」
長船は袖をめくった。露になる手甲。
「セツナちゃんは、ここで待っていてくれ。奴等は降魔より強い・・・。いくら嘩燐が守ってくれるとはいえ、君には荷が重いかもしれない。」
そう言って長船は立ちあがった。そしてキョロキョロと辺りを見渡している。
「どうしたんですか?周りには誰もいませんよ。」
セツナの言う通り、周りには誰もいない。変身する所を見られない為の場所でも探しているのだろうか・・・とセツナは思っていた。だが、長船は全く別のものを探していたのだ。
「高い所・・・高い所・・・・」
長船は高い場所を探していたのだ。華激団と鬼達を見渡せるぐらいの高い場所を・・・
そして目的の場所は見つかった。丁度よく、おあつらえ向きの建物があったのだ。
「あそこの屋根がちょうどいいかな?よし!」
長船はその場でポーズを取った。変身だ!
「天女降臨!!」
「ああっ!!」
鬼の攻撃でさくらの機体・・・光武が弾かれるように倒された。爪の攻撃で光武の装甲にはっきりと傷跡が出来ていた。
「大丈夫か!さくら君!」
大神がすかさずアシストに入るが、劣勢は拭えない。
「はい・・・なんとか。でも頑張ります!」
さくらの光武はよろよろと立ちあがり身構えるが、機体のあちこちから火花がほとばしっている。すみれやマリアも同様だ。
「くそっ・・・このままじゃ・・・」
大神は焦りを感じ始めていた。そしてそれは指揮車の米田も同様だ。
「まずいぞこりゃ・・・」
モニターには劣勢を強いられている四人を見て拳を握り締める。全滅するのも時間の問題だ。
「司令!マリア機、残弾残り僅かです。」
「陸軍の部隊が到着するには時間が・・・」
次々に飛ぶ、悲痛な報告に米田は目を見開いた。
「通信を開け。相手は花小路伯爵だ。」
「は・・・はい!」
慌てて通信機の準備をする女性三人。
「(もう・・・連中の手を借りる事になるとは・・・)」
そして米田が通信機を受け取ろうとした時であった。
「ハハハハハハ!!!!」
突然、周囲に高笑いが響いた。その出来事に華激団どころか時鬼達も驚いていた。
「誰だ!誰が笑ってるんだ!?」
米田をモニターを凝視する。
「司令!上です!四時の方向の建物の上です!」
ショートカットの少女が叫んだ。米田がモニターを覗きこむと、そこには確かに建物の上に誰かが立っていた。
「なんだ・・・アイツは・・・」
「誰ですの?こんな状況で高笑いしているのは!」
すみれが怒鳴り、建物の上を見上げた。
「すみれさんみたいですね。」
危機的状況にも関わらず、さくらが冗談を飛ばす。
「さくらさん!冗談は時と場合を考えなさいな!」
だがそんな二人のやり取りを無視して、大神の目は建物の上に立っている者に集中していた。
「誰なんだ・・・」
「(ふんふん・・・時鬼の数は残り五匹か・・・解った。にしても・・・)」
ガルファーに変身した長船が高い所に登ったのは、敵の状況を知るためだった。高い場所から周囲の環境や敵の数などを把握するのだ。
勿論、理由はそれだけではない。
「(ふふふ・・・見てる見てる・・・。いいぞぉ、やっぱヒーローは高い場所にいて注目されなきゃな。)」
これが本心。建物の影に隠れていたセツナが呆れているのが解る。
「断罪さんと、おんなじ事考えてたんだ・・・・」
そうとは知らず、長船・・・いやガルファーは鬼達に向けて人差し指を突きつけた。
「貴様等のような醜い鬼どもに、美しい帝都に居場所は無い!」
ガルファーはポーズを決めて言いきった。
「この世に生きる全ての命の為、貴様らを根絶やしにしてやる!」
すると、鬼達が言い返した。
「ギシャアア・・・。貴様・・・アノ時ノ・・・・」
鬼達の言った言葉は恐らく先代の事を示しているのだろう。だが構わずガルファーは叫んだ。
「憶えていたようだな!ならば地獄への土産に憶えておけ!」
そう叫び、またポーズを変えた。腰を落し、歌舞伎の見栄のようなポーズを取った!
