診断と情報

 日頃から感じていることを書いてみようと思います。私は長い間、電気屋として電気設備の新設や更新、また工事監督、

検収、故障調査や修理など、おおよそ電気に関わることは、ほとんど経験してきました。勤務先が化学工場であり専門家

が少なく、分野別に専業化することが出来なかったからです。結果的に見れば私にとってその方が良かったのではないか

と思っています。専業化してしまうと、その分野については深く関わることになりますが、横との繋がりが希薄になり総合的

な見方が出来なくなるからです。

 それはさておき、先日も風邪で近くのお医者さんに行きました。行きつけの医院です。受付でも簡単な症状を聞かれま

した。もちろん体温も測りました。そして診断です。診断といっても問診が大半を占めます。いつ頃からその症状は出始

めましたか。食欲はありますか。お通じはどうですか。痛いのですか、それとも腹が張る感じなのですか。のどの痛みは

ありませんか。等々です。聞いたことは事細かにカルテに書かれていきます。

 そして聴診器を当てて、胸そして背中の音を聞きます。次に診察台へ横になり腹の音を聞きます。そして触診が始まり

ます。入念に腹を押さえて痛いところはないかと聞かれます。その後、診察結果が出ます。問診、聴診、触診から風邪の

ウイルスが腸の方に来ているのではないかという事でした。

 このように、お医者さんとは言え患者からの情報無しでは適切な診断結果は下せません。私の関わってきた電気屋と

しての仕事も似たような事がたくさんあります。通常、回転している設備や動いている設備の場合、その部分の異常を

感知する方法として音を聞きます。音は感覚的なものですから数値には表せません。そこで振動測定器を使います。

振動の大小は数値で表せますから、次回の測定値と比較することが出来ます。経過をたどりながらその数値の変化に

注目します。また、動いている部分の温度を見ます。これも触診で行います。じっと触っておれるくらいの温度であれば、

自分の体温位か多少高いくらいです。しかし、火傷をしそうなくらい高ければ、これは何らか異常が起きていると言うこと

になります。温度測定器で温度を測ってみます。音が異常で振動が大きく温度が高いと言うことになれば、すぐに運転を

止めて点検修理となります。

 一方、まったく故障など予想もしていなかった電動機(モータ)が突然止まってしまうときがあります。保護装置が働いて

停止する時です。そんな時、故障した設備からある程度のことは読みとれますが、原因究明となるとやはり側面的な情報

が必要です。完全停止に至るまでに何らかの異常兆候はなかったのか。運転電流はどれぐらいであったのか、軸受け部

の温度はどうっだったのか、異常音はなかったのか、振動測定はしているのか、動かしているのがポンプであれば詰まり

やすいものを流してはいなかったか等々です。お医者さんが患者に対して尋ねるのと同じ事を聞きます。こうして壊れたり

故障した設備を分解し、更に現場の人の情報を加味して故障原因を断定します。

 プロセスはお医者さんの場合も私達技術屋も同じ事なのです。従って、情報が多いほど適切な対策がとれるという事

になります。お医者さんで一番難しいのは小児科のお医者さんではないでしょうか。赤ちゃんはただ苦しんだり泣いたり

するだけで情報をくれないからです。お医者さん自らが診断した結果だけが情報の全てです。あとは経験の積み重ねと

先輩達が書き残してくれた文献が頼りです。

 余談になりますが、今、全国的に小児科医が大変不足していると言われています。診断が難しい反面、医療報酬が

少ないというのが、その理由のようです。子供の出生率が低く少子化現象が続いています。子供の命はより一層貴重

なものになっています。小児科医がいないために尊い命が失われていることも少なくないようです。出来るだけ早く解決

する事を願っています。

 さて、話を元に戻しますが、このように情報を正しく伝えると言うことは問題点を簡潔にかく適切に解決することに繋

がります。皆さんもお医者さんに診て貰うときには出来るだけ症状を正確にたくさん伝えるようにして下さい。きっと貴方

の病気も早く治るのではないかと確信しています。

                                                 2003年1月20日掲載

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