第二話 「変身駐在の鬼退治」
「聖魔装甲ガルファー!!」
俺は知るはずの無い名を発した。何故この名前なのかは解らない。
だが、自然と口走ったのは事実だ。俺は改めて自分の姿を確認しようとし自分の体を見渡す。
「ほれ!駐在さん、鏡じゃ!!」
神主が手鏡を持って俺に向ける。鏡には俺の今の姿が映し出されている・・・・・
「なんじゃあこりゃ〜!!」
俺は思わず大声を上げてしまった。鏡にはまるで子供特撮番組そのままのメタリックシルバーのSF的コンバットスーツが映っていたからだ。
「ど〜いう事だ!?こりゃ!!」
全体的に装飾は少なく、すっきりとした装甲に俺は覆われていたが、とても大昔の天女が作ったとは思えないデザインだ。どちらかと言うと二十世紀終盤から現在にかけてのデザインに近い。
頭部は完全にフルフェイスのヘルメットで覆われていた。不思議と息苦しくないし圧迫感も感じない。多少視界が生身より狭いが、バイクのヘルメットよりは広い。丁度中間ぐらいの視界だ。
問題はデザインだ。てっきり戦国時代の鎧武者の兜みたいなものだと思っていたが、額に両翼を広げた天使の羽の形を模したくわがたが付けられている以外は全然SF的だ。目元はゴーグルになっていて、鏡に映る俺の瞳が微かに透けて見える。バイザーの透明度は意外と高い。
口元は鬼の面のような装飾だ。額のくわがたと合わせてみれば武将の兜に見えなくもないが、メタリックシルバーの色と近代的ヘルメットの形状がそれらを全てぶち壊している。見てくれは悪くないがバランスの悪いデザインだ。おまけに側頭部の僅かな出っ張りからアンテナまで伸びている。
ヘルメットに比べれば胴体の装甲はまだ見れるデザインをしている。デザインバランスは頭部同様悪いが・・・・
どうやら装甲は多重装甲で、体を大きく動かしても、装甲同士が干渉して動きが阻害される事は無い。見てくれよりも機能性を重視した作りだ。
「機能美と言う奴か・・・」
俺は思わず呟いた。腕を幾つか動かしてみるが、体を覆っている装甲は動作にまったく支障はない。計算され尽くした構造だ。
「ここは良い素材だな・・・」
俺は装甲の施されていない部分を見てそう言った。どうやら俺の体の上に密着しているのは、黒のレザースーツに似た素材のアンダースーツらしい。皮のように見えても通気性はいいみたいで全然熱がこもらない、しかも軽くて肌触りも抜群にいい。戦闘でなければ普段着として使いたい気分だ。
「天女の羽衣から造ったっていうのが実感できる部分だな・・・」
勿論、俺の勝手な想像だが、案外間違ってはいないかもしれない。
そして、そのアンダースーツの上にまず全身の大半を覆う薄い装甲がくっついていた。一番上の装甲が干渉しないように、動作に支障が出やすい関節近くや指、腕や足の内側を覆っていた。金属的な質感はあまりなく、どちらかと言うとFRPのような樹脂系の装甲だ。
「大昔にプラスチックがあったとは思えない・・・・。これも天女の力のなせる業なのか?」
そして、一番上の装甲は、まさに金属の質感そのものを思わせる輝きを放っていた。色が銀色だと言うせいもあるが、『装甲』の名に恥じない堅牢さを見せつけていた。
覆っている部分も、人体の急所や戦闘時に負傷すれば支障が出る部分をがっちりと覆っていた。特に胴体から腹部、背中にかけての装甲は見事としか言いようのない分厚さだ。
次いで丈夫そうなのは肩、下腕、股間、膝と脛、最後にブーツ部分だ。特に腕や足は格闘戦になった際は分厚い方が有効だからだ。パンチやキックの威力が増すからだ。
「しかし、人体の弱点を知り尽くした構造だな・・・」
全体像を把握した俺は、改めてこの装甲の機能美を感じた。上腕とアキレス腱あたりに柔軟性に優れたサポーターのようなものがあてがっており、不慮の事故を防げるようになっていた。しかも後頭部から背中、腰にいたるまでは特に念入りな防護処置とサポーター機能が付けられている。人体の弱点を知り尽くした者でなければ、ここまで完全なものは造れないだろう。
「この腹のベルトを除けばな・・・なんだこのベルト?」
そう、俺の腹には一番上の装甲と同じ素材で作られている強固なベルトが巻かれていた。昔の変身ヒーローも同じように巻いていたが、それとよく似ていた。
