クローン人間

 クローンによって繁殖を試みることは動物だけの事かと思っていましたら、人間にまでその技術を応用するようになって

しまいました。この技術は早くから人間に応用することが予測されていました。先日読んだ外国の作家が書いた小説も

人間のクローンをテーマにしたものでした。また、それよりも遙か以前に、それこそクローンという言葉すらあまり世間に

知られていなかった頃、作家の石坂洋次郎氏がクローンをテーマにした小説を書いて、一時、大変な話題になった事が

あります。

 動物にせよ人間にせよ、寸分違わぬコピーを作ることが、どんな意味を持つのでしょうか。動物の場合、優れた形質を

持った遺伝子を残すとか、それなりの理由はあるでしょうが、万物の霊長たる人間にとなると、その事情は異なってくる

のではないでしょうか。確かに人間の持つ欲望の一つとして長生きをしたい、自分の証をいつまでもこの世の中に残して

おきたいという思いはあるのでしょうが、誰にでも可能というわけにはいきません。今のところ相当な資金も必要でしょうし、

何よりも倫理と言う観点から見たときに、果たしてそれは許されることなのでしょうか。

 言うまでもなく私達は卵子と精子という全く異なった遺伝子を持ったものが合体し、新たな遺伝形質を持ったものを

この世に誕生させて来ました。その組み合わせは多種多様であり、その組み合わせの面白さが、様々な人間をこの世に

作り出してきた事は紛れもない事実です。だからこそ金持ち貧乏人、権力のあるなしの区別なく平等に自分の才能を

開花させることが出来たのではないでしょうか。それが、人類という他の生物にはない進化の原動力になってきた

のではないでしょうか。

 しかし、この技術を応用すれば100人の同じ顔かたちの人間を作り出すことが可能です。100人の同じ姿の人間が

誕生したとして、そこに偶然が生み出す面白さがあるでしょうか。100人の同じ顔を持った人間が並んでいるところを

想像してみて下さい。ぞっとするような光景ではないでしょうか。正にSFの世界が現実のものとなったのです。

 では、クローン人間の外見だけではなく、思考はどうなのでしょうか。育てる環境、住む世界、住んでいる時代等、

環境の全ては遺伝子を与えた本人とは異なるものです。従って、本人と瓜二つというのは外見だけなのかも知れません。

精神世界まで一緒と言うには無理があるのではないでしょうか。

 しかし遺伝子が一緒と言うことは、思考的に非常に似通ったものを持つようになるのでしょうか。非常に興味のある

ところです。ここにヒットラーのような独裁者が居て、その独裁者が同じ顔と心を持つクローンを作ったとしたら、想像だに

恐ろしい事になりそうな気がします。新聞ではアラブの富豪がクローンを作らせたという事ですが一体誰なのでしょう。

また、その手助けをしたというイタリアの医師の責任は今後重く問われそうです。

                                                   2002年5月19日掲載     

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