衆院選結果を読み解く

 先の衆院選は自民党の圧倒的な議席獲得に終わった。私にしてみれば予想通りの選挙結果

だった思っている。そもそも今回の解散総選挙のきっかけになったのは郵政民営化問題だった。

衆議院が解散になったのは参議院で郵政民営化問題が否決されたからである。参議院で否決

されたから衆議院を解散するというのも一見強引にも見えるやり方ではあるが、考えてみれば

今までにも何度か同じようなやり方で各種の法案を通してきた。いわば小泉流の手法だと言え

るのではないだろうか。

 そして、参議院で否決されるや間髪を入れず解散総選挙と、次々に新手の方法を駆使して

自民党の反対派のみならず民主党を初めとする野党を押しまくってきた。

 かつて、弱小国の大名だった織田信長は桶狭間の戦いで圧倒的な戦力を有する今川軍を奇

襲攻撃によって破った。桶狭間は信長軍が全国制覇を成し遂げるきっかけとなった戦いであっ

た。今回の抜き打ち的とも思える解散総選挙もこの手法に良く似ている。昔から戦は先手必勝

と言われてきた。解散総選挙と先手を打った小泉さんは初めから勢いが違っていた。恐らく以

前から参議院で否決されたらどうしようという戦術を考えていたに違いない。先手必勝の裏には

用意周到な準備があったのではないだろうか。

 戦というものは世論を勝ち得たものが勝利している。今回の場合も郵政民営化賛成か反対

かという単純でわかりやすい選択肢を提起することによって国民の支持を勝ち得ている。その

上、話題性のある人物を刺客と称して反対派の地元へ送り込んだ。多くは女性候補だった。い

わば敵地に乗り込んで攪乱戦法を行った女忍者「くの一」のようなものである。まさに時代劇を

地で行くような作戦だった。

 一方、民主党の準備不足は否めない。こうなることが読めなかったのだろうか。小泉さんの

今までのやり方を見ていれば、完全とは言えないまでもある程度のことは予測できていたので

はないだろうか。民主党、ことに岡田さんの甘さが際だっている。選挙前にも書いたが民主党

は初めから自民党の反対派の影に隠れてしまっていた。本来は自民党対民主党という図式に

ならなければならないのに民主党が霞んでしまい全くと言って良いくらい見えなかった。これで

は解散総選挙となっても勝てるわけがない。その上、政権への焦りのためかアメリカ訪問では

余計な事まで言ってひんしゅくを買ってしまったこともある。総選挙になってあわてて国民の側

に向いても勝てるわけがない。税金や年金や医療や高齢者の問題等、国民が一番知りたいと

思っていることを何故日頃からアピールして来なかったのだろう。やはり政権ばかりに目が向い

て国民の方に顔を向けていなかったのではないだろうか。そのことが本来は味方になるべき

都市部の住民を敵側に付けてしまったのではないだろうか。今回の投票結果は無党派層と言

われる人達の民主党に対する批判票だと受け取って貰いたい。

 今回、岡山県では長く保守基盤だと言われた二区と四区に新しい風が吹き始めた。民主党

の若手候補が小選挙区の中で二人も当選した。当選した本人は元より、長く保守基盤の牙城

だったことに飽き飽きしていた岡山県民の多くに雲間に青空を見たような気にさせてくれた。候

補者の地道な努力が実を結んだ結果ではないだろうか。

 これからの政治に二世や三世は必要ない。もっと私達庶民に近い存在でなければ私達の痛

みや苦しみは分からない。そういう意味でも長く二世、三世が押さえてきた保守地盤に鉄槌を

打ち込んだ意義は大きい。

 また今回、「くの一」を初め、落下傘部隊と称する地元とは縁もゆかりもない候補者が各地で

選挙を戦った。その筆頭が無所属で出馬したライブドア社長のホリエモンさんだが、彼の知名

度もさることながら地盤、看板、鞄と言われてきた選挙に必ずしも地元と直接利害が結びつく

ような候補者ではなくても戦えるのだという事を見せてくれた。国政は利益誘導型の地方政治

とは異なり国レベルで論じなければならない法案が多い。それだけに地元にとらわれない議員

の誕生が望まれる。

 それにしても今回の選挙では奇妙な現象が見られた。東京など都市部の比例区では自民党

の候補者が足らず社民党の候補者が繰り上げ当選になってしまった。決して自民党の票で当

選したわけではないが結果的にはそうともみえる現象が生じたわけである。

 投票率が下がれば自民党や公明党に有利だと言われてきた。今までの選挙結果を見れば

固定票を持っているところが強く、野党のように浮動票によって議席を増やしてきた党には不

利であった。今回は浮動票の多くが自民党に流れたため、いつもとは異なる現象だった。

 今後の民主党の党勢を伸ばすためには如何に固定票を確保していくかと言うことにかかって

いる。所詮、浮動票は浮動票である。当てにならない気まぐれな票である。しかし、今の民主党

に固定票がどれくらいあるのだろうか。連合が支援しているからといって、この組織の票はか

つて日本社会党を支えた総評のような票ではない。いわば組織の締め付けもない浮動票のよ

うなものである。今後、郵政が民営化されればかつての総評、社会党ブロックと言われた組織

は完全になくなり、民主党にとっての固定票は全く失われてしまう。民主党は何をより所に今後、

党勢を拡大していこうと言うのだろうか。地方に根のない組織はいわば根無し草のようなもので

ある。

 いよいよ、小泉劇場は最大の盛り上がりを見せてきた。郵政以外に何を持ち出すのであろう

か。大型増税だろうか年金制度の更なる改悪だろうか、それとも憲法か。今回、自民党候補に

一票を投じた人は何を考えて票を投じたのだろうか。小泉さんの善人ぶった姿に幻を見たのだ

ろうか。自民党に一票を投じた人は最悪の結果を選んだと言えるのではないだろうか。

 これが歴史の流れというものだろうか。私のように長く保守政治に対抗してきたものの目には、

その変わり様に茫然自失の状態である。人の心は移ろい易いと言うが、少なくとも四十代から

以降の若い人の考え方には異質なものが感じられてならない。この世代に対しては意識して

操作しようというものが現れれば簡単に自分の意のままに出来るのではないだろうか。ヒットラ

ーをここに持ち出すまでもなく、彼のような人物が現れれば簡単に国の方向さえ変えることが

出来るような気がしてならない。反対派だった自民党議員をして右傾化したと言わせ、いったい

国民は何を見ているんだろうと言っている。私に言わせればそのようにし向けてきたのはあん

た達だろうと言いたいところだが現実は彼らが言うとおりである。

 あえて、火中の栗を拾うような結果を生んだ国民は、自らもまたその苦しみを味あわなけれ

ばならないようだ。私はかつて日本社会党にいた頃、いくら呼びかけてもその先にあるものに

目を向けようとしないこの国の人達を見て、この国の人達は戦前のような塗炭の苦しみを味あ

わなければ気がつかない国民だと考えた事があったが、今の状態はまさにその姿そのもので

ある。

 総選挙後のニュースで早くも谷垣財務大臣は増税を匂わすような発言をしている。大増税時

代が来るのは火をみるより明らかなのではないだろうか。

                                      2005年9月14日掲載

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