「メーターみたいなものがついてるし・・・・腰のところにもポケットみたいなもんが・・・腹筋強化ベルトか?」
俺はこの時はベルトの用途は解らなかったが、これは後になってその機能を思い知らされた。
全身は銀色に輝き、ふちは薄い青いで塗られていた。よく見れば銀色の部分は光の加減次第で薄い虹色を描いている。天女の羽衣を想像させる色だ。
「よし・・・いくぜっ!!」
長い解説だったが、時間にしてみればほんの数十秒だ。肝心の時鬼は、頭を失った村長の亡骸を片手でおもちゃでも扱うように引きずっていた。
再度、時鬼の禍禍しい姿を見たとたん、俺の体に怒りがふつふつと沸いてきた。恐怖は無いと言えば嘘になるが、怒りと使命感が恐怖より優っていた。
俺は、神社の境内に入ってきた時鬼にザッ!と、土煙を上げて立ちふさがった。
ビシッ!!───俺は時鬼に向けて右手の指を突きつけた。
「ここは神社だ。貴様のような邪悪なる者を葬るにはうってつけだな!」
時鬼は赤色に輝く鋭い目を俺に向けた。
「ギシャアアア・・・・ナンダ、キサマハ?」
時鬼は口を開いた、邪悪さを感じさせるよどんだ日本語で喋った。
「忘れたのか?もっとも俺は初対面だがな。」
俺の言葉に時鬼は俺を上から下まで凝視していた。まるで何かを思い出すように・・・」
「長い封印で思考が低下してるのか?それとも元々記憶力が悪いとか?」
俺は、わざと挑発すように呼びかけた。すると、時鬼は突然凄まじい咆哮を上げた。
「ゴオオオオ!!オモイダシタゾ!オモイダシタゾ!!キサマハ、俺達ノ頭領ヲ殺ソウトシタ奴ダナ!!」
時鬼の言葉に俺は引っ掛かった。
「『俺達』!?『頭領』!?って事は、こいつだけじゃなくて、まだ鬼がいるって言うのか?」
そんな俺に考える余地も与えず時鬼が襲い掛かってきた。鋭い爪が俺に迫る!
「オマエダケハ、コロス!俺達ヲ何百年モ、暗イ穴倉ヘ閉ジ込メヤガッテ!!昔ト少シ姿ガ違ウガ構ワネエ!」
プロボクサー顔負けのラッシュが俺を襲う!しかも鋭い爪のラッシュだ。
「昔と姿が違う?どう言う事だ!?」
ラッシュのスピードは凄まじいが、動きは単調だ。当らなければ怖い事は無い。俺はボクシングのフットワークを駆使して軽々避ける。
ボクシングの防御の基本である技で避ける俺だが、ボクシングの経験はない。俺の体術は剣道と日本拳法だからだ。だが身体が自然と動く。頭の中へこの攻撃に対する最適な防御法が流れ込んできている。
「全く、考える余裕くらいくれないのかねえ。しかし便利な機能がついてるね〜。」
俺は、この機能に感謝しつつ呟いた。いつのまにか恐怖心が消えている。そればかりか呟く余裕すらある。変身しての初陣だと言うのに、この心の余裕は何処から来ているのだろう?
「そうか・・・こいつは時鬼の中でも下っ端クラスなのか・・・。道理で。」
頭に時鬼に関する情報が流れ込んできた。目の前の時鬼は確かに凶悪そうで身体も大きいが、ランク的には下っ端に値する存在だと言う。
「そうか・・・こいつの・・・先代のこの装甲を身につけていた戦士の記憶がガルファーに残っているんだ・・」
俺は本能的にそう感じた。
そうと解れば俺は目の前の下っ端の時鬼よりもっと上のランクの鬼を知りたくなった。時鬼に関する詳しい情報。それを知ることが今の俺の感情を支配していた。目の前の下っ端を相手にしているのが馬鹿らしくなってくるほどだ。
「そうと、解ればさっさと片付けるか!村長達の仇だっ!」
俺は避けるのを止め、真っ向から鬼の爪を捉えた。
眼前に鋭い爪が迫る・・・並の人間なら恐怖でどうしようもなくなるだろう。だが、今の俺は並の人間ではない。鬼を討つべく選ばれた戦士、ガルファーなのだから。
ガシイィィ!!俺は鬼の片腕を受け止めていた。自分でも信じられないくらいの力だ。恐らくガルファーは鬼を討つ為、身体機能を向上させる能力もあるのだろう。そしてそれを受け止めるための強固な装甲なのだ。
「うりゃああああ!!」
片腕を取った俺は、そのまま鬼を一本背負いで投げ飛ばした。自分でも信じられなかった、ガルファーに変身しても190cmそこそこ俺が、2.5m以上の鬼を投げ飛ばしたのだ。頭から地面に叩きつけられる時鬼。受身も知らないらしい、まあ俺にとってはその方が都合がいいがな・・・。
