想像にあまりある巨大な掘っ建て柱は何に使われていたのだろうか

ここに一冊の本がある。「三内丸山遺跡の復元」という本である。著作者は「大林組プロジェクトチーム」である。

大林組は古くから出雲大社に伝わる「金輪造営図」(かなわぞうえいず)に基づいて、実在を疑われていた古代の

出雲大社を想定復元したことでも有名である。

ところが先ほどの発掘により、この建物の一部と思われる柱の一本が発見された。実は幻の建造物ではなかったのである。

今の本殿のあたりに、48メートルもの高さの巨大な木造建築物が建っていたことが事実だと判明したのである。

と同時に、大林組の机上での復元作業による建物も真実味を帯びたものとして、にわかに脚光を浴びることになった。

三内丸山遺跡は縄文時代、今から5500年前〜4000年前までの約1500年間にわたって同じ場所に存在し、

当時にあっては、大都市にふさわしいような巨大集落として存在し続けた事が、発掘を通じて明らかになった。

遺跡から発見されたものの中には、巨大な建造物(大型竪穴住居、大型掘立柱高床建物)や道路、おびただしい

土器や石器などが埋まっている巨大盛り土等、多くの人の手を要したであろう土木工事が至るところに見られる。

(当時の日本列島は推定で約30万人くらいの人口ではなかったかと言われている。特に東日本一帯に人口が集中

していたと言われている)

定住すら驚きであるのに、これだけ大きな集落を形成していたことは縄文時代を根本から問い直さなければならない

今日もなお発掘が続けられており、詳細は今後の発掘を待たなければならないが、今までの発掘調査だけを見ても

他の国の古代遺跡の発掘に並ぶような素晴らしい発見といえるのではないだろうか。

大林組は、現在までの発掘調査を元に、これらの建造物や土木工事がどのようにして行われ、どれくらいの人数で

なければ出来なかった事なのか等、建設会社らしい実証方法に基づいて推定している。それはとりもなおさず、

その当時の集落の大きさや、住んでいた人たちの人数、生活そのものの推定にもつながるようなものである。

大きな建物を建てるときは多くの人手を必要としたであろう

発掘作業でいくら珍しいものを発見したからと言って、それが何の目的で作られたものかが分からなければ単なる

発見で終わってしまう。ましてや5000年もの昔のことともなると、記録に残されたものは何もない。他の発掘や発見

と照らし合わせて想像してみる以外に方法はないのである。

その想像に現代科学のメスを入れるたのが、今回の大林組の取り組みではないだろうか。実際にこれだけのもの

を人間の手とわずかな道具だけで行うとなると、どれくらいの人数が必要なのか。

それから推定して、それだけの人間が必要となると、それを支えた集落の人間はこれくらいでなければならない、と

非常に説得性のある説明が行われている。

また、謎の巨大盛り土にしても、その部分だけを見るのではなく、地形全体から見渡して目的は盛り土にあるのではなく、

むしろ盛り土に囲まれた広場にあるのではないか等、土木建築の専門家らしい指摘も面白い。

こうしてみていくと、この遺跡がこの集落のものだけではなく、むしろこの集落に出入りをしたであろう多くの人々と、

この集落の果たしたであろう役割にまで想像が及ぶのである。

海に面したこの巨大集落からは、この地では産出しないようなものがたくさん発見されている。

糸魚川下流からしか産出しない翡翠や石器の原料である北海道産の黒曜石、石器を木に固定する際に用いたと

思われるアスファルトピッチなどがある。

これらを手に入れるためには、日本列島の東から西への大交流域圏が想定されなければならない。

そして豊富に産出される土器の中には、実用品とはほど遠いようなものもたくさんある。それらのものが何の目的で

作られ何に用いられたか定かではない。形の奇抜さは精神的な豊かさを感じさせられる。

創造性の豊かさは現代人もまねが出来ない

私達はえてして現代と比較して物事を判断しようとするが、少なくとも精神面に於いては、現代とは比較にならぬ位、

豊かで自由さが感じられる。その精神的な豊かさは、それを支える生活の豊かさではなかったのではないだろうか。

アマゾンの奥地に住んでいるヤマノミ族に共通の精神的な豊かさを感じるのである。

大林組は単に実証だけではなく、火炎土器の考察や服飾品の豊かさなどを引き合いに出して、縄文人の精神的

土壌まで考察して見せてくれるのである。素晴らしい本である。是非一度読んでほしい一冊である。

絵や写真はこの本の中のものを使用させて貰いました。

                                                 2000年7月22日掲載


出版:学生社

著者:大林組プロジェクトチーム

題名:三内丸山遺跡の復元

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