ネット商売

 こんな事があるのも今の時代だからだろうか。先日とあるIT関連の会社のMさんからメール

を貰った。突然のメールだったので開けるのが多少ためらわれたのだが、何となく気がかりな

メールであったことも確かだった。恐る恐るメールを開き、下の方にあったURLをクリックし、

ホームページにアクセスしてみると何ら問題はなさそうだった。

 メールには、近い内に地元企業の商品発表会があるので参加してくれないかと書かれていた。

そして、その日(2006年11月28日)家内と一緒に出かけた。お酒の試飲もあるというので

帰りは徒歩のつもりで途中までは自家用車で行き、そこからは歩いて会場に向かった。会場

は児島田の口にある古い酒蔵「十八盛酒造」だった。招待席は酒蔵の入り口にあり、比較的

温かい日だったとは言え何となく底冷えがするような薄暗い場所だった。新商品発表と言うから

にはもっと明るく広い会場を予想していたので意外だった。

 開催時間が昼食時だったので簡単な挨拶があって早速会食になった。出されていたのは

サワラの味噌漬けを焼いたもの。そして岡山の「朝日」というブランド米で作ったおにぎり、

そして、みそ汁といういたってシンプルなものであった。試飲はむろん十八盛酒造の今年酒と

日本では初輸入だというアメリカ製ワインの赤と白だった。

 新商品だというこのサワラの味噌漬けが実に美味しかった。後の説明で分かったことだが、

サワラは地元の漁協に上がった獲れ立ての3キロ以上の大物。味噌は塩加減を押さえ味噌

漬け用に調合した地元産のものだった。そして、サワラを料理し漬け込んだのが地元の料亭

というわけだった。

 そして、もう一つは藍染めだった。最近では化学染料が多いが、ここで紹介されたのは徳島

産の本格的な藍を使用した染色だった。藍染めはスクモという原料を灰汁と一緒に発酵させて

使用する。この発酵の過程で酒を使用する。この酒が地元産の十八盛酒造の酒との事であった。

 このように、地元産の朝日米を使った「おにぎり茶屋」のおにぎりとみそ汁、そのみそ汁と

サワラを漬け込む際に使用した味噌を造っている「塩屋」、藍の発酵の際に使っている酒を

造っている「十八盛酒造」、そして、酒を使って藍を発酵させている「藍布屋」、こうした連携の

中で開発されたオリジナル商品であるサワラの味噌漬けを作ったのが「ビストロ割烹 魚清」

であった。また、この結びつきをコーディネイトして今回の発表会を開いたのがIT企業である

「アイティーシー」であった。

 児島のような地方都市にあって小さな企業同士が業務提携を行う事は極めて珍しい。まして

や今回のような異業種同士の結びつきとなると皆無に近いのではないだろうか。しかし、考えて

みれば藍の発酵にお酒を用いるなど意外とも思われるようなところでの地元の製品同士の

結びつきがあったわけで、実に「縁は異なもの味なもの」である。その結びつきを最大限に

生かしてお互いの売り上げを伸ばし、更には新商品まで開発して売り出そうという意気込みは

すごい。そして実にユニークである。

 実はこの企画をしたIT関連会社のオーナーであるMさんに私のサイトとの事をどのようにして

知ったのか聞いてみた。すると意外にもアメリカのシリコンバレー近くにあるアイティーシーの

支店から地元児島のホームページを検索し、それらしきサイトに対しメールをしたとの事で

あった。私のサイトには地元での活動などを掲載していたので招待メールを出したようだ。

遙か彼方のアメリカの方からホームページを見ていたわけで、インターネットなので当たり前

だと言ってしまえばそれまでだが意外な説明に驚いた。やはりホームページの威力はすごい

と言わざるを得ない。今更ながら、そう言う時代であることを実感している。

 昼食度、早速、各社のインターネットを使っての商品販売の実績説明などがあり、サワラの

味噌漬け開発の説明もあった。その後、酒蔵の見学や藍染め工房の見学などがあって商品

発表会は終了した。

 帰りに聞いた味噌を造っている塩屋さんの話だとインターネットを通じての商品販売は難しい

との事だった。味噌の場合は、味にさしたる特徴がなくリピーターのようなお客さんが出来にくい

との事であった。また、商品が売れすぎても生産が追いつかなくなってしまい困るとのことで

あった。

 余談になるが、ある地元の食品関連の会社は大手スーパーと業務提携したことが原因で

倒産に追い込まれたとの事であった。当初は生産が追いつかないくらい売れたらしいが工場

を拡張した途端に引き取り先のスーパーから引き取り価格の引き下げ要請があって、結局、

投資した資本の回収も出来ないまま閉鎖に追い込まれたとの事であった。地方に於ける弱小

業者の悲哀であった。

 インターネットを使っての商品販売が多くなる一方で色んなトラブルも生じているとの事で

あった。特にホームページを作らせておいて、如何にすればアクセス数が多くなるか、商品注文

が多くなるかという、きめ細かい指導がなされていないケースが大半のようだ。その点、今回

「有限会社アイティーシー」が企画したような新商品を開発し発表会まで開くというケースは

極めて珍しいのではないだろうか。今後が期待される。

                                  2006年12月2日掲載

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