「とうっ!!」
俺は助走をつけてジャンプした。すると、俺は新体操の選手も舌を巻くであろう程、高く飛びあがっていた。二階建ての神社の社どころか鳥居まで軽く飛び越せるほどの高さだ。
ここまで飛んだら、あとやる事は誰にでも解る。俺は自然落下に加えて蹴りの態勢に入った。ヒーロー特有の必殺キックを放つのだ。
だが、そこでまた頭に情報が流れ込んできた。
「何?時鬼の最大の弱点は頭の角?それが最大の武器でもあり、弱点でもあるか・・・闘牛みたいだな。よし!」
俺は蹴りの態勢に捻りを加えた。ガルファーの力と合わさって俺の身体は激しく回転した。
「ウウウ・・・」
その時、投げ飛ばした鬼が立ち上がった。くらくらするのか頭を押さえている。チャンスだっ・・・
「!!」
時鬼はようやくそこで上からの光景に気がついた。だが、もう遅い・・・・
「ガルファー!タツマァァキッィィクッゥゥゥ!!」
少々恥ずかしいセリフだが、言ってしまえば快感に変わる。俺が心の奥底に沈めていた幼少の頃の『ヒーロー願望』が目覚めたのかもしれない。
ガルファーの回転キックは時鬼の角どころか、頭そのものを吹き飛ばしてしまった。頭を失った鬼の身体は鮮血を撒き散らし、その後爆発してしまった。
爆発を背後に、キックの余韻に浸る俺・・・・。だが、勝利の喜びのはずなのに何故か目から涙が溢れてきた。
その後、身体が震え出した・・・。鬼を倒して初めて、俺を利用する為とはいえ親身になってくれた村長を始め村人達を失った事の悲しみが溢れ出してきたのだ。
「みんな・・・仇は討ったぜ・・・」
俺はそう心の中で言った・・・・しばしの静寂を神社を包む。
「ちゅ!駐在さん!!」
静寂を破ったのは神主の悲痛な叫びだった。顔が青ざめきっている。
「鬼だ・・・鬼の群れだ・・・」
神主の震えながら指差す方向を俺は見ると、そこには十数匹はいると思われる時鬼の群れだった。
「チッ!群れで来やがったか。」
俺は神主を後ろに下がらせ、群れの前で構えた。見れば全部先ほど倒した鬼と同種ばかりだ。俺は焦ることなく群れに飛び掛って行った。
「何十匹集まろうと、お前らみたいな下っ端に、このガルファーが倒せるかっ!!」
俺は恐怖心が無い事、そして能力的にも圧倒的に上回っているガルファーの戦闘力を過信していた。
ガルファーの力にすっかり酔っていたのだ。
「うら!うらあ!!」
パンチ一発、キック一撃で、面白いように倒されて行く鬼達に俺はゲーム感覚だったに違いない。だが、八匹目を倒した辺りで、俺は自分の自惚れに気がついた。
ピキン!ピキン!───
妙な音に俺は気がついた。見ればベルトのメーターらしきものが、段々と光が弱くなって行くのだ。
「これは・・・?」
俺は嫌な予感がした。そしてそれは的中した。また頭に情報が流れ込んできたのだ・・・
「何?ガルファーになっていられる時間ん〜!?」
俺はここで始めてガルファーに変身していられる、いわゆる『タイムリミット』に気がついたのだ。
先代の記憶によれば、ガルファーに変身していられる時間は、本人の精神力次第でほぼ無制限。だが、今日始めて変身した俺はまだガルファーに完全に馴れていない為、変身時間が限られていたのだ。
そしてもう一つ大事な事があった。
「ガルファーは・・・光と闇、聖と邪。人間が持つ感情が最大に高ぶった時にその力を幾倍にも高められる・・。だが、人間は不完全にして不安定なもの・・・どちらかにも片寄り過ぎては、人間としてのバランスを崩す・・・。」
ガルファーは『完全無欠の正義の使者』でも『冷血非道の悪の権化』でも無い。あくまでも鬼を討つ為の『人間の戦士』なのだ。天女は人間達に代わって戦ったが、その戦いを継ぐガルファーは『人間』なのだ。今、俺に力を与えている天女はその手助けをしているに過ぎない。
つまり、自惚れ・・・ゲーム感覚・・・と言った不謹慎な感情でガルファーの力を使っていた長船は感情のバランスが『邪』へ傾きすぎた為、『人間』として相応しくない行動を取ったとされ、ガルファーの力のバランスが崩れ、変身時間が早まってしまったのだ。
