吊り橋のゆらり揺られて藤の花  勝利

滑床の町、松野町の広報に掲載していただきました。ありがとう御座いました。

 

雨上がりの松野町周辺の山々は雲の中にあった。

掲載写真は2001年5月6日〜5月7日に撮影したものです。

 愛媛県の大洲から目的地の松野町に向けては国道441号線が走っている。一山越える山道

である。海岸線を走る国道56号線は宇和島市内を経由する道である。いずれの道を経由しても

松野町に向かうことは出来る。今回、行きは国道441号線を走り、帰りは国道56号線を走った。

国道56号線では白装束に身を固め、大きなリュックサックを背にしたお遍路さん達と行き交った。

測道には花壇が作られ、お遍路さんの為と思われる休憩用の椅子も置かれている。この道は、

お遍路さん達の歩く道でもあるのだ。

 現在、高速道路は大洲まで開通している。大洲から先の宇和島までは四国横断自動車道の工事

が急ピッチで進められている。宇和島まで高速道路が開通すれば、JR線同様(JRも宇和島が終着

駅となっている)宇和島を終着点とする高速道路が全線開通となる。

 その昔、宇和島までは遥かに遠いところであった。倉敷から宇和島まで行くには連絡船で四国に

渡り、四国からは予讃線に乗って松山まで行き、松山で乗り換えて更に宇和島までという大変時間

を要するコースであった。特に予讃線は単線であり、登りと下りのすれ違いの度に待ち時間が必要

であった。高速道路が開通すれば宇和島まで約4時間、更に滑床までは1時間半位の行程である。

所要時間は随分短縮されることとなる。

 行く時は、しまなみ海道を通り今治まで、今治の町並みを抜けて、松山までは山越えの一般国道

を走り、松山からは再び高速道路(松山自動車道)にのって、大洲インターチェンジで再び一般国道

に入るというコースであった。随分と回り道をしたように感じたが、着いた時間を見ると、そんなに

時間を要してはいなかった。

 昨年、滑床を訪れた時は秋もまだ浅い季節だった。木々の黄葉がやっと始まりかけたばかりだった。

黄葉には少し早かったものの、あまりの景観美に是非もう一度来てみたいと思っていた。今度行くの

なら新緑の季節が良い。そうも思っていた。そんな訳で、初夏の入り口にあった5月の連休にした。

 滑床のある松野町に着いた時は雨だった。一時激しく降り、やがて小雨となり薄日も射し始めた。

山にかかった霧が立ち上り、新緑が目に眩しい。周辺の山には椎の木が多いのか、山肌を黄色く

色取るほどに花が咲いている。私達は松野町の道の駅で小休止をとり、滑床に向かった。

松野町の道の駅のすぐ裏側には川が流れている。その川向こうには一両だけの客車が走っていた。

 道の駅からは、おおよそ1時間少しで「森の国ホテル」に着く。ホテルに着いた時、小降りながら

雨は少し残っていた。しかし、両脇にせまる山の頂の空は明るくなり始めていた。

 ホテルへのチェックインには少し早く、車に荷物を置いたままで、山歩きをすることにした。滑床

は目前の急峻な山から一挙に流れ落ちる谷川である。その流れは絶えることなく、又、少しぐらい

の雨では濁ることもないようだ。川は青く透き通っており、たくさんの観光客が、やまめ釣りの竿を

伸ばしていた。

   

雲が切れ日差しが差し込むと河床の岩は白く輝き、周辺の木々は新緑が光る。

 私と家内は、その川のほとりの遊歩道を上流目指して歩いた。時々、上から下りてくる人とすれ

違う。中には本格的ないでたちの釣り人もいる。上流にもいくつかのポイントがあるのだろうか。

この川にはヤマメやニジマスなどがいるらしい。下流ではこれら川魚の養殖もしている。

 私達が歩き始めてしばらくすると、やっと薄日が射し始めた。新緑の葉を透かして洩れてくる日

の光は眩しい。日の光が谷に射し込むと、木々の若葉が日の光に透かされて、周辺が緑一色と

なる。そして、露出した巨岩も緑に染まる。濡れた川底の岩肌は白く光り、流れ落ちる水は轟々

と白く泡立ち、実に幻想的な景色に変わる。

   

重畳たる岩又岩の谷が続く。河床に垂れ下がるように枝を伸ばしたツツジに花が咲いていた。

 渓谷の地図には、いくつもの見所が書かれており、その場所に着くと説明板が立っている。説明

板はなくとも、どこを眺めても絵になる景色だ。昨年の秋に訪れたときとは、また異なった雰囲気

である。こうして1時間余り歩き、上流の千畳敷まで行ってUターンをした。道は雨上がりではあり、

ぬかるんでいた。しかし、全体的には石を敷き詰めた遊歩道が谷川の上流まで続き、良く整備

されている。帰り道で眺めた日本百名滝の一つに数えられている「雪輪の滝」の眺めは素晴らしい

ものであった。昔、滑床の近くに、土佐と宇和島を結ぶ街道があったと言われている。この道は、

この滝を眺めるのに非常に良い位置にあって、旅人もしばし旅の疲れを忘れたと言われるほど、

さらさらと流れ落ちる水の流れは美しい。

   