「聖魔!装甲!ガルファー!!」
「(決まったぁぁぁ!!これだよ、これ!やっぱヒーローの登場シーンはこうでなくっちゃ!)」
長船は心の中で狂喜した。思わず目元が緩む。
「(よぉ〜しっ!決めた。次からはずっとこれで通そう。)」
すこぶる自己満足したガルファーは建物の上からジャンプした。そして、そのまま着地地点にいる鬼目掛けて右足を突き出した。
「ガルファー!!彗星キッィィィクッ!!」
そして・・・・ガルファーの登場シーンを見ていた人物は、実はもう一組いたのだ。
「ちくしょ〜ダス〜!先越されたダス〜!!」
長船と同じ宿に泊まっていた筋肉三人組だ。その中で、アニキと呼ばれた頭にリングをつけた男が悔しがっていた。
「あ・・あの登場シーンは、オラがやろうと思っていたのに〜」
「まあまあ・・・イダテンのアニキ。わし等はまだ表舞台に立つ訳にはいかんのですから、ここは押さえて。」
「そうですぜ。アドンの言う通り。」
スキンヘッドの筋肉男二人がなだめる。
「そうなんダスけど・・・やっぱねえ・・・」
イダテンと呼ばれた男は、鬼達を相手に一歩もひるまず戦っているガルファーを見ていた。
「男としては、あ〜ゆ〜感じに目立って戦いたいもんダスよ。」
そう言い、次々とポーズを繰り出すイダテン。
「そおっスね。ワシらも実の所を言えば・・・のうサムソン。」
「おうよアドン。」
アドン・サムソンの二人も次々とポーズを取る。やはり目立ちたいのだ。だが隠れている状況で、その行動は、別の意味で目立っていた。
「ん?あそこにも敵が!」
すみれが近くの茂みが激しく動いているのに気付いた。すみれの額に冷汗が流れる・・・。茂みの中から襲いかかる気ではと・・・
「先手を取られてたまるもんですか!!」
すみれの光武が薙刀を構えて、茂みに突っ込む。
「くらいなさい!!」
そして茂みに向けて薙刀一閃!だが・・・
「・・・・・・・・」(すみれ)
すみれが見たのは鬼ではなく、裸に近い格好をした筋肉男三人が、ポーズを決めている所であった。
「・・・・・・・・・・」(イダテン)
「・・・・・・・・・・・」(アドン&サムソン)
三人は声を失い。目の前の紫色の光武めがけてポーズを取る事しか出来なかった。
「お・・・オラ達の筋肉をカツモクして見よ・・・ダス・・・」
シャキン──
薙刀が輝いた。そして・・・・
「いやぁぁぁぁぁ!!!変態ぃぃぃぃ!!」
すみれ大絶叫!薙刀を三人目掛けてブンブン振り回す!
「ぎええええ!!」
すみれの光武の突然の攻撃に、三人は慌てて逃げ出した。
「なんなんダスか〜!あのナギナタ女は〜!」
「アニキ!ここは逃げるッス〜!!」
三人は、一目散に逃げ出した。
「はあああ!!!」
ガルファーが低い声を出し、深く呼吸するとガルファーの銀色のボディが赤く染まった。
「怒りの具現化・・・レッドガルファー!!」
ガルファーは、長船の感情によりその装甲の色や能力を変える・・・・。時鬼達に怒りを感じていた長船の感情に装甲が反応し、怒りの形態レッドガルファーに、その姿を変えたのだ!
「怒りの赤は、炎の赤・・・食らえ!」
右の拳を握り締めると、拳から炎が吹き出した。そしてその炎の拳を鬼に目掛けて放つ!
「ガルファー!ナパームパァァァンチッ!」
パンチを食らった鬼は、まさにナパーム(焼夷弾)を食らったように燃え上がり、そして爆発した。
「残り4匹!怒りの弾丸、ファイヤーリボルバー!!」
上野公園は華激団が戦っていたおかげで、結構被害が出ている。ここで銃を使っても支障は少ない。瞬時に腰を叩きリボルバーを取り出し、鬼めがけて放つ。
弾丸はいつもと違い真っ赤な炎を渦巻いている。たちまち2匹の鬼を倒す。
だが、ガルファーはそこで次の手を、躊躇してしまう。なぜなら残り2匹の鬼は、華激団と戦っており、迂闊に手を出せない。
「こうなったら・・・獣皇の出番だ!」
長船は手鏡と緑色と黄色の宝珠を取り出して、頭上に掲げた。
「獣皇召喚!!」
そして虹を渡ってやってきたのは、以前呼び出したフェンリロウガン同様のメタリックボディを持つ、緑色の亀と黄色の熊だった。
「『マンネン(亀のことらしい)』に・・・『ツキノワ(熊のことらしい)』か・・・よし!いくぞ!」
その命令を待っていた・・・とばかりにマンネンは後ろ足を甲羅の中へ引っ込め、そこから物凄い勢いでジェット噴射を起こした。
そして、物凄いスピードでさくらの光武に襲いかかっていた鬼に体当たりを浴びせる。吹き飛ばされる鬼。
そして口から次々と火炎弾を放つ!
