海の向こうの出来事だと思っていた狂牛病が、国内でもついに発生したと聞いて愕然としている。

アメリカでのテロ事件によって、報道される事の少なかった狂牛病だが、農水省の不手際もあって、

ここのところ、にわかに脚光を浴びている。

 この病気、牛だけの病気かと思っていたら、人間にも感染するのではないかと言われている。

何年も前から、狂牛病騒ぎで揺れたイギリスでは、既にかなりの数の患者が発生しているらしい。

そもそも狂牛病とはいったいどんな病気なのであろうか。この病気に感染した牛は末期症状として

立って歩くことが出来なくなり、姿勢を保つことの出来ないその姿がまるで狂っているように見える

ことからこの名前が付いたらしい。しかし、その実体は狂ったのではなく、脳の中枢まで犯されて

立ってあるこことが出来ず、ついには死に至るという恐ろしい病気だ。

 そして、人間が感染すると、やはり牛と同じように歩行が困難となり、痴呆症となって死に至る

という。プロセスは牛と全く同じ病気のようだ。そもそも原因はプリオンというタンパク質によって

引き起こされると言われている。同じプリオンではあっても、牛や人間が持っている正常なタンパク

質が変化したものだと言うからやっかいだ。

 病原菌であれば菌を殺す薬を作れば良いということになるが、本来動物が持っているもの

自体が変化したものだとすれば、どのようにして取り除けば良いのだろうか。増殖を押さえるには

どうすれば良いのだろうか。

 エイズもエイズウイルスが人間の細胞に取り込まれて発症する。発症のメカニズムこそ狂牛病と

は異なるが、人間の体内の一部と化してしまうことはどこか似ている。そしてエイズの場合は人間の

大切な免疫機能を阻害してしまうので、色んな感染症に冒され死に至る。

 近年の病気は人間の持っている正常な機能そのものを逆手に取ったような病気が多すぎるような

気がする。癌も人間や動物の持っている細胞そのものが変質することによって発生する。ここに

これらの病気治療の難しさがあるようだ。癌化した細胞を破壊しようとすれば、他の正常な細胞も

殺してしまうことになってしまう。いずれもやっかいな病気という他はない。

 この病気はいつ頃から発生し始めたのか定かではない。しかし、初めは羊にこの症状が現れ、

その羊の骨を肉骨粉として牛の飼料にしたところから大発生の原因となったようだ。そもそも何故

草しか食べなかった牛たちに濃厚な飼料、しかも同じ草食動物の骨や内臓を食べさせるように

なったのだろうか。肉でも牛乳でも大量生産を目指す人間のあくなき欲求は、動物たちの生き方

まで変えてしまったことになる。家畜にとっては正に共食いの状態となっている。

 狂牛病感染と人間の感染との関連は、まだ十分に解明されてはいない。とは言うが間違いなく

同じ種類の病気だと思われる。人間が感染し発症した場合はクロイツフェルト・ヤコブ病と言われ

ている。

 今回、農水省は千葉県で発症したこの牛について何度も間違った発表を行っている。初めは

焼却処分したと言っていたのだが、その牛は解体業者に引き取られ一部は肉骨粉に加工されて

いるという。また、この牛と一緒に飼育されていた他の牛の牛の行方も定かではない。既に何頭

かは解体されて市場に出回っていると言われている。

 これら市場に出回った牛の肉の中に、異常なプリオンが同伴して人間の口の中に入っている

ことは十分考えられることである。しかも、この病気の怖いのは潜伏期間が非常に長いと言われ

ている事である。食べて何年後かに突然発症することが十分考えられるということである。私達は

いったいどんな対策をとれば良いのだろうか。

 これも昨今騒がれているグローバル化の弊害の一つではないだろうか。同じ食べ物を地域性

に関係なくみんなが食べる。それは牛も人間も鶏も同じ事である。一国で発生した奇病はその国

にとどまらない。たちまちの内に世界中に広がってしまうことになるのである。国際基準という名

の下に作られた物が、たやすく私達の食料や薬として販売され使われるようになると、その弊害

は恐ろしいものになってしまう。時代の変化と進歩だといってしまえば、それまでの事なのだが人

の健康と生死に関わることとなると軽視は出来ない。本当にこれで良いのか真剣に考え直して

みたいものである。

 それにしてもお粗末なのは農水省の対応である。先のエイズ薬害訴訟の際、厚生省は一人の

老学者の問題にすり替えてしまった。同じような過ちを繰り返さないように真剣に取り組んで貰い

たい。アメリカのテロ事件も大切な事には違いないが、将来に禍根を残さないよう小泉首相自らが

先頭に立って陣頭指揮をとって貰いたい。そして、省庁揚げて十分な対策と予防措置を行うよう

要望したい。全てを統括している省庁が知らぬ顔や間違っていましたでは困るのである。いま、

日本のお役所はいったいどうなっているのだろうか。

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