日中関係に思う


 戦後60年と言えば節目の年である。それにも関わらず日中関係はますます冷えている。中

国国内ではデモが行われ、日本の大使館や領事館や日本人が経営する飲食店に投石があっ

た。また、日本人にも暴行が加えられた。デモの原因は小泉首相の靖国神社参拝であり、日本

の侵略戦争を正しく伝えていない一部の教科書問題だ。この経緯については別の機会に書い

たので、ここでは割愛したい。

 先日は愛知万博に招待され財界人などと会談した中国の呉儀副首相が、当日の夕方予定さ

れていた小泉首相との会談を急遽キャンセルして帰国してしまった。俗に言うドタキャンだった。

一国を代表するもの同士の会談が直前になってキャンセルされるというような事はあまり聞いた

ことがない。

 当初、中国サイドのコメントでは国内に急用ができたとの事だったが、どうも小泉首相の靖国

参拝に対する抗議であったらしい。従来の中国政府であれば腹の中はどうであれ表向きは平静

を装って会談に臨んだに違いない。いわば大国らしい外交が行われていた。過去に於いては礼

を失しない国だという印象が強かった。

 しかし、昨今の中国政府要人の器が小さくなったような気がしてならない。先のデモを押さえら

れなかった事にも一抹の不安を感じている。小泉ごときがと思いつつも、大国らしい余裕を持っ

て会談に臨んで貰いたかったと思うのは私だけだろうか。裏を返せば、それだけ政治的な余力

がなくなったのであろうか。こんな政府で、ひとたび中国経済が傾き始めたとき国内の動揺を抑

えきれるのだろうか。これも今の中国の不安材料の一つだ。

(一説によると、ドタキャンのもう一つの理由は中国中枢部に於ける権力闘争があるのではない

かと言われている)

 中国は長い歴史と伝統を持った国だが、日本人と異なり一人一人の自主独立の気概が大変

強い。国や政府がどうであろうと自分たちは自分たちで生きていくという、ふてぶてしい一面を

持った人達だ。昔から異民族の攻撃を受け、異民族の支配下に置かれたことは何度もあった。

それでも主たる中国人つまり漢民族はその支配者をうまく懐柔し、自分たちの意のままに操っ

てきた。日本人には及びも付かないしたたかさと老獪さを兼ね備えた国民である。それを一番

良く知っているのは今の中国政府の要人達だ。それだけに国民の動向には神経を遣っている

のではないだろうか。

 さて、かつては一言居士と揶揄された事もある小泉さんだが、何故こうも靖国神社にこだわる

のだろうか。政治家としてはもっと柔軟な姿勢があっても良いのではないだろうか。確かに一時

は一徹さ故に国民も小泉さんを歓迎した時期もあった。しかし、それも目新しかった時は良かっ

たが、今はどうだろう。実に子供じみた言動にしか見えないのは私だけだろうか。

 お隣の韓国の前の大統領だった金大中さんは在職中、かたくなに殻を閉ざしていた北朝鮮に

対し太陽政策で固い殻を開かせた。大人の外交とはこういうものだろう。昭和初期、軍の将校

達によって暗殺された犬養首相はヨーロッパ列強に欲しいままにされていた中国をアジアに於

ける大国として認め、その上で大東亜共栄圏を作ろうという構想を持っていた。日本の関東軍

が中国に対し侵略戦争を仕掛ける前のことである。アジアは一つ、お互いがお互いを尊重し伴

に生きていこうという考えではなかったのだろうか。それ故に清国政府を倒し「革命の父」と言わ

れている国民党の孫文を一時保護した事もあったのである。靖国神社の参拝などに固執してい

る時ではない。

(日本だけでなく器量の小さい政治家ばかりになってきた。アメリカのブッシュ大統領もその一人

である)

 政治はその国一国だけのものではない。私達が隣近所と仲良くしなければ生きていけないの

と同じように、国同士も共存していく姿勢がなければいけない。日本は国連の常任理事国入り

を目指しているが、今の政府にその資格があるのだろうか。私にはとてもその資格があるよう

には思えない。

                                     2005年6月2日掲載

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