さんま

 秋の味覚と言えば「秋刀魚」ではないでしょうか。「秋の刀の魚」当て字だとは思いますが、いかにも、さんまの

事をうまく表現した字だと思います。とがった頭とすらりと伸びた体、銀色に輝く様は「秋」の「刀」の「魚」と言うの

にふさわしい魚体をしています。

 今年は、ことのほか豊漁のようで店頭に出始めて以来、日に日に価格は下がり、今や100円そこそこの値段

になっています。はるばる東北の方から運んで採算がとれるのだろうかと、消費者の立場としてはうれしい反面、

いささか心配もしてしまいます。しかし、こんな価格でも採算がとれるという事は、如何に豊漁であるかという事の

証明でもあります。

 秋刀魚は夏から秋にかけて日本列島の沖合を南から北に向けて北上します。その間に餌をふんだんに取り込

んで大きくなります。太平洋側ですと三陸沖にさしかかった頃が、一番脂がのっておいしいと言われています。

 「目黒の秋刀魚」と言えば落語のネタで知られた話です。遠乗りに出たお殿様が目黒で食べた秋刀魚の味が

忘れられず、家来に命じて取り寄せた秋刀魚を食べたところ、家来が気を利かせて油抜きをした秋刀魚だった

ので、まったく味が違っていました。そこで殿様は、これではない「目黒の秋刀魚」を取り寄せろと家来に命じた

という落ちの付いた話です。

 目黒で秋刀魚が獲れるわけはなく、恐らくは房総沖で獲れた秋刀魚を江戸の魚河岸まで運んでいたのだと思

われます。お殿様が油抜きをした秋刀魚を食べて味が違うと言ったように、秋刀魚にとって旬の油がのっている

ということが命です。その時、お殿様は目黒で食べた時、腹わたまで食べたのでしょうか。秋刀魚の腹わたに関

しては好き嫌いが分かれますが、好きな人にとっては、あの苦みが何とも言えないおいしさのようです。一般的に

動物は獲物を捕まえた際、一番先に食べるのは内臓です。味のほどは分かりませんが内臓には栄養が多いの

です。

 栄養と言えば秋刀魚ほど栄養の豊富な魚はいないと聞いています。一般的に魚の脂には、 EPA(エイコサペン

タエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)が含まれていますが、秋刀魚にはこのEPA、DHAが特に多いと言われて

います。これらには、コレステロールを下げる働きや心筋梗塞や脳梗塞の予防(血液が固まるのを防ぐ)、ガンの

予防などの効果があると言われています。またDHAは、頭を良くする成分としても良く知られています。苦みが美味

しい内臓には、EPA、DHAに加えて牛肉の実に12倍ものビタミンAや血合いの肉には、貧血症状に効果のある

ビタミンB12が他の魚の3倍以上含まれているといいます。その他、ビタミンEといった、美容と健康に欠かせない

様々な栄養がたっぷり含まれているそうです。このように魚の中でもずば抜けて栄養豊かな魚だといえます。安く

て栄養豊富となればこれほどありがたい事はありません。

 料理法もたくさんあるようです。最近は鮮度を保ったまま輸送が出来るようになり、産地でしか味わう事が出来

なかった刺身なども店頭に並んでいます。普通に塩焼きにしてダイコンおろしで食べる方法は最もポピュラーな

方法ですが、みりん焼きにしても煮てもおいしい魚です。工夫すれば様々な食べ方があるようです。

 秋刀魚は太平洋側を回遊する魚かと思っていましたら、裏日本には変わった秋刀魚漁があったと言う事を聞

いて、日本海でも北上していた事を初めて知りました。ところは佐渡ですが、ここでは秋刀魚の手掴み漁が行わ

れていたそうです。今は秋刀魚も激減し、この漁も廃れたようです。藻に産卵する習性を利用した漁だそうです。

船縁に敷いたムシロに藻を下げておき、この藻に産卵しようと寄ってくる秋刀魚をムシロの穴から手を突っ込ん

で捕まえる漁だそうです。その当時、撮影した記録映画を見せていましたが、面白いように捕まえられるのです。

この漁は秋刀魚の産卵期である六月頃だそうで、秋に獲れる秋刀魚とは少し異なるようです。

 大衆魚と言われた鰯の漁獲高が激減しているそうです。その鰯の不足分を埋めて余りある秋刀魚の漁獲量

です。安くて栄養豊富でその上おいしいとくればこれ以上のものはありません。この秋は大いに秋刀魚の味を

楽しみたいものです。余談になりますが、先日、三匹で百円という広告が入っていました。驚くべき価格です。

                                                2003年10月26日掲載

 今年も驚くべき低価格で店頭に並んでいます。今朝の広告には目玉商品として一匹66円と書かれていました。

通常価格でも100円を割っています。今の時代、生の魚でこんなに安いものが他にあるでしょうか。

 我が家では、この時とばかり秋刀魚がしばしば食卓に出てきます。料理も焼くだけでは芸がないので、先日は

炊いて見ました。焼いたものとはひと味違う料理となりました。秋刀魚の食べ方には、これからも色んな工夫が

あっても良いのではないかと思われます。産地フェアーではぬか漬けにした秋刀魚が売られていました。買って

見ましたが生の秋刀魚とは異なる味わいでした。

 最近は保冷技術や輸送手段が改善したせいか、産地と同じように秋刀魚の刺身を食べる事が出来ます。これも

また、今の時代だからこそ出来ることです。秋の味覚を心ゆくまで堪能しながら、感謝の毎日を送っています。

                                                 2004年9月28日掲載

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