宇宙刑事ヴォルター・第1話
第1話
昇華!たなる宇宙刑事

 果てしなく広がる銀河。その中には多くの知性体が生存する惑星が存在する。
 …もちろん、我々が生存する「地球」もそのひとつである。
 かつて、この地球は巨大な悪に狙われていた。
 宇宙犯罪組織「マクー」、超能力犯罪集団「マドー」、そして不思議界「フーマ」……。
 しかし、その度に遠い銀河の彼方からやってきた、メタリックな甲冑に身を包んだ戦士がその進行を退けてきた。
 彼らの名は……宇宙刑事!!!


 宇宙刑事たちの活躍によって、銀河に巣くう悪が消え去ってから…十数年の月日が流れた。
 しかし、悪の芽は着実に成長していたのだ。戦いを終え、宇宙刑事たちが地球を後にした頃から……。
 その名は、大銀河闇戦団「ゲドー」!……マクー、マドー、フーマの残党から組織され、銀河中から悪と言う悪が静かにゲドーの傘下に入った…。そして、宇宙犯罪史上類を見ない、超巨大組織となってしまったのだ。
 突如として表舞台に現れたこの強大なる悪の組織に対し、銀河連邦警察は、第一種緊急警戒態勢を発令。宇宙刑事を総動員するも、ゲドーは、銀河警察連邦本部を置くバード星より何万光年と離れたかの地…地球へと、その進行を開始した。
 完全に裏をかかれ、救援を送ることもままならない状況下、宇宙刑事をまとめる「ロス長官」は、地球圏にて宇宙刑事の訓練を行っている一組の訓練生に、地球の護りを託す…。


「リュウ、リュウ!ロス長官から緊急通信!」
 訓練艇の奥から、歌うような声が人を呼ぶ。その声に呼ばれて、トレーニングの真っ最中だったのであろう、一人の青年がタオルで汗をふきながらやってきた。
「…なんだよ、人がせっかく汗流してたってのに……」
 少し不機嫌そうに、それでも上官と通信をするということもあり、リュウと呼ばれた青年は軽くたたずまいを直した。
『訓練期間中にすまないな、黒岩 竜。そして、サラ』
 モニターに見なれた顔が浮かび上がる。地球人であるリュウを宇宙刑事としてスカウトし、訓練を受けさせた張本人、ロス長官である。
「…別に構いませんよ。体のイイ休憩代わりです。サラの奴、ロクに休憩も取らせてくれないんだから……」
 そういって、サラと呼んだ女性を横目でちらりと見る。サラはと言うと、それぐらい当然だと言うような表情だ。
『…そんなことより、緊急事態だ。君たちには連絡が遅れてしまっていたのだが……』
 と、そこでロス長官が口篭もった。
「なんです?」
『突如、[大銀河闇戦団ゲドー]と名乗る集団が現れ、地球に向けて進行を開始したのだ』
「な、なんですって!!?」
 おもわずモニターにくってかかるリュウ。地球生まれの地球育ちであるリュウにとってはショッキング過ぎる事態だ。
「その規模は?」
 サラも、平静を装ってはいるが、内心穏やかではいられない。彼女の身体には、地球人の血も混ざっているからだ。
『…皆目、見当もつかん……。一説によれば、かつて地球に侵略をしてきた、[マクー]、[マドー]、[フーマ]の残党はじめ、銀河中の悪の戦士が所属しているとも言われる』
「…ジーザス!ロス長官!俺に…俺に行かせてください!」
 訓練艇のコントロールパネルをバンと叩き、ロス長官に嘆願するリュウ。モニターの向こうで、ロス長官が静かに口を開いた。
『……そのつもりだ。…いや、そうしなければならない、と言った状況ではあるがな』
「どういうことです?」
 サラが尋ねる。
『ゲドーは、最初バード星に攻撃を仕掛けると見られていた。そして我々銀河警察連邦は総力を結集し、これに臨んだが…』
「?」
『奴らに完全に裏をかかれてしまった。奴らの目的は、最初から地球だったのだ…!』
 言葉を失うリュウとサラ。ロス長官が続ける。
『そこで君たち二人に、緊急の事例を伝える。本日を持って君たちの訓練を終了する。…そして黒岩 竜。君には地球地区担当の宇宙刑事となってもらう!』
「!」
 絶句するリュウ。
『あと5時間ほどで君たちの母艦となる時空航行艦[ペガサスセイバー]が地球圏に到達する。…ゲドーは、かつて地球を侵略してきたどの組織よりも強大で、そして手強い。君の活躍に期待しているぞ、[ヴォルター]!』
「[ヴォルター]?」
『君のコードネームだ。…サラ君、ヴォルターのサポートを頼む』
「了解です、長官」
 サラが答えた。
『うむ……。今の私にはこれだけの事しかできない。宇宙刑事ヴォルター。地球の護りを任せるぞ』
「了解っ!」
 背筋を伸ばし、リュウが最敬礼をして答えた。


