「教授の恋」より
すると、他の光たちに比べて独特の冷静さを感じさせる、しかし穏やかな愛情に満ちた青色の光が、初めて呼びかけてきた。
「あとは、私から伝えましょう。」
その光からは、まるで試験官のような、理知的な権威が感じられた。ただし、決して威張っている感じではなく、私の魂を包み込むような波調で語り始めた。
「あなたには、ある使命を与えたいのです。」
「ある使命?」
「あなたが、これから果たすべき使命です。」
「?」
「あなたが生きている時代の、この日本という国は、地球という星の中で、ある大きな使命を担っています。
この時代の日本人が滅びてゆくということは、地球という星の未来、ひいては太陽系、銀河系や宇宙全体の未来さえも、影響を及ぼしてしまうことになるのです。」
「おっしゃることの意味が、さっぱり分かりません。今の時代の日本という国、あるいは日本人が、やがて滅びてしまうのですか?」
「あなたが生きている時代には、すでに、その滅びが始まっています。そして、その滅びとは、日本人の心の滅びのことです。
地球という星に住む生命たちは、みんな精神的につながっています。その、つながりの要となる物理的な位置が、地球上に九ヶ所ほど存在していて、
そのうちでも、日本という国が位置する場所は、ある意味において、極めて重要な位置なのです。」
「ある意味とは、何でしょうか?」
「地球全体の魂たちを結ぶ、精神エネルギーの波調を良好な状態に整える役割を担っている場所、その位置にあるのが、日本という国なのです。」
「ますます、私には分からなく、なってきましたが・・・・・・」
「つまり、日本という国に住む人々の心が滅び、日本という国が位置する場所の精神エネルギーの循環が滞ると、地球全体の精神エネルギーの力が、低下してしまうというわけです。」
「しかし私は、そのように特定の国や民族だけを取り出して、あたかも優越性があるかのように特別視する言い方は、大嫌いなんです。」
「決して、日本や日本民族を、人間として特別視するわけではありません。地球の精神エネルギーの循環において、ちょうど重要な位置に住んでいるのが、日本人であるということです。
日本人が他の民族よりも優れているとか、特別な力を持っているという意味ではありません。
むしろ、スピリチュアルな観点から見て、特別な力を持つ民族は、日本以外の場所に、いくつも存在しています。」
「分かりました。日本人が、ちょうど重要な位置に住んでいて、その日本人の心が滅び始めてきた時代、それが、私が生きている時代だと、おっしゃるのですね?」
「正確な表現ではありませんが、臨死状態にあって、物質世界の三次元的な思考が抜けていない、あなたの理解には限界がありますから、それで良しとしておきましょう。」
「それで、私は、どうすれば良いのでしょうか?どのような使命を、与えて下さるのでしょうか?」
「大学教授として、あなたが出来ることについては、もう、あなたは一定の成果を上げています。
むしろ、これから与える使命を存分に果たすためには、大学という公的組織に属していることは、足かせになるだけです。
したがって、まずは、大学教授という肩書きを外し、自由に動ける身になる必要があります。」
「えっ、大学を辞めろと、この私に、おっしゃるのですか?・・・・・・妬みと批判と誹謗中傷の渦巻く研究者の世界で、教授という地位に昇りつめるために、
私が、どれだけ寝食の時間も忘れ、命を削って頑張ったかということは、お分かりのはずです。」
「もちろん、あなたの人間離れした努力は大いに知っていますが、あなたの教授職は、あなたの学びのために、我々が与えたものでもあります。
その上で、もう学びの段階は終えて、さらなる上の段階へと進んでほしいのです。」
「さらなる上の段階?」
「そうです。大学教授を辞めるのではなく、大学教授を通じた学びの段階を、もう卒業するのです。」
「なるほど、辞職ではなく、卒業という意味なのですね。」
「その通りです。」
「その上で、どうすれば良いのでょうか?」
「自由の身になったならば、自分の研究所を開設しなさい。」
「研究所?・・・・・・いったい、どのような研究所でしょうか?」
「あなたの研究所を訪れる、心の寂しい人々を、あなたの力で救うのです。」
「なるほど、研究所といっても、その目的は、人助けを行う場なのですね?」
「その通りです。人助けを実践しながら、真の人助けの方法について研究するのです。
したがって、あなたが行うべきなのは、医療ではなく、それぞれの人々が人生の価値に気づくための援助です。
薬品を用いるのではなく、人間が本来持っている、“心の免疫力”と“心の自己治癒力”を活用することに専念しなさい。」
「しかし、この私に、そのような力があるのでしょうか?」
「あなたには、その特殊な力を与えてあります。かつて、あなたが大学生の時に高熱を発した際に、我々が与えておいたのです。」
「えっ、あの時の高熱は、あなた方の仕業だったのですか!・・・・・・つまり、唯脳論者として生きていた私を、無理やりにトランスパーソナルな状態へと導いて、この場所や、あなた方と、深くつながることが出来るように、仕向けて下さったのですね。」
「その通りです。」
「しかし、私は、研究所を開くような、お金も人手も持っておりませんが・・・・・・」
「心配は無用です。あなたの元には必然的な奇跡が次々に働いて、同じ使命でつながった多くの同志たちから、様々な支援の希望が寄せられるでしょう。
なぜなら、あなたが使命を果たすための同志が、すでに数多く、日本を中心とした地球上に、送り込まれているからです。」