太陽光発電設置物語

地球温暖化防止のために何かをしたい

 我が家のソーラー発電所は2005年6月23日から稼働を開始した。ふり返ってみれば昨年

からの懸案であった。昨年、ピースボートに乗る前に一度話を聞いてみて設置しようと考えてい

た。ところが、その年の国の補助金は既に使い切ってしまったとの事だった。わずかな補助金

だったが、それでは来年にしようと言うことで、その年の話は終わっていた。

 そして、ピースボートに乗って地球一周をして帰ってきた。その旅行中にも何度も地球温暖化

の話があり、CO2削減の必要性についての話を聞いた。また、異常気象現象も何度か見聞き

してきた。そんなわけで、帰ったらソーラー発電を設置したいという思いを一層強くしていた。

 一方、家内はあまり賛成ではなかった。投資額が多い割には見返りが少ないからだ。我が家

は常時二人住まいである。日頃から省エネに徹している事もあって電気の使用量が少なかった。

工事を依頼した「株式会社 城口」に過去の電力使用量を参考に試算して貰うと償却に二十年

近くかかるとの事だった。二十年と言えば私が八十歳を越える歳月であった。それまで生きて

おられるかどうかも分からないものに、そんな投資は出来ないと言うのが家内の言い分だった。

もっともな話であった。

 しかし、私には別な思いがあった。一つには何でも良いから地球温暖化防止のために役に立

つことをしてみたい。二つ目にはいずれ来るであろう石油の高騰や輸入停止など予想外の事態

が生じた時のために準備しておきたい。三つ目には預金をしていてもほとんど利息が付かない

ので、少しでも発電をすれば、その分は投資に対する見返りがあるのではないかと言う考えだ

った。

あまりにもお粗末な援助制度

 こうして乗り気ではなかった家内を説得し設置にこぎつけた。まず、補助金の申請を財団法人

「新エネルギー財団」に行った。取り扱い窓口は「導入促進部 太陽光発電部」となっていた。

資料の取り寄せは私自身が行い、添付資料の準備を含めて「株式会社城口」が全てやってく

れた。

 余談になるが補助金は年を追う毎に縮小されていて、今年の補助金は1キロワット当たり二

万円となっていた。何しろ総枠が少なく大口の申し込みがあれば、たちまち底をつくような状態

だった。いわば早い者勝ちのような状態で、昨年申し込みをしようと思った時にはすでに申し込

みを締め切っていた。

 しかし、補助金はすぐ出るわけではなく完成後、所定の資料を揃え審査を得た後に私の口座

に払い込まれるようになっていた。公の制度とはこんなものなのかも知れないが、私に言わせ

れば、わずかな補助金のために何でここまでしなければならないのかと思っている。

 また、補助金は国ばかりではなく地方公共団体からも出ている。しかし、全ての地方公共団体

がそうしているわけではないようだ。倉敷市にはあってもお隣の岡山市にはないようである。こ

れはラッキーとしか言いようがない。倉敷市の場合は市税の完納者に限りという前提付きで1

キロワット当たり三万円の補助金が支給される。但し、こちらにも総枠があって早い者勝ちに

なっている。

補助金は少なくても生産の追いつかない太陽光発電装置

 こうして、「新エネルギー財団」からの補助金枠の確保が出来、いよいよ設置となった。ところ

が太陽光発電のモジュール(パネル)の生産が追いつかないという返事が来た。入荷は約三ヶ

月先になるという話であった。こうなると補助金枠を確保している「新エネルギー財団」の方は

良いが、倉敷市の補助金の確保は難しくなってくる。しかし、生産が追いつかないとは如何とも

し難いことであった。そんなにも売れているのだろうか。それとも輸出が多くて生産が追いつか

ないのだろうか。いずれにせよメーカーにとってはうれしい悲鳴だろう。

 私の家に設置するモジュールは発電効率を一段とアップしたシャープの最新型を予定してい

た。モジュールも年を追う毎に改良されているようだ。モジュール自体の改良に加え、反射して

逃げる光までも捉えようと言う工夫がされているものだった。パネルの表面はざらざらで光が乱

反射するようになっていた。

 約三ヶ月先と言えば八月か九月の予定であった。当分先のことだと諦めていたら突然入荷が

決まり、6月の中旬には設置できますと言う電話だった。メーカーの出先が配慮して先にこちら

へ回してくれたとの事だった。

 いざ設置となると解決しておかなければならない問題があった。実は太陽光発電の設置に先

立って、耐用年数を過ぎていた雨樋を交換した。その時、屋根に上がってみると屋根が沈み込

むような感じがするという話だった。城口の担当者が押入の狭い出入り口から天井裏を見てみ

ると、のじ板という屋根瓦を載せている板が杉板で、この板を張っている角材も少し細いようだ

との事だった。点検後、「株式会社 城口」は屋根補強のためモジュールを載せる南面だけに、

もう一段屋根を載せたいという提案を持ってきた。しかし、これを行うと設置費用の総額は更に

アップし、償却の二十年がもっと先になってしまい、とても乗れない相談だった。

いざ、設置工事へ

 結局、城口の社員二人が天井裏に入り、屋根裏からのじ板や角材の補強をする事になった。

例年ならば六月と言えば曇り空か雨の日が多いのだが、今年に限ってカンカン照りのお天気だ

った。蒸し風呂のような屋根裏に入り補強作業が二日間続いた。担当者には誠に気の毒な作

業であった。

 こうして準備万端整ったところでモジュールの設置を行った。作業は四人で行われた。朝から

夕方までかかって都合16枚のモジュールが二階の屋根南面に設置された。公称出力2.51

キロワットの発電量が期待されるモジュールだった。

 そして電気配線は翌日に行われた。中国電力との取引計器が二つ、その内の一つは中国電

力サイドからの買電のためのもの、もう一つ発電した余剰電力を中国電力に売り渡すための