「地球か……」
 訓練艇のモニターから、地球の青い姿が見えてきた。
「これが…地球…」
 ため息混じりにサラが呟く。
「そっか、サラは地球見るの始めてだったよな」
 いつの間に地球の普段着に着替えたリュウが口を開いた。
「…ええ。地球人の父がよく地球の事を話してくれたの。本物は始めてみるけど……。綺麗だなぁ……」
 憧れの地球を目の当たりにし、感動を隠せないようだ。
「…だがこの地球が、いまゲドーってのに狙われてる。現状で戦えるのは俺達だけだ。気は抜けないぜ」
「うん……」
 さてと、と手に持っていた荷物をひっさげ、リュウはサラに声をかける。
「じゃ、俺は先に地球に降りてるからな。例のペガサスセイバーが到着したら連絡入れてくれよ。」
 サラが頷いたのを確認して、リュウは地球へと降下して行った。


「…変わらねぇな。東京も」
 新宿の雑踏にまぎれ、リュウがふと呟く。彼にとっては2年ぶりの地球だ。
「…でも[ガングロ]女子高生は少なくなったよなァ…」
 何処かずれてるぞ、リュウ。
「うわぁぁぁぁっ!!!」
 突然、人ごみの中から悲鳴が聞こえる。ざわめきが一瞬途絶え、次の瞬間、戦慄の群れに変わった。
「!」
 その悲鳴に何かを察知したリュウは、人ごみをかきわけ、悲鳴の中心へと向かった。


「よく聞け!おろかなる地球人どもよ!! 我らは大銀河闇戦団ゲドー!!!」
 遠巻きにする人を見下すかのように、いかにもな戦士肌の男が高らかに叫んだ。
「我らが悲願は、この青き星・地球をこの手に収めること!この地球含め、全てのものが我らの物となる。歯向かうものは…死、あるのみだ!」
 その言葉に、辺りにいた人々が恐れ、逃げ惑う。しかし、こちらにとっては戦いに巻きこまずにすむぶん楽なのだが。
「奪え!壊せ!焼き尽くせ!!!」
「させるかッ!」
 その声とともに、リュウが飛び出す。
「何者だキサマ!」
「宇宙刑事…ヴォルター!!!」
「…宇宙刑事だと?」
 宇宙刑事の言葉を聞いた途端、戦士の表情が豹変する。
「…宇宙刑事は我らが宿敵!殺せ!その首を落とし、我らが大首領にささげるのだ、粉砕ッ!!!」

     ギィッ! ギィッ!

空間がねじまがり、虫のような顔の戦士が群れとなって襲いかかってきた。
「かかれッ、[ドーガ]!!!」
 ドーガと呼ばれた戦闘員が、雪崩れこむようにリュウに刃を向ける。
「上等だッ、きやがれ!!」
 ファイティング・ポーズをとり、リュウの戦いが始まった。


「オラァ!てりゃ!うぉぉぉぉっ!!!」
 拳や蹴りでドーガを片っ端から倒すリュウ。しかし、いかんせん数が多すぎる。
「ちぃっ、まどろっこしいぜ!…こうなったら、司令官を直接叩くッ!!」
 ゲシッ、とドーガを頭突きでいなし、群れをすりぬけ、中央の戦士の前へと滑りこんだ。
「ほぅ…このオレを狙うとは…度胸があるのか、命知らずか……」
「うっせぇ!俺はゲドーを叩きツブすだけだ!」
「いいだろう…大銀河闇戦団ゲドー!闘将・マルコが相手になる!!!」
 スラッと巨大な刀剣を引きぬき、マルコと名乗った男がリュウの前に立ちはだかった。
「我が剣…銀河最大にして最強の[ドゥルバスター]の威力を見るがよいっ!」

     ドガァァァァァァン!!

