桃の木オーナー体験記

桃の木のオーナーになる

 昨年、おかやまファーマーズマーケット・サウスヴィレッジ(岡山県が経営している農業公園・サウス

ヴィレッジとノースヴィレッジがある)を訪れた際、桃の木の根本に名前を書いた札が立っていた。

家内の話によると友達の何人かもこれに参加しているとのことだった。

 このシステムは桃の木一本を借りて、桃の実が出来たら自分のものになるというものだった。専業

農家で同じような事をやっているところがある。しかし、これらと基本的に異なるのは、桃の木のオーナー

自身が枝の剪定や摘蕾、受粉、摘果、袋掛け等といった作業をすべて行わなければならない事だ。

従って、何もかも他人にお任せと言うのではなく、オーナー自身が色んな作業を行いながら、収穫を

楽しむというシステムだ。

 実は、我が家にも何本かの桃の木がある。しかし、山が近いせいか袋掛けをしていても収穫近くに

なって害虫にやられ、満足な実を収穫したことがない。従って、一度だけでも思い切り立派な実を作って

みたいと考え、次年度のオーナーに応募してみた。応募者が多い場合は抽選なのだが、運良くオーナー

になることが出来、今回、初参加となった。これは、収穫までの記録である。

    

少しファーマーズマーケットについて紹介しておこう。

今、一番人気があるのは苺狩りだ。このような温室の中に甘い香りがいっぱいだ。

水耕栽培と思われる棚がずらりと並んでいて毎日多くの人で賑わっている。

    

両手にいっぱいの苺、けっして安くはないが香りといい甘みや酸味といい申し分のない苺だ。

園内にはいくつものハウスがあり、トマトや花を栽培している。

私達が訪れた時は淡いピンクのペチュニアが満開だった。

    

左は月下美人の大木(?)右は鶏頭やハイビスカスなど

1月25日(日)桃の木の剪定

 この日は、寒波が来ているとかで特別寒い日だった。その上、風がきつくとても長時間おられるような

状態ではなかった。幸い、私達がオーナーになった桃の木は、手頃な大きさと全体が低く、大きく開いた

理想的な形をしていたので、作業は短時間で終わった。

 先生の指導通り、まず、内側に向いている枝や真上に伸びている(徒長枝)を剪定し、全体のバランス

と日当たりが良くなるように枝を間引いてやった。しかし、よそ様の木だと思うと、なかなか思い切った

剪定が出来なかった。

 ともあれ、この日は早々に剪定を終わり引き上げた。初めての事であり、どんな作業をするのかも分か

らず普段着のままだったので思い切って作業が出来なかった。また、準備してくれた道具や脚立も少な

かった。私達は、幸い、前の日に買った剪定鋏や手袋を車の中に積んでいたのでこれを使って作業が

出来た。

   

27番とあるのが我が家の桃の木、根元には名前を書いた札が立っている。

下は先生による剪定講習風景。

4月3日(土)摘蕾と受粉作業

 この日は桃の木の摘蕾(蕾を間引く)や受粉作業だった。簡単な講義があって外に出た。すでに多くの

桃の木は開花していた。ところが私達の桃の木は開花が遅く、一分から二分咲といったところだった。

従って、受粉作業は出来ず、摘蕾だけを行った。

 受粉作業は花粉が少ないか、花粉がない品種について行う。私達がオーナーになっている桃の木は、

品種(恐らくは清水白桃)は分からなかったが、講師の鑑定によると受粉作業の必要のない品種とかで

一安心。(このような品種を自家受粉可能品種といい、代表的なものには大久保や白鳳などがある)

 今年から受粉を促すため蜜蜂を入れたとの事で、蜜蜂の箱が設置されていた。蜜蜂はあちらこちらと

飛び回り盛んに活動していた。ちなみに蜜蜂の箱は一箱4万5千円だそうで、講師自身がポケットマネー

で買ったのだと話しておられた。

    

既に満開の木もあって木々の間を蜜蜂が飛び回っていた。右は摘花の様子。

    

西洋蜜蜂だろうか、真新しい巣箱からはたくさんの蜜蜂たちが出入りをしていた。

 まだ連絡はなかったのだが、様子を見たくて行ってみた。すでに木々の葉は茂り、実も大きくなって

いた。私達夫婦以外にも二組の夫婦が来て摘果をしておられた。家の桃の木にはあれほど被害が

あるのに、ここのものはほとんど見られなかった。お聞きするとこれまでに三度くらい消毒をしたとか。

使用しているのは木酢だそうで、これで防除が出来るのなら、これからは家でも使ってみようかと

思っている。

 私達も一時間ほど摘果を行った。今度、袋を掛けるときにはもっとたくさん落とす方が良いだろう。

 袋掛けが終わって園内を散歩した。特に東側の方に行ったことがなかったので、そちらに行って

みた。ここにはブドウをアーチ状にしてみたり、オリーブやウメの木が植えてあった。また、その先

には、ヨーロッパ風の建物や池があり、建物は宿泊施設として使われているようだ。ここの人に聞いて

みると結婚式なども行われているようだ。ここの経営は灘崎町が行っているとの事だった。

 私達はイチゴハウスから流れてくる甘い香りの誘惑に勝てなくなり、イチゴの摘み取りをする事に

した。この時期、少し安くなったとはいえ、それでも市販品に較べれば高い。イチゴは水耕栽培かと

思っていたら、土に植えているそうで、その代わりビニールで覆われた土には散水を兼ねて液肥が

補給されているようだ。イチゴの時期もそろそろ終わりだとか。余ったイチゴはジャムにして売って

いました。その他、ジャガイモやタマネギやナスビの収穫体験もさせているようです。

5月22日(土)、23日(日)