ツキノワも負けてはいない。マリアの光武と戦っていた鬼に前足で強烈なパンチを浴びせる。鬼の態勢が崩れた所に前足のパンチの連激が走る!
「こ・・この熊と亀は・・・」
突然現れた熊と亀に助けられた華激団は、呆然とガルファー達の戦いに見入られていた。
「なんて・・・強いんだ・・・」
大神は呆然と呟いた。そして華激団の目の前で、ガルファーが剣を取り出した。
「トドメだ!!ファイヤー三連だぁぁぁんっ!」
最後の鬼目掛けて、ガルファーの炎の必殺技が炸裂した。
戦いは終わった。時鬼の亡骸や怪ロボットの残骸が散乱する上野公園に、ガルファーはじっと光武達を見つめていた。
「貴方は・・・一体・・・・」
さくらがガルファーに話し掛けた。
「俺は、正義の味方だ。今言えるのはそれだけだ。」
長船には帝国華激団が何者なのか解らない。だから、あまり言葉をかけなかった。
「また会おう・・・。次会う時は、あんた等の味方だ。じゃあな・・・」
ガルファーはそう言ってジャンプし、素早く立ち去った。
「月組!奴を追え!」
米田が通信機に向かって叫んだ。それが何を意味するのかは、同乗している三人娘には解らなかった。恐らく尋ねても米田は答えまい。
「ふう・・・一暴れしたら腹が減ったよ。セツナちゃん、牛鍋でも食べに行こう。」
変身を解いた長船がセツナと合流し声をかける。
「いいんですか?あんな事言っちゃって・・・」
不安げに長船を見つめるセツナ。
「ああ・・・。彼等が何なのか、それを突き止めてから接触しようと思う。」
歩きながら長船は言った。
「明日はその辺りを調べよう・・・。まっ!今は晩飯だ!」
それから数日が過ぎた・・・・
銀座の一等地に巨大な洋風の建物があった。『大帝国劇場』・・・・帝都市民に、笑顔と感動を与える劇場・・・。そして、帝国華激団の本部でもあった。
勿論ここが華激団の本部であると言う事は、民間には知られてはいない。
華激団の戦闘はあれから何度かあった・・・。だがそれらは黒之巣会との戦闘であり、鬼は現れなかった。勿論ガルファーと名乗った正義の味方の姿も・・・・
「ふう・・・・・」
帝劇内の自室で、すみれは一息付いていた。華激団の隊員・・・さくらやすみれ達、光武の搭乗者は普段は帝劇内では、舞台女優として活躍している。
すみれは今日の舞台稽古を終え、休もうとしていたのだ。
「さあ・・・休みましょう・・・」
もう時刻も遅い、すみれは就寝に付こうと服を脱ぎ出した。
「アフゥゥゥン!!」
深夜の帝劇近くの道で、スキンヘッドの筋肉男が腹部を押さえて奇妙な悲鳴を上げていた。
「アニキィ!腹減ったッス!腹減ったッスぅ〜!!」
「こっちまで腹減るから、口に出して言うなっダス。」
例の筋肉三人組、イダテンとアドン&サムソンだ。実は三人は持ってきた資金が底をつき、ここ数日まともに食事を取っていないのだ。
「アニキ・・・あっしが死んだら・・・。あっしが死んだら・・・・。」
道端に倒れたアドンが断末のような声を出す。
「タンポポの咲くあぜ道の脇に埋めてくだせぇ・・・。秋になったらタンポポが咲き乱れて・・・綺麗ですぜ・・(ポックリ)」
「タンポポは春ダス。」
倒れたアドンを無視したイダテンだが、自分も不意に立ちくらみがして倒れてしまった。
「アニキィ!だいじょっぶスかっ!」
「オラも腹へって、立ちくらみが・・・・」
イダテンはよろよろと立ち上がり、二人のほうへ向いた。
「もうこうなったら!泥棒に入るしかないジャンッ!」
「・・・・正義の・・・味方・・・」
アドン&サムソンが一応自分達が正義と言う事は自覚しているらしい。
「だって身分明かさなきゃ働けないないダスし、それにオラ達はこの世界の住人じゃないダスし、そんな事したら敵に見つかるかもしれないだすしィィィ!!」
「ともかく!もうカネを手に入れるためにはコレしか手段がないダス!」
「でも・・・正義としては、それはマズイんじゃあ・・・」
するとイダテン、二人の肩を抱き、言い知れぬ表情でささやく。
「正義を行なうためには、多少の悪事は仕方ないダス!『大事の前の小事』!!」
「うふふふ・・・。せっいぎの為ならあったりまえ♪あったりまえ〜♪」
「アニキが壊れていくゥゥゥ」アドン&サムソン(号泣)
そして三人は帝劇にやってきた。人気のある劇場ならば、金もあるだろうとふんだのだ。三人は二階に窓に注目した。
「あの辺りが今週のオススメ的ダス。」
イダテン顔にやける。
「ではっ、行くダス!アドォォンッ!