 マルコが剣を振り下ろした瞬間、地面が割れ、ぱっかりと口をあける。が、そこにリュウの姿は無い。
「でかけりゃいいってもんでもないだろ、おッさんよォ!!!」
 持ち前の脚力を生かし、大きく跳びあがったリュウ。懐に飛びこんで、顔面に肘打ちを喰らわせる!
「ぐぅっ」
 しかし次の瞬間、マルコの左手がリュウの首を掴み、持ち上げた。
「しまっ…うあああああああっ」

     ギリギリギリィィィィッ

「詰めが甘いな…小僧。宇宙刑事なれば、もう少し骨のある男だと思っていたがな…[黒岩 竜]!!!」
「何ッ!なぜ、俺の名を…」
 息を吐き出しながら、リュウが口をを開く。
「フフフ…よく知っているぞ…かつてゲドーにありながら、我らを裏切り地球人として生活を続けていた男と女をな…」
「ま…さか…」
「そのまさかよ!キサマの両親、[黒岩 誠][黒岩美佐枝]は我らが元同胞!そして…裏切り者には死の制裁を加える!」
「よせ…やめろ……!」
 ふらつく足でマルコの腕に攻撃を加えるも、それはダメージにもならない。
「ふはははは…、キサマの(まなこ)でよく見るがよい。キサマを育てた、両親の死に際をなッ!!!」
 次の瞬間、首の縛めが解け、放り投げられたリュウの目の前には見なれた建物が見えた。
 両親が事故死し、生まれて間も無いリュウを引き取り、ともに生活を続けた我が家……
「親父ッ、お袋ッ!!!」
 立つ事すらままならない身体を引きずるように歩き、扉をくぐる。
「………!」
 居間に足を踏み入れた瞬間、リュウの視線が凍りついた。
「…親父…お袋……」
 部屋一帯に鮮血が飛びちり、部屋の中央に両親の変わり果てた姿があった。
「親父ぃッ!!!」
 血だまりの中で倒れている父親の前にかけつけ、その手を握る。
「……竜…竜か……?」
「あぁ、俺だよ。帰って来たんだよ!」
「フフフ…ざまァないな。解ってはいた事とは言え、ドーガごときに遅れを取るとは…私も老いたと言うわけかな……」
もはや虫の息で、父親…誠が呟く。
「寝言言ってんじゃねェよ親父ッ!俺に一度も負けた事ねぇクセに!勝ち逃げする気かよ…!」
「この後に及んで憎まれ口か…?かわらんな、流石、私の息子だ…」
 刃に貫かれた腹を押さえ、苦しそうに笑う。
「あぁそうだよ!俺は、アンタの…黒岩 誠の息子、黒岩 竜だよッ!」
「フ…。どうやら私の思惑どおり、立派な息子に成長したようだ。お前の両親も、天国で喜んでいるだろうよ」
「んだよ……今生の別れみたいなセリフ吐いてんじゃねぇよ。死ぬな…死ぬなよ…」
 半狂乱になりながら、血まみれの父親の身体を揺らす。
「残念だが…これは私の天命のようだ……。…いいか、竜。お前は、生きろ。どんな事があっても、笑って生きて行け。そうすれば…お前は……うぐっ………。」
「バカ野郎!喋るな親父!今すぐ病院連れてってやるから!お袋だってきっと助かる!」
 そんなリュウの懇願を、父は首を振って否定した。
「美佐枝はもう事切れとる…。私ももうすぐ美佐枝の元へ逝く事になるさ……。竜よ。しがない育ての父からの最後の頼みだ。…生きろ。笑って生きろ。笑えば全てが上手くいく、きっとな……」
 そう言い終えると、父の全身からガクッと力が抜けた。
「親父ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!」
 育ての父の死に、リュウが絶叫した。血は繋がってないと言えど、息子である自分を愛してくれ、またリュウ自身も愛した最愛の両親の死。両の(まなこ)に、涙が筋を作って流れ落ちた。
「……!」
 次の瞬間、リュウは家を飛び出していた。玄関を越えると、そこにはマルコの姿が。言いようの無い怒りが、リュウの身体を駆け巡った。
「てめぇらは…命を…何だと思ってやがんだ…!裏切ったとしても、仲間だったはずの親父やお袋を、笑いながら殺した……。貴様らだけは、貴様らだけは許さねェぞ、ゲドー!!」
「許さなければなんとする?ココでキサマは死ぬ定めなのだ!」
 今一度、ドゥルバスターを振り下ろすマルコ。身体に蓄積したダメージの所為(せい)で、回避が間に合わない!

     バシィッ!!!

