釣り紀行  その7

―思い出は遙か彼方に―

もう三十年近く前の話になる。その頃は宇和島まで行くとなると大変な長旅だった。

ましてや魚を釣るとなると更に宇和島からタクシーで一時間以上かかるとところまで行かなければならなかった。

同行者は十人、釣り当日は早朝の4時起床。酩酊とまではいかないまでも昨晩の酒が相当残っていた。

船2艘に分乗し沖に出る。沖に出たところで早い朝食をとる。朝食を食べ終わった頃から突き上げるようなむかつきが来て

あっというまもなく腹の中のものがすべて出てしまった。

やはり宇和島は外海に近いせいか、見た目には穏やかに見えていてもうねりが大きいのだ。

私がはじめに堰を切ったようなもので、同乗者みんながげーげーやり始めた。もう一艘の方も状況は同じのようだ。

結局10人の内5人は船酔いがひどく船を下りることになってしまった。

今日の釣りの目的はメジナというカツオに似た小型の回遊魚、従って群の上にいないと釣れない魚だ。

釣り初めの頃はいっこうに当たりがなく場所を次々に変えてみる。その頃からやっと私の船酔いはおさまり始めたようだ。

船頭さんが生きたアジを餌に別な仕掛けで釣って見ろといってくれ、はじめて生きた餌で釣ることになった。

仕掛けを下ろしてしばらくすると猛烈な当たりがある。しかし、経験のないものには底にひっかけたとしか思えないような

強い引きで容易に釣り糸をたぐり寄せることが出来ない。持つ糸が容赦なく指に食い込んでくる。

船頭さんがああせよこうせよと言ってはくれるのだが思うようにはいかない。さんざん手こずってやっとの思いで

水面近くまで引き上げてみると驚くような大物だ。こうして餌になるアジを使いきってしまうまで釣りまくった。

かんぱち、はがつおといった高級魚とされる大物を30匹近く釣った。これだけのものを短時間の間に船に残った5人

の内4人で釣ったのだからすごい。大物が連れなくなってからは又仕掛けを元のさびき釣りに変えて初からの目的で

あったメジナを釣った。

朝の内は何の当たりもなかったのに釣れるわ釣れるわ、いっぺんに4、5匹平均かかってくるのだからたちまちの内に

船倉一杯になってしまった。もったいない話だがクーラーに入りきらずたくさん置いて帰った。

早朝からの大物釣りといい、その後のメジナ釣りといい、こんな釣りを経験したのは後にも先にもこの時だけだ。

その後、この話が刺激になって会社の同僚達が何組か宇和島に行ったのだが、この時以外、誰も同じような経験はしていない。

今になって見れば海も豊かな時代であったのだろうが、夢のような体験だった。

今も釣りの話が出ると自慢話の一つになっている。

漁り火の中でに行く

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