日本人人質事件を考える

 小泉さんは、自分自身の立場が良く分かっておられないのではないでしょうか。例えば靖国神社の

参拝に関する違憲判決が出た時もそうでしたが、今回のイラクにおける日本人人質事件に関しても

強く感じることです。

 今回の人質の中には、自民党と対立する他党に関係のある家庭の人がいたようです。それだけが

理由ではないのでしょうが、見殺しにするのではないかとも受け取れるような言動や、それでいて

妙に恩着せがましい態度や発言が目に付きました。首相官邸内でどんな話し合いが行われ、どんな

対応策が検討されたのか分かりませんが、週刊誌の見出し等を見ていると、これが閣僚達の考え

なのかと耳を疑うような発言もあったようです。

 しかし、人質になっていた安田さんなどの話を聞く限り、今回の拉致事件に関係した人達はプロの

テロ集団ではなかったようです。それどころか私達のように、ごく一般的な農民や失業者達だったよう

です。彼らは、アメリカ軍の無差別とも受け取れるような攻撃に対し、自分達の身は自分達で守らなけ

ればという、やむを得ない理由から立ち上がった人達が大半のようです。もちろん、混乱の中にある

イラクですから政治的意図を持って行動している人もたくさんいるでしょう。

 一方、アメリカ軍はイラク国内に色んな形で大量のスパイを送り込んでいます。先の民間人惨殺事件

の犠牲となったアメリカ人も実は民間人を装ったプロの軍人達だったようです。このように、見かけは

民間人であってもアメリカ軍関係者がたくさんいて、イラク人は一様に疑心暗鬼に陥っています。

 これらスパイ達が間違った情報や、あるいは情報操作を行って、攻撃の口実に使っている事をイラク

の人達は良く知っているのです。

 また、隣国のイスラエル軍はパレスチナの要人を次々と殺害しています。そのイスラエルを支援して

いるのはアメリカ政府です。当のアメリカが表向きはイラク支援と言いながら、その実は自分たちに

都合の良い政府を作ろうとしていることも良く知っているのです。

 今回、釈放された経緯について、日本政府は自分達が助けたかのように話していますが、決して、

そうとばかり言えないのではないでしょうか。人質となった安田さんの話によりますと、もし武器を

待っていたらどうなっていたか分からないと話しています。アメリカ軍の手先やスパイではなく、単なる

報道関係者だと分かったから解放したのです。彼ら自身も誰が自分たちを支援してくれる人で、誰が

自分たちに危害を加えようとしている人か良く分かっているのです。何か重要な政治的目的があって

拉致する事を除けば、自分達に危険が及ばない限り解放しているのではないでしょうか。

 自衛隊は人道支援で派遣されているとは言いながら、その実はれっきとした軍隊です。自衛隊を

ボランティア団体だと言う人はいないでしょう。軍隊を派遣しているからこそ、イラクの人達は日本を

アメリカの協力者だと見ているのです。ですから、自衛隊さえ派遣していなければ民間のボランティア

や報道関係者を拉致する危険度はもっと低かったはずです。彼らも国際世論を敵にまわすような事は

したくないでしょうし、自分達を支援してくれる人達に危害を加えるはずがないのです。

 これからは、彼らのように民間人が率先して困っている地域に出かけ、他国の人々のために働く

ことは、とても大切な事です。また、フリーのジャーナリストが現地に行って本当の情報を伝えることも

大切な事です。今回の事件に関して色んな人達が色んな発言をしているようですが、彼らの献身的

な行動を非難することだけは避けたいものです。私達も多くの人達に支えられて生きていることを

考えれば、手助け出来る国のものが困っている国の人達を助けてあげることは尊い事なのでは

ないでしょうか。ましてや、家族の思想信条がどうであろうと、まったく関係のないことです。

 小泉さんは国民の代表であり、一国を預かる責任者です。その立場に立って考えて見れば、

自分が何を成すべきか良く分かっているはずです。その対象者が、たとえ政敵と言われる他党の

師弟であっても、日本人の命を助けるという責任はあるのです。ましてや、恩着せがましい発言等

は口が裂けても言ってはならないのです。


 「自分の責任で行くということなのかもしれないが、どれだけの人に迷惑がかかるかということも

考えてもらいたい」という福田官房長官の発言や「自己責任の自覚を欠いた、無謀かつ無責任な

行動が、政府や関係機関などに、大きな無用の負担をかけている。深刻に反省すべき問題である」

といった一部報道関係の社説等をみると、この国の未熟さを感じざるを得ません。

 NGOとは色んなリスクを負った尊い行動です。少なくとも自己犠牲を前提にした行動ではない

でしょうか。私には、彼らのような行動はとても出来そうにありません。それだけに崇高な行動に

思えます。そして、その芽をつぶしてはならないと思うのです。とかく自己本位な日本人が多い中で、

彼らのような人が出てきたことは喜ぶべき事ではないでしょうか。

 その事を通じてしか日本人というものを異文化の人達に理解して貰うのは難しいのではないかと

思います。カンボジアに出かけて現地で活躍しているNGOの人達が現地に根を下ろし、現地の

人達と一緒に国作りをしている姿をみると、これこそが国際人たる日本人の姿だと思うのです。


 こんな記事を書いているときにまたまたいやな事が報道されました。アメリカ軍の兵士やイギリス軍の

兵士達がイラク人の捕虜達を虐待しているという報道です。報道は写真入りでしたからよけい嫌悪感

を抱いた人が多かったに違いありません。これら兵士を派遣しているアメリカやイギリスの首脳でさえ

大きな衝撃を受けているというのですから、当のイラク人達にはもっと大きな衝撃に違いありません。

 誰が指示して行ったにせよ、戦争という異常事態は人間性を完全に喪失させてしまいます。ましてや

性的倒錯者やサディスト達にとってはまたとない機会です。喜んで性的倒錯やサディスティックな行為に

のめり込んでいったに違いありません。

 これらは嫌悪感を抱いたと言っているブッシュ大統領やブレア首相の責任です。戦争という狂気の

種を蒔いたのは彼ら自身なのです。今までにも多くの戦争で見られた事なのです。戦争という行為を

なくさない限り、このような事は繰り返されるに違いありません。

 そして、ここにも自分がどのような立場の人間か自覚を欠いた二人の政治家がいます。

                                             2004年5月4日掲載

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