血の見えない戦争

 アメリカ、イギリス連合軍の報復とも、思えるような空爆が始まりました。連日のように爆撃の様子

がニュースで流れ、アメリカの国防長官やブッシュ大統領、イギリスのブレア首相へのインタビュー

が続きます。その際には、空爆についての意義が長々と述べられ、その成果が写真で説明され

ます。空爆前後の比較写真には爆撃の成果が歴然と出ています。しかし、それは無機質な施設や

周辺の景色が映し出されているだけの事であって、人の姿は全く見られません。ましてや戦争では

多くの傷ついた人達の血が流されているはずですが、これらの映像には全く写ってはいません。

 しかし、現実には民家が破壊され、多くの人々が傷つき亡くなっているようです。タリバンサイドの

情報だけではなく、お隣のパキスタンからでさえ何人かの犠牲者が運び込まれて来たと報道されて

いますから、アメリカが言っているように軍事施設だけを狙った空爆ではないようです。

 先のイラク戦争の時もそうでした。報道される多くの映像は、巡航ミサイルから写した映像であり、

攻撃目標となっていた建物の姿だけでした。しかし、現実にはたくさんの罪のない人々が傷つき

倒れ、多くの血が流されていったのです。

 今回の攻撃には頭から大地に突っ込んでいき、地下数十メートルにある施設をも破壊することが

出来るというような強力な爆弾も大量に使われているようです。文字通りアメリカの威信を懸けた

最新兵器が投入されているのです。小さな民家などはひとたまりもなく壊されてしまいます。

 過去の戦争において民間人と、そうでないものを区別するようなことがあったでしょうか。アメリカ

は太平洋戦争の際、日本の本土攻撃にあたって単なる爆弾だけではなく、原子爆弾という究極の

破壊兵器を使ったような国です。ましてや前線で必死になって闘っている兵士達に、民間人や兵士

だと見分けることが出来るような余裕があるのでしょうか。私にはとても不可能な事のように思える

のですが。かくして今回の戦争でも、テロ行為とはなんら関係のない多くの人命が奪われているの

です。テロにテロをもって報復をしているように思えてならないのです。

 今、国会では参戦の是非と軍事支援のあり方を巡って与野党の論戦中です。小泉首相は憲法の

枠内でとは言いながら、アメリカ軍支援の為に詭弁とも受け取れるような答弁をしています。本当に

戦争や武器でテロを阻止できるのでしょうか。テロを行うような人達は、私達にはとうてい理解でき

ないような論理を持っています。こんな人達に武器をもって押し掛ければ必ず手痛い反撃に逢い

ます。テロに対抗するには武力をもってせずとも有効な手段はいくらでもあるはずです。また、テロ

の温床となっている国は、長く他国の侵略を受けていたり、戦争で疲弊した貧しい国の人々が多い

はずです。そんな国では一旦武力で押さえつけたとしても、必ず時を待たずして新たなテロの芽は

伸びてきます。

 私達が対テロ対策としてやるべき事は、NGOとして長く医療や経済復興に尽くしてきたような

人達の支援やボランティア活動だと思うのです。これまでにも、ソ連軍によってさんざん痛めつけ

られてきたアフガニスタンには、日本からの多くのNGOが参加していました。これらの活動が今、

アメリカの軍事行動によって中断しています。一日も早く平和が戻り援助再開の日が来ることを

願って止みません。

 アフガニスタンやパレスチナに平和が訪れた時にこそ、テロリスト達の大義名分がなくなる時なの

です。そうでなければ戦争の傷を心にも体にも負った子供達が大人になった時、再びテロは始まる

のです。「因果は巡る糸車」と言う他はありません。

                                              2001年10月17日掲載

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