4年毎に開かれる今年の夏のオリンピックはオーストラリアのシドニーで開かれました。

日本からも多くの選手団を派遣しました。

オリンピックが開催される度に思うことですが、この時ほど、国と言うものの存在を意識する時は

他にあまりないようです。金、銀、銅のメダリストが壇上に上がり、多く人々のの祝福を受け、それぞれの

国の国旗が掲げられる時、選手ならずとも、観客の私達も思わず涙がこみ上げてくるような感動を覚えます。

今回のオリンピックにおいては韓国と北朝鮮が共に手をつないで入場行進をしました。

実に感動的なシーンでした。南北の歴史的和解の流れの中で実現したホットな出来事でした。

開会式のイベントとして、オーストラリアの歴史について紹介されました。そして、多民族国家としての

今日のオーストラリアの紹介がありました。その際に、民間から募集して、国民が選んで決めたという

国歌が披露されました。馬に乗った牧童姿の男女が、壇上の歌手と一緒になってオーストラリア国歌を

歌っていました。実に誇らしげに見えました。私はこのシーンを見ていて、実にうらやましいと思いました。

日本にも自分たちで作った、自分たちの歴史が語れるような国歌が欲しいと、この時ほど痛切に

感じたことはありませんでした。

オーストラリアだけでなく、ほとんどの参加国が自分たち自身、歴史の中で作り上げてきた国歌を

持っているのではないでしょうか。

「君が代」も良いけれど、胸を張って歌えるような、日本のこれからの時代を展望した新しい国歌を

作りたいと痛切に感じました。

大会の中日、高橋尚子選手がオリンピックの華と言われるマラソンで金メダルを取りました。

彼女自身の努力はもとより、彼女を育てた監督、そして多くのスタッフの方々の多くの支援が

あったればこその快挙であったろうと思います。本当にご苦労さんでした。

心からねぎらいの言葉を申し添えたいと思います。

と同時に共に走った山口選手、市橋選手にも心からご苦労さん、よく頑張りましたと申し上げたい。

何と言っても他の大会と異なり、オリンピックのどの競技にも第一線級の選手が全員顔をそろえます。

その中で闘うのですから大変な事です。山口選手の7位の成績は大変立派だったと思います。

水泳では女子の400Mメドレーリレーで銅メダルを獲得しました。素晴らしい快挙だと思います。

男子にせよ女子にせよ選手の体格をみていると、がっちりした身体をしているように見えても、

外人選手に比較すると日本選手の身体が小さく見えます。水泳や陸上競技のように体格や体力が

ものをいう競技では、外人選手に対する日本人選手の身体的なハンディは実に大きいと言えます。

その中でメダルを取ると言うことが、いかに至難の事であるかを痛切に感じるのです。

メダルにこそ手は届かなかったけれど、決勝戦に勝ち残ったり入賞した選手もたくさんいます。

とかくメダルばかりに目がいきがちですが、入賞でも立派なことです。胸を張って貰いたいと思います。

と同時に体力の差を気力や技術でいかに埋めていくかが、日本の選手の今後の課題ではないでしょうか。

団体競技ではサッカーは惜しくもアメリカに敗れてしまいました。世界の壁は厚かったようです。

それでも予選リーグの中では素晴らしい試合を見せてくれましたし、個々の選手の活躍も光っていました。

その他、女子ソフトボールの活躍には目を見張るものがありました。これはと思うような試合も

少なくありませんでした。

柔道は日本のお家芸だと言われながら、東京オリンピック以来、辛酸をなめてきた大会が

少なくありませんでした。試合を見ていて、これが柔道なのだろうかと首を傾げるような試合も

少なくありませんでした。しかし、今回の田村亮子選手の金メダルを初めとして、男子柔道の

金メダルには日本の柔道ここにありという感を非常に強く感じました。柔道は力ではありません。

基本は技です。その意味合いにおいて、今回の井上選手の一本勝ちによる金メダルは見事でした。

久々に胸のつかえが下りるような勝ちっぷりでした。

篠原選手は惜しくも銀メダルでした。微妙な判定だったようです。柔道はオリンピック種目としては

歴史も浅く、今後の普及が望まれる競技です。審判員も経験の少ない人が少なくありません。

従って、今回の試合のような微妙な判断を要するような時には、高度な審判員としての目が必要となります。

柔道人口が増えて選手層、審判員層のより一層の充実が望まれます。

アマチュアスポーツは社会人野球のように、企業に頼る意外に選手を養成する方法がありません。

しかし、昨今の不況は企業自身厳しいリストラを迫られ、選手を抱えておくだけの余力がなくなりました。

一流の選手を育てるためには、それ相応の施設と資金が必要です。その全てを企業に頼ることは

今後ますます難しくなりそうです。世界各国事情は異なるようですが、国家として選手を養成している

