何か変だぞ日本人

 小泉首相は北朝鮮拉致被害者の家族の期待を一身に背負い二回目の交渉に臨みました。その結果

は報道されている通りです。被害者家族としては、今度こそはという思いが強かっただけに、その結果に

がっかりされたようです。

 今回の訪朝に関しては評価が二分しているようです。小泉首相が自ら行動しなかったら何の変化も生まれ

なかったという意見と、結局、さしたる進展はなかったではないか、それどころか北朝鮮の思惑通りになった

のではないかという意見です。そして、何故、今の時期なのかという疑問や外務省や一部政治家(山崎氏、

平沢氏)の訪朝によってレールは敷かれていたのではないかと言う疑問が残ります。冷静に考えてみれば

考えてみるほどショー的な訪朝であったような気がしてなりません。

 被害者家族の方々の思いは切実です。日々、高齢化していく親族にとって自分たちが元気で活動できる間

に解決したいと言う思いがあるからです。自分の身に置き換えてみると、その思いは良く分かります。

 こんな切実な思いをしている被害者家族の思いに対し、誹謗や中傷めいたメールが寄せられているようです。

小泉首相が北朝鮮と交渉を終えて帰ってくる日には被害者家族に対してのインタビューが行われていました。

みなさん大変憤慨しておられました。期待が大きかっただけに、その成果にがっかりされ、その思いが厳しい

言葉になって噴き出していたのではないかと思います。被害者家族としては、三家族の子供達が帰ってくる

ことはもちろんの事、10人の未だ行方の分からない人達やそれ以外の行方不明者の情報が少しでも明らか

になるのではないかと期待されていたようです。金正日氏との交渉はほんのわずかな時間で終わってしまい

ました。「もっと突っ込んだ話をする時間は十分あったはずなのに」とインタビューでは答えておられました。

大した成果もなく莫大な人道支援の約束をしたと言って怒っておられるのです。自分たちの家族が人質に

取られているのに、その国に対して支援物資を送るとは「敵に塩を送る」のと同じではないかという思いが

あったからではないでしょうか。

 被害者家族としての活動の中心におられる方々は、いずれも家族が北朝鮮に拉致されていることが明白な

10人の方々の親御さんや親族の方々です。北朝鮮に拉致されている事が明らかなのに、北朝鮮は知らない

と言い張り、挙げ句の果てには亡くなったと言って他人の骨を出してきました。まったく、ふざけているとしか

言いようのないやり方です。これで腹を立てない人がいるでしょうか。

 今回の訪朝を評価する人がたくさんいるようですが、多分に結果の一面しか見ていないような気がしてなり

ません。その上、被害者家族の皆さんが小泉首相を非難したと言って抗議の手紙やメールなどが来ている

ようです。まったく、あきれてものが言えません。何故、被害者家族の心情や悲痛な思いを理解できないの

でしょうか。行政のトップにいる首相が北朝鮮に出向くことも、また、拉致被害者を取り戻す努力をすることも

政府の仕事なのです。当たり前の事です。小泉首相が初めて行動したからといって、小泉さんが特別なのでは

なく過去の首相や外務省が怠慢であったのです。

 先のイラクに於ける民間人3人の誘拐事件の際も同じような意見や行動が見られました。総じて誘拐された

人達に対して非難の声が多かったようです。誘拐された人達は、イラクの人達に対し自分たちが出来ることを

何かして上げたいという思いがあったからこそ危険を承知で戦地に出向いて行ったのです。今回、イラクで

テロリスト達の手によって殺されたフリージャーナリストも死を覚悟でイラクに行っていたと遺族の方が話して

いました。ボランティアとして何か手助けをしたい、ジャーナリストとして戦地の生の姿を伝えたい、戦場の中に

いる人達の生活や惨状を伝えたい、その思いは素晴らしい事だと思います。それなのに政府の手を煩わした

からといって私達に彼らを責める権利があるのでしょうか。何が大切で何が間違いなのか、もっと真剣に

見極めることが必要だと思うのです。従来は、こうした行動の多くは欧米各国の人達によるものでした。私達は、

こうした人達の行動を勇気ある素晴らしいことだと思いながら、自ら行動することが出来ませんでした。

 やっと本格的に活動し始めたのはカンボジアの時からではないでしょうか。今は多くの戦場や戦後復興に

日本人ボランティアが活動しています。やっと、日本人にも欧米人並の活動が出来はじめたのです。この尊い

行動の芽を決して枯らしてはならないと思うのです。

 今、憲法を見直そうという動きが活発化しています。その考え方の理由の一つには、戦後まもなく占領軍に

よって一方的に押しつけられた憲法だからと言われています。アメリカに押しつけられた憲法がいやだと言う

のなら、何故、いつまでもアメリカにしっぽを振って着いていくのでしょうか。何故、堂々とアメリカに対し日本の

考え方を主張しないのでしょうか。本末が転倒していると言わざるを得ません。かつて平和憲法を提起した

アメリカは、その後まもなく朝鮮戦争の際、日本に再軍備を迫りました。しかし、成立して間もない平和憲法が

あった日本はアメリカの要請に答えられませんでした。その結果、苦肉の策として旧軍人を密かに呼び集め

警察予備隊を編成したのです。そして、アメリカ軍の後方部隊としたのです。アメリカ政府は実に優柔不断

です。もし日本が憲法を変えたら友好関係を見直すかも分かりません。おおよそ日本人的感覚でアメリカと

いう国を考えてはいけません。

 ともかく、日本人の中に憲法を見直しても良いのではないかという人達が増えていることはアンケート結果を

見ても明らかです。しかし、過去の歴史や国際社会の中で日本人がどうあるべきか等、真剣に考えないで

上滑りな発言や考えをしている人が少なくないように思えます。

 週刊誌の見出しなどに踊らされることのないように過去の歴史や世界史等をもう一度読み直してみてはどうで

しょうか。みなさんの親族の内には少なくとも何人かは、先の第二次世界大戦の際亡くなられているはずですし、

おじいさんやおばあさん、あるいはお父さんやお母さん達は、筆舌に尽くしがたい苦しみや悲しみを味わって

いるはずです。そんなに遠くない過去の悲しみや苦しみが背景にあるからこそ、心ある人達は多くの戦争被災

国でボランティア活動を行っているのではないでしょうか。そして、この平和な日本を今日まで支えてきたのは

今の「日本国憲法」です。この憲法を大切にするとともに、北朝鮮問題が一日も早く解決する事を願っています。

追記

 小泉首相が二度目の訪朝を果たしました。それはそれとして、当の北朝鮮の対応はどうだったのでしょうか。

空港での迎えには政府のトップではなく、外務官僚クラスの人だったと言います。金正日氏との会見場でも

小泉さんが金正日氏を迎え、送り出すような形になったと言います。小さな事かも知れませんが、外交の場に

おいては、訪問者を迎えるのはその国のトップであるのが普通です。ましてや自国に非があることは明らか

であり、なおかつ自国に援助をして貰う国のトップが、その相手国のトップを出迎えナシで会見場に待たせる

ことなど無礼千万な話です。礼儀をわきまえない傍若無人な態度だと言わざるを得ません。

 失礼な扱いをされた当の小泉さんは、国会の中でその金正日氏をよいしょするような話をしたと言うのです

からどうかしています。自分の成果を強調したいがあまりの発言であったのだろうと思いますが、軽く見られても

仕方がない発言でした。あの人に対してこの人あり、実にお粗末な人間同士のやりとりだと言わざるを得ません。

                                                2004年6月13日掲載

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