南の島ツバルに学ぶこと

 皆さんはツバルという国をご存じだろうか。世界地図を広げてもらうとニュージーランドの北に

フィジー諸島があり、更にその北にあるエリス諸島とあるのがツバル(TUVALU)だ。首都はフ

ナフチ島にある。九個の珊瑚島からなる小さな島国である。

 今年も世界中で異常気象と思われる災害が多発した。その最たるものがアメリカを二度も襲

ったハリケーンではないだろうか。その他にもアマゾンで大干ばつや、インドや中国では大洪水

が発生している。異常気象による災害は年を追う毎に巨大化し深刻さを増している。

 一方ツバルでは、ある季節になると常習的に海面が上昇し色んな被害が起きている。その一

つは海岸の浸食であり、更に一つは地下からの海水の浸透による被害だ。波による浸食は島

を削るだけでなく、海岸にある貴重な椰子の木を根こそぎ倒し、倒れた椰子が海底の珊瑚礁を

傷つけるという二重の被害を及ぼしている。また、地下からの海水の浸透は内陸部が水浸し

になるだけでなく、塩害により農作物などに深刻な被害を与えている。

 珊瑚島は珊瑚の骨格が何年もかかって堆積し島になったものである。従って、海抜と言って

もせいぜい数メートルの高さしかない。港に設置されている海面計の記録では数ミリの水位上

昇しか観測されていないのに何故このような被害が出ているのだろうか。未だ十分な解明はな

されてはいないが、被害だけは深刻度を増している。このまま推移すれば、いずれ全ての島は

海中に沈んでしまうのではないかと言われている。

 私はツバルという国が、どんな国なのかまったく知らなかった。ただ、海面上昇によって島が

水没の危機にあるという事だけを聞いていた。今回、 岡山県地球温暖化防止活動推進セン

ター主催の「島国ツバルが直面する地球温暖化の危機、そして私達に出来ること」と題する講

演があった。講師は遠藤 秀一さん (NGO Tuvalu Overview 日本事務局代表)であった。電

子メールで案内を貰ったので良い機会だと思い聞きに行った。

 そこで初めてツバルという国の美しさ、住んでいる人々や生活の素朴さ、そして海面上昇に

よる被害の実態を知った。誤解をしていたのは海面上昇の被害が毎日のように続いていると

思っていたのだが、一年のある季節だけの現象であることが分かった。しかし、繰り返し毎年

受けている被害は、小さな島を蝕み続けているわけで深刻さに変わりはない。

 昨年は岡山県や香川県、広島県の一部で台風時に沿岸地帯が海面の上昇による海からの

浸水被害を受けた。実に広範囲に及ぶ被害だった。この被害により私達は海面上昇が現実

のものであることを突きつけられた。今、波によって壊された防波堤の修理や河口一帯の嵩上

げ工事が行われている。この程度の補強工事で対処できるのかどうかはなはだ疑問ではある

が、いま取りうる措置としては仕方のないことなのかも知れない。

 しかし、小さな珊瑚礁の島ツバルにその対策はない。周辺国から遠く離れた珊瑚礁の島には

防波堤を作るようなセメントも砂も砂利もないからだ。今はただ、海面がこれ以上の上昇しな

いことを祈るばかりである。

 海面上昇は言うまでもなく温暖化現象によるものであるが、直ちに二酸化炭素(炭酸ガス)の

排出をやめたとしても、なお幾らかの温度上昇は避けられないと言われている。これほど深刻

な状態であるにも関わらず、アメリカは温暖化防止の京都議定書から離脱をしてしまった。言

うまでもなくエクソンモービル等、アメリカの巨大石油資本が裏で糸を引いているからだ。

 かけがえのないこの地球の環境を一国の政策や巨大資本に委ねておいて良いものだろうか。

私達に出来ることはないのだろうか。そのヒントが、この水没の危機に瀕しているツバルにあ

るというのが講師である遠藤さんの提案であった。ツバルという国は周辺国とも遠く離れた国

である。従って、一部の生活用品を除けば全てが自給自足である。海からは魚を獲り、陸上

では椰子の実やバナナを収穫して生活している。消費したものの多くは石油を使ったものや石

油製品ではなく、すべては自然に返るものばかりだ。

 また、ものを持たない暮らしはお金を必要としない。南の島だから出来ることかも知れないが、

私達の生活は、あまりにも多くの品物に囲まれた生活をしている。消費に慣らされた生活が当

たり前になっている。そう言えば近年、昭和三十年代の生活がクローズアップされている。単な

る懐かしさからだろうか。何もない生活は、さしてお金を必要としなかった。夜は一台のラジオ

を囲んで一家団らんが当たり前の姿だった。今の時代、少し贅沢をしようと思えば残業でもし

て稼がなければならない。いきおい一家団らんの時間は失われてしまう事になる。私達にとっ

てどちらが幸せな事だろうか。青少年の犯罪が増えていることも、凶悪な犯罪が増えているこ

とも、すべては巨大な消費経済によるものではないだろうか。ものを買わなければ生産の必要

はないわけで、工場生産から出てくる膨大な炭酸ガスは大きく削減できるはずである。

 もう一つ深刻な話を聞いたので付け加えておきたい。大気中に排出されている膨大な炭酸ガ

スの一部は海水に溶け込んでいる。海は本来アルカリ性であるが、このまま炭酸ガスが増え

続ければ海水のPHは大きく酸性に傾き、貝や珊瑚や魚に深刻な影響を及ぼすのではないか

と言われている。

 ツバルという国に犯罪はない。警察官はいても何もする事はなく、警察官は仕事を終えると

家へ帰り今夜のおかずを釣ってくると言う話だ。何という大らかな国だろうか。写真で紹介され

た島の子供達の目はきらきらと輝いていた。限りなく美しく、心優しい素朴な人達が住むツバル

を海に沈めるようなことがあってはならない。

NGO Tuvalu Overview     ツバルへのエコツアー等が紹介されています。

                                      2005年11月20日掲載

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