黒部立山アルペンルート

松本インターから大町温泉へ

 私達は松本インターで一般道に下りました。このインターとは何度か往き来する度にすっかりなじみになったところ

です。いつもの事ながら、インターチェンジの手前のサービスエリアで顔を洗い、朝のすがすがしい空気を胸いっぱいに

吸い込みました。先年、行った事のある有名な大王わさび園の側を通り、一路、大町温泉を目指しました。大町温泉の

コンビニで、その日の朝食と昼食を買いました。これも毎回、同じパターンになりました。

大町温泉から扇沢へ

 町の中を抜けると田舎道にさしかかります。道の両側にはリンゴ園が点在します。すでに真っ赤に色づいたリンゴが

重たげにぶら下がっています。温泉街を横目に見ながら更に車を進めます。こんなに早い時間だというのに、扇沢を

目指す車が列になっています。対向車線からは、次のお客さんを迎えに行くのでしょうか、列をなしてバスが何台も

下りてきます。このあたりでも、紅葉はすでに少しずつ始まっていました。

扇沢到着

 結構、早い時間でしたが扇沢にはたくさんの車が駐車しており、道の両脇にも駐車しています。大変な人出のようです。

幸いにして、まだ駐車場は空いていました。しかし、ここが埋まってしまうのは時間の問題のような気がしました。扇沢で

車を降り、荷物を整え登山靴を履き、山歩きの準備をしました。

 今日は申し分のない晴天のようです。トロリーバス乗り場の裏側は紅葉が始まったばかりのようです。私達は団体さん達

に取り囲まれるようにしてバスを待つ列に並びました。大変な賑わいです。トロリーバスは何台かがまとまって列を作り出発

します。従って、乗れなかった人は出発したバスと入れ替わりに入ってくるバスを待つ間、ここで数十分は立っていなければ

なりません。幸にも私達は立ち席でしたが乗車する事が出来ました。

大町温泉側からの出発点「扇沢駅」

扇沢から黒部ダムへ

 途中、登りバスと下りバスがすれ違います。このトンネルの中には「黒部の太陽」という映画の中で、壮絶な工事場面と

して描かれていた破砕帯があります。今はトンネルの一部となっており、バスに流れている説明によってしか知ることは

出来ませんが、相当な難工事であったようです。

トロリーバスに乗って出発

 黒部ダムには約15分位で到着します。バス停からダム堰堤まで長い階段が続きます。歩き慣れない人にとっては結構

キツイ階段です。何人ものお年寄りが途中で休んでいました。

 堰堤にたどり着くと急に冷気が体を包みます。運良く、放水が行われている期間でした。ダムの中程から噴霧状となった

水が勢い良く吹き出ています。実に巨大なダムです。ダムの一角には殉職者を祀った像が置かれております。また、山から

の新鮮な水が湧き出し、観光客の喉を潤しています。

   

ダムの堰堤を歩く人達、水煙を上げてほとばしり落ちるダムの水

ダムのほとりでの朝食

 私達は一服する間もなく、堰堤を歩いて対岸を目指しました。今日の宿はダム湖のほとりにある「ロッジくろよん」です。

まずは朝食を済ませ、ロッジに向かうことにしました。対岸には温かい日差しが差し込み、風もなく穏やかな湖が目の前に

広がっています。

 朝の湖岸の景色を眺めながら朝食を済ませた後、ロッジに向かいました。ロッジの周辺は大きなブナが林立し、その中に

埋まるように三角屋根の建物が建っていました。早朝であるにも関わらず、ロッジではすでに受け入れ態勢が整っており、

今夜泊まることになる屋根裏部屋に通されました。宿泊代は前払い制でした。部屋に荷物を置いて身軽になったところで

外に出てみました。

   

三角屋根のロッジ、ロッジの下はキャンプ場

 特別な予定がなかった私達は、とりあえず湖を走る観光船に乗ってみることにしました。観光船は70人位を乗せることの

出来る小さな船です。船はダムの堰堤近くの船着き場を出発し、上流に向かいます。上流には、当初、私達が泊まる予定に

していた山小屋があります。ここまで行ってUターンします。湖のほとりを歩いて、ここまで来るとすれば3時間以上かかる

そうですが、船ですとわずかに数十分という距離です。直線コースだと意外に近いようです。

 船の行き帰りの対岸には素晴らしい紅葉が広がります。遙か彼方には切り立った山並みが続きます。すべて二千メートル

を遙かに越えるような山々です。すそ野の紅葉と荒々しく切り立った山の織りなす景色は、ただただ見事という他はないような

美しさです。

   

