プロ野球の衰退

一リーグ制が活性化につながるのか

 変わらないのは政治の世界だけではないらしい。球界を牛耳る者達が変わらなければならないのに、頑なに

それをしようとしないのは何故なのか。そこに政界や経済界と同じような、今日的問題点があるような気が

してならない。

 いま球界では近鉄バッファローズとオリックスの合併話が進んでいる。そして更にもう一つ同じような話が

パ・リーグの中で進んでいるらしい。パ・リーグの考えはセ・リーグ6球団と一緒になって1リーグ制にしたいと

いう考えのようだ。

 球界は大きな転機を迎えようとしていた。こんな時、球団を買いたいと言った人がいる。インターネットで業績

を伸ばした「ライブドア」というベンチャー企業の社長さんだ。何と31歳という新進気鋭のビジネスマンである。

しかし、球団を手放そうとしている近鉄のオーナーも読売ジャイアントのオーナーである渡辺さんもこの申し出

を鼻でせせら笑うような事を言っていた。

 もう一つ合併話が進んでいるとの事であるから近鉄をライブドアが買っても一リーグ制は避けられない事なの

かも知れない。しかし、球団は多ければ多いほど面白い。それにも関わらず耳を貸そうとしない球団のオーナー

達は、どんな考えをしているのだろうか。

 スポーツファンの野球離れはずいぶん以前から始まっていた。プロスポーツと言えば野球しかなかった時代

から、サッカーを始めとする色んなプロスポーツが生まれてきた。その上、野茂選手やイチロー選手、両松井

選手等、球界の主力選手達がアメリカに引き抜かれてしまった。その結果、野球ファンの目はアメリカにまで

広がって、いささか国内野球の沈滞現象が見られるようだ。

金持ち球団だけが突出したプロ野球

 広島カープのファンの立場から言えば一球団だけが突出しても面白くない。読売ジャイアンツのように金に

困らない球団は、金に物を言わせてどんどん良い選手を入れてきた。その結果、球団の優劣の差は歴然と

してきた。ジャイアンツは勝って当たり前の球団である。貧乏球団はどうあがいても上位に浮上することは

難しい。こんな事で野球が面白くなるのだろうか。各球団が競り合ってこそ面白いのではないだろうか。野球

ファンはジャイアンツやタイガースファンだけではない。

 もっとも球団運営の苦しいのは日本だけではないらしい。本家本元のアメリカでさえ、地方球場ではお客さん

の入りが悪くて採算がとれないと言っている。野球発祥の地でさえ野球離れは深刻なようだ。こんな状態に

陥ったプロ野球をどう立て直すか、球団を運営する人達が本気で考えないと1リーグ制どころか、それさえも

危うくなってしまうのではないだろうか。

ファンあってのプロ野球

 野球ファンとしては、たとえ近鉄ファンでなくても今のまま存続して欲しいと思っているに違いない。ライブドア

からの申し入れを、あっさり突っぱねて良いのだろうか。プロスポーツはすべからく熱心なファンがいるからこそ

成り立っている。そのファンの気持ちを逆なでするような一連の動きに対し、この人達はプロスポーツを企業の

宣伝道具ぐらいにしか考えていないのではないだろうかとさえ思えてくる。

 特にプロ野球界のドンと言われてきた渡辺さんの態度には、スポーツを愛する人としての真摯な態度が

感じられなかった。これではプロ野球が衰退していくのは当たり前の話だ。繰り返すがプロスポーツはファンに

夢を与えるものである。特に子供達は野球場やサッカー場で活躍する選手を見て小さな胸を躍らせている。

いつか自分も有名選手になって活躍したいと思っているに違いない。

そんな純粋な心を渡辺さんはどう考えているのだろうか。

球界の体質は日本の古い体質

 「」ライブドアがどんな経歴を持った会社かは知らないが、若い社長にはこれからの経済界を背負って立つと

いう気負いにも似た意気込みが感じられた。彼の記者会見はTシャツで現れるという異例なものであった。

500億円を準備しているとも言った。彼の発言がたとえ誇張されたものであるにしても、この発言は自信の

