宇宙戦争

 「宇宙戦争」とは実にシンプルな題名の映画である。今までにも幾多の宇宙戦争物や「未知と

の遭遇」のような異星人との出会いをテーマにした映画が作られてきた。そして、今回は「宇宙

戦争」という異星人が人間を襲撃するというSF映画が、監督スティーヴン・スピルバーグと俳優

トム・クルーズというゴールデンコンビで実現した。早くから話題の多かった映画である。

 私は封切り間のない7月4日にMOVIX倉敷でこの映画を見た。すさまじい音響と閃光、そして

破壊と殺戮という、この種の映画には欠かせない恐怖とサスペンスの連続であった。それにし

ても、あのETが持っていた手足と、かつてのSF映画には必ず現れていた火星人まがいのばか

でかい頭の異星人。そして、彼等が操る巨大マシンの頭部も彼等自身の頭に良く似ており、こ

の頭を支える細長い三本足と幾本もの触手を持ったマシン。恐怖感もさることながら少し笑える

ような道具立てであった。実はこの映画、往年のSF作家H.G・ウエルズの小説をモチーフに劇

場映画にしたものであった。従って、小説では火星人が地球を侵略するというと言うことから、

小説の中に描かれた火星人の姿を多少変えて再現したものであった。(かつて、想像上の火星

人はクラゲのような頭に細長い蛸の足のような手足を持った生き物だった)

 また、のっけから異星人登場には欠かせない黒い雲と雷鳴、そしてすさまじい稲光、これも

「未知との遭遇」以来、再三にわたって用いられてきた異星人の登場シーンであった。

 映画は突然湧いてきた黒い雲と強い風、そして雲の中からほとばしる稲光で始まった。この

稲光は全て同じ場所に落ちるのが本来の落雷と異なるところであった。実は後から明かされる

事になるのだが、この光りに乗せて幾体もの異星人がマシン(トライポット)に送り込まれたのだ

った。落雷が終わった後、交差点の真ん中に出来た大きな陥没、この陥没の中からの異様な

音がして幾本もの亀裂が走り、やがて地面を割って見上げるような三本足の怪物(トライポット)

が現れた。

 人類がこの世に誕生する百万年前から、この日のために準備されていたという巨大マシンが

動き始めたのだ。そして目から怪光を発して人や建物を破壊し始める。彼等の目的は何だろう。

地球乗っ取りか、それとも人間を餌にしたいのか。ともかく世界のあちこちで同時に襲撃が始ま

った。「インデペンデンス・デイ」という映画にもでてきた良く似た場面を思い起こさせる。とてつ

もない破壊力だ。我々より遙かに進化した異星人であっても、このような襲撃の仕方しかないの

であろうか。詮索は止めておこう。所詮は人間が考える想像の世界だ。

 さて、トムクルーズは離婚した中年男のわび住まい。ここへ元の奥さんと子供二人がやってく

る。どうやら新しい夫との間に出来た赤ちゃんが奥さんのお腹の中にはいるようだ。彼女と新し

い夫は何かの理由があって奥さんの両親がいるというボストンに出かけるため二人の子供を

一時預けに来たようだ。久々に会う子供の一人は高校生だろうか。生意気盛りの男の子だ。

そして、もう一人は小学生くらいのしっかり者の女の子(ダコタ・ファニング)だ。もちろん主役は

お父さん役のトムクルーズ。

 このお父さん、ひたすら異星人の襲撃から我が子二人を守るためにボストン目指して逃げる。

途中、何度も死ぬような目に遭いながら、そして、すさまじい恐怖感と戦いながら逃げ続ける。

この中で本来の親子の絆を少しずつ取り戻していく。いわば、離散した家族の再生の物語でも

あった。父親不在は決して日本だけの事ではないようだ。離婚率の高いアメリカであればこそ

家族再生は夢なのかも知れない。

 人類を壊滅させるのではないかと思われた異星人にも弱いところはあったようだ。異星人の

破滅は意外な事から始まった。彼等が取り込んだ人間の血液や地球上のものの中には、彼等

異星人に死をもたらすようなバクテリアがたくさん付いていた。そのバクテリアが異星人達の体

を蝕み死に追いやったのだ。

 百万年もの間、地球人を監視し続けてきた異星人にしては実にうかつな事であった。異星人

をやっつけたのは地球上で万物の頂点に立つ人間ではなく、最下層に位置するバクテリアだっ

たというのが面白い。百万年と言えば気の遠くなるような歳月だが、彼等異星人は何のために

百万年もの間、待ち続けたのだろうか。その詮索も止めておこう。とにかく面白くて手に汗握る

ような映画なので是非みなさんにも鑑賞をお勧めしたい。ダコタ・ファニング演ずる女の子が恐

怖のあまり発する絶叫が、今も頭の中に残っている。子役とは思えない迫真の演技だった。

                                        2005年7月5日掲載

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