号令に従い、アドンが配置につく。
「マッスル!ラダァァ(筋肉ハシゴ)!SET・UP!!」
さらにサムソンがアドンの上に飛び乗る!
「合体!マッスルラダァァァ!!完ッ・成ッェェ!」
それは、アドン&サムソンの肉体を利用した、筋肉のハシゴの完成である!!
「そしてェェェ!!」
イダテンがマッスルラダーを駆け上り、二階の窓を目指す!だがっ!
ガシィィッ!──突然、イダテンの片足が掴まれた!
「何をしている!何をォォォ!!!」
イダテンの片足を掴んだ人物は怒りの形相で、イダテンをブンブン振りまわす!!
「ふんっ!」
イダテンはそのまま、近くの建物の壁に叩きつけられた。
「あああっ!ベンテンの姐さんっ!」
アドン&サムソンが、一斉に土下座する。目の前にいたのは、美しいロングヘアーと均整の取れたナイスバディ。そして白い羽衣を纏った女性だった。黙ってみていれば美人で、まさに『天女』と言うに相応しい外観だが、無茶無茶キツイ目がそれらをぶち壊している。
「気になって見に来たら、なにをやってんだい・・・。何をォォ。」
ベンテンは両の拳を鳴らす。
「実は、かくかくしかじかでェェ〜!」
泣きながら弁明するアドン&サムソン。
「金ェ〜?」
「だからと言って、してイーコトと、悪いコトとの区別ぐらいしなっ!」
アドンの頭を踏みつけながら、怒るベンテン。
「それを踏まえた上で、アネさん金貸してくだせェェェッ!カネェェェ!!」
アドン&サムソン、号泣しながら大絶叫!!
「・・・わかったよ。ちょっと待ってな。え〜と・・・」
ベンテンは自分の財布を開いた。
開いた財布からはパラパラと埃しか出なかった・・・・
「・・・・・・・(汗)」ベンテン
「・・・・・・・・」アドン&サムソン
「正義を行なうにもカネがいるんスよアネさんっ!!『逆もまた真なり』ッス!!」
アドン吠える。
「ドロボウしか無いッスよォォ!!今週のオススメッスよォォォ!!」
※(良い子も悪い子も、真似しちゃダメだぞ!)
そして・・・・再度合体構築されたマッスルラダーを登るイダテン&ベンテンの姿があった。
「なんで、アタイがこんな事・・・・(泣)」
ベンテンが泣きながらマッスルラダーを登る。
「つべこべ言わないダス。」
そして、目的の窓にたどりついた時であった・・・・
「あっ・・・・」
イダテンが見たのは、着替え中のすみれであった。
そしてすみれも・・・・
「い・・・・・いやあぁぁぁぁぁ!!バカ変態Hぃぃぃ!!」
大絶叫!そして手近の薙刀を掴み、窓の外に見えるイダテン目掛けて振りかざす!!
「う・・うわっ!見つかったダス!!」
正義のピンチだ!
「べ・・ベンテ・・・ああっ!」
イダテン見捨てて、ベンテン素早く逃げる!!
さらにイダテン、バランスを崩して地面へ落下!もつれてアドン&サムソンも!マッスルラダー崩壊っ!
