紫煙の中

 先日、出張で東京に行きました。早朝に家を出て、用事が済んだら、また新幹線に乗って言う、とんぼ返りの

出張でした。そんなわけで新幹線は往復とも「のぞみ」でした。選んでそうしたわけではありませんが、偶然に

そうなってしまいました。ご存じのように「のぞみ」は全席指定の新幹線です。ビジネス特急として利用している

人も多いのではないでしょうか。私のようなサラリーマン風の人もたくさん乗っていました。

 ところで、先日タバコ代が上がりました。値上がりしても、また、「喫煙は体に良くありません」と再三言われ

ながらも、喫煙者はいっこうに減りません。それどころか、若い女性の間にも喫煙者が徐々に増えているよう

です。

 アメリカでは喫煙による肺ガンや循環器系の病気が増え、医療費が国の財政をも圧迫するとして厳しく喫煙

を戒めています。タバコの箱への注意書きはもちろんのこと、公共の場での喫煙も厳しく制限されています。

喫煙者の健康障害は統計学上からも見ても明らかになっています。

 ところで、帰りの「のぞみ」は禁煙の指定席がありませんでした。仕方なく喫煙の車両に乗らざるを得ません

でした。覚悟していたとは言え、東京から岡山までは苦痛と我慢の4時間でした。昔、会議と言えば、もうもう

とした煙の中での会議でした。そんな雰囲気を久々に味わいました。家に帰ったら家内に、何でこんなに

たばこ臭いのかと不思議がられました。帰りの「のぞみ」が禁煙車両ではなかったことを話して納得して貰い

ました。

 最近、外から帰って、たばこ臭いのは宴会があった時くらいです。会社での会議も禁煙となっています。

また、事務所には喫煙コーナーを設置しています。職場環境は以前よりは随分良くなり、昔のように煙害に

悩まされることは少なくなりました。

 それにしても日本人は寛大な国民です。喫煙による迷惑を感じていても、喫煙者に向かってタバコをやめて

下さいと言うものがあまりいません。アメリカやヨーロッパでは、こうはいかないのではないでしょうか。大抵、

誰か注意するはずです。

 かくいう私も以前は喫煙者でした。しかし、体質的に喫煙は合わなかったのでしょうか。体に色んな障害が

出ました。ところが、悪いと分かっていながらタバコの誘惑は断ちがたいのです。今でも酒の席などでふと

飲みたくなって、友人に一本分けて貰うことがあります。しかし、喫煙後の後味の悪さは例えようがありません。

後悔の念と口の中の苦さが重なって、ああ、また飲んでしまったと後悔する事が多いのです。喫煙者はタバコ

をやめても夢を見ると言います。喫煙の夢です。私にも何度か、そんな経験がありました。それぐらい喫煙の

誘惑は断ちがたいものなのかも知れません。

 不思議でならないのは飛行機の禁煙席についてです。新幹線の場合はは喫煙席と禁煙席とでは車両が

違います。従って、煙が流れてくることはありません。しかし、飛行機の場合には客席に仕切りがありません。

椅子の列一つで禁煙席と喫煙席に分かれています。従って、後ろの人が吸った煙は、直接、前の席にも

流れていきます。

 以前、乗った飛行機の中での出来事です。禁煙席に座っていた女性は喘息か呼吸器系の病気のようでした。

ところが、彼女の斜め後ろに座っていた男の人が、すぱすぱとタバコを吸い始めたのです。その途端に女性

は咳をし始めました。それにも関わらず、男の人は気が付かないのか、平気でタバコを吸い続けたのです。

女の人はたまりかねてスチュワーデスに席を変えて貰いました。しかし、ほんの少し席が離れただけでした。

飛行機の中での禁煙席は何の役にも立たない禁煙席なのです。そんな事からか、最近では全席禁煙の

飛行機も増えたようです。

 喫煙は喫煙者自身に害がありますが、喫煙者がくよらせた煙や吐きだした煙には、もっと大きな害がある

ようです。従って、喫煙者が喫煙で病気になろうがなるまいが私の勝手だとは、言ってはおられないのです。

それどころか、タバコを吸わない人は被害者でもあるのです。

 環境問題をこれほどやかましく言うのであれば、まずは身近な煙害を追放するのが先ではないでしょうか。

未だに喫煙者が大きな顔をしているのは日本位のものです。民営化したとは言え、タバコを売っているのは

元はと言えば国営の企業です。その企業が健康に害のあるものをどうどうと売っているとは、どういう事なの

でしょうか。

 日本の医療費も健康保険制度を抜本的に見直さなければならないほど危機的な状態にあります。肺ガンや

循環器系の病気は重症なものが多く、多額の医療費を必要とします。国が国民にタバコを吸わせておいて

患者を作るという、マッチポンプのような事は早くやめさせるべきではないでしょうか。

 喫煙は男性にも女性にも害があるのは言うまでもありません。しかし、特に若い女性の場合は、妊娠や

子育てという役割があります。直接的にも間接的にも胎児や幼児に害を及ぼします。格好にとらわれることなく、

出来れば早く喫煙をやめるべきです。そして、女性ばかりでなく、男性も喫煙をやめるようにしたいものです。

今や、喫煙は小学生にも広がっていると言われています。ほんの一部の子供かも知れませんが、いずれにせよ

タバコがあるから吸いたくなるのです。喫煙には確かに精神を落ち着かせると言う効果はあるようですが、

その効果を認めるとしても害の方が遙かに多いと言うことを考えるべきではないでしょうか。

                                                    2003年8月5日掲載

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