船より眺める周辺の景色、紅葉の向こうには切り立った岩肌が見える

黒部湖周辺を歩く

 船は瞬く間に出発地点に戻りました。船を降りてからロッジより更に奥の方を探索してみることにしました。一歩山中に

入ってみますと船から眺める景色とは随分異なります。ブナや檜の間には初めて目にするような木々が生い茂り、赤や

黄色等、色とりどりに色づいています。それらの葉っぱが真っ青に澄み切った空からの日の光を浴びて、それは色鮮やかに

透き通って見えるのです。本当にたとえようのない美しさです。足下には真っ赤に色づいた草花の実が光っています。そして

ブナの切り株にはたくさんのキノコが顔を出しています。さながらキノコの宝庫と言ったところです。

   

ダム湖周辺の山の中、何百年を経たような巨木が立っている

 更に歩を進めると道の途中は大きな谷によって区切られています。この沢はかつての大水の際、押し流されたという

おびただしい土砂が堆積したものだそうです。大量の土石が、そのすさまじさを物語っているようです。

   

   

見上げれば目の覚めるような黄葉、足下には真っ赤な実が色づいている

ロッジでの一夜

 いささか歩き疲れた私達は、少し早めにロッジへ引き返すことにしました。ロッジにはすでに数人の宿泊客が来ていました。

私達の部屋は三階の大部屋の隣、とんがり屋根の屋根裏部屋とも言うべき天井の斜めになった部屋でした。外観は小さな

ロッジに見えますが、収容人員は百数十人とのことで、本来は屋根裏にあたる部分まで部屋として最大限利用しているよう

でした。

 トイレ、洗面所も2、3階が共用になっていました。歩くとミシミシと音のするような廊下で、いかにも安普請といった建物で

した。しかし、こういう山中です。仕方ないでしょう。しばらく部屋で休んだ後、放送があって風呂に行きました。風呂は比較的

大きく、きれいな風呂でした。熱いお湯を心行くまで味わいました。身も心もすっかりリフレッシュしたような感じで、実に

すがすがしい気持になりました。

 風呂から上がった後は、しばらく部屋で横になり、うとうととしていました。この日は、この周辺でも気温は比較的高く、

暑くもなく寒くもないと行った快適な気温でした。低く薄いベニヤ板一枚だけの天井に、ともすれば頭をぶつかりそうになり、

現に仲間の一人は何度もぶつけていました。

 比較的早い夕食が始まりました。ビールや酒は現金支払いでした。疲れた体にアルコールの心地良い酔いが回ります。

夕食のおかずは、すべてが外部から持ち込んだ素材でした。この当たりで取れるような素材を使ったものはありません

でした。それでも、おなかが空いていたせいか、何でもおいしく食べる事が出来ました。

 宿泊者の大半は団体旅行で来た人達のようでした。ほとんどのツアーは大町温泉か富山サイドの温泉地を設定する

のですが、こういった山小屋のようなところを選ぶ企画もあるようです。

 窓の外は煌々と月の輝く湖畔の景色でした。残念ながら、降りしきるような星空は見られませんでした。それでも澄み切った

夜空にはオリオン座がくっきりと輝いていました。翌日は少し強行軍になることと、昨晩はほとんど寝ていないこともあって、

みんな部屋に帰るとぐっすり眠ってしまいました。この宿は自家発電でした。従って消灯時間があることと、テレビもなく部屋に

帰ればただ寝るだけという簡素な宿でした。疲れた体のためには丁度良かったのですが、五人寝るのには部屋が狭く、結局

Mさんは夜中にこっそり大部屋に移動しました。彼には申し訳ないことをしました。

黒部ダムから黒部平、大観望へ

 明くる日は出発の準備を早めにして、朝食を取りました。団体旅行者が早朝より乗り場に押し寄せるであろう事が予想

されたからです。私達をここまで運んでくれたMさんとはダムの堰堤で別れました。彼には扇沢まで引き返して貰い、車を

富山の立山まで回送して貰うためです。

 私達4人は立山方面に向けてケーブルカーに乗ります。バスの発車までには、まだ時間がありましたので堰堤の周辺で

写真撮影をしたりしていました。その内に、一番のバスで着いた一団が続々とケーブルカーの乗り場に向かって歩き始め

ました。先を越されては、せっかく朝早く出かけた意味がありません。私達は大慌てで引き返しました。こんな早い時間に

こんなに大勢の人が来るとは思ってもいませんでした。

早朝の堰堤には人影はない、ダム建設で亡くなられた人の慰霊碑

 8時10分発のケーブルカーで黒部平に向かいました。ここでしばらく時間待ちをした後に、今度は立山ロープウエイで

一気に大観峰に向かいました。このロープウエイはワンスパン支柱なしという珍しくスケールの大きいものです。スピードも

速く、一気に山頂近くの立山トンネルに着きます。

   

