歌と人生

 先日、NHKの「思い出のメロディ」という番組が放送されました。毎年、お盆前のこの季節に放送される番組です。この

番組で紹介される歌も世代を追う毎に変わって来ました。長い間、私達の親の世代に愛唱歌として親しまれてきた戦前

から戦中、そして戦後にかけてヒットした歌謡曲を中心に構成されてきました。多くは視聴者によるリクエストによって構成

されています。従って、リクエストをしてきた人達の多くは私達の親の世代だったのではないでしょうか。もちろん団塊の

世代である私達も何らかの思い出のある歌であり、口ずさんで来た歌でもありました。

 しかし、ここ数年その内容が変わってきました。歌の中心は昭和35,6年頃以降のものが多くなってきたのです。歌は

世に連れと言いますが、昭和38年は私が高校を卒業し社会人として第一歩を踏み出した年です。時代は高度経済成長期

へ突入していました。経済成長の担い手であった化学産業では、原料源が石炭から石油へと大きく転換した時代でした。

コンビナートという聞き慣れないものが日本各地に作られ、重厚長大が産業の中心となってきたのです。三種の神器と

言われた掃除機や洗濯機、テレビが各家庭に行き渡るようになり、正に経済の黄金時代が到来したのです。そして一方

では労働争議、安保闘争、ベトナム反戦と社会は湧きに湧いた時代でもありました。社会のエネルギーが全ての面に

亘って沸騰した時代であったと言えるのではないでしょうか。

 そんな時代を背景にして演歌が歌番組の中心となり、若者文化の象徴としてフォークソングが大ブームとなりました。

ニューミュージックと言われる新しい分野には、グループサウンズが数多く誕生してきました。演歌では「ああ上野駅」、

「柿の木坂の家」、「リンゴ村から」等、ふる里を捨て故郷を離れた若者達の郷愁を誘うような歌がたくさん作られ、

時代を彩ってきました。

 「赤い鳥」や「トワエモア」と言ったグループが歌う歌や「ワイルドワンズ」や「タイガース」などと言った和製ロック系の

グループもたくさん登場してきました。今回の「思い出のメロディ」の中でも、そう言えばそんなグループもあったなあとか、

こんな歌も聞き覚えがあるなと言うものがたくさんありました。確実に世代交代が進んだことを実感しました。

 これから十年先あるいは二十年先にはどんなリクエスト曲が登場するのでしょうか。今の若者達の歌文化は私達の

世代とは全く異なります。例外的には氷川きよしのような演歌歌手もいますが、演歌と若者達とは遠い存在のように

思われます。そして今の世は長く暗い時代です。世相は混乱し多くの人が生きる希望や目標を見失っているように

思えます。就職浪人やホームレス等という社会から取り残されたような人達をたくさん作り出して来ました。高度経済

成長期には考えられなかったような就職難の時代です。明るく希望に満ちあふれたあの時代から打ちひしがれた暗い

今の時代、歌はやはり世相を映しながら通り過ぎていくのでしょうか。

                                                  2002年8月24日掲載

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