蜜蜂とハチミツ

 蜜蜂との出会いは子供の頃にさかのぼります。私の母の里は三重県の大台ヶ原の裾野にあります。そこには

祖父や祖母が住んでいました。祖父は多趣味な人で小鳥を飼ったり狸を飼ったりしていました。昔の田舎と言えば

半ば自給自足のような生活でしたから、味噌、醤油など生活に必要なものは、ほとんど自分の家で作っていました。

そんなものの一つ、ハチミツも自給自足でした。どこから手に入れたのか、どんな動機から飼い始めたのかは知り

ませんが、蜜蜂の箱が数個ありました。母が子供の頃から飼っていたようです。さして花の多い環境には思えません

でしたが、自分の家で食べるには十分だったようです。

 私が幼かった頃、夏休みに遊びに行って、おやつ代わりにハチミツを飲ませて貰いました。もちろん、そのままでは

濃すぎますから、お湯で溶いて冷やして飲んでいました。今もその味と香りが忘れられません。いわゆる雑蜜という

もので、色んな花の蜜が混ざったものでした。味も匂いも今の市販品に較べると濃かったように記憶しています。

その後、色んなハチミツを買ってみるのですが、あの味と香りに出会うことはありません。

 私は毎朝ハチミツを欠かしたことがありません。パンにハチミツを塗り、カスピ海ヨーグルトの甘み付けにハチミツを

使っています。最近では料理番組でも砂糖の代わりに時折ハチミツが使われているようです。ハチミツがそれだけ

身近なものになった事と、ハチミツには砂糖では出せない味わいがあるからかも知れません。ともかくハチミツは

健康食品だと言われています。咲きそろった花から蜜蜂がせっせと運んで溜めたハチミツです。自然食です。蜜蜂に

感謝しながら食べています。

 市販されているハチミツの多くは輸入されています。しかし、値段は少し高いかも知れませんが国産品の方が安心

して食べられます。以前、生産者から神辺で買っていました。今は生協で輸入品を買うこともあれば、旅行をしたとき

など地元産のものを買うこともあります。先日は玉野の道の駅で児島産のものを買いました。それぞれに特徴がある

ようです。

 初めての蜜蜂との出会いはおじいさんの家でしたが、その後、何度か偶然に出会うような経験がありました。一度は

蒜山に住んでいた谷口のおじさんの家での事です。谷口のおじさんについては、いずれ又、書く機会があると思います

ので、ここでは詳しくは触れませんが、私の家内のお父さんと親戚同様のつき合いをしていた人です。住まいは岡山県

の県北、八束村にありました。いわゆる戦後の開拓者農民で牛を飼いながら畑を作っていました。おじさんの家には

何度か遊びに行かせて貰いました。その家の床下に何匹も出入りする小さな昆虫がいました。蜜蜂です。どうやら床下

に巣を作っているらしいのです。何時から住んでいるのか、おじさんも知らなかったそうです。この蜜蜂が日本固有の

ものなのか、西洋種なのか定かではありませんでしたが、今にして思えば姿形から日本在来種ではなかったろうか

と思っています。

 それからずっと後の事になりますが、我が家の庭にも蜜蜂の大群が来たのです。ある朝、庭に出てみると花壇の

片隅のコンクリートブロックを積み上げていたところに真っ黒になるほど蜂が固まっていたのです。いわゆる分蜂と

いうもののようです。この場所を新しい住処に選んだのか、じっと固まっていました。しばらく様子を見ていましたが、

朝食の間のわずかな時間に、かき消すようにいなくなってしまいました。どうやら新しい住処とするには適さない場所

だったようです。巣箱でも準備していれば、あるいは蜜蜂を飼う機会に恵まれたかも知れません。何だか幻を見た

ような感じでした。

 東京のデパートで珍しいハチミツを味わう機会がありました。国産は言うに及ばず世界のハチミツが展示されて

いました。店員さんに促されて色んなハチミツを味わいました。国産品でも花の種類によって色んな香りと味があり

ます。外国産の珍しいものも味見させて貰いました。珍しい経験でした。

 私のハチミツ好きは子供の頃の思い出に原点があるようです。もう一度人生をやり直す機会があれば蜜蜂を飼い

ながら、日本全国の花の季節を追って旅するのも良いのではないかとも思っています。

                                                  2002年11月30日掲載

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