「このままじゃあ・・・もって後三分って所か・・・」
俺は己の自惚れを反省した。
「ん?これは・・・」
見れば、ガルファーの装甲の色が銀色ではなく黒くなっている。灰色がかった黒だが先ほどとは確かに変色している。
「そうか・・・俺の感情が『邪』へ傾きすぎたんで、ガルファーも『邪の戦士』に変わりかけてるんだ・・・」
そう言っている間に時間は早まる・・・。残り三分で、時鬼六匹を倒せる自信は今の長船にはなかった。
「どうにか・・・・どうにかしなくては・・・」
焦った。いくら下っ端の鬼と言え、生身で勝てる保証は無い。
「そうだ・・・ガルファーには武器は無いのか?武器は・・・」
俺はすがる思いで身体のあちこちを触った。だが、武器らしいものは見当たらない。
「ちくしょう・・・このままじゃあ・・・」
目の前に鬼が迫る。その時、ベルトの腰の部分に何かを感じた。
「これは・・・」
腰にいつのまにか、自分の拳銃と警棒があった。変身した際に消えたはずの警官用の装備である。
「どうして・・・?」
長船は思わず、拳銃を手に取る。紛れも無く警官用の拳銃『ニューナンブM60』だ。だが・・・
「なにっ!!」
長船は自分の目を疑った。自分のニューナンブは目の前で変形し姿を変え、見た事の無いリボルバー式の大型拳銃へ姿を変えた。
「そうか・・・ガルファーには定まった武器はないんだ。使用する人間が扱い慣れている武器が、ガルファーの武器なんだ!」
ガルファーは拳銃を迫り来る鬼達へ向けた。
「とことん、『人間』の戦士なんだ!ガルファーは!!」
引き金を引く長船。
「ガルファーリボルバー!!」
叫び声と共に銃弾が鬼達を吹き飛ばす!普段のニューナンブとは比べ物にならない威力だ。拳銃なのに戦車砲弾並の威力がある。
たちまち三匹の鬼をまとめてしとめる。貫通力がどうこうと言うレベルでは無い。凄まじいの一言に尽きる威力だった。だが、威力がありすぎて鬼の後ろにある巨木を二本ほど貫いてしまった。
「・・・・威力がでか過ぎる。ここじゃあ使えない!」
俺は銃を腰に戻した。いくら威力があってもこれでは他のものまで傷つけてしまう。どうやらニューナンブの欠点である貫通力の高さまでパワーアップしているようだ。
「残り三匹・・・変身時間はあと二分弱・・・・コイツが頼りだ。」
俺はもう一つの装備、警棒を抜いた。剣道を得意とする俺には銃よりこっちの方が性に会っている。
「さて、警棒は何になるのかな?」
手首を返して警棒を伸ばす。伸びた警棒はいつもより多く伸びた。警棒と言うよりは物干し竿だ。
「機動隊が使うようなモンだな・・・。槍にでもなるのか?」
予想は裏切られた。構えた瞬間、棒全体に電気がほとばしった。
「電磁警棒・・・・いや、電磁如意棒かな?」
俺はヘルメットの中で口元を緩ませた。
「イイ武器だ。自慢じゃないが、俺は棒術にも覚えがあるんだ・・・」
俺は棒を握りなおして俺は鬼に踊りかかった。
「ガルファースティック!!乱舞!」
俺は名前通り舞った。棒術での試合の経験は俺は殆ど無かったが、師匠の演舞は穴があくほど見ていた。
「師匠ほどじゃないが、俺の舞いも中々のものだろう。師匠!」
実戦的ではない舞いも、ガルファーの力なら戦闘用の技と化す。たちまち二匹の鬼をしとめる。
「一匹逃した・・・練習不足か・・・。」
はやり、未熟な演舞では三匹全部を倒す事は出来なかった。己の技量の低さを悔やむ。
だが、そこで俺の脳裏にあるものが引っ掛かった。それは自分で発した言葉のことだ。
「師匠・・・?そう言えば俺はこの技を誰に習ったんだ・・・?」
戦闘中だと言うのに俺は考えた。どうにも引っ掛かる。よく考えてみれば俺はこの村に着任するまでの記憶が曖昧だ。何故警官になったのかさえはっきりしない。
「第一、俺は何者なんだ・・・幼少の頃の記憶だってよく憶えていない。それにガルファーになった理由だって、血筋とかが関係しているのに、俺は両親や祖父母の事をよく知らない・・・・。」
考えれば、考えるほど混乱する。
「駐在さん!危ない!!」
その時、戦いを影から見ていた神主が叫んだ。ハッと我に返る俺。目の前に鬼の拳が迫る!
