雪を求めて中国勝山、蒜山を行く

城下町暖簾くぐれば雛の宿   勝利

雪がほんの少し小やみになった頃、蒜山三座が姿を現しました。

 中国勝山は中国自動車道落合インターから一般道を走り二十分位のところにある小さな町です。町の生い立ちを

見ますと、三浦氏三万二千石の城下町とあります。町の中心は旭川の畔に開けています。昔から陸路や水路の要衝

であったところです。陸路では出雲街道の宿場町でもあり、水路では高瀬舟の終着点でもあったようです。

   

勝山の背後の山はすっかり雪化粧をしていました。

町の横を流れている川は旭川です。川添いにはかつて高瀬舟が行き来した時代の石垣が残っています。

 私達夫婦は三月八日、蒜山に雪を見にいこうと言うことがきっかけで、その途中に立ち寄りました。この週の三月

三日には雛祭りにちなむイベントが行われていました。その日、家内と友人数人がこの町を訪れました。その時は

お客さんが多くゆっくり見ることが出来なかったと言うことで、じゃあ今回蒜山に行く途中なので寄ってみようと言う

ことになったのです。

 今年は三月に入って逆に冷え込み冬に逆戻りしてしまいました。この日も小雪が舞うようなお天気でした。勝山に

着き駅前の無料駐車場に車を停め、町の通りに入りました。檜通りと名付けられたこの通りは町の入り口に当たる

ところで、アーケイドも木で作られていました。通りの中心には大きな陣太鼓が飾られていました。何かこの町に

ゆかりのあるものなのでしょうか。

   

檜通りと名付けられた通りです。通りの中央には陣太鼓が飾ってありました。

どのお店もこのようにお雛様を飾って客を迎えてくれます。

 この通りを抜け町並み保存地区に入ります。暖簾通りと名付けられた通りの入り口に、武家屋敷館という案内板が

立っていました。坂道を登っていくと明徳寺というお寺の横に出ます。更に道案内に沿って歩いて行くと両側に民家の

建ち並んだ細い路地になります。この通りに一軒だけ昔のままの建物が残っています。三浦藩の家老に継ぐ役職に

あった人の家だそうです。中には入りませんでしたが、昔の面影をそのまま伝えている静かな佇まいでした。

   

細い通りに面した武家屋敷、昔の面影をそのまま今日に伝えています。

 この通りを抜けると墓地に行き当たります。墓地の奥にはお寺があります。大きなお寺が四つ並んでいます。お寺の

横には神社もありました。山の麓にあるこの一帯は聖域のようです。墓地やお寺の前の細い道は出雲街道です。神社

前に通じる大きな道には桜並木がありました。花の頃にはさぞかし美しい眺めだろうと思われます。

   

大きなお寺や神社の並んでいる一角です。

   