さらさらと流れ落ちる「雪輪の滝」、そして目の前にそそり立つように迫る山並み。

谷の周辺は鬱蒼たる森林だ。

   

左は「ウツギ」、右は「サワフタギ」共に白い花。白い花は清楚で美しい。

 私達は一旦ホテル横の駐車場に戻り、荷物を整えてホテルにチェックインした。部屋に落ち着い

て時計を見ると、午後5時であった。案内されたとおり、ホテルの端の露天風呂のある大浴場に

行った。弱アルカリ性の湯は少しヌルッとしており、肌をなでると心地よい。露天風呂に入ったり、

出たりしている内に、すっかりのぼせてしまった。温泉はぬるいようでも、こたえるものらしい。

廊下に出ると山の冷気が心地よい。

 部屋に戻り一休みする。うとうととしている内に午後6時となった。今夜の食事は和食と決めて

おり、準備されている「森の国ロッジ」に向かう。ロッジはホテルから少し離れたところに建って

いる。ロッジでの食事は私達を含めて3組だけであった。貸し切りのような静けさの中で、一品

一品丁寧な説明があり、運ばれてくる。生ビール、ワイン、地酒等が心地よい酔いを誘う。先程

まで明るかった屋外も、やがて薄暗くなり、窓から漏れる光に浮かび上がったもみじの若葉が

風の中で静かに揺れている。親切なもてなしと、心地よい酔いと、おいしい料理の数々、しばし

時間も止まったような夕暮れのひとときであった。

 部屋に戻ると窓の外では川の音が途切れなく続いている。運転の疲れからか、いつしか布団

を被って寝てしまっていた。夜中に雨の音を聞いた。

 明くる日も朝から雨だった。散歩の予定を取り消して、朝食前に一風呂浴びに行く。そして、身の

回り品を片づけて朝食にいく。今朝も雨の中、秋にこの地を訪れた時のように、窓の外には親子

連れの猿が来ていた。

出発前の森の国ホテル玄関

 朝食を終え、精算を済ませて、カーナビを宇和島方面にセットし出発した。一気に昨日立ち寄った

松野町の道の駅を目指す。ここは虹の森公園と言われており、ガラス工房や「おさかな館」がある。

ホテルのサービスで「おさかな館」の入場券を貰っていたので立ち寄ってみた。さすがに平日と

あって館内は閑散としていた。松野町が経営している「おさかな館」は実にユニークな博物館だった。

大半の魚は、この周辺に住む淡水魚だった。中でも珍しいのは四万十川にも、わずかしか棲息して

いないといわれている「アカメ」という魚を繁殖飼育していることだった。すずき科だと言われる

この魚は本当に目が赤い。不気味な赤い色をしている。こんな魚に川の中で出会ったら、ぞっとする

ような不気味さである。博物館では稚魚の養殖も試みている。

「おさかな館」で飼育されている幻の魚とも言われている「アカメ」

赤く光る目の色が不気味だ。

 その他、アマゾン川に住んでいるピラルクーや、古代魚の生き残りといわれている等が、たくさん

飼われていて、海の魚ばかりを見慣れた私達には珍しい博物館であった。隣の道の駅では地元

で取れた農産物などが直売されている。

 私達は国道56号線を通って宇和島市内に入った。駅前には大きなビロウジュの並木が南国

らしい雰囲気を醸し出している。駅前の観光案内所で二、三の観光スポットを聞いて宇和島城に

登ってみた。宇和島は小さな地方都市である。宇和島城自体も小さなお城であった。しかし、お城

を取り囲む森は自然のままで、珍しい植生も少なくない。楠や椋の木や榎の巨木がある。楠は

丁度、開花期を迎えており、爽やかな風に乗って漂ってくる香りが何とも心地よい。頂上までは

さしたる距離ではないが、それでも汗ばむような陽気であった。

  

宇和島城の城下町、目の前には海が広がっている。小さな天守閣だが昔の面影をとどめている。

 私達はお城から下り、観光案内所で聞いていた郷土料理を食べさせてくれるという店に入った。

ここで家内は「ジャコテン」や「ふくめん」がセットになった郷土料理を注文し、私も、これも郷土料理

である「さつま定食」を注文した。両方とも素朴な味わいの、いささか変わった料理であった。

 昼食を終え、帰りが遅くなることを考えて、他の観光地は諦めて、ひたすら倉敷を目指す事に

した。高速道路を乗り継いで倉敷まで一挙にとばした。大洲インターから松山自動車道、そして

高松自動車道、瀬戸大橋自動車道と乗り継いで約4時間少々で児島インターに帰った。

 帰りの休憩は二度だけ、楽な運転であった。

                                              2001年7月1日掲載

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