「くっ!」
とっさに棒を前にかざし防御する。だが・・・・
ボキイイン!!───
鈍い音を立てて棒が真ん中から真っ二つに折れた!そのまま吹き飛ばされる俺。
「うぐうっ・・・一発食らっちまった・・・」
砂塵を上げて地面に叩きつけられる。幸い怪我は無いが棒は短い二本の棒に変わり果てていた。
「畜生・・・・残り一分も無い・・・急がなくては・・・・」
俺は立ちあがり、身構えた。折れた棒はそのまま二刀流で使わせてもらう事にする。
「日本棒術の由来は・・・・戦国時代、折れた槍を武器にした事から始まったんだぜ・・・」
俺は強がった。それに答えてか、折れた棒はまたも姿を変えた。
「また変わるのか!?元に戻ってくれればありがたいがな!」
だが、また予想は裏切られた。イイ意味で・・・
「剣に・・・・いや!刀になった!!」
構えた二本の棒は二本の日本刀に酷似した武器に姿を変えた。俺は少し嬉しくなってくる。だが、又も引っ掛かる・・・
「かたな」・・・・その言葉に俺の脳裏に何かがおぼろげに浮かび上がった。それは長い髪をした優しい顔した女性の姿だ。
「何だ!?今のは・・・・あの女性は・・・見覚えが・・・」
だが、もう呑気に考えている暇は無い。残り三十秒を切った。俺は正面の鬼に向かって腹のそこから気合の言葉を発して斬りかかる!
「ガルファー!!!!」
左手の刀で鬼の胴を胴打ちの要領で斬る。
「三!」
右手も同じように斬る。
「連!」
最後に真正面から二本の刀を同時に上段から振り下ろし切り裂く!
「だぁぁぁぁん!!」
最後に切り裂くとコンマ数秒の後、最後の鬼は爆発四散した。
ガルファー三連断・・・・無意識に放った技ではない。剣道の技の、胴打ち二回、面打ち一回を組み合わせた只のMIX技、『連続技』とも言う。だが、ガルファーが使えばトドメの一撃には申し分無い必殺技となる。
「勝った・・・・」
俺はそれだけ言った。
そのすぐ後、俺は普通の警棒を握り締めたまま元の姿に戻っていた。
(初陣として、申し分無いな・・・・)
(ええ、今回の戦いだけでガルファーの能力に大方気付いたようです。)
(しかし、ガルファーになった事で、記憶を僅かながら取り戻しつつあるぞ。記憶操作をあえて不完全にしたのが裏目に出たな)
(そうですね。ですが、これを切っ掛けにして戦いに身を投じ易くなります。)
(戦い続ければ、真実が見えると思ってか?可哀想だが事を運びやすくなるな)
(はい。)
(次は・・・・あの時代に送りこむか・・・。混乱は少ないが、ますます記憶が戻るな。)
(ですが、帝国華激団では、『奴等』は倒せない。ガルファーは必要です。)
(そのサポートの為に彼等を・・・・君が愛する彼等を・・・・)
(はい。それと彼女を送りこみます。彼女はやがて『絶対存在』と戦わなければならない。ガルファーと彼等は、いい教官になります。)
(その間、この時代は彼等か・・・・まあ適任だな。)
(ええ、あのレベルならあの二人で充分です。企業のTOPにエージェントを送りこみました。それと、事象変換率を僅かに操って、α遊星にメッセージを送りました。『奴等』に悟られない程度に・・・・)
(あまり公にするは気に入らないな、便乗犯もでてくるしな・・・。あの連中はどうする?あの連中は『我々の宇宙』とは別の存在だぞ。我等の力は影響しない。)
(それについては、かなりの犠牲が出ますが、大丈夫です。既に地球に戦士を送り込んでいます。)
(干渉せずに傍観するのも辛いな・・・)
(はい。私は人間が好きですから・・・。)
夜が明けた。過疎化の村に起きた、大量猟奇殺人事件は文字通り『事件』として処理する事となり、時鬼の存在は表に出さない事が村民の寄り合いによって決められた。
まあ、言っても「鬼が出た」など、誰も信用しまい。亡くなった村長を始め、多くの村民達の遺体は簡素ながら合同葬儀で手厚く葬られる事になった。
死体の様子から犯人は、野生の熊か何かの動物に襲われた・・・と、言うのが表向きの発表。この村の自慢のITを駆使しての情報操作だ。それに県警の上層部にこの村出身の者もおり、それに協力している。数多く亡くなった割にはマスコミにあまり騒がれずに済んだ。
そして俺は、表向き『熊を退治した駐在』と言う事になり、その上層部の人間が『口止め』の意味合いを持つのだろう、警部捕昇進の話も出た。
「本来なら村を離れて別の部署に行くんだがな・・・。そうは言ってられん。」
昇進の辞令は一週間後に来る手はずになっている。だが、俺は胸に警部捕の階級章をその日に付ける事は無いだろう。
「時の空洞に飛び込む。」