この一角に至る大きな道路のほとりには桜の並木がありました。花の頃にはさぞかし美しい景色ではないでしょうか。

 この町で感じたことは小さい町ながら町全体が非常に洗練されていて、まとまりが良いことです。誰か専属の演出家

がいて、これだけの町作りが出来ているのかと思うくらいのセンスの良さを感じます。町の皆さんが心を一つにして

この町と町の伝統を大切にしておられるのではないかという感じを強く受けました。

 ここには「御前酒」と言う名で有名な造り酒屋があります。その酒屋さんの真向かいにレストランがあります。蔵を

改造したと思われる建物には大きな梁がむき出しになっています。なかなか雰囲気の良いレストランです。店内では

手作りの民芸品が売られ、大きな陶製のお面が展示販売されていました。

 私は食事が運ばれてくる間、格子のある高い窓越しに牡丹雪が舞うのを見ていました。降っては止み、又降ると

いったことの繰り返しでした。酒蔵の窓から降る雪を見るに似た風情のある眺めでした。

 食事が終わり道向かいの酒屋さんに立ち寄りました。先週、家内が買ってきたお酒がおいしかったので、もう一本

買おうと言うことで立ち寄ったのです。その日も店内には色んなお雛様が飾ってありました。まずは利き酒をと言う

ことで、何本か利き酒をさせて貰いました。その中の一本が気に入ったので買いました。

 その後、店内を眺めていて一本が二万円以上する酒がありましたので、こんな高い酒を買う人があるのですかと

店の人に聞いてみました。限定で二百本だけ作っている酒だそうです。愛好家がいて、すぐ売り切れてしまうのだ

そうです。店の人が私の奢りで一杯飲んでみますかと言って下さったので、遠慮せずに利き酒をさせて貰いました。

何とも言えず上品で爽やかな口触りのお酒でした。さすがは高級酒です。お酒は葡萄酒と同じ醸造酒です。葡萄酒

には独特の酸味や渋みがありますが、お酒には少なくとも渋みを感じません。ワインとお酒はどこかで共通なところ

があり、ワイン好きにもお酒の良さが浸透しつつあるようです。高級酒の中には葡萄酒に似た味わいのものもある

ようです。

 今回はお酒について一つ勉強しました。一般的にお酒はそのまま置いておくと、お酢になってしまうのだと思いこんで

いました。しかし、暗いところで冷蔵庫のような一定の温度で保管しておくと、更に熟成しておいしくなるのだそうです。

そんなところも葡萄酒に似ています。

   

左は勝山町役場です。周辺には民家もありとても落ち着いた佇まいでした。

   

雄町米を使って醸造するという酒屋さん、蔵の扉にはこんな立派な装飾が施されていました。

店の中には色んな雛飾りが飾られていました。素晴らしい演出です。

 食事を終え、家内が先日来たときに立ち寄ったという店を数件訪ねました。一軒は草木染めを作り売っている店

です。床はたたきと呼ばれる土がむき出しになった土間になっています。これも草木染めかと思われるほど、きれいな

色に染め上げられたハンカチがたくさん置かれていました。その他、手作りと思われる色んな装飾品が展示販売

されていました。焼き物もありました。部屋の一角には手機織が置かれていました。今もこの機械で草木染めの糸を

織って織られるようです。

 次に立ち寄った店はKEN工房という明かりを売りにした店でした。蔦を編み上げ、その上に和紙を貼ったシンプル

なものでした。蔦の素朴さと和紙の持つ温かみが中からの照明に良く合っていました。店番をしておられた若い女性

はステンドグラスの電気スタンドの細工中でした。売り切れたものを補充しているとの事でした。倉敷からこちらに

移り住んでおられるとのことでした。夫婦で製作されたものを売っているようです。その他、町を詳細に探訪すれば

色んなお店を見つける事が出来るようです。

   

暖簾通りを名付けられた通りです。右の写真のように店毎に異なるデザインの暖簾がかかっています。

   

