地球は水の惑星と言われています。しかし、大半の水は海の水です。地上においては近年

著しく水資源が不足していると言われています。一つには森林伐採による密林の消失です。

密林は自らの吐き出した水蒸気を再び雨として降らすことによって自らに取り込んでいます。

大木を伐採してしまうと、その循環を断ち切ってしまうからです。

 早くから懸念されていたのは砂漠化の進行です。現在、砂漠と化しているところも昔は豊か

な森林であったところが少なくないと言われています。人偽的なものと、気候の変化などが

輻輳して、今日のようになったのではないかと言われています。しかし、いずれにせよ、そこに

人間の行為が介在していることは間違いがないようです。

 このように、水資源は私達から次第に遠い存在になっているようです。日本のような国に

住んでいると水はただのように思いがちですが、高いお金で買ったり、高い経費をかけて

作っている国も少なくないのです。日本は年間の降水量が多く、水には恵まれた国だと

言われてきました。しかし昨今、夏場になると断水の地域が拡大したり、井戸水さえも安心

して飲むことが出来なくなりました。そして、かび臭い匂いがする水道水を嫌ってかミネラル

ウオーターが普及しています。高い費用をかけて作った水道水ですら、いやがって飲まれ

ないのです。世界一と言っても良いくらい水資源の豊富だった日本が、いつの時代から

こうなったのでしょうか。

 私の母の実家は三重県の多気郡というところにあります。上流には大台ヶ原があります。

母の実家の周辺は檜や杉に囲まれた山林地帯です。近くには宮川という清流が流れてい

ます。大台ヶ原から流れ出る水は青く澄み切った、正に清流というにふさわしい流れです。

 母の実家では、今も近くの山から引いた水を使っています。今でこそ蛇口をひねれば水が

出るようになっていますが、私達が子供だった頃(昭和20年代頃)は竹を半割にした竹樋と

いうもので、山から水を引いていました。台所の水槽にも、風呂にも、洗面所代わりに使って

いた庭の洗い場にも、みんなこの竹樋で引いてきた水を使っていました。竹樋には何年かの

歴史を感じさせるほどに苔がついていました。苔のついた竹樋の中を常にきれいな水が

流れていました。竹樋は裏山の檜の林の中から引かれていました。その竹樋を必要に

応じて家の近くで掛け替えて、台所にもお風呂にも流せるようにしていました。私達は外で

遊んで喉が乾くと竹樋から流れている水を手で受けて飲んでいました。正真正銘のミネラル

ウオーターです。味こそ忘れてしまいましたが、神辺の家で飲んでいた井戸水のように金気

臭い匂いがなかったのは確かです。

 子供時代に過ごした長屋は井戸水でした。井戸は共同のものでした。手押しのポンプが

ついていました。井戸ポンプはよく故障しました。弁の付いているピストン部分のゴムが磨耗

してしまうからです。ここが磨耗して水の出が悪くなると、大人達が古いゴムをはいで新しい

ものに張り替えていました。みんなで使うものですから消耗が激しかったのです。

 この水は実に金気臭い水でした。鉄分が多かったからです。水の出るところに木綿の袋を

付けていましたが、鉄錆ですぐに赤茶けてくるくらいでした。そんなわけで、砂や木炭を入れた

大きな瓶に汲んだ水をくぐらせていました。それでも金気臭さは取れませんでした。いつしか

面倒くさくなって止めてしまいました。

 井戸は共同の洗い場の前の畑の中にありました。決して井戸のある環境として良いところ

ではありませんでした。しかし、五軒長屋の住民みんなの命の水でした。

 神辺は水に不自由するような土地柄ではありませんでしたが、早くから水道が布設されま

した。水源は高屋川です。古市と平野の境に深い井戸を掘り、そこから汲み上げた水を

使っていました。しかし、大抵の家には井戸がありました。井戸から水を汲み上げるのは

大変な重労働です。井戸ポンプなるものが普及するまでは、はるかに公共の水道の方が

便利だったのです。井戸水は衛生面でも問題がありました。そんな事で、早くから水道が

布設されたのではないかと思います。

 高屋川は清流とは言わないまでもきれいな流れでした。鮎も遡上してくるような川でした。

それが今では見る影もなく、どぶ川と化しています。今では高屋川だけでなく、どこの川も

同じ様な状態です。退職をしたNさんの話によりますと、Nさんが住んでいる家の横を流れる

川は、風呂にも使えるような清流だったそうです。Nさんは玉島の上成に住んでいます。

山から流れ出た水は汚染されることなく、新鮮な水として田畑を潤していたのです。子供達は

この水の中で遊び、近隣の人達は生活用水に使っていたのです。これに近い状態は、日本

の農村部であればどこでも見られたごく当たり前の風景だったのです。ちなみに、今この川は

コンクリートで塗り固められ、流れる水も少ない、どぶ川のような流れになっているそうです。

 ところで、我が家では水道水と井戸水に依存しています。倉敷市の水道水は高梁川の水

が原料です。大都市部で騒がれているほど、かび臭さやカルキ臭さはありませんが、浄水器

を取り付けています。一方井戸の方は長い間使われずに放置されていたものを使い始めま

した。保健所に調査を依頼したところ大腸菌が検出されました。私が井戸ポンプを取り付けて

一年間ほど庭の草花の散水用として使いました。そして再度、検査依頼をしたところ生活用水

として使うことができるようになりました。各地で地下水の汚染の原因となっているトリクロロ

エチレン等の検査も受けてみました。幸いに全く何も検出されませんでした。この井戸は先年

の渇水期にも枯れることはありませんでした。

 井戸水は、夏は冷たく冬は暖かく、天然のミネラルウオーターです。水源は分かりませんが、

このまま使い続けることが出来ればと願っています。井戸は使わないと水の出が悪くなったり、

水質が悪化します。もし、自宅に井戸があったら是非使ってみて下さい。我が家では、日常

大半は水道水に依存していますが、井戸水は飲み水や畑の散水用に使っています。

 いずれにせよ、水と空気は私達にとって欠くことの出来ないものですから、水の確保が難しく

なりつつあると言うことは、実に深刻な問題です。私達は今まで水に関してあまりにも無関心で

ありすぎたと思います。今こそ、水資源を身近なものとして、考えていく必要に迫られているの

ではないでしょうか。


日本水環境学会   水環境について専門的に取り組んでいる公益法人です。

環境省         環境庁改め「環境省」となり昇格しました。

国土交通省      河川関係や水資源についても取り組んでいます。

名水大全       名水に関するあれこれを事細かに掲載しています。 

奥伊勢宮川村    このページに書いた宮川はこの村を通って流れ下っています。   

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