それが俺がガルファーとして出した言葉だった。俺は完全に時鬼を葬り去る為、時の空洞にこっちから打って出ること選んだ。それがガルファーとしての俺の使命だからだ。一昨日までの俺ならばそんな事は決して言う事は無かった。だが、多くの犠牲者を出し、そして次は鬼が世界規模で現れかねない。そうしないためにも俺は戦う事を選んだ。死んだ村長や世話になった村人の為だけでは無い。何より自分が何者であるかを知るために。
「行く事に決めたのですね、駐在さん・・・」
俺の決意を聞いた神主がそう言った。村長が亡くなったので、詳しい事情を知る者はこの神主だけになってしまった。
「では、こちらに来てください。貴方に見せたいものや渡さなければならないものが多くあります。」
神主は、俺を神社に招いた。俺はそれに従った。
「まずはこれを見てください。」
神主は俺の前に、数冊の絵本を出した。何の変哲も無いそこらの本屋に売っている普通の絵本だ。
「これは普通の絵本です。ですが、これからの貴方に大きな意味を持っています。」
神主はその中から一冊を開いた。題名は『天女の羽衣』だ。
「!!」
俺は、感づいた。その様子に神主は頷いた。
「その通りです。貴方のもう一つの姿・・・ガルファーでしたね。何故そのような名前になったのかは解りません。ですが、このお話に出てくる地上に降りた天女とは貴方のご先祖。そして・・・・」
「男に奪われた羽衣・・・・それが『ガルファー』か・・・・」
神主は頷いた。
「正確には、童話では天女は、水浴びの為に地上に降りた・・・と、されていますが本当は、この世界を滅ぼそうとした時鬼を討つ為に地上に降りて来られたのです。」
俺は黙って話を聞いた。
「そして羽衣を奪った男こそ・・・・」
「鬼か。奪ったのではなく、引き裂かれたんだ・・・・」
「恐らくその通りでしょう。その後童話なら、羽衣を男の目を盗んで奪い返し、天に帰った・・・と。」
「真実は、なんとか引き裂かれた羽衣を取り戻して、それでガルファーを造ったんだ。天に帰ったとは、恐らく人柱になった事で命を失って、天に召された・・・と言う事だな。」
俺の推測に過ぎないが、大方間違ってはいないだろう。
「そうでしょうね。ですが、これを・・・」
神主は今度は木箱を出した。厳重に封がした後があり、御札が何枚も貼られていた。神主は木箱を開けると中から古めかしい本が出てきた。これは、贋物でも市販品でもない正真正銘の古から伝わった本物だ。
「これは?」
「これが、貴方の先代のガルファーが、後世の為に・・・と書き記した『天女の書』です。」
俺は天女の書をじっと見た。これが村長の言っていた天女の書か・・・と。
「考えてみれば・・・・これの記述を守り続けてきた為に、村長たちは殺されたんだな・・・」
俺は悲しげに呟いた。この一冊のために村長たちは、命を失ったのだ。
神主も頷いた。
「それに関しては否定しません。ですが、我々村民はこの日の為に今まで生きてきたのです。村長たちはその役割を全うした・・・と思いましょう。」
「そうだな・・・。そうでも思わなければ村長たちはあまりにも不憫だ。」
俺は天女の書を見つめ、村長たちの冥福を祈った。
(任せてくれ・・・自慢じゃないが俺は自分の仕事には責任感のある方なんだ・・・)
俺は心の中でそう言った。
「では、開いてみてください。貴方にはこれに記してある記述を読まなければならない。」
俺は頷き書を開いた。内容は古めかしい言葉で書かれていた。だが、不思議な事に古文の苦手な俺がまるで漫画でも読むかのごとくスラスラ読めてしまうのだ。まるであらかじめ俺の頭にこれが書かれた時代の文章がインプットされているかのごとく・・・・
「これもガルファーに変身した為かな・・・」
と思いつつ、俺は一通り簡単に眼を通す。最初の方の記述は村長から聞かされたこと、俺の想像したとおりだった。
記述によれば、やはりガルファーは天女の造ったものだった。ただ、鬼が言った『昔と姿が違う』と言ったことの真相が解った。ガルファーは着用した人間の精神状態や状況に応じて、その形状を変えるという。俺が使っていたときガルファーが黒くなったのは、その片鱗らしい。
「そうか、俺がまだガルファーに馴れていないから、色だけだったんだ。その気になれば形も変わるのか・・」
記述によれば、先代のガルファーは七つの姿に変わったそうだ。それぞれの姿になった時色も様々に変わったと書かれている。標準の銀以外に、『赤』・『青』・『黄』・『緑』・『紫』・『白』・『黒』の七つの姿になったと言う。
「いたって変身しやすいのが黒と赤か・・・なんとなく解るような気がするな。」
「そうでしょうね。恐らく駐在さんが初めて変わったのが黒・・・つまり『邪』ですね。赤は恐らく『怒り』じゃないでしょうか?」