「うおっ!?」
 突如、上空からレーザーが発射され、マルコの目前をかすめた。一瞬、動きが止まる。
「…! サラかっ!?」
 上空を仰ぎ見るリュウ。と、通信機から聞きなれた相棒の声が響いた。
『リュウ![ペガサスセイバー]が到着したわ!』
 はるか宇宙空間にペガサスセイバーの勇姿がゆっくりとその姿を現した。
「助かったぜ、サラ! サポートしてくれ!ゲドーの構成員と遭遇、戦闘中だ!」
『何、戦闘中なの? もう!無茶しすぎよ! …いいわ。これからコンバットスーツを伝送するからっ』
「おう、待ってましたって奴だぜ!」
『コンバットスーツ;コードネーム[ヴォルター]。伝送システム、オールグリーン。リュウ![昇華(しょうか)]システム、スタンバイ!!』
 ブリッジで操作パネルのキィを叩き、サラが声を上げる。
「昇華?」
『ヴォルターのコンバットスーツ装着システムよ。早く[昇華]してッ!』
「よしッ。…覚悟しろ、ゲドー!これからが本当の勝負だ」

 次の瞬間、リュウの身体を、漆黒に輝くコンバットスーツが包んでいた。
「宇宙刑事・ヴォルター!!!」


宇宙刑事ヴォルターが、コンバットスーツを装着するタイムは、わずか0.3ミリ秒に過ぎない。
では、[昇華]システムをもう一度見てみよう。

宇宙空間に漂う闇黒粒子・ダークマターを、時空航行艦[ペガサスセイバー] が吸収、増幅する。
増幅された闇黒粒子(ダークマター)が特殊金属[ハイ・ダークメタル]へと転換され、
ヴォルターに、昇華・装着されるのだ!


「ゲドー!この地球を、かけがえの無い生命を、貴様らの好きにさせるわけにはいかないッ!」
 リュウ…いや、宇宙刑事ヴォルターが叫ぶ。
「しゃらくさいわ!殺れ、ドーガ!!!」
 マルコが吼えると、またも空間の狭間からドーガの群れが襲い掛かってきた。
 しかし、[昇華]したヴォルターにとっては恐れるにたらず!
「ダーク・シューター!!」
 左腰のホルスターから小銃を抜き、ドーガに向けて掃射する。悲鳴をあげ消滅するドーガ。
 討ちもらしたドーガを格闘で打ちのめし、残すはマルコのみとなった。
「ほぅ…できるようだな。しかし惜しいな。キサマはここで死ぬ。出でよッ、ドガモンスター[ギャンザー]!!!」
 マルコが声を上げると、真っ赤な甲羅を持ったカニのようなモンスターが空間を引き裂いて現れた。
「てめぇッ、逃げるのか!!?」
「フ…キサマが生き延びる事ができれば、相手をしてやるさ……生きていればな。フハハハハハハ……」
 高笑いを残してマルコは姿を消した。
「くっ…」
『よそ見してないのッ!モンスターが来るわよ!』
 ヴォルターの通信機からサラの声が響く。
「…解ってら! 来やがれ、バケモン!!!」

     ゴガァァァァァァッ

 唸り声をあげてカニの怪物が襲いかかってくる。
「なろッ…ダーク・シューターッ!!」
 漆黒のビームがギャンザーを捉える!が、そのビームも固い甲羅に阻まれてしまう。
「何ッ!?……ぐわっ!」
 そのまま突っ込んだギャンザーの体当たりをモロに喰らい、大きく吹っ飛ばされるヴォルター。
「くそっ…なんてェ装甲してやがる! ならこれでどうだ!」
 またも突っ込んでくるギャンザーに向けて、またもダーク・シューターを放つ。
『ちょ、ちょっと!さっき効かないって解ったでしょう!?』
 サラが通信機に向かって叫ぶ。
「…まァ見てなって! うぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
 近づくギャンザー。しかしヴォルターは攻撃をやめない。ダーク・シューターの銃口とギャンザーの身体が密着しようとしたその時!

     バシィィッ!!!

「ゴガッ!!?」
 ギャンザーの甲羅から小規模の爆発が起こった。突然の事にたじろぐギャンザー。その隙をヴォルターは見逃さなかった。
「せいッ!!!」
 爆発が起こったところめがけてヴォルターの鉄拳が炸裂する。その衝撃でギャンザーが吹っ飛んだ。
『な…何が起こったの?』
 一瞬の出来事に、サラも状況がよく飲み込めていないようだ。
「…ダーク・シューターで奴の甲羅の同じトコずっと撃ちつづけてたんだよ。…1ミリの誤差も無しにな」
『すごい…!よく思いついたわね』
「親父の受け売りさ。…"力を一点に集中すれば、どんなに強固な壁も砕ける"…ってな」

…サンキュ、親父。

「さァて、そろそろ終わりにしようぜ、カニのバケモン!」


 1次元、2次元、3次元、4次元…そのいずれからも超越した次元の狭間、「ドガス・ゾーン」。ゲドー大首領・ビィグ=ドガス自らが造り上げた空間の中に、ゲドーの根城[ゲドーフォートレス]があった。

「宇宙刑事め…。ドガス・ゾーンを展開しろ!奴を引きずり込ませるのだ!」
 ビィグ=ドガスの声がゲドーフォートレス内に響いた。
「了解。ドガス・ゾーン展開ッ!!」
 幹部らしい風体の男がレバーを引き降ろす。次の瞬間、空間に裂け目が生じ、そこからドガス・ゾーンが現れた…!