黒部ダムからケーブルカーで黒部平へ、ロープウエイで大観望へ

 黒部平でも、そうでしたが乗り換え駅の度事に土産物屋があります。これから冬のオフシーズンを前に、今はかきいれどき

のようです。大観望では建て屋の屋上が展望台となっており登ってみました。見下ろせば今登ってきたロープウエイがすごい

早さで降りていきます。すぐ側にはこれから越えようとしている山が迫っています。切り立った崖には色とりどりの木々が

色付き、ほんとうに目の覚めるような美しさです。遙か彼方には名だたる山々が連なり、雄大な山脈を形作っています。

しかし、残念ながら昨日ほどの澄み切った景色ではなく、どこか霞のかかったような山の景色です。天気の崩れは意外に

早いのかも知れません。

   

黒部平で記念写真、大観望からの雄大な景色

大観望から室堂へ

 大観望からは再びトンネルです。トンネルは扇沢から黒部ダムに向かった時のようにトロリーバスで走ります。ここにも

破砕帯があったようでトンネルの中に表示がなされています。トンネルを抜けると、そこは室堂です。

 室堂は広大な山頂に広がる台地状の場所です。駅の建物を一歩出ると私達が抜けてきたトンネルのある山があり、裾野は

広大な景色が広がります。みくりが池があり、みどり池があります。湿原が広がり、地獄谷があります。ここら周辺は活火山

の一部で地獄谷から硫黄の匂いが漂って来ます。雷鳥荘があり雷鳥温泉があります。ここに一泊しても十分楽しめるところ

です。

   

ミクリガ池をバックに、深い谷底からは硫黄の匂いが上がってくる

 遊歩道もきれいに整備されており、道の両脇には這い松をはじめとする高山植物が地を這うように覆っています。ここら

周辺には雷鳥も出てくるそうですが、観光客がこんなに多いと恐れをなしてどこかに潜んでいるのかも知れません。

 私達はみくりが池の周辺を一周して元の場所に戻りました。時間を見計らってMさんに電話をしてみました。すでに立山駅

近くにまで来ているとのことで、これから山を下れば丁度良い時間に落ち合う事が出来そうです。

   

室堂周辺の雄大な展望

   

みどり池を背景に、周辺のはい松の山とバックの切り立った山々

はい松の下の可憐な花(この季節にしては珍しい)

室堂を後に立山駅に

 私達はこの行程の最後から二番目の乗り物、高原バスに乗りました。このバスも低公害のハイブリッドカーだそうです。

幾重にも曲がりくねった道を下っていきます。両サイドには草原と低木に覆われた台地が続きます。 弥陀が原、上の小平、

下の小平と名付けられた美しい景色を両サイドに見ながら低地に向かって走ります。

 この周辺一帯も紅葉が広がり秋一色といった景色です。実に雄大な風景です。登山客でしょうか、ハイカーでしょうか、

何人かずつの集団となって山を下っています。低い茂みの中をグループで歩いている人達もいます。

弥陀ヶ原の雄大な景色

 低地になるに従って大木の林に変わります。杉や檜、ブナと言った大木が深い森を作っています。ここら周辺も立山の

火山活動が活発であった頃には火山灰や溶岩に覆われたところであったようです。すでに、ずっと後の景色となってしまい

ましたが、私達が下ってきたこの道は冬になると完全に道が閉ざされてしまいます。そして春になると除雪が行われます。

その際の目印となる柱が道の両脇に立っています。驚くほどの高さです。冬になるとこの高さまで雪が降り積もるようです。

この周辺は短い秋が終われば急速に冬がやって来るのです。

美女平から立山駅へ

 私達は紅葉の高山地帯からほとんど平地に近いところまで下りてきました。ここからは再びケーブルカーに乗って麓まで

下りていきます。すでに多くの登山客が待っていました。後から後からと大きなリュックを背負った人達が乗り場に詰めかけて

きます。大きな荷物の人達はケーブルカーの先端部に付いている荷物置き場に乗せています。こうしないと狭い車内は

たちまち人と荷物でいっぱいになってしまうからです。

 ケーブルカーはかなり急な坂を下りていきます。さすがに、ここら周辺では、まだ紅葉は見られず、夏の終わりのような

景色でした。これからが徐々に秋本番の景色に変わっていくのでしょう。

一路倉敷へ

 車を扇沢から回送してくれたMさんと落ち合って車に乗りました。後は一路倉敷を目指します。富山平野の稲刈りは

もう終わっていました。道縁の畑には色とりどりのコスモスが咲き乱れています。平野の中に建つ民家は小さな森のように

見えます。家を囲んでいる木々は風よけの為でしょうか、たいていの家の周りは、遠くから見ると小さな森のように見える

のです。そんな景色が広大な平野の中に点々と続きます。やがてこの周辺も深い雪に閉ざされる日は近いのではない

でしょうか。

富山平野の独特なたたずまい(小さな森に囲まれた民家)

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