神主の言葉は予想に過ぎないが、正論だろう。『邪』と『怒り』・・・・これらの感情は人間が最も陥りやすいからだ。ますますガルファーは『人間』だと言う事だ。
だが、記述には続きがあった。この銀と合わせて八つ以外にもまだ形態があったいうのだ。ただ・・・
「どうしたのです?」
神主が尋ねる。
「この八つ以外の変身もあるらしいんだが、先代は片鱗を見せただけで終わったらしい。それに変身できていれば鬼を完全に討てたらしいんだが、結局無理だった・・・て書いてある。」
「九つ目ですね。私もそこは読みましたが、どうやったら変身できるのかは書いてありませんでした。」
謎の九つ目・・・・鬼を完全に討ち滅ぼせるほどの力を持った変身。それにさえなれれば・・・・
「定石(パターン)通りなら金色ってのがお決まりだよな・・・」
俺は漫画やアニメで、よくヒーローやロボットが『真の力』なんかに目覚めると決まって金色になるのを思い出して言ってみた。
さらに書に目をやる。すると、水墨画のような絵が描かれており、そこには武人と何頭かの動物が描かれていた。
「これは・・・何だろう?この中心の武人はガルファーってのは解るが・・・・この動物は?」
動物が描かれた記述をじっくりと読んで見る。そこには『獣皇』と書かれていた。
「じゅうおう?獣の王様ってことか?」
今一度絵に目をやる。ガルファーを守るように取り囲んでいる動物達はそれぞれ、『狼』・『鷲』・『大猿』・『熊』・『竜』・『亀』であった。
「竜と亀は解るが、何で虎と朱雀がいないんだ?普通はこの四頭だろうに・・・・」
だが、俺は何かに気付いた。おれは市販の絵本を手にやる。それは『桃太郎』・『金太郎』・『浦島太郎』・『竜の子太郎』である。
「そう言う事か・・・・これらのおとぎばなしに出てくる動物達がサポートした主人公は、実はガルファーだったんだな・・・」
日本各地にに伝わる、おとぎばなし。それらにガルファーは関係していたらしい。ガルファーはおとぎばなしの真相を知る証人でもあったのだ。
「この動物達は、ガルファーに仕える忠実なしもべ・・・ガルファーの足りない部分を補佐してくれるのか。」
足りないところ・・・・確かに今のガルファーは不完全だ。いきがってはいるが今のままでは苦戦は必至だ。これらの動物達がそれをサポートしてくるなら非常に心強い。
「しかし、その動物達は何処にいるんだ?まさか武器みたいに近所の飼い犬や動物園のチンパンジーが変身でもするのか?」
すると、神主は俺の冗談が可笑しかったのか、少し笑った。
「ははは・・・。安心してください、駐在さん。そんな事はありませんよ。」
そう言って神主は、天女の書が収められていた木箱と似たような箱を二つ取り出した。
「これらは・・・考え次第では天女の書以上に大事なものです。」
神主は木箱を開けた。片方のの木箱には短剣・勾玉・手鏡が、そしてもう片方には色とりどりの卓球のボール位の大きさの綺麗な半透明の六つの珠が大事そうに納められていた。
「これは?」
「駐在さんが、完全なガルファーになれれば必要なくなりますが、今は必要なものでしょう。」
「つまり、未熟なガルファーを補助するための道具か・・・」
神主は頷いた。
「短剣・勾玉・手鏡は日本古来から伝わる『三種の神器』に似ていますが、似て非になる物です。」
「じゃあなんだい?」
「これらと同じような物は、今からそう遠くない過去に数回使われたと言われています。ですが、これは更に遡った過去に頻繁に使用された『ガルファーの神器』です。」
神主は神器をじっくりと見つめながら言った。ガルファーの為・・・恐らく正真正銘の三種の神器を真似て造られた物、いや・・・もしかしたらこちらに似せて三種の神器が造られたのかもしれない。真相は解らないが、とにかく神器は俺の目の前にあった。先代が頻繁に使用したという・・・。
「そんなにしょっちゅう使わなければならないほど苦戦してたのか?先代は・・・」
俺は疑問系の表情で神主に尋ねた。すると、神主はまたも笑った。
「いえいえ。神器をそれぞれよく見てください。短剣と鏡に三つほど穴があいているでしょう?」
俺は神器をよ〜く見た。確かに勾玉以外の神器に三つ丸い穴が開いている。
「ん?この大きさは・・・・」
俺はもう一つの木箱の珠を見た。穴の大きさはこの珠とほぼ同じだ。
「失礼。」
俺は神主にことわり、短剣と珠を一個手に取り、珠を短剣の穴にはめ合わせてみた。
「ぴったりだ・・・」
短剣の中に紫色の珠がきちんと収まっている。それを見て神主は頷いた。
「それが珠と神器の使い方ですよ。」
「??」
「解りませんか?その珠は獣皇を呼び出す・・・いえ召喚する為の物なのです。」
神主は赤色の珠を手鏡にはめ込み、俺に向かって言った。