「な、何だ…空間が……! サラ、サラ!」
 突如、自らの周りを覆った謎の空間に戦慄するヴォルター!
『…気をつけてヴォルター! あなたの居る空間に、謎の異空間が発生したわ!』

―――フフフ…この[ドガス・ゾーン]では、モンスターは数十倍の力を得るのだ。キサマも終わりだ、宇宙刑事……!

 空間内に、マルコの声が響く。
「へッ、上等だ!」

     ギュォォォォォ…

「うわッ!!?」
 突然、自分の目の前に現れた巨大なハサミを食らい、ヴォルターが吹き飛ばされた。
「ちィ…。どーやら数十倍ってのはダテじゃなさそうだな。…だがッ!」
 またもハサミの攻撃を受けるが、こんどは紙一重でかわす!
「…何処に居る……。よしっ[プラズマ・スコープ]!」
 ヴォルターのコンピュータが空間の位相を読み、敵の居所を割り出す。
「見つけたぜ…カニ野郎![ヴォルティック・スナイパー]!!」
 長距離用ライフルでギャンザーを捉える。
「シュートォォッ!」

     バシュゥッ!

「ゴガッ! ゴガァァァァッ!!!」
 右目にエネルギー弾を直撃され、苦しむギャンザー。
「そろそろ終わりにしてやるぜ![レーザー・ブレード]ッ!!!」
ヴォルターの剣が青白く輝く。宇宙刑事の証とも言うべき必殺武器、レーザー・ブレードだ。
「うぉぉぉぉぉぉぉっ!」
 ギャンザーの懐に飛びこみ、大きくブレードを振りかぶった。

 レーザー・ブレードの軌跡がV字に輝き、ギャンザーを斬り裂く。たちまち断末魔の声をあげ、ギャンザーは大爆発を起こしたのだった…。


東京から少し離れた山の中、共同墓地の一角に、リュウの姿があった。
 リュウの前には二つの卒塔婆が立っている。…ゲドーの攻撃により命を落した両親のものだ。
「親父…お袋…。俺、宇宙刑事になったぜ。すげぇだろ?なんてったってあのバード星が誇る銀河連邦警察のトップなんだからよ。……へへっ。なぁ親父。…俺、もっともっと強くならなきゃならねェ。いまよりもっと強くなって、絶対にゲドーを叩きのめす!ゲドーの最後の一人をぶっ飛ばすまで……それまで俺、ココにはもどらない」
 リュウの頬に、涙の筋が伝わる。が、それでもリュウは笑っていた。笑って…いた。
「…俺……」
「リュウ……」
 ふと、リュウの背後にサラが姿を現した。
「…な、なんだよ。…俺、泣いてなんかねぇぞ……。約束だもんな……親父との…。“笑って生きていけ”って……」
 涙声になりながら、それでも、それでも必死で笑顔になりながら、リュウが呟く。ぐしぐしと腕で涙を拭い、くるっと振り返り、今できる最高の笑顔をサラに向けた。
「よし、行こうぜサラ。今日からいつもの2倍のメニューで特訓だ!」
「……うん。こっちも手は抜かないわよ〜」
「上等!」
 拳を上に突き上げ、リュウが大声で叫んだ。
「来やがれゲドー!!!俺は絶対に倒れねーぞ!闘って闘って、闘いぬいて!必ず貴様らの野望を叩きツブしてやるぜッ!!!」
 黒岩 竜……宇宙刑事ヴォルター。
 新たなる宇宙刑事の闘いが、今始まった……!



次回予告

 打倒ゲドーを胸に誓い、特訓を続けるリュウ。しかし、思う様に成果は上がらず、焦りばかりがつのってゆく…。
 そんな中、新たなるゲドーの刺客が地球に迫る! 力を存分に引き出せないヴォルターは勝機を見出す事ができるのか?

『昇華』せよ! 宇宙刑事ヴォルター!!

次回「鉄拳!柔よく剛を制すべし」


−漆黒に輝く勇気を見たか!?−


インデックスに戻る