「痛てて・・ダス。今の声はこないだのナギナタ女とおんなじ声ダス・・・」
「どうした!?すみれ君!」
「すみれさん!何があったんですか!?」
「すみれ!返事なさい!」
「すみれはんっ!」
「すみれ〜!」
自室のドアの外から、皆の声が響く。だがすみれは聞いてはいない。はあはあと呼吸を荒げ、肩で息をしていた。
だが!その時、劇場内に警報が鳴り響いた。
「出動!?」
すみれは慌てて、表情を元に戻した。
帝劇地下・・・・華激団司令室では、ブリーフィングが行なわれていた。
既に戦闘服に華激団のメンバーは着替えて、出撃態勢を整えていた。見れば緑色の戦闘服を着た眼鏡の少女も加わっている。
「今回の相手は黒之巣会ではない。鬼だ。」
米田の口から出た言葉にメンバー全員が、息を飲んだ。上野公園で戦った、あの異形の鬼どもが現れたというのだ。しかも米田の言葉によると、今回は大量に出現しており、民間人はもとより、陸軍・警察にも多数の犠牲者・負傷者が出ているという。
いくら黒之巣会とは違い、通常兵器でも戦えるとはいえ、やはり魔の者・・・・。その戦闘力は凄まじい。そこで華激団に出動要請が出たのだ。
「帝国華激団、花組!出動!」
米田の隣にいた、女性副指令が出撃指示をだした。
「!!」
宿で眠っていた長船は、突然目が覚めた。見れば勾玉が輝いている。それだけではなく、なにか本能的な感覚が自分を呼んでいた。
その瞬間、長船の部屋にセツナが飛びこんできた。既に服は着替えている。どうやら察知能力は長船より優れているようだ。
「長船さん!華麟が・・・」
「解っている!行こう!!」
長船は、とりあえず服を着て宿を飛び出した。
「うっ・・・・」
あまりのおぞましい光景にさくらが口元を押さえた。
出動した地域は、鬼どもに蹂躙されていた。恐らくここに住んでいたであろう人々の亡骸が無残な姿で散乱していた。すみれが目をそむけ、眼鏡の少女・・・『李紅蘭(りこうらん)』が泣きそうな表情をしているのに、大神は気付いていた。
「ギシャアァァ・・・・マタ獲物ダ・・・・」
近くで、陸軍の兵士の死体を貪り食っていた鬼が五体の光武のほうへ向き、口を開いた。
「隊長・・・攻撃指示を。」
マリアが冷徹な声で大神に進言する。大神はオオッ!と強く頷いた。怒りを感じているのだ鬼達に・・・
「いくぞォ!!」
五体の光武が、鬼達に向けて突進して行った・・・・
ブロロロロ──夜の帝都をバイクが走っていた。長船の愛車だ。長船の後ろにはセツナがしっかりと掴まっている。
「天女降臨!」
バイクにまたがったまま長船は叫ぶ。すると次の瞬間には長船ではなくガルファーがバイクを運転しており、さらにバイクまでガルファーに合わせるように変化していた。
これがガルファー専用バイク『ガルファー号』だ! ?!名前がダサイ?気にするな!
「飛ばすぞ!」
「くっ!大丈夫か紅蘭!」
大神が緑色で、肩に何基ものミサイルポッドを装備した光武に呼びかけた。紅蘭の機体は、後方支援用に調整されているのだ。
「だ・・・大丈夫や、大神はん。けど・・・」
紅蘭が目の前の鬼達の数に圧倒されかけていた。恐らく三十匹以上はいる。幾ら倒してもきりが無い。
「とにかく、紅蘭とマリアは後方へ廻ってくれ!すみれくん、俺の後ろについてくれ。相手との距離を取りたい。さくら君は、マリア・紅蘭機を敵に近づけさせるな!」
「了解!」
だが、戦況はどう見ても不利・・・・。大神はその後どうすればいいのか検討もできなかった。
「マズイな・・・。」
指揮車の中で米田が呟いた。
「敵の数が多すぎやがる・・・。しかもこちらは鬼達の情報が無さ過ぎる・・・」
「どうします、司令。」
女性副指令が尋ねた。米田は通信機を手に取った。それを何を意味するのか副指令には解った。
「かすみ、伯爵に繋いでくれ・・・・大至急だ」
「は・・はい!」
かすみは慌てて、通信機のチャンネルを操作した。
「伯爵・・・・『例の連中』・・・ええ、ブレイド君達の手を借りる時が来たようです・・・」
都内某所・・・・帝国華激団創設に、大きく携わっていている花小路伯爵の邸宅があった。
その書斎にて、伯爵は米田からの通信を受けていた。
「ああ・・・了解した米田君。任せてくれたまえ・・・二十分・・・いや十分で増援をよこす。」
伯爵が通信を切ると同時に、書斎に一人の男が入ってきた。知的な風貌だ・・・実業家といっても通用するだろう。見かけも若い・・・どう見ても二十代後半にしか見えないが、本人曰く三十八才だそうだ。
「・・・出動命令ですか。伯爵。」
男が尋ねた。
「ああ・・・そうだ。外に陸軍の輸送中隊が待機している。十分で現場に向かって欲しい。」
男は胸の前に曲げた右腕を持ってきた。これは男の『了解』という意味だそうだ。
「頼んだぞ・・・ブレイド君・・・」
男は「信頼は裏切りません」とだけ答えた。