 摘蕾や摘花から約一ヶ月半余りが過ぎていた。久しぶりにファーマーズマーケットを訪れてみると、

花は終わり、立派な実がたくさん着いていた。いずれ摘果作業があるのだろうと思い、実が固まって

いるところは適当に間引いておいた。そうして5月22日袋がけをするとの連絡が来た。

 自分流にやってきたことだったが、講習を受けるのは初めてだった。白桃類は落果する事がある

ので、完全な摘果はせず少し多めに残しておき、その後に少しずつ収穫する直前まで摘果してやる

のがプロのやり方だとか。私達素人はついつい欲が出てどうしても多く袋を掛けてしまうようだ。

 袋掛けは葉っぱ30枚から40枚に一個くらいが目安だ。また、丸い実よりは長細い実を中心に残す

ようにとのこと。果物の実はまず軸方向に大きくなり、その後に大きくなるのだとのこと。ついでに収穫

は完熟してからではなく完熟数日前に収穫すると一番おいしいとのこと。これは目から鱗だった。今まで

は完熟が良いとばかり思っていた。

 それでは葉っぱの数はどのようにして数えるのか。いちいち枚数を数えていたら幾ら時間があっても

足りない。おおよその目安として一かたまりが葉っぱ5枚から7枚くらいとの事だった。

 摘果が大切なのは、今年だけの事ではなく、来年の事も考えてやるのだとのこと。早めに摘果してやる

事によって、葉や新しい枝の成長を促してやることになる。摘果をきちんとすれば木は勢いを増す。木の

勢いの良い木はこんな木だと教えて貰った。その木は葉っぱ一枚一枚が大きく、しかも枚数が非常に

多い。こんな木を作らなくてはいけないようだ。

 私達がオーナーになっている木は「清水白桃」や早生の「白鳳」ではなく「黄桃」だった。果肉が黄色い

ものだった。「黄桃」の熟期は遅く8月末から9月との事だった。

 22日一日では袋掛けが終わらず、23日も行った。そして6月6日再度訪問し、最終的な摘果を行った。

袋掛けの枚数は250枚くらい、袋掛けのこつは絞ったところに隙間が残らないように袋を水に浸してやる

と良いと教わった。これも勉強になった。

    

摘果前の着果状況、実太りの良いきれいな実がたくさん付いていた。

管理人さんの話では農薬代わりの木酢を何度か散布したとの事であった。

それにしても害虫の被害が少ないのではないだろうか。我が家のモモ作りに比較してうらやましく感じてしまった。

摘果作業をする家内、わずらわしい仕事も二人ですればはかどる。

    

かなり間引いたように思えても、まだ多すぎるのだろうか。袋がけを終わったところ。

7月4日(日曜日)

 久々にファーマーズマーケットを訪問した。早生の桃の木は既に収穫が始まっていた。隣の清板さんの

桃の木もこぶりながら色付きが始まっていた。収穫している人の桃も小さかった。やはり実を着けすぎて

いるのではないだろうか。

 我が家の桃は晩生なので収穫は2ヶ月ほど先になる。袋の上から触ってみるとあまり大きくなっていない

ようだ。こんな条件の良いところでも新芽を食い荒らす害虫は来るようで、けっこうあちらこちらの新芽が

やられていた。この日は下草を多少抜いて帰った。

8月26日((木曜日)

 収穫を大変楽しみにしていた桃の木オーナーであったが見事に失敗してしまった。サウスビレッジから

電話があった翌日収穫に出かけた。たくさんの箱を準備したがその必要性はなかった。大半の桃が落果

したり、木についたままで腐っていたからだ。担当の貝原さんが電話で教えてくれた以上にひどかった。

 たくさんの桃が枝に付いたままの状態で腐っていた。そして、下にもたくさんの実が落ちていた。とても

収穫が遅れたからとは思えないような状況だった。また、アケビコノハのような害虫の被害にあったようにも

見えなかった。何でこんな事になったのだろうか。考えられる原因は、台風によって桃の実に傷がつき、その

傷が原因で腐ったのではないだろうか。木についたままの多くの実が大きくならないで腐っていた。

 私達が作っていたのは黄桃という品種で、桃の中でも最晩生種だった。周辺は、ほとんどが白桃か白鳳

という品種で、周辺から取り残されたように、この木だけ収穫が遅かった。それだけに、鳥や害虫の被害を

受けやすい状態でもあった。大変不利な品種であったようだ。もう一度体験するとすれば白桃か白鳳にして

貰いたいと考えている。

    

8月9日に行ったときには、まだ実は小さく、もうしばらくかかるとの事だった。

何個か残った桃の中でも比較的きれいだった桃

 今回の桃の木オーナーで学んだ大切な事が一つあった。それは木で完熟させてはいけないと言うことで

あった。私は長い間、木で熟れた桃が一番おいしいと信じ込んでいた。今回、桃の木オーナーになった時、

担当者の貝原さんから、くれぐれも完熟する前に収穫するように注意されていた。今回、木に残っていた

黄桃を収穫したとき固い桃がたくさんあった。しかし、木に残しておくわけにもいかないので、全部収穫して

帰った。そして家に置いていると数日過ぎて甘い香りがし始めた。どうやら追熟したようだ。

 また、家内がテレビで桃作り農家の人が話していたことを教えてくれた。桃を作っている農家は柔らかい

桃ではなく、まだ固い桃を好んで食べると話していたというのだ。そう言えば私も子供の頃は固い桃の方が

好きだった事を思い出した。固い桃が良いのか柔らかい桃が良いのか好みによるのだろうが、何も完熟に

こだわる必要がないことを改めて勉強した。今後の収穫の参考にしたいと考えている。

                                              2004年9月11日追記

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