戦国時代の武将達

 今の世もストレスの多い時代ですが、信長や秀吉、あるいは家康の時代はどうだったのでしょうか。一昨年の

NHK大河ドラマは加賀百万石の基礎を作った前田利家とまつの生涯を描いたものでした。利家とまつ、秀吉と

おね、佐々成政とはる、三者三様の夫婦を通しての出世物語でした。

 ただでさえストレスの多い戦国時代、人々はどのような思いで生きてきたのか非常に興味のあるところです。

主君の命令は絶対と言う時代でした。信長のような気難しい主君の元での部下の心境はどのようなものだった

のでしょうか。また、主君も部下に裏切られないようにするには、それ相応の気遣いと待遇が必要だったはずです。 

 部下は主君の元で出世しようと思えば主君に上手に仕え、かつ手柄も立てなければなりませんでした。一方、

戦場は一つ間違えば死に至るという修羅場でもありました。戦に次ぐ戦では、さぞかし心労も多かったのでは

ないでしょうか。心労と合わせて体力の消耗も相当なものであったと思われます。あの重い甲冑をつけ重い刀を

持ち、あるいは槍を持って戦場を走り回っていたのです。決して大きな体の人ばかりではなかったはずです。

また、食べ物も今のように栄養化の高いものばかりではなかったはずです。それにも関わらず、あの戦国時代の

武将達のほとばしるようなエネルギーは、いったいどこから出ていたのでしょうか。実に不思議でなりません。

 秀吉は自らの身を低くすることで信長に上手に仕えました。もちろん持ち前の才覚が大いにものを言ったに

違いありません。戦国時代は価値観も大きく変わった時代です。鎌倉時代や室町時代までのように家柄だけでは

通用しない時代になっていました。また、戦法も大きく変化した時代です。大将同士が名乗りを上げ、一騎打ちを

して決着を付けるような時代ではありませんでした。足軽達が中心となった鉄砲隊が大きな力を持った時代でした。

 従って、従来の常識はほとんど通用しなくなっていたのです。そんな時代が秀吉のような人間を作り出したと

言えます。一方、物語の主人公利家は昔気質の律儀者でした。かたくなに主君との絆を大切にした人物でした。

従って、秀吉のような才覚の効いた人間を羨ましく思っていたはずです。しかし、真似は出来ませんでした。戦場

での働きも大将自ら槍を持って闘うというタイプでした。別名、槍の又佐と言われた槍の遣い手でした。しかし、

彼の一途な思いや生き方は多くの人達に好感を持たれましたようです。生涯、秀吉とは心許し合う友であったよう

です。気難しい信長にも犬、犬と呼ばれかわいがられたようです。柴田勝家を兄のようにも父のようにも慕って

いました。最後は刀を交える事になりましたが、勝家も利家の立場を思いやり恨みはしませんでした。利家の

人柄と言うべきでしょうか。

 利家や秀吉、あるいは成政を支えたのは、それぞれの妻でした。戦国時代の妻は作家「童門冬二」さんに言わ

せると、夫婦でもあり同士でもあったと言います。単に子供を産んで育てるだけの女ではなく、自らも男達の世界

に出向いて、それ相応の働きをしていたようです。子を産み、育て、そして家の切り盛りをし、刀こそ手にしなかった

ものの、戦国時代を生き抜くための大きな働きをしたようです。

 時には自ら人質となることのありました。戦国時代の女達は逞しく生きていたのです。その代表的な人物が利家

の妻まつでした。男尊女卑の当時のこの国にあって、男の生き様が語り継がれても女のそれはほとんど残って

いないと言われています。その中でも、まつの生涯は色んな事績によって今日まで語り継がれているようです。

それだけ傑出した人物だったようです。男に生まれていれば将軍にもなった女性だとも言われています。利家が

生きている間は利家を支え、利家が死んでからは家康の人質となって前田家を守り通しました。

 今は遠い時代の事となってしまいましたが、かの時代を思う時、さぞかし気苦労(ストレス)の多い時代であった

ろうに、みんなはそれを何によって癒していたのであろうと思うのです。最後にあの専制君主であった信長でさえ、

心の内は孤独で寂しいものであった事を伺わせる詩が残っています。「人生五十年、下天のうちを比ぶれば夢幻

のごとくなり、ひとたび生を得て滅せぬ者のあるべきや」信長も天下統一という志半ばに自分の部下である光秀に

よって殺されます。秀吉も天下に並ぶ者なき存在となっても、常に後を追いかけられるような心境だった様です。

そして、長くはない六十三歳の生涯を終えました。そして糟糠の友である利家も秀吉の後を追うように、この世を

去っていきます。残ったのは家康でした。待ちに待った家康は、とうとう念願であった真の日本統一を果たし、

徳川三百年の礎を築いて天寿を全うします。

 実に長い長い天下統一への道のりでした。幾多の命が戦場に散ったことでしょう。幾多の悲劇があった事でしょう。

日本の戦国時代は徳川幕府の成立を待って幕を閉じるのです。武士達も戦場にかり出されるストレスからは解放

されますが、また、別の意味の苦労が始まります。それは、ある種今の時代にも通じるストレスかも知れません。

                                                   2003年4月17日掲載

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