信頼・・・・それが男にとって最も重要な言葉であった。
「大神ぃ!援軍が来る!あと十分だけ持ちこたえろ!」
米田が無線に向かって叫んだ。大神から、「了解」としか返事が返ってこなかった。やはり消耗が激しいのだ。
「援軍ですって!?わたくし達以外に、こいつ等と戦える戦力があるんですの?」
すみれが驚くような声をあげた。
「そないな戦力があったやなんて・・・」
「初耳ですね・・・・。ですが、本当に使えるんですか?その増援は・・・」
マリアが銃を乱射しながら口を開いた。
「安心しろ!プロだ!マリア、おめえよりもな・・・」
米田がにやりと笑いながら言った。
「ついた・・・・・。わあウジャウジャいやがるぜ。こりゃ獣皇全部呼ばなきゃな・・・」
現場に到着したガルファーは手鏡と短剣を取り出して、六つの宝珠全てはめ込んだ。
「長船さん、早く!このままじゃあの人達が!」
セツナが苦戦する華激団を見て訴える。
「勿論だ!見捨てるつもりは無い!いくぞ獣皇召・・・」
「そいつは待った!」
いきなりガルファーに向けて声がかかった。見ればこちらに向かって白いスーツを着た青年が歩いてきた。
「探したぜ・・・。アンタがあの時の自称『正義の味方』だな?」
スーツの男がガルファーに向かって言うと、ガルファーの装甲が僅かに赤くなった。
「おっと・・・気分を害したようなら謝る。確か・・・怒ると赤くなるんだよな?『怒りの具現化』とか言ってたし、この分だと悲しくなると青くなるんじゃないのか?」
「貴方・・・誰なんですか?」
セツナが尋ねると、長船がスーツの男の前に来た。
「帝国華激団の、諜報部員か?」
すると男は微笑し頷いた。
「ところで、何故止める・・・。味方を見捨てるのか?それとも試練でも与える気なのかな?」
するとスーツの男はニヤリと笑った。
「試練か・・・良い言葉だが違う。増援を呼んだんだ・・・、もしかしたらアンタにも関係しているかもしれないね・・・」
戦場に光線が迸った!青い光が次々と鬼たちを貫いて行った・・・・
「これが・・・援軍・・・」
マリアが呆然と呟いた。彼女の黒い光武の横を、次々と人型の何かが通りすぎ、鬼達に攻撃を仕掛けている。
「す・・・凄い・・・」
大神が驚嘆する。
光武のように機体統一はされていないものの、見事なチームプレーで鬼達を倒して行く。
「人型蒸気・・・・違う・・・もっと洗練されとる・・・。なんなんや・・・なんなんや・・あれ・・・」
紅蘭の興味は人型へ向けられている。
人型の物体・・・・、大きさは2m程から3m近く迄様々・・・。光武と違い、完全な人の形をしていた。
装備している武装も凄い・・・。小型の銃から大口径の大砲・・・ミサイルまで装備されていた。
「司令!あの光武のような機体から通信が・・・」
米田は、「やっとか・・・」と呟き、通信機を手に取る。
「待ってたぜ。コマンダー・ブレイド。」
すると、通信機から男の声が聞こえてきた。
「どうもお待たせしました。ジェネラル(将軍)・米田。」
「時給の分、しっかり働いてくれ。それとお前さんがたの実力、大神達に見せてやってくれや。」
「了解。ジェネラル・米田」
「クレインとヴィンドは左翼へ廻れ。敵を追いこむ。シャインとニジーナは花組の護衛に!」
『了解!』
青と白で塗装された機体から味方機へ指示が飛ぶ。赤で塗装された大型で大口径の大砲やミサイルを搭載した機体二機が左翼へ廻りこむ。そして大神達を守るように、黄色に近いオレンジ色で塗装された機体二機が大神達の前に来た。
「大丈夫ですか?大神少尉。」
オレンジ色の機体が大神の光武に話し掛けた。オレンジ色の機体は光武や他の機体より小型ですっきりしており、どちらかというと防護服とヘルメットを被った人間・・・そんな感じがしていた。
ヘルメットのバイザー越しに、女性の顔が見えた。美しい白人女性の顔だった。
「だ・・・大丈夫です。貴方がたは?」
「詳しい事は後です。私達が護衛します、ここは任せて。」
その言葉にすみれが声を荒げて割りこんだ。
「まかせろですって!?我々でさえ苦戦しているのを、貴方がただけで収拾できまして!」
すみれの激昂に女性は微笑んだ。
「何が可笑しいのですの!」
「ごめんなさい・・・。それだけ怒るとは、御自分の役割に誇りとプライドをお持ちなのですね。」
「当たり前ですわ!」
すると女性は満足そうに頷いた。
「それを聞いて安心しました。・・・どうやら貴方達は信頼における人物のようですね。」
青と白で塗装された機体が肩から、小型ロケットを放つ。たちまち数体の鬼を打ち倒す。
「!!」
いきなり真横から鬼が飛び出してきた。だがその機体は慌てる事無く、肩の何か、筒状の物を掴んだ。
「レイブレード・ON!」
『あれは!?』
それを見た大神とさくらは驚きを隠せなかった。青と白の機体が掴んだ筒から緑色の光が放たれ、それは一種の光線剣となったからだ!