左のような手機で草木染めの糸が織られています。

ここの店内にも特徴ある雛飾りがありました。

 私達はこの町を後に車をとばして蒜山に向かいました。雪は止むことなく降り続いています。旭川の川沿いの道を

ひたすら北上します。途中、湯原温泉郷に入ります。真賀温泉や足温泉(たるおんせん)があります。真賀温泉は道と

裏山に挟まれた狭い土地に身を寄せ合うように古い旅館が建ち並んでいます。足温泉の公共浴場は近年建て変えら

れたということで新しい建物が川の向こうに見えます。

 これら湯原温泉郷の入り口を抜け、やがて湯原インターに入ります。ここからまた高速道路「米子自動車道」と

なります。高速道路を走る間も雪は降り続いていました。天気予報通りどうやら大雪になりそうです。

 蒜山サービスエリアに着いた頃、周辺はたくさんの雪が積もっていました。そして大粒の牡丹雪が降っていました。

サービスエリアでほんの少し休んで国民休暇村に向かいました。休暇村の周辺はまさに銀世界でした。駐車場に

車を入れて温かい建物の中に入りました。ロビーは家族連れで大変賑わっていました。小さな子供を連れた家族が

多いようです。すでに屋外ではソリに乗って楽しんでいる家族や雪合戦をしている家族もいました。雪だるまを作って

いる子供達もいました。

 部屋から眺める景色には格別な味わいがあります。窓の前には広々とした雪景色が広がっていました。夏は牛の

牧場だったところです。従って、わずかに柵の先端を残して全ては雪の中に埋まっていました。二月が比較的温か

かったせいか一時は雪も溶けかけたと聞いていましたが、また、いっぺんに冬へ逆戻りしたようです。

 私達は旅の荷物を解き一段落して温泉に行きました。温泉では温かい湯が溢れていました。すでに何名か入って

おられましたが、ひしめき合うほどのものではなく、ゆったりと温まることが出来ました。

 夕食は大きな食堂でした。ほとんど満席の状態でした。家内は洋食を私は和食を予約していました。その場で蟹の

追加料理を二品注文しました。しかし、追加が必要にないほどのボリュームでした。飲み物もお酒ありビールありで

焼酎の湯割りも注文しました。風呂上がりのビールの味は格別でした。

 食事が済んだ頃、館内放送がありました。これから雪の中でのイベントがあるのだそうです。そう言えば国民休暇村

では大抵夕食後何らかのイベントを行っているようです。今回は雪の中に小さなかまくらを作り、その中に蝋燭を灯す

イベントでした。すでに、かまくらの形はだいたい出来ており、その周辺や上にほんの少し雪を乗せるだけになって

いました。かまくらの中に灯を灯すとなかなか幻想的でした。あまりきれいには写せませんでしたが、デジカメで記念

写真も撮りました。

   

部屋に入りカーテンを開ければ窓の外は広大な雪景色でした。

夕食後こんな小さなかまくらを作り灯を点しました。

 私達がベッドに入る頃も雪は間断なく降り続いていました。明くる日カーテンを開けると昨晩のかまくらも半分くらい

雪に埋まっていました。昨日、子供達が駆け回った足跡もすっかり消えていました。かなりなたくさん降ったようです。

遠く蒜山三座が霞んでいます。ことに山頂は真っ黒い雲に覆われていました。

 私達が朝風呂に入っている頃、東の空が急に明るくなってきました。雪も小やみになり、薄日が差し始めたのです。

雲間から朝日が姿を見せました。幾筋もの光が帯となって地上に降り注いでいます。これを天使の梯子だと言う

のだそうです。とても美しい眺めです。しかし、この景色も長くは続きませんでした。朝食を終わった頃から再び雪が

降り始めました。

    

雲が割れてその間から朝日が射し込んだ瞬間です。幻想的な眺めです。

    

私達の背後には雄大な蒜山が横たわっています。すべてが雪の中です。

 そして、ホテルを出る頃には再び激しい雪になりました。いつまでもじっとしているわけにもいかないので車に降り

積もった雪を取り除き駐車場を出ました。途中、土産物屋に立ち寄り白樺林の側にまで行きました。この頃又雪は

止んで青空がほんのわずかな時間見えていました。私達はこのまま立ち去るのも心残りで塩釜の方を目指してみま

した。しかし、ほんの数キロ走ったところで諦めました。除雪はしてあるのですが、その後降った雪が圧雪になり大変

滑りやすくなっていたのです。おまけに起伏の多い道なので尚更滑りやすいのです。これから先は行けそうもないと

判断し引き返しました。帰る途中も何度か横滑りしました。雪道用のタイヤでさえこんな状態なのです。

   

おなじみの蒜山のトーテンポールです。雪の中なのでいっそう色鮮やかに見えました。

売店の軒に下がったつららの列です。

   

夏は大勢の観光客で賑わう白樺林ですが今は誰ひとりいません。

ほんの一瞬青空が顔をのぞかせ明るい朝の光が降り注ぎました。

 元のところまで引き返し蒜山インターに向かいました。入り口では雪道走行と言うことでタイヤチェックをしていま

した。チェーン装着にはなっていないようです。こうして高速道路に入り一気に山を下りました。やがて湯原インター

の当たりまで来ると雪も小やみになり道路の雪も溶け始めていました。ほんの少しの標高の違いでこうまでも異なる

のかと驚きました。緊張の糸もほぐれました。この後一気に真庭SAまで帰りました。

 今回は雪が見たいと言うことがきっかけで蒜山に行きました。倉敷からですとほんの数時間で銀世界なのです。

以前、山陰に行ったり、遠くは金沢にまで行ったことがありましたが、こんな手近なところに、こんな雪があるのです。

久々にゆっくりと雪の中で過ごした休日でした。

                                                  2003年4月6日掲載

あの町この町のページへ戻る

ホームへ戻る