国も少なくないようです。今後、日本も国で選手を育てていくことを考えなくてはいけないのでは

ないでしょうか。選手を一人育てると言うことは、家族にとっても物理的にも金銭的にも大変な

負担なのです。それを個人や企業に押しつけていたのでは、良い選手は育ちません。

役にも立たない公共事業に投資をする金があったら、選手を養成するために使う方がよほどお金は

生きてきます。日本はもっと文化やスポーツの振興にお金を使うべきです。国の事業として

スポーツ選手を養成し、時代を担える素晴らしいスポーツマンを育てていきたいものです。

何と言っても今回の日本選手団では女性の活躍が目立ちました。後半に来てシンクロナイズスイミングでは

二つの銀メダルを取りました。それもロシアの選手に肉薄するような高得点でした。シンクロナイズスイミングや

新体操は技術もさることながら見栄えも要求される競技です。いかに日本人の体格が良くなったとは言え

身体的ハンディは少なくありません。その中での今回の成績は精一杯のものだったのではないでしょうか。

今回獲得したメダルの大半は女性陣の活躍によるものでした。結果から見ると今日の日本を如実に

反映しているようにも見えます。元気の良い女性陣に引き替え、男性陣の活躍が今ひとつだったのは

大変残念な事です。次のオリンピックを目指して是非奮起して貰いたいものです。

団体競技においてはサッカーが惜しくも負けてしまいました。元々強豪の多い組み合わせですから、

選手も終盤に来てのスタミナ切れも否めなかったと思います。今はお疲れさんと申し上げたい。

それに引き替え野球は今ひとつ気迫が感じられませんでした。韓国もアメリカもキューバも第一線級の

選手を揃えてきたというのに、日本のプロ野球界はそっぽを向いていました。いかにペナントレース中

だとは言え、他の国もオリンピックに第一線級の選手を送り込んで来るのであれば、それなりの配慮は

あってしかるべきです。私にはプロ野球界のエゴとしか思えません。プロ野球の選手にとっても

決してマイナスになることではなかったと思うのです。世界の選手と試合をすることによって、世界が

どんなものか、それはそれなりに得るところは大きかったと思います。今後のプロ野球界の対応を

注目していきたいものです。松阪選手自身はアレルギー症状があり、薬も使えないと言うハンディの

中で大変ご苦労さんでした。彼にとっては良い経験だったと思います。

ともあれ、長期に及ぶオリンピックも終わりました。選手のみなさん、関係者のみなさん、

大変ご苦労さんでした。異国の地で気疲れや試合疲れなどあったと思います。

今はゆっくりと身体を休めて次回アテネを目指して下さい。

何かと話題も多く、考えさせられることの多かった今回のシドニーオリンピックでした。


オーストラリアにとってのオリンピックとは

今回の開催地であるオーストラリアについて少し触れておきたいと思います。

開会式に先立って派手なパフォーマンスが目を引きました。建国の歴史をなぞったものでした。

少女が夢の中で体験するというオーストラリアの建国の歴史でした。

誰でも奇異に感じた事の一つにイギリス総督がオーストラリアの首相と共に紹介された事です。

そして何よりも目を引いたのは聖火の点火にアボリジニの女性が登場したことです。

開会式のパフォーマンスでは、たくさんの先住民族であるたくさんのアボリジニの人達が登場しました。

何故なのでしょうか。そう言えば中学時代の教科書でオーストラリアの勉強をしたときに、この地が

イギリスの植民地であったこと、植民地の始まりはイギリス国内で犯罪を犯した犯罪者達の流刑地で

あったこと、オーストラリアの開拓の歴史の中に先住民族達の血塗られた歴史があったことを

思い出しました。

今回は改めてこの国の歴史を調べることによって、今日あるオーストラリアと過去の暗い歴史を

背負ったオーストラリアを再認識しました。そう見てくると今回のオリンピックの開催がこの国に

とっていかに重要なものであったのか、他に類を見ないほど派手なものであったのか、

アボリジニ達を何故全面に出さなければならなかったのか、そして何よりも人口の少ないこの国が

アメリカやロシアと並ぶくらいの多くのメダルを獲得しなければならなかったかと言うことが

見えてきます。過去のオーストラリアの暗い歴史をぬぐい去り、新生オーストラリアを印象づける

ために一生懸命になっているこの国の姿が見えてきます。そして、形の上だけとはいえ

この国はイギリスの女王陛下の国なのです。


参考書:

「オーストラリア歴史の旅」   藤川隆男著  朝日選書刊

                                               2000年10月10日掲載

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