「光の・・・剣・・・・」
さくらが呆然と見つめる中、光の剣・・・レイブレードを構えた機体は、そのまま鬼を貫いた。
「グレネード!レディファイブ!」
大型の緑色の機体から女性の声が響いた。声の様子からして、さくらや大神達とそう変わりない年頃だろう。
「ロック!ファイヤ!」
緑色の機体の肩から、小型のグレネード弾が五発発射され、鬼達を吹き飛ばす。
「む・・・」
爆炎の中、まだ生き残っている鬼がいた。緑色の機体はその鬼目掛けて突進した。右腕に取り付けられた強固そうな爪が鈍く輝く!
ドガァァ!──緑色の機体のパンチが炸裂した。鬼は頭部を潰され、そのまま爆発した。
「コマンダー。目標の殲滅を確認です。」
緑色の機体が、レイブレードを持った機体に呼びかけた。
「了解、キリ。」
「・・・・・この人達は・・・?」
傷ついた大神達の光武の前に、六体の人型が立っていた。じっと黙って華激団を見つめていた。
「うわ〜!凄いわ〜コレ〜!」
光武を降りた紅蘭が、六体の人型に目を輝かせてあちこち覗き込む。
「凄いな〜!光武より人の形しとる。なんて名前なんやろ〜?」
「レックスと言うんだが・・・・」
青と白で塗装された機体が、丁度背中を覗き込んでいた紅蘭に声をかけた。
「わあ!レックス言う名前なんか!ほなあれは?」
緑色の機体を示す。
「サウルスだ。隣の赤いのがタイタン・・・。最後のオレンジ色がウィナーだ。」
一つ一つ説明するレックスという機体・・・そこに米田がやってきた。
「おう。ごくろ〜さん。時給はあげとくぜ。」
その言葉に、赤い機体・・・・タイタンから若い男の声が発せられた。
「俺たちゃ時給か?」
と、冗談混じりで笑っていた。
「長官・・・・この人達は?」
大神が尋ねた。
「ん?ああ・・・ちょっと訳ありで俺と花小路伯爵が雇った傭兵だ。」
『傭兵!?』
するとレックスが頷いた。
「霊力は持ってないんだがな。無茶苦茶強いんだぜ。凄腕だ。」
米田はレックスを見てにやりと笑った。
「ジェネラル・米田。では我々はこれで・・・」
そう言って、レックス達は立ち去ろうとした。
「まあ待ちな。コマンダーブレイド。まだやる事があるぜ。」
米田はそう言って、さくらの方へ向き、笑う。どうやらさくらは理解したようだ。顔を笑顔で埋める。
そして、レックス達の元へ駆け寄ると笑顔で話し掛けた。
「私達は、戦いが終わった後やる事があるんです!一緒にやりましょうよ!え、え〜と・・・」
「ブレイド。ブレイド=ブライアントだ。」
レックスから聞こえてきた声はそう名乗った。
「俺はクレイン=キューバートってんだ!よろしく!」
タイタンから若い男の声がする。
「ヴィンド=ベルクだ。」
もう一機のタイタンからは、そう名乗った。
「あたしはキリ。キリ=ザンジヌ。貴方とは歳が近そうね。」
屈強なサウルスからは、想像も出来ない若い女性の声だ。
「私はニジーナ=バリスコフ。よろしくお願い。」
ウィナーのヘルメットを外し、そこから金髪の美女が笑顔を見せる。
「僕はシャイン=リーです。よろしく。」
同じくウィナーのヘルメットの中から、中国系の青年が顔を見せた。同じ中国系と解ってか紅蘭が笑みを浮かべた。
「ではやる事は?」
ブレイドがレックスのままさくらに話しかける。ニジーナとシャインとは違い、簡単にはレックスから出られないのかもしれない。
「それはですねえ・・・」
さくらがいたずらっぽく笑った。
「あれやる気か・・・」