現れに違いない。一ファンとしても是非お願いしたいと思っている。

 旧弊たる球界のオーナー達との対決が見物である。と同時に記者会見では、古い時代の人間と新しい時代

を生きていこうとしている人とのコントラストがもっとも鮮やかであった。今、日本の企業は厳しいリストラを続け、

やっと息をしているような状態である。小泉さんは経済に多少上向き傾向が見られると、まるで自分の実績の

ように自慢しているがとんでもない話である。各企業は厳しいリストラで人件費を削減し、やっと黒字を出して

いるに過ぎない。また、国自体は莫大な借金を抱え、その金で大手銀行を救済し今日に至っている。何を

とぼけた事を言っているのかと言いたい。そんな常識はずれの感覚に、政界や経済界共通の今日的な問題

を感じるのである。今回のライブドアの社長発言は、大げさな言い方をすれば古い幕藩体制に敢然として

闘いを挑んでいった勤王の志士達に見えるのである。今こそ、新しい器を作り新しい酒を盛る時代では

ないだろうか。

渡辺さんの辞任劇

 余談になるが、渡辺オーナーが突然辞任した。明治大学のエースに裏金を渡していたことに関する責任を

とっての事だった。学生野球憲章ではスカウトに関わる裏金は受け取ってはならないと定められている。しかし、

渡辺オーナーの辞任はそれだけが理由だったのだろうか。そんな事は、表沙汰にならなかっただけで、今まで

にも何度もあったことではないのだろうか。

 そして、時期を一にしてプロ野球選手会がスト権を確立した。スト権の確立は選手会側のオーナーサイドの

一方的な動きを牽制するものだった。しかし、それ以外にも理由はあった。その前に、辞任した渡辺さんが

「選手ごときが」という野球選手を侮辱するような発言をしていたからだった。

 こんな軽はずみな発言が何の躊躇もなく出てくるということは、日頃から選手のことを道具くらいにしか考えて

いないからではないだろうか。

繰り返すまでもなく、プロ野球はオーナーがいるからあるのではなく、野球選手と野球ファンがいるからこそ

成り立っているのである。そのことを決して忘れてはならないと思うのである。

                                                  2004年8月20日掲載

追記

 その後、事態は思わぬ方向へと進んでいった。球団側は将来展望を明らかにしないまま近鉄バッファローズ

とオリックスの合併を承認してしまった。そのことに危機感を抱いた選手会側は、スト権を背景にして将来展望

を明らかにするように迫った。しかし、球団側からは前向きな回答が得られなかった。選手会長の古田さんは

苦渋の決断をせざるを得なかった。そして、日本プロ野球史上初めてというストライキに突入した。

 古田会長はファンに向かって、こういう結果になったことについて何度も何度も頭を下げていた。しかし、

本当に頭を下げなければならないのは球団側ではないだろうか。選手会側をここまで追い込んだ責任の

すべては球団側にあると言っても過言ではない。球団側は選手会に対してだけでなくファンに対して何が問題

で、何を解決すれば要求に応える事が出来るという、具体的な説明をすべきではないだろうか。球団側の人々

を見ていて思うことは、すべてを先送りして具体的な解決策を何ら見いだそうとしなかったバブル期の経営者と

同じ体質であると言うことだ。

 今、「ライブドア」だけでなく、インターネットでの通信販売で大きく成長した「楽天」が球団オーナーになりたい

と名乗りを上げている。このように衰退していく企業と今後大いに成長して行くであろう企業とが明暗を分けて

いる。時代は大きく変わろうとしているのである。いつまでも古い体質のままの球団ではファンはついて来ない。

                                                  2004年9月21日掲載

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