「天女の書に書かれているとうりにやるならば、こう天に掲げて・・・」
神主は手鏡を天井に向けている。俺はその行動を短剣を持って真似る。
「獣皇召喚!というのです。」
「ほう・・・そうすれば、動物達が来てくれるんだな?」
「書いてある通りならね。」
神主は鏡から珠を外しながら言った。俺も短剣から珠を外す。
「一つの神器で呼び出せるのは三匹までだそうです。」
見れば解る。一つに穴三つという事がそれを物語っている。
「じゃあ勾玉は何なんだ?穴も開いていないし、まるでペンダントみたいになってるし。」
「それはどうやら召喚した後に使うらしいですね。詳しくは書いてないので解りません。」
「ふ〜ん・・・」
俺はそれだけ頷いた。
「では、天女の書とこれらの神器を持っていかれなさい。」
俺は頷き、それらを受けとった。
「それと、これは私等、村民からの銭別です。」
神主は次にベルトにぶら下げるホルスターのような物二つとナイフケース、最後に日本刀を俺に手渡す。
「ホルスターには獣皇の珠・手鏡が入るようになっています。ナイフケースに短剣を・・・」
「コイツは?」
俺は日本刀を抜き、刀身を見ながら言った。
「夕べの戦いから、ガルファーの武器は本人が得意とする武器が変化するらしいので、亡き村長の遺物の一つを譲っていただいたものです。警棒がまたすぐに剣に変わるとは限らないでしょう?」
神主はそう言った。そしてさらに今度は封筒と重たげな布袋を俺に差し出す。
「今度はなんだい?」
封筒の中身を確認する・・・・!!??
封筒の中身は、札束だった。さらに布袋の中身は砂金がどっさりと詰められていた。
「このお金は・・・・・!?」
俺はうろたえた。自慢じゃないがこんな大金は見たことが無かった。
「村長が来たるべきに備えていた為のガルファーの為の軍資金・・・と言う所でしょうか。」
「だけど、こんな大金・・・しかも砂金まで。戦いに必要無いでしょう?」
神主は黙って首を横に振った。
「必要になるから用意したのですよ・・・持っていってください。」
神主はじっと俺の目を見て言った。
「解りました。ではこのお金はガルファーの為に使わせてもらいます。」
それを聞いて神主は満足そうに頷いた。
三日後の夜・・・・・俺は警官の制服のままで愛車の大型スクーターにまたがっていた。スクーターには神主から貰った道具や戦いに必要になる薬品、携帯食料、着替えなどが積まれている。
本当なら、装備を整えた後、すぐにでも出発したかったのだが、神主は「ベストコンディションで行ってくれ!」と言われたので三日間の休息を取ったのだ。
時の空洞・・・・・天女の泉が俺の真正面にある。多くの村人達が俺を送り出しに来ていた。
「それじゃあ、鬼退治に行って来るぜ!!」
俺はスクーターのエンジンをかけた。250ccエンジンが戦いのゴングを鳴らすごとくに吠えた。
「頼みましたぞ、駐在さん・・・いえガルファー殿!!我等の悲願を!!宿命を!」
神主が俺の手を取り力強く言った。
「そして生きて・・・・帰ってきてくだされ!本当なら貴方を利用した我々が言える台詞ではないのですが・・・」
神主の目が潤んだ。俺は神主の肩を叩いた。
「帰ってこれたら、慰謝料と鬼退治の代金請求するぜ!」
俺は笑いながら言った。すると村人達から笑い声が響いた。
「はい!勿論お支払いいたしますよ。でも貴方は公務員でしょ?よろしいので。」
「受け取るのは俺じゃない、ガルファーだ!」
薄暗い泉の周りで笑い声が響いた。
「じゃ・・・行ってくる!!」
俺はスクーターを発進させた。勢いをつけて泉に向かってスクーターをジャンプさせる。
「いくぜえ!!!」
次の瞬間、俺はスクーターごと泉の中へ飛びこんだ。
これが・・・・一年と数ヶ月に渡る、俺のガルファーとしての戦いの始まりであった。
残念な事に、俺はもう、生きてこの村を訪れる事はもう無かったのだ・・・・大いなる意志が俺に課した宿命のために・・・・
次回予告
自慢じゃないが、次回の予告だ。
時の空洞に飛びこんだ俺。てっきり鬼の巣窟かと思いきや、やってきたのは太正時代・・・・
なんだってこんな時代に来なくちゃならないんだ?悩む俺はそこで、俺と同じく現代からやってきた一人の少女と出会う。
彼女の名は『斎月せつな』。彼女も何で来たのか解らない!?『魔』を狩る為に何者かに召喚されたとか言ってるけど、彼女な〜んか変なんだよな。行動を共にする事にした俺達はそこで信じられないものを目にする!!
次回 サイバーヒーロー作戦 第三話 『セツナと華麟と帝国華激団』
華麟「セツナには私がついています・・・・」 長船「憑いていますの間違いじゃないか?・・・・ぐあっ!(殴られた)」