八代演歌はあの独特のハスキーボイスと切々と語りかけるような歌い方にあります。

この独特のハスキーボイスが故に八代亜紀が好きだというファンがたくさんいます。

深夜便での長距離トラックの運転手、遠洋漁業の漁師さん等々です。

 ここは女性受刑者達が更正のための日々を過ごしている刑務所の舞台です。

八代亜紀がステージで演歌を歌い始めると女性受刑者達はハンカチで目頭を

押さえます。彼女たちの心中に切々と訴えかけるような八代亜紀の歌声、そして

歌詞の一節一節が受刑者達の胸を打ち、涙を誘うのです。

 八代亜紀さんがこうやって刑務所の慰問に通うようになって20年が過ぎると言います。

一口に20年と言いますが、並大抵の事ではないと思います。八代亜紀はデビュー以来

常に第一線で活躍してきました。それなりの地位も名声も手にした大歌手です。

その歌手がこうやって罪を犯し、社会の隅に追いやられた人達の心を慰めるために

刑務所に通い詰めたと言うことを、今回の特集番組で初めて知りました。

他の歌手の方々の中にも、そう言った人が居られるのかも知れませんが、本当に

素晴らしいことだと思います。

 演歌に限らず、歌や音楽の持つ力は大きいと思います。人それぞれに育ってきた

過程の中で様々な歌に出会い、音楽に出会います。そんな歌や音楽の中には

受刑者達が社会にいた頃、耳にしていたものもたくさんあるはずです。

そんな歌に出会った時、彼女たちの心の中にはどんな思いが去来するのでしょうか。

その心中を思いやるとき、受刑者ならずとも胸の内が熱くなるのを感じます。

思わず目頭を押さえてしまいます。そして演歌歌手「八代亜紀」は受刑者に語りかけます。

「罪を償って早く社会に戻ってきてください。お父さんやお母さんの元に戻ってきてください。」

飾り気のない率直な言葉が、再び受刑者の胸を打つのです。

「雨、雨、降れ、降れ、もっと降れ、私のいい人連れてこい....」彼女達の思いはかつての

恋人の事でしょうか。それとも愛する夫や子供達の事でしょうか。会場に降り立った

八代亜紀と受刑者達が一緒になって歌い始めます。繰り返し、繰り返し。歌は尽きることが

ありません。八代亜紀の手と受刑者の手が、スポットライトの中でしっかりと結ばれています。

 きっと受刑者の心には二度と再び、このような所に入る事だけはしたくないという思いが

湧いて来ているのではないでしょうか。本当にそうあって欲しいと思います。

八代亜紀さんの心が受刑者の心を打ち、演歌が心と心をつないでいるのです。

ハスキーな声がいつまでもいつまでも耳の奥底に残っています。

「お酒は温めの燗がいい、肴はあぶったイカでいい、女は無口な方がいい.....」

                                   2000年11月14日掲載

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