遠目で見ていたガルファーが呟いた。
「あの人達には、恥ずかしいかも・・・」
セツナが苦笑した。とてもじゃないがブレイド達は、乗り気でやってくれるタイプの人間では無いように見える。
『勝利のポーズ!きめっ!』
「・・・・やりましたね。あの人達・・・・」
セツナが、ポーズを決めるブレイド達を見て呟いた。さくら達とまではいかないが、とりあえず付き合っている。てな感じだが・・・
「娯楽に飢えているのかもな・・・・」
ガルファーがそう答えると、白いスーツの男が二人の前に来た。
「それじゃ、行きますか?」
「帝国華激団の本部かい?」
「ああ・・・司令が君達に会いたがっているんでね。」
「ううう・・・・なにが!勝利のポーズダスか〜!!」
ガルファー達同様、遠目で戦場を観察していたイダテンが泣きながら吠えた。
「やっぱり、さっきのナギナタ女じゃないダスか〜!!」
「アニキ!落ち着いてくだせェェ!!」
だがイダテンの目は悔し涙で溢れかえっている。
「こうなったら、こないだの礼も兼ねて全員まとめてぶっ飛ばしてやるダス〜ッ!!」
「アニキ!ダメッスよォォ!あっしらはまだ表舞台に立つ訳にはいかないんスよォォ!!」
アドンが後ろからイダテンを羽交い締めにして押さえている。アドンとサムソンの目にも涙が流れている。
「だって!だってェェ!!」(号泣!)
「忍ぶんスよアニキ。心の上に刃をおいて、耐えると書いて『忍耐』ッスよォォォッ!!!」
三人とも顔は涙が滝のように溢れている。
「ううう・・・・!!チクショウッ!みんな憶えていろダスゥゥゥ!!」
「アニキぃぃ!!解りやすぜ、そのキモチぃぃぃッ!!」
三人は涙をたぎらせて走り去って行った・・・・
「サイバーナイト?」
「四百年後の未来からやってきた?」
米田から、ブレイド達の実態を簡単に説明され、驚きを隠せない大神達。
「そうだ。我々は、この時代から四百年後の未来からやってきた・・・」
ブレイドは大神達にそう説明した。
あまりの突拍子も無い話に、大神達は目をまん丸にしていた。無理も無い・・・
「まっ!そう言う訳だ。協力する事も多くなる。大神ぃ、こいつ等はプロだ。しっかりと勉強させてもらえ。」
米田はレックスの右足をペチペチ叩きながら言った。
すると、すみれがいきなり声を荒げた。
「そんな事言われても、納得できませんわ!それじゃあまるでわたくし達がこの方達に、教えを請えというんですの!?」
米田は頷いた。
「私も承諾できません。彼等に教えを請うほどの実力があるのですか?」
言ったのはマリアだ。冷たい目でブレイド達を見ている。すると米田はにやりと笑った。
「じゃあ、いっちょ模擬戦でもやってみるかい?」
次回予告
ブレイド達を認める事の出来ない華激団。米田の提案で模擬戦を行なう事となった!果たして勝敗は!?
そして、ブレイド達が二十四世紀からやってきた理由とは?
大神にマリアが『隊長失格』の烙印を押す!悩む大神にブレイドが言う指揮官としての心得とは?
帝劇に連れて来られた長船とセツナにとんでもない試練が圧し掛かる!歌えセツナ!そろばん弾け長船!
次回サイバーヒーロー作戦 第五話 「サイバーナイトの秘密。信頼の強さ」
ガルファー第三の形態、癒しのパープルガルファー参上!!そしてガルファー最強武器が飛び出す!
あやめ「ブレイドさん、お幾つですか?」 ブレイド「三十八歳ですが」 あやめ「・・・・羨ましいですね」 ブレイド「??」