我が家の積算電力量計になっていた。その上には太陽光発電の直流を交流に変換するイン

バータが設置された。そして、室内には小さなコントロールパネルと非常用のコンセントが取り

付けられた。コントロールパネルはインバータの操作が出来ると伴に発電量のモニターが出来

るようになっていた。また、非常用コンセントは中電側にトラブルがあって、長期に電気の使用

が不可能な時、日中であれば太陽光発電でカバー出来るようになっていた。これは太陽光発電

を設置している者にのみ許された小さな贅沢かも知れなかった。

発電開始

 こうして、中国電力との取引開始日の六月二十三日から本格稼働を開始した。時間帯によっ

ても、また、天候によっても発電量は大きく変化するようだ。しかし、公称出力までの発電は容

易ではなく、晴天の日中でも1.7kw位の発電量である。私が考えていた発電量よりは多少少

ないようだ。また、向こう二年間は毎日発電量を記録するように義務づけられている。そして、

その結果は「株式会社 城口」のデータになると伴に「新エネルギー財団」に報告するようになっ

ていた。国としては非常に貴重なデータになるのではないだろうか。これをモニター代金だと思

えば、わずかばかりの補助金も安いものだ。

苦い思い出と時代の変化

 さて、電気と言えば半ば国営に近いような企業が独占販売し、私達は決められた価格で有無

を言わさず買わされていた。それでも便利な電気を供給してもらえるだけでも幸せだった。その

昔、山奥の一軒家などは工事費がかかるという事だけで電気がなかったところもたくさんあった。

 私達が子供だった頃、定額という積算電力計のない家があった。我が家も長くそうであった。

積算電力計がないので電気は使おうが使うまいが一定料金を徴収されていた。家の中にはロ

ータリースイッチがついていて細いヒューズが入っていた。我が家で使っていた電気器具と言え

ば30wか40wの裸電球一個とラジオ位のものであった。母がアイロンを使うと必ずヒューズが

切れていた。ロータリースイッチの中にヒューズの予備は三本くらいしかなく、それを使い切って

しまうと中国電力の営業所に頼んで取り替えて貰わなければならなかった。電力会社がヒュー

ズを入れて使用電力を制限していたのだ。子供心に、いくらでも電気の使える家を見て羨ましく

惨めな思いをしたことが何度もあった。

 今こうして、我が家で発電した電気をかつては売って貰っていた電力会社に売り渡す。こんな

日が来ようとは誰が考えたであろうか。私にとっては子供時代の惨めな思いがあっただけに感

慨無量であった。

 国からは電力会社に対し水力や火力、原子力以外の発電をしなさいという義務が課せられて

いる。これは「RPS法」というもので、太陽光や風力などの新エネルギーにより販売電力の一定

量を賄うことを義務づけた法律だ。従って、電力会社は風力発電など新エネルギーによる発電

をしながら、お客さんが発電した余剰電力を買う事でカバーしている。言い換えれば、お客さん

の余剰電力を買わなければ「RPS法」に定められた新エネルギーによる発電量をカバーする

事が出来ないのだ。かつて電力会社とお客さんの関係は売ってやるものと売って頂くものの関

係だった。昼間だけの事とは言え、その立場が逆転したのである。実に痛快であった。

クールビズ等より他にやることが

 一方、国の方では「地球温暖化防止の京都議定書」批准後、色んなキャンペーンを行って省

エネルギーを呼びかけている。その一つがクールビズだが、こんな事で果たして省エネになるの

だろうか。省エネという実質効果ではなく、単なるジェスチャーに過ぎないのではないだろうか。

暑さを我慢していい加減な議論をするよりは、クーラーを効かした部屋で十分な議論を尽くして

貰いたい。

 そうではなく、もっと他に行うべき事はたくさんあるのではないだろうか。聞くところによればド

イツでは原子力発電を廃棄した後、近隣の国から電力を買っていた。そして、今は地球温暖化

防止のために太陽光発電や風力発電を盛んに奨励している。国を挙げて国民が取り組む新エ

ネルギーによる発電を応援しているのだ。設備購入に補助金を出し、買い上げる電力代金を

高くして国民の取り組みをバックアップしているのだ。

原子力発電は時代への逆行

 一方、日本は原子力発電に更にシフトしようとしている。老朽化した原子力発電所の延命化

を図り、その上、更に新たな原子力発電所を建設しようとしている。先日も我が家の太陽光発

電設備を見て補助金の話しになった。実は涙金ほどの補助金だと言ったら、聞いた人が異口

同音に原子力発電にお金を投ずるくらいなら太陽光発電に何故もっと補助金を出さないのかと

言っていた。心ある人ならみんな同じような事を考えているようだ。

 原子力発電は使用済みになった核燃料や廃棄物の処理に困っている。その上、原子力発電

所そのものの解体処分に莫大な費用がかかる。永遠の負の財産となっている。こんなものを、

この上も作り続けようとしているのである。政治家や電力会社の幹部はどんな考えをしている

のだろうか。耐用年数が二十年と言われているモジュールの廃棄物としての処理をCO2に置

き換えてみると、ほんのわずかな量である。また、製造のためのCO2負荷も発電によるCO2

削減量に比較すれば実にわずかなものである。

 こんな事を考え合わせると大いに推奨すべき太陽光発電であるが、何故、国は冷たく扱うの

だろうか。政策の裏にはやはり献金が絡んでいるような気がしてならない。

    

モジュールを設置した屋根の上

    

左がコントロールパネル、右が積算電力量計(左が中国電力の計器、左が我が家の計器)

                                   2005年7月4日掲載

政治経済社会問題のページへ戻る

ホームへ戻る